1483ページ目 失われた30年は国民のせいだと?

今日の日経記事「GDP何位でも経済立国」についてちょっと思うところがあったので備忘録として残しておこうかと。

 

斎藤経済産業大臣のインタビュー記事ですが内容は主に以下の通りです。

 

30年ぶりにデフレ脱却の気配があり賃上げと設備投資が増えてきたが今後もこの流れを定着させたい。

経産官僚だった時代には考えられないが中小企業の賃上げだとか価格転嫁についてモニタリングし大企業に大臣直々に指導する時代が来るとは思わなかった。

半導体投資だとかGX投資、水素関連で日本経済を牽引したい。

 

利上げされたが次世代に借金は残したくないので財政再建は必要だ。

有権者からは支持されないが財政再建はやる。

 

ただし増税は時期尚早で産業振興が大事だ。

視座の高い雲上人の我々上級国民が産業政策や社会保障を独断で決めることはできず政治で利害調整して落としどころへ向かっていくものだ。

 

大企業と中小企業の間に中堅企業の区分を創設して中堅企業が大企業にステップアップする支援を行いたい。

 

ゾンビ企業問題については選挙対策で中小企業にバラまきすぎて新陳代謝が遅れたとの話もあるがゾンビ企業の定義が不明だし特定の指標だけ見て廃業しろとは言えない。

そもそも中小企業は借金して労働者を雇用しており無借金だけどカネをため込むばかりで事業の構造転換が遅れ成長性が今一つの大企業の方がむしろ問題だ。

 

失われた30年の問題は政策だけでなく政財官学のプレイヤーにも問題があったんじゃないか。

日米貿易摩擦が起きている1983年に通産省に入ったが米国は政財官学が一致団結して日本叩きをしてきたが今の日本は40年前の米国ほどの危機感が足りてない。

98年には小渕が巨額の財政出動をやったし01年には小泉が規制改革をやった、12年以降のアベノミクスでも異次元緩和をやったにもかかわらず日本は失われた30年を脱却できなかった。

やはりプレイヤー間の連携の悪さが不味かったのか。

 

自民党は保守を掲げながらバラマキをやっているとの声もあるが自由主義と資本主義を守るためには社会主義っぽく見える政策も必要でそれをしなければ選挙で勝てないので折り合いを付ける必要がある。

 

GDP4位に転落だが経済立国の旗は降ろさない。

経済成長あっての財政再建社会保障である。

資源も食料も輸入頼みの国は経済成長できなければ滅亡する。

世界の安定と競争力のある産業を国内に確保するのが重要だ。

 

世界で脱炭素の流れが見直されつつあるがロシアのウクライナ侵攻など現実に何が起こるか分からず理想通りいくとは限らない。

洋上風力とか稼働まで5年もかかるのに事業環境は一瞬で変わるのでリスク分散を図りたい。

 

転職する官僚が相次いでいるが実務では官僚が動くので困る。

 

民間と役所のトップの経験がある原敬を尊敬している。

第一次世界大戦後のような混迷の時代には政治の舵取りを誤らぬため広い視野が大切だ。

難局が続くが視野と判断力が必要である。

 

まあインタビュー自体はそんな感じの内容なのですがより気になったのはインタビュアーですね。

インタビュアーからの質問は賃上げで日本経済の風景が変わってきたがどう見るか、金利がある世界では財政規律が必要ではないか、バラマキをやめる政策転換が必要ではないか、中堅企業の区分を創設しても実効性ある政策は実現できるのか、金融緩和で中小企業にバラまきすぎたのがゾンビ企業を増やす元凶になったのではないか、失われた30年は何が原因だったのか、自民党は保守を掲げながら野党のような社会主義的な政策でバラマキをやるのはおかしいのではないか、日本はGDP4位に転落したが経済大国路線を継続できるのか、世界や日本でエネルギー政策が見直されているが脱炭素はどうなるのか、官僚の転職が相次いでいるが官僚上がりの大臣としてどう見るか、尊敬する人はだれか、といった感じで露骨な財務省寄りの質問です。

インタビューの体裁をとっていますが財務省の御用記者による経産省へのクレームですね。

なおインタビュアーは失われた30年について「政治家だけの課題でない」とのあとがきで財政再建論を主張していますが要約すると以下の通りです。

 

政治かも現実主義者でバラマキで票集めをするのが保守政党の理想実現だと判断したのだろう。だが社会主義的政策は失われた30年の一因となり構造改革も経済成長にもつながらなかった。

政治を批判するのは簡単だが政治家がポピュリズムに走ったのが失われた30年の原因であり愚民どもにこそ責任がある。

日経平均は34年ぶりの高値更新でマイナス金利も解除された。

物価上昇を上回る賃上げを実現し経済成長を継続するための覚悟と行動が愚民どもにこそ求められる。

日経記者 吉野直也 牛込俊介

 

まあぶっちゃけどっちもどっちではありますがより問題なのはインタビュアーの吉野と牛込、財務省の御用記者諸君です。

もちろん経産省の言い分を鵜呑みにするのもいかがなものかとは思います。

 

財政再建は必要だと斎藤大臣も言ってますが国債に関しては大半が国内消化されていて団塊の世代が死ぬときに相続税の形で償還資金が国に戻ってくるなり物納で国債が返ってきますし次世代に借金を残すというのもどうなのかとは思いますね。

しかしそれ以前に半導体産業に巨額の税金をつぎ込むなど血税を湯水のように使っている経産省財政再建を語るのもどうなのか。

TBS記事「日本の半導体支援3年で約3.9兆円 GDP比で米欧上回る 財政審「効果は厳密に検証を」」ヤフーニュースもありますが過去にも公的資金を注入しながら結局破綻したエルピーダメモリの失敗例もあります(東洋経済記事「国策半導体の失敗、負け続けた20年の歴史、親会社・国依存から脱却を」)。

この記事は2012年の記事ですが12年経っても同じことを繰り返して大丈夫か?

当時も経産省の元官僚がエルピーダ関係で暗躍していたようですが半導体利権誘導の露骨さも無視できないですね。

国が主導するとまた失敗するんじゃないか?

そういえば七転八倒の末に大失敗した三菱重工の国産ジェット機開発を今度は国、というか経産省主導で再開するそうですね(朝日新聞記事「国産旅客機開発に再挑戦へ 政府、航空機産業戦略を新たに策定」)。

そういう性懲りもないプロジェクトをまだ諦めていないのは天下り先を確保したいのかとしか思えないのですが。

廟算、机上の空論ですら成功する目算が立ちそうもないプロジェクトに巨額の税金を投じるのはやめてほしいのですが。

 

価格転嫁の話に関しては政府がきちんと目配りする必要があるでしょうね。

4月13日の「私の履歴書」でも日鉄の三村君がトヨタ相手の値上げ交渉で実に26回もトヨタに足を運んだと言っています。

当時の新日鉄も値上げが必要な理由をきちんと数字を挙げてエビデンスを積み上げきっちり説明したのでしょうがそれでも価格転嫁に26回もかかってますからね。

一見美談風に三村君は語ってますが実は相当根に持ってるんじゃないか?

この人、東大入学前の苦労話だとか留学帰りで干された話を80歳過ぎてもまだきっちり覚えてますし。

まあ書き方はともかく価格転嫁が課題になってる時期に26回も交渉しないとトヨタは値上げに応じてくれなかったという事実の開示は重いです。

ハーバード出のエリートもいる新日鉄ですらこの有様ではその辺の中小企業がトヨタグループ相手に値上げ交渉で成功するのはまず無理です。

中小企業がどれだけ値上げに必要な数字を取引先の大企業にエビデンスを提示して合理的に説明できるか、デジタル化も怪しい中小企業が活動基準原価計算をきちんとできているかも怪しく値上げできそうなのは相場の変動が明確に確認できる直接材料費ぐらいに留まるのではないかと思わなくもありません。

中小企業に原価管理の知識がある担当者がどれだけいるか不明だし顧問税理士がどれだけ関与しているかも不明です。

購買部や製造部ともきちんと連携が取れていないと値上げに必要な原価関連の情報も先方に提示できない可能性もあります。

なお「8回ぐらいの交渉がなんだ、俺は26回も交渉したぞ!」なんて武勇伝を語ってますがそういう意識だと日鉄もまた取引先に同じことを要求してるんじゃないかと思えてきます。

最低二けた回数は東京の本社に来てもらわんと値上げなんて話にならんよ、と。

トヨタや日鉄に限らず大企業による下請けいじめは厳しくチェックしなければなりませんね。

もちろん同時に中小企業の経理担当者のスキル底上げも必要ですし値上げ分を本当に賃上げなり設備投資なりに充当したのかも取引先は確認する必要もあるでしょうね。

中小企業のオーナー社長(一族含む)がポケットに入れてしまう飲み食いで浪費してしまう可能性もありますのでね。

 

まあゾンビ企業の話、そもそも大企業が正当な対価を中小企業に支払わないから中小企業の借金が増える一方でトヨタみたいなピカピカの財務諸表、大企業は600兆円に迫る内部留保と現金350兆円を抱え込めるわけです。

半導体への投資に関しても350兆円ある現金をまず先に使ったらいいのにね。

自助、共助、公助の原則から言えば大企業こそ自助努力で投資を行わなければなりません。

カネが本当の本当にない一般国民はともかく大企業に税金で補助金を出すのはいかがなものか、これこそまさにバラマキの典型ですが自民党企業献金の禁止は無理だと言っていますね(朝日新聞記事「企業・団体献金禁止「難しい」 自民政治刷新本部の鈴木座長」)。

企業献金ができる大企業ほど献金額を上回る補助金を得られる構図が露骨ですが自民党の主張する「保守」とは「利権の保守」としか思えないのですよ。

 

我々一般国民はちっとも豊かになっていないのですが実際ハワイが遠くなってますね(マネーワールド記事「日本人が消えた 円安で激変したハワイ旅行 LA発ニュースを読む」)。

航空券代も食費もホテル代もドルベースな上に米国は物価自体がインフレですから円安な上に賃上げも世界と比較すればまだ足りていない日本人からすれば当然です。

日米首脳共同声明でも相互の留学促進なども盛り込まれてますがそういうことなら円安を何とかしませんとよほどの勝ち組じゃなければ米国留学なんて無理ですね。

 

脱炭素に関してもここで原発再開とか地震大国で何言ってんだ?と思うのです。

洋上風力のリードタイムと不測の事態の話についてはまさに原発がそっくりそのまま当てはまるわけでそれが起きたのが福島原発事故です。

たぶん洋上風力とは比較にならないほど金額的にはリスキーですね。

 

霞が関からの転職に関しては斎藤君だってこのままじゃ不味いと思ったから辞めたんでしょ。

まあ辞めるんだったら民間からの中途採用を促進したらよい、コンサルなり投資銀行なり起業なりでもう十分勝ってアーリーリタイヤしても生活には困らないけど今度はルールを作る側で仕事をしたいと思ってる30代40代もいるかもしれんね。

 

原敬を尊敬するとのことだが結局暗殺の真相については未だ謎も残ってます。

ただ結局軍閥も財閥も抑えられず期待外れに終わりました。

軍閥と財閥はその後もやりたい放題でとうとう第二次世界大戦でご破算になるまで止まりませんでした。

いつか来た道を再び辿ることのないよう視野と判断力をしっかりもってほしいものですね。

 

色々と思うところはありますがやはり問題なのはインタビュアーです。

金利が上がれば国債の利払いも増えて財政が厳しくなるので増税すべきだという話は現実にそれをやったら住宅ローンだとか奨学金の利息だけでなく増税分が重くのしかかってきます。

緊縮財政と増税と利上げで一般国民の生活は成り立たない、令和大恐慌が起こるかもしれませんね。

利上げしたんだったらむしろ減税して貰わないと困る人も大勢いるでしょうね。

中堅企業の区分新設に関しては大企業が減資して中小企業になって手厚い税制優遇を受ける制度がある点について幾ばくかの効果はあるかもしれませんね。

ただし中堅企業に対する優遇は中小企業に対する優遇より小さくなければいけません。

中小企業の新陳代謝に関しては後継者不足もあることですし統廃合は避けられないでしょうがむしろ中小企業優遇よりカネの使い道を知らない大企業に対する法人税減税こそ見直す必要があるでしょう。

何で無借金の会社に法人税減税してやらねばならんのだ。

カネがあるなら税金払え、使い道がないカネをため込むんだったら社会に還元させるべく法人税増税で再分配するのがよかろう。

失われた30年で政財官学の偉い人たちが利権漁りに終始したのも大問題だがマスコミだって問題があったんじゃないか。

マスコミは第四の権力なんていう人も昔はいたが裏金問題とか政治家のやりたい放題だし記者クラブを見てもマスコミと政府はなれ合いでやってるとしか思えない。

監視がゆるいからいい加減な政財官学の偉い人のやりたい放題がまかり通ったんだろうね。

小渕内閣財政出動にしたって氷河期世代には届かず既得権益が巨額の公金を分捕っていった、小泉内閣規制緩和も非正規雇用だとかブラック企業が大喜びで氷河期世代が犠牲になった、アベノミクスでも氷河期世代は救済されずトリクルダウンどころか格差拡大で一般国民だけ貧しくなった一方で住友化学で大赤字を出している十倉君でも10年間で10億円も貰えたしな。

ひたすら弱者から奪い取る政策も大問題だが奪い取ったカネを政財官学マスコミで山分けした各界の偉い人たちには憎しみしかないね。

 

バラマキが問題とか言ってるが我々一般国民はちっとも受け取っていない!

ガソリン補助金とか電気ガス補助金とかも結局少子化支援金でまた回収されるというか実質賃金23か月下落でカネは手元に残っていないのだが。

1億円以上の役員報酬をもらう役員があとちょっとで千人の大台に届きそうだな(フラッシュ記事「実質賃金23カ月連続マイナス「過去最長タイ」の一方で「1億円以上」役員報酬994人 痛み分からぬ経営トップに寄せられる怒り」ヤフーニュース)。

一方で1000万円以上は少子化支援金の支払額は一律だという(FNN記事「月1000円超の負担も“子育て支援金” 徴収額高い?異論「なぜ、子育て中も」不公平「年収1000万円以上は一律」」ヤフーニュース)。

当初の説明と全く違う上にとんでもなく逆進性が強い負担だなおい。

これのどこがバラマキだって?

1億円の役員報酬をもらう人たちも1千万円の社員と同じ負担額とか何だそれは。

社会主義どころか初期の資本主義並の搾取っぷりじゃねえか!

保守っていうのはやっぱり利権の保守としか思えんのだよ。

ジニ係数も上がってるけど牛肉も円安でずいぶん値上がりしたな。

粥腹じゃあ栄養不足だが上級国民は離れでがっつりすき焼きを食って羨ましいこった。

GDPがいくらになるかは不明だが北朝鮮じゃあ国民に肉のスープと白い米を提供すると言ってたな。

米がどうなるかは知らんが一般国民から肉のスープがどんどん遠ざかっていきそうな日本じゃあ困る。

脱炭素の話に関しても再エネ賦課金が重すぎるのだが。

カネ持ってない一般国民より大企業とか十倉君みたいな富裕層からたくさん徴収すればいいだろ!

霞が関の転職についても若手中堅よりベテランの天下り様の公金チューチューに迷惑しているのだが。

原敬暗殺以降の日本も第二次世界大戦の敗戦向かってまっしぐらだがやはり貧富の格差が社会不安になってそれがいわゆる「保守」の支持を集めて軍国化してしまったという背景もある。

マスコミも大政翼賛会とか軍部の話を広告宣伝するだけの機関に成り下がって日付以外は全部信用できない新聞ができあがったっけ。

財務省の広告宣伝紙なんて読む価値あるか?

失われた30年の責任はポピュリズムを支持した愚民どもにあると言っているが選挙に行かなかったのは問題だったとしても現実には世襲候補が組織票で圧勝し一般国民の声が届かない政治システムになっている。

ポピュリズムとは組織票を出す利権団体、大企業とか一部の上級国民に対するポピュリズムであって我々一般国民に対するポピュリズムとは言えないな。

というか真にポピュリズムだったら裏金議員の処分はもっと厳しい、金額の多寡にかかわらず裏金議員は全員除名の上、次の選挙では刺客をたてる、かつ蜃気楼に対する証人喚問で支持率青木率割れの岸田内閣のてこ入れが行われるはずなのだがな。

一般国民からの支持なんてこれっぽっちも気にしてないのが伝わってくるぞ。

失われた30年は上級国民のやりたい放題で今もやりたい放題が継続中だが上級国民の責任は重いとして失われた30年の責任を我々一般国民にまで押し付けるのは完全に筋違いも甚だしい。

吉野と牛込とやらがどういう生活を送っているのか知らないが日経のエリート記者がカネを持っていないということは考えられないしとても我々一般国民の海外旅行どころか牛肉すら遠くなった生活苦を想像できるとは思えない。

国家財政より我々一般国民の家計の方が先に破綻しそうな状況にあっては断固負担増に反対、企業は現金だけで350兆円持っていて富裕層全体が持つ純金融資産300兆円以上あるということなのでそ財政再建だったら大企業と富裕層が持っている現金または現金等価物で賄えと私は強く言いたい。

もちろん政財官学の偉い人を取り換える、一般国民の中にも松下村塾で学んだ維新志士のようにカネはなくとも志と学識があり視野と判断力に優れた者たちもいるはずなのでそいつらと交代させる必要があると思うね。

 

ま、この人たちが地位を明け渡す時が来るかどうかは知らない、明け渡すとしたら手に負えなくなって放り出す時なんでしょうけど財務省提灯記事をしたり顔で書くマスコミも含めて上級国民のダメっぷりを考えるとこの人たちが手に負えなくなる、舵取り不能になる未来もいずれやってくるかもしれませんね。