1482ページ目 ロシアの停戦案とイランの動向

弾薬不足で反攻作戦が難航しているウクライナと戦車の大量損失で兵器類の枯渇が深刻化してきたロシア。

双方とも一進一退の状況ですがロシアが2年前の停戦案に合意するといった話が出てきました(日テレニュース記事「プーチン大統領、2年前の停戦交渉合意案に同意の意向示す ロシアメディア報道」ヤフーニュース)。

この停戦案はウクライナ侵攻前までロシア軍を撤退させるもので激戦の末に制圧したウクライナ東部の要衝マリウポリも含まれます。

ドンバスはロシアが実効支配していますがここからも撤退するのか。

ロシアは31万人以上もの死傷者を出し戦費も31兆円も投じていますが(毎日新聞記事「ロシアの戦費31兆円超す 米国防総省試算 軍死傷者は推定31.5万人」)侵攻後の占領地すら返還するとなると何も得るところはありません。

戦争継続もロシア国内の不満が高まりますが2年間の戦争で得るところがないというのもプーチン大統領に対する責任追及の声が高まるでしょうね。

にもかかわらず何でまたプーチン大統領は2年前の停戦案を検討する意向を示したんでしょうね。

 

ところでイスラエルもガザに侵攻していましたが軍の一部を撤退させました(産経新聞記事「イスラエル軍、ガザ南部撤退 「次の段階」に向けて部隊再編へ」)。

米国からの圧力があったとの話もありますが実際のところ後方のイランがイスラエルに攻撃してくるリスクが高まった、背後を急襲されるリスクに備えて本国に軍を帰還させたとの見方があります。

米国もイランによるイスラエル攻撃が近いと言っています(時事通信記事「対イスラエル攻撃「近い」 大使館空爆へのイランの報復―米大統領」)。

ガザのテロ組織はいつでも叩けるがイランのような国家規模の軍隊相手には相応の防備を固めないと厳しいと判断したのでしょうか。

イランは西側からの経済制裁もあって未だにイラン革命前に入手した50年前の最新鋭戦闘機であるF14をメンテナンスしながら使っている国で(なお製造元の米国ですら既に退役済みです)軍備はポンコツかと思いきやビジネスインサイダー記事「世界の軍事力ランキング トップ25 [2023年版]」のデータを見ると意外と侮れない存在でした。

世界の軍事力ランキングでは17位で戦車4000台、ロケット砲1000台を有しており現役軍人数も57万人います。

57万人というとだいたい八王子市の人口と同じ、鳥取県より2万人ほど多い人数です。

なおイスラエルは世界の軍事力ランキングで18位、戦車数2200台、自走砲650台となっています。

革命前に入手した西側製の戦闘機と革命後に旧ソ連から導入した戦闘機が中心のイランより米国の最新技術を利用できるイスラエルの方が空軍戦力は上でしょうが陸上戦力も含めた総合力で見るとイランとはほぼ互角といったところなのでしょうね。

イランもそのあたりの事情、空軍戦力の貧弱さを自覚しているのか敵の競争優位を陳腐化させるイノベーションを起こす戦略を取ったようです。

研究開発と製造に巨額の予算がかかる戦闘機の強化より安価で大量生産できる軍事用のドローン開発を推進し今では世界でも有数の軍事用ドローン生産国となっています。

ロシアのウクライナ侵攻でもイラン製ドローンがロシア軍に使用されウクライナに大きな損害を与えています。

そしてイスラエル同様イランも核兵器製造能力を有しており最短12日で核兵器を製造可能との見方もあり(日経記事「「イラン、12日間で核爆弾製造」 米高官が分析を公表」)イランが本腰を入れてイスラエルに大規模攻撃を仕掛けてきた場合は重大な脅威になります。

ガザ地区完全制圧とイランからの防衛戦の二正面作戦はイスラエルといえども無理でしょう。

 

しかしイランにとっても西側の最新鋭技術を持ち物量はともかく質の面ではイラン製兵器に勝るイスラエル軍と戦うのは容易ではありません。

核兵器だったらイスラエルも開発能力を有しています。

イランはロシアにドローン供与を通じて軍事支援を行っていますが互角の相手と戦うのであればとても他国の支援をしている場合ではありません。

もしかするとロシア側に対し今後はドローンの供与など支援が難しくなるとイラン側は伝えたのではないか。

ウクライナ侵攻では内々にロシアに協力したので今度はロシアがイランのイスラエル攻撃について支援しろといった話もあったのかもと思わなくもありません。

イランの軍事協力なしでロシアがウクライナ侵攻を継続するのは非常に厳しくなる可能性があります。

勝ち目が薄いどころか占領地も取り返されるおそれが出てきたのでロシア側にとって手を引かざるを得なくなったのかもしれません。

実際のところ本当の本当にイランがイスラエルに大規模攻撃を仕掛けるのかどうか不明ですがウクライナとガザが停戦してそこで使われていた軍事力がイスラエルとイランの戦争で用いられるとなると被害規模は相当大きくなる可能性があります。

 

ウクライナもガザも和平のための和平でなく戦争のための和平のように思えてきますが第5次中東戦争オイルショックとか冗談じゃありません。

ただでさえ1ドル153円の円安なのにオイルショック並のペースで原油相場が上がったら大変なことになります。

ウクライナとガザの停戦は実現してほしいですが第5次中東戦争が起きないことを祈るばかりです…