1497ページ目 岸田漫遊記 ブラジル

さてフランスの次はブラジルです。

ブラジルは10年ぶりに日本の総理大臣が訪問するということですが今年のG20の議長国はブラジルです。
ブラジルといえばBRICsの一角でリオのカーニバルやサッカー、日系ブラジル人労働者、アマゾンの熱帯雨林、鉄鉱石、各種レアメタル、コーヒー等々ありますけどあんまりイメージは湧かないですね。
ああ業務スーパーの鶏肉がありましたっけ。
名前は知ってはいるけど詳しくは知らないので少し勉強してみたいと思います。


正式名称はブラジル連邦共和国で(連邦制だったんですね…)首都はリオデジャネイロでなく高原を切り拓いて計画的に整備したブラジリアです。
南米大陸で一番の大国で人口は世界5位の2億1300万人、国土面積も世界5位の851万5767平方キロメートルです
ポルトガルの旧植民地でポルトガル語公用語ですが19世紀に本国から独立し今では本国ポルトガルを上回るポルトガル語使用国です。なお宗教もポルトガルと同じくカトリックになります。
GDPは2兆3千億ドルで世界8位、主要な輸出品目や大豆や食肉、林産品、砂糖、アマゾンの木材、鉄鉱石や原油、自動車や電子部品、小型航空機等々です。
日本との関係は20世紀初頭に日本人が新天地を求めて移住し子孫である日系ブラジル人はブラジル社会で大きな存在感があります。
ビジネスでも日本企業がブラジルに進出しコロナ禍前でブラジルに5万人の日本人がおりブラジルからも約20万人のブラジル人が日本に出稼ぎに来ています。


外務省のデータを見ると日本との貿易はブラジルからは鶏肉や鉄鉱石、アルミニウム、トウモロコシ、コーヒー、大豆等主に農産物や鉱石や金属類を輸入し日本からは自動車部品や半導体関連製品等を輸出しています。
貿易額は2022年時点で日本からの輸入が53億ドル、日本への輸出が66億ドルとなっておりここも日本が貿易赤字ですね。
円安資源高の影響が出ているようです。
それでも新興国ということで2020年度だと日本はブラジルに3312億円の有償資金協力、55億円の無償資金協力、1200億円相当の技術協力を行いブラジルにとって第3位の援助国となっています。
日本も円安ですし何だかんだでブラジルもG20の議長国になるほどの大国になったんですからもうこの種の援助は縮小廃止の方向で進めていく必要があると思いますね。


まあブラジルはかなりヤバい格差社会で失業率は2023年時点で8.3%、かつてのようなハイパーインフレは利上げで多少は落ち着きましたけどそれでも2022年時点で5.79%のインフレとなっています。
そんな状況で貧富の格差は激しくブラジルのジニ係数は0.48で世界ワースト2位です。
暴動がいつ起きてもおかしくない状況ですが実際暴動は発生しました(BBC記事「ブラジル議会襲撃、拘束者1500人に ルラ大統領は「テロ行為」と非難」)。
まさかの議会襲撃です。
米国でもトランプ前大統領派が同じことをしてましたし日本も日米安保問題で昭和の時代に国会議事堂が包囲されましたね。


まあルラ大統領は再選されてますけどこの人は国営石油会社に便宜を図るなどの汚職で失脚し580日も服役してたんですよね。
本来ならそのまま9年間服役しているはずだったのですが政敵のボルソナロ前大統領はコロナ禍対応で失敗し僅差ではありますが元職のルラ大統領が2022年の選挙で勝利しました(東京新聞記事「コロナ死者69万のブラジルで大統領交代へ 「ただの風邪」発言の現職を左派の元職が僅差で破る」)。
さすがに69万人もコロナで亡くなったのに「ただの風邪」と言い切ってしまったのはky過ぎました。
無能な人より汚職の人の方がマシという有権者の判断があったんでしょうが双方とも熱狂的な信者がいてボルソナロ前大統領派も僅差の敗北を何らかの不正があったと疑い暴動を起こしています(朝日新聞記事「「ブラジルは盗まれた」暴徒化した人々 アメリカと重なる議会襲撃」)。
ルラ大統領汚職で捕まった人ですし疑いたくなるのも無理からぬ話です。


上の人たちはやりたい放題なのに一般国民はインフレと高金利で生活が苦しいし失業率も高いとあっては暴動が起こらない方が不思議です。
こんな汚職で捕まる人を候補にせざるを得ないような国というのも残念な話です。
2億人以上いるんだしまともな候補者がいないのか、日本のように立候補するまでのハードルが高すぎるのか知りませんが人材の有効活用はできてなさそうな国ですね。
なおルラ大統領の支持率は今のところ支持と不支持が拮抗しており(ロイター記事「ブラジル大統領の支持率低下、不支持と拮抗 世論調査楽天インフォシーク)少なくとも岸田上等兵よりは人気のようです。


とはいえもう78歳ですし次はどうするのか?有事の際に後任はどうなるのか?心配な点はあります。汚職の前科もありますし支持率以前に突如尻尾をつかまれて失脚という可能性も捨てきれません。
歳も歳だし会えるうちに会っておこうかと思ったのかどうかは知りませんがわざわざ今のタイミングで直接訪問する必要はあったのか?

ルラ大統領は昨年の広島サミットで来日しましたが日本の総理大臣は2016年に当時の安倍首相がリオ五輪閉会式で安倍マリオとして登場してそれっきりです。
なおリオ五輪会場は現在廃墟化しているようですが安倍マリオから8年後に国民的不人気の岸田上等兵ではがっかりされるかもと思わなくもありません。
G20は11月にブラジルでサミット開催ですし総理大臣はそこで出向けばいいじゃないか。
まあ岸田上等兵はお役御免になっているかもしれないですが。

やっぱり岸田漫遊記ブラジル編はいらないんじゃありませんかね。


日経記事「日本とブラジル、脱炭素で包括協力 首脳会談で合意へ」ではバイオ燃料関連の技術協力、日本企業の投資促進、アマゾンの環境保護等の話が上がっていますがOECD閣僚会議や日米首脳会談より緊急性は薄れます。
裏金問題があるから年初のブラジル訪問を延期したとの話もありますがそれだったら政治資金法改正の話だとかあるしそもそも裏金問題をあれで幕引きとかいい加減にしろよ。
能登地震だって未だに公共施設などで一時避難を余儀なくされている人もいます。


脱炭素の協力はするしブラジルが提唱する超富裕層への課税(産経新聞記事「ブラジル財務相が富裕層課税強化提言 G20議長国、7月に「宣言」目指す」)はよい提案ですので日本としても協力する価値があります。
資源や農産物の調達も経済安保の話もあって重要、労働力不足もあるのでブラジルの日系人受け入れの話もありますけど農産物とか日本側が設定する関税はどうするんですかね。
まあ物価高対策もあるので農産物の関税は下げるなり撤廃するなりして安くしてもらわないと困るんですけど日本からの輸出品目の関税が下がらないのも迷惑ではあります。
日系ブラジル人労働者に関してはわざわざ落ち目の日本に来るメリットはあるのか?リーマンショック時に帰国支援金まで出して追い出すし教育だってポルトガル語自体が日本ではマイナー言語なのでブラジル人労働者の活用はなかなか大変です。


外国人労働者の処遇改善だとか農産物の関税、超富裕層への課税強化について日本側はブラジルにどう説明するのか知りませんけどそれにしたって今このタイミングで岸田上等兵がブラジルに行って何かできることはあるのか?
実務レベルでの調整をまずちゃんとやるのが先だと思うんですよね。