1493ページ目 1ドル155円、円安は大惨事byトランプ

止まらぬ円安ドル高で円相場は1ドル155円という34年ぶりの水準になっています(毎日新聞記事「34年ぶり円安 一時1ドル=155円台 日銀為替介入の警戒感高まる」ヤフーニュース)。

米国でもトランプ前大統領がこの円安ドル高について大惨事だと言っているようです(TBS記事「トランプ前大統領 34年ぶりの円安・ドル高に「アメリカにとって大惨事」」ヤフーニュース)。

 

米国の製造業にとっては輸出が減りますがトランプ前大統領はラストベルト、米国の中西部から北東部にある製鉄や自動車産業など古き良き時代の米国経済を支えた地域の白人労働者層を支持基盤にしており選挙戦の最中ということで上述の発言に至ったのでしょうね。

重厚長大型産業は労働者の人数が多く大票田ですしギリギリの戦いになってますから円安ドル高を是正して強い米国の製造業を復活させラストベルトが繁栄していた50年代60年代の古き良き時代を取り戻す的なストーリーで支持を訴える戦略ですかね。

80年代90年代の日米貿易摩擦の記憶もある人もまだけっこういるでしょうし円安は米国にとっての脅威、トヨタにBIG3が駆逐されると未だに思っている人もいるかもしれません。

USスチールが日鉄に買収されようとしていますがUSスチールが凋落したのもドル高のせいだという認識の人もいることでしょう。

BIG3もUSスチールもドル高よりむしろ時代の変化についていけなかったり再編に出遅れたりして販売台数が伸び悩んだり生産コストが高止まりしたのがより大きな原因なのですけどね。

 

まあ円安ドル高が大惨事なのは日本にとってもまったくその通りの状況になってしまっています。

トランプ前大統領はちょうどこのタイミングで麻生君と会談してますし円安に困っている日本へのリップサービス的な側面もあったかもしれません。

いや実際、牛肉とか元々国産は高くて買えなかったんですけど米国産牛肉もずいぶんと高くなっちゃいましたからね。

円高の頃は日本の農業団体が米国産の安価な農産物が入ってくるのは困るので高関税を維持すべきだ、米国も自由貿易推進というか円高の日本にもっと農産物を輸出して儲けたいという感じで貿易交渉において激しいやり取りがあったのを思い出します。

たしかに円高の頃の米国産農産物は安かった、ハンバーガーなんて1個80円で買えましたからね。

食べ盛りの時期は胃袋にとっての救世主でしたよ。

それが今ではハンバーガー1個170円です。

小麦も牛肉も円安で上がってるしバイト代も若い世代が減ってしまって上がってますからね。

米国産牛肉の関税率は2020年時点で25.8%だったようですが(日経記事「牛肉輸入、米国産に勢い 関税率低下で産地変更も」)1ドル150円時代では関税を完全撤廃しても1ドル100円時代の頃より高くなります。

一方で円安で和牛の輸出は有利になるので米国は和牛の関税を引き上げています(日本農業新聞記事「米国の牛肉輸入関税上昇 今年も早期に定率枠消化」)。

円高ドル安が逆転したら攻守の立場だって変わりますので米国は当然保護主義に傾くでしょうね。

こんなことになるんだったら貿易の自由化を推進しておくんだったと思いますけど物価高対策で円安ドル高の是正が難しいんだったら海外からの輸入農産物の関税下げてほしいものです。

農家が困るといっても国産品については元々高いし自由貿易を推進して外国に輸出したらどうかと思えてきます。

円安もエンゲル係数を悪化させる要因になりますが全く本当に大惨事です。

 

…が、米国は本当にそれでいいんですかね。

同じことを日本もやったんですけどさすがに1ドル80円の円高になってくると今度は国内製造業が厳しくなるので量的緩和をやってほどほどの水準、1ドル100円~120円ぐらいの時代が長かったんですが米国の場合はドル高でも物価そのものも上昇しています。

米国とて全ての食料を自給自足で賄っているわけでもないですが輸入食料品の値上がりはドル高の恩恵で幾ばくかは抑制できているはず。

もしドル安になったらその分だけ食料品が値上がりすることになりそうですが米国の中低所得層の家計は大丈夫か?

ラストベルトの支持層も物価上昇となったらトランプ前大統領に反旗を翻すかもしれません。

まあ日本だって非常に困っているので円安ドル高は何とかしてほしいので米国政府がドル安誘導に動いたとしても特に反対する理由もないですが。

 

とはいえ変動相場制では通貨の価値は国家でなく市場が決めますので政府が介入したとしても長続きするものでもありません。

円安でもドル安でも物価上昇に追い付く賃上げ、年金暮らしの世帯も物価上昇に見合った年金の支払いが重要になってきます。

日本も米国も一部の富裕層と大企業が富を独占し過ぎですが日本にせよ米国にせよ不安定な政治は格差問題、もっと言えば一般国民の胃袋の問題が原因でもあるわけです。

一部の上級国民だけが腹一杯で一般国民にメシを確保できないような国家が存続できないのは古今東西共通です。

日米の偉い人、甘い汁を吸う上級国民の皆さんは大惨事を回避するためにはどうすべきかよくよく考えなければならないと思いますよ。

 

 

 

1492ページ目 四半期開示は株主利益至上主義に非ず

日経記事「付加価値の適正分配 再考を」と「政策保有分」もあなたの責任」は目を通しました。

四半期開示制度=株主利益至上主義と誤解している人だとか気候変動等非財務開示と財務開示をトレードオフとして扱う企業があったりして大変迷惑です。

 

前者の記事は主に「株主還元が増える一方で賃上げはないし売上高も設備投資も停滞し国全体でGDPも停滞した。株主還元の原資はコストカットによる利益で本来投資に回すべき資本も投資家によって回収されている。増資など市場での資金調達は1兆円程度なのに自社株買い含む株主還元は30兆円もあった。失われた30年は投資家による企業資本の回収の時代だったので低成長だったのではないか。その理由はROEやPBRなど定量的な情報を重視したのが問題でこれを改善させるため企業は自社株買いに走った面が否定できない。自社株買いのせいで賃金が上がらなかったしイノベーションが起きなかったのが問題だ。だから岸田閣下は四半期開示を簡素化し自社株買いの制限を掲げ中長期の経営を促した。四半期開示の簡素化で経済界に賃上げを促した。株主には一定の自社株買いについて配慮すること及びストックオプションを拡充すればよい。従業員株主が増えればアクティビストとかの外部株主が増えるよりも経営が安定する、中長期的な成長を目指すべきだ」といった感じです。

露骨な岸田上等兵擁護の記事ですがスズキトモさんとやらは「新しい資本主義」関係の御用学者ですかね。

 

さて内容を検討してみましょうか。

たしかに株主還元は増えてますね。

そりゃそうです、何せ企業内には使い切れないほどの現金が350兆円ぐらいあって内部留保も600兆円近くあるんですからね。

本来であればこれらを賃上げだとか設備投資に回すべきなのです。

法人税減税はそのためにアベノミクスで行った施策です。

 

投資家にも色々あって全員が全員短期利益追求型のアクティビストではありません。

成長に必要な資金まで自社株買いや配当で流出させて売り逃げする焼き畑農業的な投資家だけでなく長期保有で株価上昇と安定配当を望む投資家もいるのです。

むしろそっちの方が多いんじゃないですかね。

 

株式を安定的に長期保有する大口の機関投資家には生保だとか年金だとか契約者に保険金を支払ったり年金を支払ったりしなきゃいけない人たちもいます。

投資先にはきちんと成長して安定配当も出して貰うことを期待しており成長に必要な分のお金まで全部株主に還元しろなんて無茶苦茶なことは決して言わない人たちです。

しかしその人たちだって長年にわたって鳴かず飛ばずで有り余る現金を活用できないんだったら別の会社、きちんと成長している米国など他国の会社に投資せざるを得なくなります。

株価が上がらないし実効性がありそうな中長期経営計画すら出せないのに無駄に現金を貯め込んでいる会社に対しては配当なり自社株買いなりして貰わないと困るんですよ。

本来なら現金を有効活用して成長してほしいんですけどそれすら投資先の会社ができていないから仕方なく増配なり自社株買いなり株主還元を要求しているのです。

 

著者のスズキトモさんだって生命保険契約とか年金保険料払ってるでしょ。

あんただって困るんだぞ。

50代だったら親が亡くなったり本人も健康を害したりすることもあるけどそのあたりのリスクは金銭面も含めてもちろん自覚してるよな。

さも投資家が搾取したかのような書きぶりの文章ですが濡れ衣です。

というか株主還元を増やしたにもかかわらずまだ現金が増え続けて350兆円まで膨れ上がったことがむしろ異常です。

株主還元を増やしてもまだカネは十二分に余ってるわけですから株主還元のせいで賃上げや設備投資が行われなかったとのスズキトモ博士の主張は明確に誤りです。

やっぱり法人税減税いらないじゃねえか!あとスズキトモ博士は学部からやり直せ!

ここまで優遇したのにまだ結果を出せない会社も少なくないのが非常に残念です。

 

社内政治ばっかり上手、コミュ力だけの人が出世してしまったことも原因ですけどコミュ力で誤魔化せないから数字というのはものすごく大事なんですよ。

言い方次第、ネガポジ変換で残念な内容をあたかも問題がないかのように伝える人は昔からいます。

大日本帝国軍の撤退を転進と言い換えるような奴ですね。

定性的な話で煙に巻く人たちは別に企業に限らずいろんなところにいますけどやはりお金を扱ってるわけですからきちんと定量的な情報で管理しませんとね。

どんなに言い方を変えたって客観的な事実は変わりません。

大日本帝国軍の戦線がどんどん日本本国に向かっている、戦死者が激増し原油などの軍需物資も残りが少なくなってきたのは撤退でも転進でも変わらず定性的な説明でなく定量的なデータで戦況を判断しなければならないのです。

調子のいい事ばかりいう政治家や経営者の口八丁に騙されるわけにはいきません。

駄目な状況をあたかも問題がないかのように誤魔化されて後で大変なことになるのはお断りです。

ROEだとかPBRだとか資本効率性指標による管理は必須なのです。

「中長期」を理由に赤字を繰り返す会社もあるものですがそれも困ります。

むしろ数字による管理がいい加減で投資家も経営者に何も言わなかったから失われた30年が続いてしまったのではないか。

去年よりは減りましたけどさすがにPBR0.5倍割れとか見過ごせないですね。

 

従業員の立場で経営者にモノ申すのはとても大変、干されるか最悪クビにされるかですしより上位の立場である投資家に頑張ってもらわないと財務も非財務もなかなか改善しないんじゃないかと思いますね。

コストカットだけしか触れてないですが巨額の法人税減税が最終利益を押し上げた点について触れていないのも問題です。

四半期開示制度を株主利益至上主義ということで槍玉に挙げてますが本来四半期開示含む開示制度全般(財務非財務両方)は決して投資家だけのためだけの制度ではありません。

上場企業は社会の公器である上、巨額の法人税減税や補助金等を受けており税金の使い道を一般国民に示す必要があります。

政治献金も問題になっていますが本来会社の目的に政治献金が含まれるのかどうかも考慮すると企業の側もきちんと開示して貰わないと困ります。

業務に関係ない政治家に献金を行うのは株主利益になりませんし業務に関係ある政治家に献金を行うのは露骨な利権誘導で一般国民の利益になりません。

どっちにしろ問題があるので企業は誰に献金を行ったのか説明責任を有しています。

 

もちろん内部管理もしっかりやってもらわなければなりませんし四半期レビューで誤りがないかどうかきちんとチェックしてもらう必要があります。

四半期レビュー廃止するから賃上げしろといった話があったかどうかは知りませんが賃上げについてはアベノミクスで行った巨額の法人税減税が原資に回す約束でしたので経済界に譲歩し過ぎです。

盗人に追い銭をくれてやるようなもので断固認められません。

自社株買いに関しては余ってる現金をそのままにして置かれるのは非常に困りますね。

貯金箱じゃないんだぞ会社は。

 

従業員株主制度もダメとは言いません。

まあ従業員であると同時に株主にもなれば愛社精神も高まり転職せずそのまま定着する人も出てくるかもしれませんし株主総会の与党株主になってくれれば会社としたらそれでいいでしょうね。

けどね、会社が不況になって給料が減った場合は勤め先の会社の株も値下がりしてダブルパンチになるリスクとか考えましたか?

上り調子の会社だったらそのまま買って寝かせておけばいいですけど構造的に斜陽の会社の株を貰ったって困ると思いますよ。

会社で不祥事が発覚した場合に株主総会で責任追及の声が上がることもありますけど株主総会会場の前方とかに与党株主として社員とかOBとかが陣取って会社に不利な質問をする余所者は許さん的な空気を醸成されるのも迷惑なんですが。

 

四半期開示や資本効率性指標による管理が中長期的な成長を阻害したとの主張は根拠のない言いがかり、米国企業も米国もきちんと成長してますし日本の場合は経営者の質に問題があると言わざるを得ないのですよ。

バブル越えの日経平均だって円安になったから海外から巨額のマネーが入ってきたというだけの話であって実際にはGDPは来年に5位転落だし円ベースの見かけ上だけ株価が上昇したに過ぎないんじゃないですかね。

付加価値の適正分配を再考し株主還元をもっと減らせといった主張は不適当です。

巨額の法人税減税と金融緩和で円安にしてやったにもかかわらずその割に成果を出せたとは言い難く賃上げも不十分な会社の経営者を取り換える、かつ、法人税減税の見直しを行う、四半期開示(四半期レビュー含む)で巨額の法人税減税と円安による国民負担を原資にした内部留保の使い道について投資家だけでなく一般国民に対し各企業は説明責任を果たすべきと考えます。

 

後者の記事では気候変動とか非財務開示を拡充するけど政策保有分、持ち合い株で取引先の株を持ってる場合は取引先の分についても情報開示に反映させるといった話がありましたね。

持ち合い株が多い日本企業ほど手間がかかります。

元々資本効率だとかガバナンスの観点から持ち合い株を解消すべきといった声もありますが非財務開示も絡んでくると持ち合い株に対する逆風が強くなるでしょうね。

非財務開示拡充を機に持ち合い株を解消するのも一案ではあります。

さてこの記事の大筋に関してはともかくとして非財務開示の拡充のため財務開示を犠牲にするのは非常に困るのですよ。

住友商事は会計部門の人材をサステナビリティ部門に回して対応していますが会計を疎かにされるのは上述の通り投資家や一般国民に対して巨額の法人税減税や円安を原資に積み上げた内部留保の使い道についての説明責任を果たす上で問題です。

上場企業だったら必要な人材を雇え、もともと間接部門ということで経理部門に人材を回さない会社も少なくないですが雇用を増やすために法人税減税をやったことを考えるとこれも経済界の約束破りです。

サステナビリティだったら住友化学も熱心にやってますけどあそこも大赤字です。

原油相場次第でラービグの収益も変わってきますけど商品相場とか為替相場みたいな急激に変動しやすい要素に大きく業績が左右されるのであればレビューを受けた四半期開示で信頼できる数字を出してもらう必要があります。

もちろんグローバル展開して資源も幅広く取り扱ってる住友商事も同じ事、資源関係の取引に付随してデリバティブとかもたくさんやってますがそういう複雑な取引をやってる会社も会計処理が正確なのかどうか相当気を付けなければなりません。

銅地金の不正取引でとんでもないことになった前科もありますし。

というか会計部門の人員削減とかやめろ。

無鑑査がまともな企業の証とか刀鍛冶じゃあるまいし実に危うい。

刀は嘘をつかないけど人間は嘘をつく。

特に金持ちや権力者だとか上級国民は嘘をつく、一般国民を騙すという前提で臨まないと足元をすくわれるリスクは失われた30年で嫌と言うほど味わった。

粉飾事例も後を絶たないし問題は早期発見早期是正が需要、財務非財務を問わず不都合な情報ほど経営者は隠蔽したがるから用心を怠るわけにはいかんのよ。

実際小林製薬株主総会直前になって紅麹健康被害問題を出してきたしな。

あそこも信用低下で売上を減らしているがそういうところに関してもレビュー付きの四半期開示で説明責任を果たすべき、隠ぺい体質を考えると非財務だけでなく財務開示に関しても何か隠し事があるんじゃないかと思えてくる。

非財務開示は負担というが必要な人員を揃えるために必要なリソースは350兆円も余っている現金の有効活用で確保できないはずがない。

非財務開示は当然にやってもらうとして非財務開示が負担だから財務開示、特に四半期レビューを廃止しろと言う主張はもちろん認められない。

経済界は有り余る現金を有効活用して社内体制を整え財務開示非財務開示両方とも充実させ投資家はもちろん一般国民にも財務非財務で説明責任を果たす必要があります。

 

4月24日追記

日経記事「企業の現金保有 憲章丁寧に」とか昨日の今日で気持ち悪いなぁ…

ま、GDPが増えればそれに応じて現金保有残高が増えるとの話は実際のところたいして日本のGDPは増えてないし日本企業に関してはやはり過剰に増やしているとしか言えないんだけどな。

中小企業もコロナ禍という不確実性もあってゼロゼロ融資を増やした結果として実質無借金の会社はコロナ禍前より1割ぐらい減ってはいる(日経記事「東京商工リサーチ、2023年全国「無借金企業」調査の結果を発表」)。

DBJ記事「負債とキャッシュが積み上がる日本企業」にも現金増加分は基本的に負債の増加分で特に中堅以下の会社が現金を増やしているといった話はあるな。

だが特に大企業とか設備投資はほぼ内部留保だけで賄える範囲しかやってない。

失われた30年以前のように設備投資や研究開発費に充てるために借金はマイナス金利を導入したにもかかわらずね。

安全第一といえば安全第一だけどこれじゃあ借金なり増資なりでリスクを負って攻めの投資をやってる外資系には勝てんわな。

ようやくマイナス金利は終了し金利ある世界に戻ったけどまだまだ欧米に比べたら破格の低金利、ほとんどゼロ金利だな。

この水準でも投資の原資に借金は使いません、ウチは実質無借金を継続しますとか吹けば飛ぶような零細企業はともかく大企業だったらものすごいチキン野郎か有望な投資先を見つけられない無能かどっちかだね。

コロナ禍で膨らみ過ぎた現預金については使わないんだったら返済してすっきりしてもらうとして本来なら借金なり増資なり自助努力で資金を調達して設備投資なり研究開発なりして業績を向上させ賃上げをしていくのが筋というものだ。

それを稼いだ分しか投資に回さない、どうしても投資してほしいんだったら法人税減税しろというのはあまりにも虫が良すぎるね。

コロナ禍前には上場企業の実質無借金割合は6割だったな(日経記事「上場企業 実質無借金、6割に迫る 17年度末、好業績で財務改善 手元資金、問われる活用法」)。

中小企業に比べて相対的に財務が盤石な上場企業はコロナ禍後もそこまで大崩れはしていまい。

コロナ禍ですら実質無借金企業は中堅中小も含めて21.6%もあり何だかんだで2.8%しか実質無借金企業は減ってないしな。

実質無借金の上場企業にまで果たして法人税減税をそのままにしておいていいものか。

去年も元気に自社株買いを頑張ってとうとう10兆円台に乗ったけど(日経記事「自社株買い、初の10兆円」)やっぱり現金は余っているようだな。

法人税に関しては中小企業はたいして支払ってないし実質無借金でとにかくリスクをとらない大企業優遇はとてもよくない。

一般国民は奨学金とか住宅ローンとか生活費補填の消費者ローンとか借金で大変なのに消費税とか社会保険料のような逆進性が凶悪な負担を増やして実質無借金の大企業は優遇するとかふざけるなよ。

なぜ借金に苦しむ一般国民が消費税増税で実質無借金の大企業を法人税減税の穴埋めをしなければならないのか。

自助共助公助の原則からすればまず大企業こそ自助努力で投資や賃上げをしなければいけないのにな。

一般国民の生活を犠牲にして貯め込んだカネの使い道とか管理の実態とか借金で困ってる我々負け組にもきっちり説明してほしいし法人税減税で勝ち組大企業は優遇とか我慢ならんね。

コロナ禍のゼロゼロ融資に関してはもちろんきっちり返済してもらいましょうか。

現金に関しては負債による調達も考慮しなければならないとはいえコロナ禍を経てもなお実質無借金の大企業の多さを考えるとやはり経済界、特に大企業は現金を過度に貯め込み過ぎたと言わざるを得ないですね。

実質無借金以外に大企業に関しても持ち合い株だとか本業と関係が薄い投資有価証券に遊休固定資産、賃貸不動産の類をたくさん持ってるんだったらそれも本業への投資や研究開発費に回したり賃上げ原資にしてもらいます。

それでもまだ余ってしまった分についてはもちろん吐き出してもらいましょうね。

いくら業種だとか企業の成長ステージに応じて必要な現金残高は異なるとは言っても実質無借金だったり持ち合い株だとか本業と関係がない余剰資産も処分して借金返済に回せば無借金になるような会社が上場企業の半分という有様ではやはり全体的に経営が非効率過ぎだと言わざるを得ませんし大企業に減税するのは甘やかしすぎです。

これまで優遇し過ぎた法人税減税に関しては廃止して富の再分配を行うべき、自力で借金なり増資なりで資金調達ができる大企業は自助努力で資金調達してもらって法人税減税廃止分は社会保障費なり中低所得層の税と社会保険料負担軽減に充当すべきと言えますね。

 

 

 

 

 

 

1491ページ目 国立大の学費を値上げしろだと?

また三田の偉い人が寝言を言っています。

慶応の伊藤塾長は国公立大の学費を年間100万円値上げしろと言い出しました(FNN記事「【波紋】“国立大の学費を年間100万円値上げ”提案した慶應大学・伊藤公平塾長「学費を払える方には負担をお願いするシステム」」ヤフーニュース)。

大学教育の質を上げるため、国公立と私学の格差をなくすため、との趣旨とのことです。

 

冗談じゃありません。

まず質の強化ですが学費値上げで大学が使えるお金が増えれば設備だとか研究費だとか教職員の給与を増やせるので質の強化につながるように思えます。

しかし大学の質は決して大学側だけの問題ではありません。

基礎学力と学ぶ意欲がある学生が入ってこないと結局大学側の施策についていけない可能性もあるのです。

さすがに一部の私立のFラン大学のように大学生にもなって英語のbe動詞や分数から復習しないと授業にならないとかどうにもなりません。

基礎学力と学ぶ意欲のある学生を確保するには一般入試にしても推薦入試にしても競争倍率を確保しないと厳しいのですが学費が安いから旧帝大以外の国公立も受験生が集まっているのです。

運営が厳しくなった私学が公立大学に転換したら受験生が大勢集まって偏差値が急上昇した事例もありました。

もともとのポテンシャルの高い学生が集まればそれだけ大学側もより高度な教育内容を提供できる、大学の質も上がるでしょう。

 

国公立と私学の格差についても値上げすべきとの理由に挙げていますが国公立の学費を100万円も値上げしてほぼ私学と同等の学費にしようものなら地方の国公立に進学する学生は相当減るでしょうね。

逆に私学は相対的に学費の割高感が薄れて大学全入時代でも受験生を確保しやすくなります。

そういえば私学最難関の慶応の医学部は慶応ブランドだからというだけでなく相対的に他の医科大学より学費が安めだから人気という面もあるのです。

私大医学部は学費が上がるほど偏差値が低くなる傾向があって学費を値下げしたら偏差値が急上昇する事例もあります(AERA記事「医学部の学費安いほど偏差値高い「反比例」の法則 ランキングで検証」)。

三田の偉い人が国公立は学費値上げしろというのは私学への受験生誘導があまりにも露骨すぎて話になりませんね。

そりゃ三田のように裕福な学生ばかり集まっている勝ち組大学は全く痛くもかゆくもない、それどころか早慶と東大京大以外の旧帝大の両方に受かったが学費が安いので旧帝大に進学する学生を奪えますからね。

私学も続々と値上げして国公立だって平成初期に比べたらだいぶ上がって学生だって厳しい、奨学金地獄で大変なことになってますけど学費の安さで優秀な学生の救いになっている国公立の学費まで値上げしたら余計に奨学金返済で苦労する人が増える、借金を抱えて社会に出るとなるとまず借金返済を先にして婚活や子育ては後回しということにもなりかねません。

むしろ教育費はなるべく安くしないと後進が育たないのですが年間100万円、4年間で400万円も値上げなんてどう考えたって無理です無理。

 

まあ東大京旧帝大や国公立医学部など国公立の難関大学関学部に入るには基本的に相当教育費で課金しないといけませんので三田も東大も親の年収は相当高かったりします。

大学の学費だけ無償化したって一般入試を突破できる学力だとか推薦入試を突破できる体験作りだとかはとにかくカネがかかるのです。

子供を難関国公立大に進学させることができるほど裕福な家庭だったら負担能力があるので特に三田と競合する旧帝大の学費は値上げしろと言いたくなる気持ちもわからなくはありません。

ただそれをやってしまうと中間層の子弟だけど難関国公立大に進学する層が非常に苦しくなります。

なのでそこは学費については安くする、かつ、大学の質の強化に必要なお金は大企業だとか富裕層にお願いするのがよいでしょう。

財界には法人税で、高所得層の親に対する所得税社会保険料で応能負担、垂直的公平を重視した課税で調整することです。

大学は無償化して学費を値上げすれば学生と大学は救われますが財源を消費税など逆進性が凶悪な負担に求めるのはかえって少子化が進み大学自身の首を絞めることになるのでやめたほうがいい、学費を払える方に値上げをお願いするということなら直接的な学費値上げでなくともよいのです。

徴収した税金は大学教育の質の拡充なり中低所得層の家庭出身の学生に対する支援に充てるのが妥当です。

私学と国公立の格差に関しても私学は私学で先にやるべきことがあります。

少子化なのに昭和より増加してしまった私立大学の統廃合が必須です。

全国各地の大学に私学助成金をバラまいていますが本来なら余っている大学にまで私学助成金を分配するより需要に見合った私学の数に絞った方が1校あたりの私学助成金は増え大学教育の質の強化ができる、国公立との格差も縮まるはずです。

国公立大の値上げで格差を拡大させるのは断固反対、私学は我田引水の国公立大値上げ要請より先に多すぎる私学の統廃合を進めるべきだと考えます。

 

1490ページ目 GDP5位はインドでなく日本

止まらぬ円安と斜陽化が止まらない日本。

昭和平成では米国に次ぐ世界第2位のGDPを誇る経済大国だったのが失われた30年を経て中国、ドイツに抜かれGDP世界第4位となっています。

しかし凋落は止まらずとうとう来年にはGDPでインドに抜かれ5位になる見通しとなりました(日経記事「インドのGDP来年日本を抜く IMF推計4位、円安で早まる」)。

 

もともと中国もインドも世界人口ランキングでは1位と2位でどちらも14億人です。

日本は11位の1億2千5百万人で10倍以上の差があります。

経済のグローバル化で製造業が中国やインドに工場を設けたりIT産業で米国や欧州、日本等からアウトソーシングを受けたり等々すれば経済成長も加速し流入した外貨で現地の内需も活発化します。

元々人口が多い国ですから中間層が増えればものすごい経済成長のエンジンになるのは想像に難くありません。

日本だって何だかんだで人口のボリュームゾーンである団塊世代団塊ジュニア世代が中間層の生活を送ることで内需を活性化させGDP世界第2位のポジションを長く維持することもできましたからね。

もし仮に日本経済が失われた30年を脱却したとしてもよほどのことがない限り中国とインドに追い付くことはできないでしょう。

というか歴史的には中国もインドも世界帝国でしたし明治維新以前は日本の方がはるかに格下でした。

中国はバブル崩壊と日本以上の少子高齢化及び若者世代の就職難もあってどうなるかわからない、インドも格差が大きすぎて中間層がどれだけ増えるかは未知数な面もあります。

戦争だとか内乱でも発生して国家分裂とかあればまた話は変わってくるかもしれませんがさすがにそんなことはないんじゃないかと思いますね。

 

2024年時点でGDPは1位米国28兆ドル、2位中国18兆ドル、3位ドイツ4兆5千億ドル、4位日本4兆1千億ドル、5位インド3兆9千億ドル、6位英国3兆4千億ドル、7位フランス3兆1千億ドル、8位ブラジル2兆3千億ドル、9位イタリア2兆3千億ドル、10位カナダ2兆2千億ドル(千億ドル未満切り捨て)となっています。

円相場が1ドル100円から150円に下落すればGDPもドル建てなら3分の2になる、1ドル100円まで戻ればまた6兆ドルぐらいの水準まで戻る可能性もなくはないです。

実際2012年時点のGDPは米国16兆ドル、中国8兆ドル、日本6兆ドルでしたし。

もっとも為替相場以前に中国もインドも10年前より素の実力が強化されてますから再び追い抜くのはやはり難しそうですが同じく少子高齢化で産業構造も類似点があるドイツに追い付き追い越すぐらいはできないものか。

人口8000万人で日本の3分の2しかないドイツに負けてるのはかなり不味いです。

出生率に関してはドイツの方が日本より上ですがこれは移民が押し上げている面がありますので単純にドイツと同じことをすれば勝てるというわけでもありません。

まあ富裕層でさえ政府の意向次第で一瞬で抹殺されたり若者の職がない中国からの移民を日本に呼び寄せることができれば人口に関しては幾ばくかの下支えになるかもしれませんけど中国だって少子化ですし日本に移住してきて出産子育てするかどうかは未知数です。

 

かなり残念な状況で再び日を召すことが出来るかと言うとやはり難しいものがあります。

過去の失敗を悔いても仕方がない面はあるとはいえ失われた30年における政財官の無為無策ぶりが悔やまれます。

80年周期説の話も以前にしましたがGDP5位転落でこれも太平洋戦争以来の経済敗戦と言えるかもしれませんね。

 

太平洋戦争敗北時には東久邇稔彦が「「一億総懺悔」を説いています。

敗戦は政府の政策もよくなかったが、国民の道義がすたれたのも原因であるから、軍官民、国民全体が徹底的に反省し懺悔しなければならない」と言うお話です。
ああこういう人がトップになるような国だから日本は負けたんだなと。

一応この人はこの人で戦争回避に尽力はしたし陸軍の横暴に手を焼いていたらしいですがさすがに一般国民にも責任をかぶせてみんな悪かったということで責任を有耶無耶にするのは大問題です。

戦時中だって軍部の横暴に抗議して特高に捕まって拷問されたり獄死した人もいました。

みんながみんな時代の空気に流されたわけじゃなくきちんと声を上げた人もいたんです。

そういう人まで免責されないというのもいかがなものか。

赤紙で徴兵されて無謀な作戦でも逃げずに戦いお亡くなりになった兵隊さんも大勢いるし残された家族だってさんざんな苦労をしたんです。

この人たちは軍部の作戦だとか政府の外交経済政策が間違っていたとしてもどうすることもできず特高による弾圧も考えると不可抗力な面が否定できません。

そういう人にまで戦争はお前たち一般国民の責任だとか言うのか。

ふざけるなよ東久邇稔彦、お前ら戦時中でも腹一杯食えた上級国民こそ責任をとれ!と思った人は当時もさぞ多かったことでしょう。

 

日鉄の三村君が失われた30年は国民の責任だといった趣旨の話をしていた件は以前にも取り上げましたが今も昔も一般国民は自己責任、上級国民は無責任なのは変わらないようです。

敗戦国家や斜陽の会社など上手くいっていない組織の偉い人ほど本人自身の自己責任だけは徹底的に否定し責任転嫁する、他責傾向があるものですがこういう無責任な人がトップになることが敗戦だとか失われた30年の原因だったのではないかと思えてきます。

「も」ってなんだよ「も」って。
私「も」悪かった、とか我々負け組を不十分な賃金でさんざんこきつかっておきながら働きが悪かったので一般国民も悪いとかなんだそりゃ。

みんな「も」悪い、国民全体が悪いとか意思決定権限を持つ偉い人が責任の所在を曖昧にする発言をし出したらそれは滅亡フラグです。

保身を最優先にする人が責任追及されたくないために予防線を張って「私は悪くない」と言っているのと同じ事、「私も悪かったけどお前も悪い、だから私を処分するのは間違っている」という意味になるわけで責任回避の言い訳そのものです。

言い方が大事なんて話もありますけど「私は悪くない」をどう言い換えたって無責任であることには変わりなくむしろ言い方を変えて誤魔化すところがより悪質です。

いざという時に責任を取れない人が指揮をとったって勝てるはずがありません。

偉い人が他責思考の会社も国も負けるべくして負けるのです。

 

日鉄名古屋製鉄所では2000年代以降から近年に至るまで深刻な事故が相次いでいますが日経私の履歴書でも2003年の爆発事故の件は取り扱ってましたね。

その後も2014年にも1年で5回も事故があったし(東洋経済記事「新日鉄住金、報告書に浮かぶ連続事故の真因」)2023年にも死亡事故が起きています(中日ビズ記事「工場作業員 挟まれ死亡 東海市の日本製鉄名古屋製鉄所内」)。

まともな資料を提示しても26回も値上げ要請を拒むほど理不尽というかサイコパストヨタのコストカットに巻き込まれて名古屋製鉄所も安全無視の「トヨタ生産方式」に染まっていったんだろうけどそういう他社の悪い企業文化に流されないような企業文化をきちんと構築できたのか?

三村君は2003年の事故について若い奴らがコストカット優先で安全を疎かにした的なことを言っていますがそもそも2000年代だったら氷河期世代は塗炭の苦しみで就活してたし新人で工場のあれこれを指図できる立場や裁量を有していません。
三村君の下の世代、当時は中堅世代で今は経営者世代になった新人類世代の管理が悪かったとしか思えないんですよ。

別の会社だけど創業以来の大赤字になった住友化学の十倉君とかも新人類世代ですしこの新人類世代はかなりダメな奴らなんじゃないかという気もしなくはないんですけどね。
というかリストラしまくったのは三村君たち焼け跡世代とかその下の団塊世代じゃないか!失敗を若い世代のせいにして私は悪くないとかふざけるなよ。

どうせ三村君はとにかく出世したい、経団連会長の椅子に座りたかったしそれ以外興味なかったんだろうけど全く反省してなさそうです。
東芝の西室君みたいに経団連会長になりたかったからずっと財界引退しなかったんでしょう。
社内じゃあ神様みたいな扱いなんだろうけどとんでもない!

 

偉い人ほど責任を認めて謝罪することは少なくなりますが偉くても偉くなくてもダメなものはダメです。

失敗したらきちんと謝罪してけじめをつけなければなりません。

過去にも偉い人が謝罪して話題になった事例もあるにはあります。

山一證券倒産の一件とかね。

バブル崩壊後の4大証券の一角が倒産した話は山拓ショックとして社会に衝撃を与えたのを思い出します。

山一証券はろくでもない会社だったし涙の社長会見とか泣くぐらいだったら粉飾とか飛ばしとかすんなよと思ったものですがそれでも「社員は悪くありません、全て経営者の責任です」と認めてはいます。
経営者だったら潔く経営責任は認めないとな。
一般社員とか負け組ほど選択肢が少ない、意思決定の裁量が小さかったり経営資源の制約で不自由だったりしますがそうでない経営者が経営責任を認めないのはあり得ないです。

清水宗治浅井長政のように城主は切腹するので一般兵士や女房子供は助けてくださいと敗戦の責任をとった武将もいて日本では古来から将軍に対して潔さを求める人がいるものです。

失われた30年でさんざんな経営をやって取引先も社員も疲弊させておきながらみんなが悪い、私だけに責任を押し付けるなという姿勢は大変見苦しいです。

そういう人が政財官の重要なポジションに居座る限り失われた30年は続く、もしかするとGDPだってインドだけでなく英国やフランスにも抜かれる日がやってくるかもしれません。

太平洋戦争敗戦時には一億総ざんげで国民も悪いという話についてGHQのみならず一般国民からも反発の声が上がりましたがその後、東京裁判で当時の偉い人は裁かれました。

これもBC級戦犯の取り扱いだとか裁判の進め方だとか異論も出てきますし結局逃げ切った戦犯や戦犯にすらならなかった者たちもいて不完全な代物ではありました。

ただ無謀な戦争を指揮して私腹を肥やしながら逃げ切る姿勢はさすがに看過できないしそういう人が敗戦後も要職に引き続き居座るのは戦後復興の障害になります。

公職追放に関しても別の人材に入れ替える、思想云々以前にこの人たちの無能さゆえに敗戦に至ったことを考えると有能な人材にチャンスを与え組織の新陳代謝を活性化させるという点で戦後復興の一助になったのではないかと思います。

采配は責任をとる人、有能な人が取るべきものです。

三村君や十倉君のような無責任で無能な人に指揮を任せたら滅亡必至です。

失われた30年脱却のため東京裁判公職追放をやれと言うのもどうなのかとは思いますが偉い人が責任をとって失敗のけじめをつける、既得権益を貪る無能な人を取り換えて別の有能な人にチャンスを与えるのは太平洋戦争敗戦処理時だけに限らず古今東西で王朝の交代時に行われています。

まずは信賞必罰の徹底と人材の新陳代謝が必要、それをしない限りは斜陽が続く、失われた40年もあり得るんじゃないかなと思います。

 

 

 

1489ページ目 ペンタスとガーデンシクラメン、夏と冬の同居

ペンタスとガーデンシクラメンです。

基本的にペンタスは5月から11月、ガーデンシクラメンは10月から4月に咲きます。

このところ暖かいですしペンタスはもう咲き始めてもおかしくないしガーデンシクラメンも暑さに耐えて頑張って咲くこともあるので花期がちょうど重なることもありますかね。

といっても冬越し夏越しのためエアコンが効いた室内に入れたら冬もペンタスが咲き夏もガーデンシクラメンが咲くこともあり得ますがね。

冬と夏が同居する春ですが外に出して置いたガーデンシクラメンはさすがに暑さで葉っぱが柔らかくなってきました。

窓際に取り込んで直射日光は避けることにします。

さて入れ替わりに窓際に置いてあるペンタスを外に出そうかと思ったのですがやはりしばらく様子見です。

4月に外に出したら夜の寒さに耐えきれず初代が枯れてしまったんですよね。

もっと大きくこんもりしてたんですけど枯れてしまい夏になっても復活できませんでした。

ただ初代がつけた種が別の鉢に零れ落ちたのが発芽して2代目も花を咲かせてくれました。

せっかく咲いてくれたので今度は枯らしてしまわないようもうしばらくは室内に置いて5月6月ごろになったら外に出そうかと思います。

 

 

1488ページ目 イスラエル、イランに報復の報復?

イスラエルがイランにミサイル攻撃を行ったそうです(日経記事「イラン領内 複数の爆発 現地報道 イスラエル報復か」)。

なお今のところイスラエル政府とイラン政府からはイスラエルによる報復攻撃か否かについて公式発表がなく状況がどうなっているのか不明です。

 

ただ米国のABCニュースによると米国政府がイスラエルのミサイルがイランに着弾したことを認めたと言った報道があります。

またイスラエルはただちに報復はしないと言いつつ米国に報復を事前通告したとの話もあります(朝日新聞記事「イスラエル、イランにミサイル攻撃 米側に事前通告と報道」)。

イスラエル以外にもシーア派イスラム教徒が中心のイランはスンニ派系過激派テロ組織のイスラム国と敵対しておりイスラム国の残党が暴れた可能性も考えられなくもないですがイランにミサイル攻撃をするような国、できる国、為政者が報復したいと思っていそうな国といえば状況的にイスラエルしかありません。

やはりイスラエルが報復の報復を行ったのでしょうか。

 

イスラエルによる報復が事実なら報復の報復の報復で戦争が発生する可能性も否定できません。

イスラエルによるシリアのイラン大使館空爆が4月1日、それに対するイランによる報復でイスラエル領内にドローン攻撃が行われたのが4月13日、このイランによる報復に対する報復として行われたのが4月19日のイスラエルによるイラン領内の空港や軍事施設及び核施設に対するミサイル攻撃ということになります。

そしてイランは4月13日に行った報復攻撃についてイスラエルが報復の報復を行った場合は大規模な報復を行うと言っています(毎日新聞記事「「問題はこれで終わった」 イラン代表部、攻撃は今回限りと示唆」)。

イスラエルが再び過ちを犯せば、イランの対応はかなり厳しいものになるだろう」とのことですが一週間も経たずに報復の報復が行われたわけですからメンツにかけてイランは報復の報復の報復を行うかもしれません。

 

報復の報復の報復の…と続いていくと幕引きが見えなくなりますがイスラエル国民もそれを分かっていたからイランに対する報復に反対する声が多かったのでしょうが(朝日新聞記事「「同盟損なうなら反対」74% イランへ報復、割れるイスラエル世論」為政者がゴリゴリの右派ではどうにもなりませんね。

「わからない」も除いたら報復すべきと考える人は26%未満になりますがこの4分の1未満の右派が岩盤支持層だったりカネをたくさん持っている人だったとしたら民意をねじまげ国際社会の報復自制の声をふりきって早期の報復を行うこともありうるでしょうね。

 

本当の本当に核施設を狙ったということであればとんでもない暴挙ですが第三次世界大戦勃発なんて冗談じゃありません。

両国には強く自制を促す必要があると言えます。

とはいえ宗教が関係してくると誰が何を言っても無理、イスラエルとイランは不倶戴天で双方が無視できないほど多大な被害を受けて当分他国に攻撃できないほど疲弊しない限り止まらない可能性もあり得ます。

こうなってくると巻き添えを食らうリスクを避けるぐらいしか自衛手段はありません。

 

そもそもの発端はイスラエルによるシリア国内のイラン大使館空爆が原因でした。

隣国への攻撃に加えて他国の大使館を攻撃すること自体あり得ないです。

イスラエルとイランは間にイラクとシリアを挟んでいてイスラエル陸軍とイラン陸軍が直接干戈を交える可能性は現状ではそこまで高くないかもしれません。

ただしクルド人武装勢力が猛威をふるい無政府状態になっているイラク北部でクルド人武装勢力と話をつける、かつ実際に空爆を受けたシリアと共同戦線をとるならばイランVSイスラエルの戦車部隊が衝突する可能性もゼロではないですが。

報復合戦は基本的に空軍、ミサイルやドローン攻撃の応酬だとか双方が敵国内に侵入させた工作員によるテロ攻撃がメインとなってきますが怖いのはイランとイスラエルだけでなく第三国で双方の大使館その他関係施設だとか要人に対するテロです。

シリアはイランと緊密だったから攻撃されましたが双方が双方の敵国に親密だと判断された第三国はテロ対象となり得るし軍ではなく右派の狂信者が勝手にテロに動くとも限りません。

大丈夫なんですかねパリ五輪とか大阪万博は。

五輪は平和の祭典だし戦争中の国家の参加はお断りすべき、万博にしたって「いのち輝く未来社会のデザイン」を理念に謳ってますし命の輝きを奪う戦争を行う人たちが参加するのは不適切です。

パリ五輪と大阪万博にはイスラエルとイランの双方が参加予定となっていますがロシアを出禁にした件と整合性もとれません。

政府はイスラエルをロシアと同列に扱うべきでないと言っていますが(毎日新聞記事「自見氏、イスラエルの万博参加に前向き 「ロシアと同列に扱えず」」さすがに先に手を出した挙句に国際社会の制止を無視して報復の報復を行うような極めて野蛮な国に何もペナルティを科さないというのもおかしな話です。

ロシア同様人類に対する暴挙は看過できません。

というか万が一にも爆破テロでイランやイスラエルの選手やパビリオンの近くにいた第三国の一般人が犠牲になったらどうするのか。

第三国の一般人が犠牲になったとしてもそれは聖戦なので仕方がない、尊い犠牲になった方々は天国に行けるだろうと本気で考えるような危ない人たちには何を言っても無駄です。

何せ教義のためなら戦争すら厭わない何でもする人たちですから用心に用心を重ねざるを得ないのです。

私はカネもないので五輪にも万博にも行きませんがイスラエルとイランの関係を考えると当面の間、両国の関係者だとか関係施設にはよほどの事情がない限り近づかないのがよさそうです。

とにかくイスラエルとイランの報復合戦が激化し第三次世界大戦に発展しないことを祈るばかりです…

 

 

 

 

 

 

1487ページ目 写本で重文、原本なら国宝?

春にしては暑い日が続きますがそろそろ桜も散る時期になりました。

綺麗なんだしもっと長く咲いていればいいのにと思う人は昔からいて「花ちらす 風のやどりは たれかしる 我にをしへよ 行きてうらみむ」(素性法師)と詠む和歌があります。

桜を散らす風がどこから吹いてくるか誰か知ってるか?もし知ってたら教えて、文句言ってやる!的な感じの意味になります。

ただその一方で桜は潔く散るからこそ価値があるし散らない桜というのもまた興ざめだといった話も昔からあるものです。

「のこりなく ちるぞめでたき 桜花 ありて世の中 はてのうければ」(読み人知らず)と詠む和歌があって意味は桜はきれいさっぱり散ってしまうからよい、もし散らずにずっと咲き続けたら嫌になってしまうという意味です。

まあたしかに春夏秋冬ずっと咲き続けていたら目が疲れそうですね。

散った桜の花びらって掃除が大変だったりしますが春以外の季節も新たにつぼみを付けて咲くとしたらけっこう手間です。

 

今回取り上げた和歌ですがどっちも出典は古今和歌集です。

平安時代に選りすぐりの名歌を勅撰和歌集として編纂したもので1000年以上にわたって詠み継がれています。

平安時代から現代まで様々な文学者による解説や注釈もあって新古今和歌集を編纂した藤原定家古今和歌集の注釈書を執筆しています。

まあ「新」を編纂するぐらいですから元祖の古今和歌集の方もきっちり読み込むでしょうね。

さてその注釈書の原本が藤原定家の子孫である冷泉家の蔵から発見されました(毎日新聞記事「藤原定家直筆の「古今和歌集」注釈書を発見 専門家「国宝に値」」ヤフーニュース)。

写本が国の重要文化財に指定されるほど貴重なのですが藤原定家執筆の原本は長らく行方不明だったのです。

京都も応仁の乱明治維新の混乱があって重要な書物類が焼失することもよくある話ですからもう出てこないと多くの人が思っていたことでしょうね。

蔵の中で130年間ずっと眠っていたそうですが130年前というと1894年、明治時代で日清戦争をやっていたあたりでしょうか。

太平洋戦争敗北やバブル崩壊の混乱も失われた30年もずーーーーっと蔵の中に保管されっぱなしというのも感慨深いものがあります。

たしかに写本ですら重文なら原本は国宝に指定しないとバランスがとれませんね。

藤原定家本人の筆跡で紙も平安時代末期から鎌倉時代初期の藤原定家が生きていた時代のもので原本であるのは確実とのことです。

しかも本人が文章を推敲した形跡まで残されていて文章の訂正箇所だとか付箋の跡もしっかり残っているそうな。

当時は消しゴムや鉛筆なんて便利なものはありませんでしたし書き損じとかもありそうですがさぞや大変だったでしょうね。

墨に和紙ですから間違ったら余白に正しい内容を書いて訂正したり書き損じた箇所に付箋を貼って正しい内容を書き直したり色々面倒です。

900年前の書物が残っている、伝説級の歌人直筆という点でも十分国宝に値しますが本人の苦心惨憺の形跡まで残っているとなるとこれはすごいことです。

 

生原稿を残した藤原定家さん、かなり激情家でプライドが高く人を見下すかなり面倒な人だったようですが一方で相手が身分の高い格上の相手でも忖度しない人だったようです。

偉い人の勘気を被って謹慎を命じられたこともあったそうですが訂正した箇所の訂正する前はいったい何が書いてあったんでしょうね。

けっこう物騒な事がさらっと書いてあったりしてね。

そのあたりも現代の科学だったら付箋の下に何を書いたのかもX線か何かで墨を分析して書いた内容を特定できるかもしれませんが900年後に推敲前の内容まであれこれ研究される件について本人だったらどう思うでしょうね。

まあ死んだ後のことなんぞ知るか!と思う人もいますが定家さんの場合は明月記という日記を実に56年間も続けています。

そんな年数ブログで継続している人なんて見たことないです。

といってもブログは2000年前後に登場したサービスで50年どころか30年も経っていないので当然と言えば当然ですが。

藤原実資さんの小右記も後世に当時の有職故実を伝える貴重な資料、意思決定だとか儀式典礼祭祀など各種業務執行の際の前例としての価値があったわけですが実資さんと同じく定家さんも子孫のために当時の有職故実を日記として残したとの話もあります。

死後に本人の文章が広く伝わることは想定していたと考えるのが自然でしょうね。

しかし見られるのは身内だとか一部の弟子限定だと思っていた、原本があまりにも貴重過ぎて四散して他家の家宝にされてしまうことだとか訂正箇所まで研究されることまではさすがに想定していなかったはず。

もし本人が生きていたとしたら手間がかかっても別の紙に書き直した、見られたくない訂正箇所満載の原本に関しては死ぬ前にきっちり焼却処分して祐筆に書かせた写本しか残さなかったかもしれません。

大臣には届かなかったとはいえ正三位中納言、立派な公卿、雲の上の人ですし祐筆も紙も墨も十分用意できたでしょうにね。

全く死んだ後も油断できないものです。

 

まあ定家さんみたいなものすごい伝説級の文化人でなくても身内や弟子だとかに日記の類だとか文書類を残していくのであれば訂正箇所に関しても探られる可能性もないとも言い切れないですね。

作家や漫画家だったら未発表原稿が残ってないかだとか一般人でも何も遺産の処分について生前に話すことがなかったが遺言らしきものが残っていないかとか伝統芸能関係で口伝だけでは心配だったので何か文章の形で重要なノウハウの類が残っていないかとか色々ですかね。

残すものはちゃんと残すとして後世に残して不特定多数の誰かに見られても恥ずかしくないか。

PCで下書きを残すんだったらその下書きは読まれても問題ない内容か。

自分でも存在を忘れているような文章類は残ってないか。

紙で残すんだったら訂正箇所だとか消しゴムで消した跡だとかも調べられてあれこれ想像される、邪推されるリスクも考えておくのもいいかもしれないですね。

 

ああめんどくさい、そういうのも色々考えた末に全部ちゃんとやったらきりがないので清書せず推敲跡が伝わってくる原本が残ってしまったのかもしれませんね。