1506ページ目 フランス、プーチン大統領就任式出席へ

ロシアのプーチン大統領の大統領就任式が開催されます。

米国やEUの多くの国が欠席を表明していますがフランスは駐ロシア大使が大統領就任式に出席するようです(ロイター記事「プーチン大統領就任式、EU加盟国の大半が欠席へ 仏は代表派遣」ヤフーニュース)。

 

フランスは伝統的にロシアと関係が深いです。

ナポレオンのロシア侵攻はありましたがドイツ帝国ナチスドイツと戦った点で共通しています。

フランスとロシアは宗教(カトリックロシア正教)も政治体制(民主主義と独裁主義)も異なりますが敵の敵は味方です。

地理的にも離れており間にドイツという強国がありますので兵法三十六計のいう「遠交近攻」戦略をフランスとロシアの両国は取っているんでしょうね。

ウクライナ問題を巡っても旧西側と旧東側が対立していますが旧西側のフランスはロシアと完全に対立するわけでもなく和平に向けた交渉でロシア側に接触しています。

 

プーチン大統領は選挙で再任するにあたって一般国民に圧力をかけています(読売新聞記事「ロシア大統領選で初の電子投票、追跡可能で圧力か…一方的に併合のウクライナ4州では投票を強制」)。

こんなもん公正な選挙とは認められずプーチン大統領はロシアの大統領として認められません。

そんな偽りの君主の就任式に代表を送るのはプーチン大統領の正当性を補強することにもつながりかねない点で問題と言えます。

日本はどうするのか知りませんがプーチン大統領の就任式には出席しない方がよいのではないか?

いやそれ以前にロシアが岸田上等兵以下日本政府や経済界の要人を入国禁止にした件はどうなったのか(読売新聞記事「ロシアが入国禁止にした日本人、全63人リスト…批判強める日本政府」)。

現在も入国禁止措置が継続しているならまずこれを解除してからでないと日本政府関係者にロシア大統領就任式出席を要請したところで出席しようがないのですが。

ロシア側が旧西側を拒絶しているわけですしロシア大統領就任式に出席しろと言われてもそれは無理なんじゃないかと。

 

そんな中でもフランスは代表を出しています。

大統領就任式に代表を出して一応花を持たせてやるけどウクライナとの和平交渉についても話をしようか、ビジネスその他の話でも他の西側諸国、特にドイツ関係よりフランスを優遇しろよな、ということなんでしょうね。

 

そういえば岸田上等兵のフランス訪問のすぐ後で中国の習近平がフランスを訪問しマクロン大統領と会談しています(産経新聞記事「フランス「独自外交」で中国に接近、取り込まれる懸念 ウクライナ仲介役も期待」)。

ここもまたきな臭いことになっていますが日本と中国を天秤にかけるだけでなく中国の台湾侵攻があった場合に備えて中国と関係を深めウクライナ侵攻と同じく台湾侵攻でも旧西側の仲介役として動く地ならしをしているのではないかと思わなくもありません。

そういえば台湾はフランスからミラージュ戦闘機を購入し最近でもフリゲート艦の部品を購入していましたね(フォーカス台湾記事「台湾、フランスからフリゲート艦の部品購入へ 総額115億円規模」ヤフーニュース)。

台湾とも兵器類の取引を通じて関係があり台湾軍の軍事機密も握っている状態ですし台湾側も中国と戦争中であったとしてもフランスからの和平交渉呼びかけがあった場合は無下にはできないでしょうね。

 

対ロシア、対中国といいフランスは油断ならないものがあります。

イソップ童話の蝙蝠の話を思い出しました。

鳥とケモノが争っている際に鳥が優勢の時はコウモリは自分は翼があるから鳥の仲間だと言って鳥側につきケモノが優勢になった時は全身に毛が生えているからケモノの仲間だと言ってケモノ側につきました。

もちろんそんな都合のいい話が通るはずがなく鳥とケモノの争いが終結した際には翼があるのでケモノの仲間でなく全身に毛が生えているので鳥の仲間でないどっちつかずの存在と認識され仲間外れにされましたというオチのお話です。

どっちつかずの外交をやっていたらいずれ誰からも相手にされなくなるんじゃないかと思わなくもないのですが困ったことにフランスの場合はそう単純な話でもありません。

 

大国が本気を出せば小狡くどっちつかずの態度で日和見する小国は攻め落とされます。

ただしそれは相手が小国だった場合の話です。

フランスは五大常任理事国の一角で核兵器もあるし兵器類も独自開発できるし旧植民地時代からのネットワークと現地にある豊富な資源も活用できるし小国どころか世界屈指の大国です。

EUからイギリスが離脱しましたがEU内で核兵器を持っているのはフランスだけということになります。

経済面ではドイツが最大ですが軍事力や旧植民地ネットワークを通じた資源調達力も考えるとドイツがEUの盟主というわけでもないのです。

米国、中国に並ぶ第三極としてのEUを完全に主導するには至らずとも大国が本気で潰しにかかってきたとしてもそう易々と潰されるような国ではありません。

地力があるのをよく理解しているから独自の外交を志向する、歴史的にもフランスの絶対王政の時代だとかヨーロッパ全土を制圧した帝政ナポレオン時代、第二次世界大戦前の列強の一角としての帝国主義時代のプライドもあって米英の思惑通りに流されたくない、米国はフランスが独立を支援してやったから独立した国だし英国は共和制ローマ以前からの不倶戴天の敵だしフランスはフランスで独自の道を歩みたいと思っているのではないかという気もします。

 

まあ何にせよフランスが油断ならない、かつ、侮れない存在なのは間違いありません。

日本とは密接な関係とまでは言えないですが十分気を付けなければならない相手と言えそうですね。