1515ページ目 学費の値上げは本当に質の向上に貢献するか?

東大が学費を年間10万円値上げすることを検討しています(日経記事「東大授業料上げ検討、他大へ波及も 競争力低下に危機感」)。

値上げした場合、授業料だけで年間約65万円になります。

授業料値上げで人件費や研究費、施設費に充当するとのことです。

 

つい先日も三田の塾長が国立大学の学費は150万円値上げすべきだと言っていますがそういうことでしたか。

実は三田の上級国民と本郷の上級国民はグルで三田の塾長が国立大学が値上げに動く空気を作るために敢えて炎上発言をしたんじゃないかと思えてきます。

少子化支援金を原資にした児童手当を早速利権団体が分捕りに来ましたね。

少子化対策自体が育児世帯にばかり極端に偏った制度で少子化対策としてはむしろ逆効果になるのですが育児世帯も結局毟り取られることになるようです。

ゼロサムゲームの日本ですから誰も彼もが生き延びるためにカネの奪い合いをして結局全体のパイは縮小していくんでしょうね。

 

他の国立大学が追随するかどうかは不明ですが自民党も国立大学の学費値上げを容認する提言を出しています(毎日新聞記事「「国立大は適正な授業料を」値上げも視野に 自民党調査会が提言」)。

定員割れ私学については再編を促しつつも大学の質を強化し国際競争力を確保するため値上げも視野に入れるべきではないかとの話です。

選挙も今年か来年にありますからね。

自民党の柴山さんという人は清和会の裏金議員の一人で元文部科学大臣という典型的な教育利権政治家ですが大学関係者からの固定票を期待しているのかもしれませんね。

 

大学だって大変です。

インフレですから賃上げしなければなりませんし非正規講師の処遇改善もあります。

かつてのように大教室で授業するスタイルでなく中小規模の教室で少人数教育をするとなると手間もかかります。

他にも実験に必要な資材の類だとか建物の耐震工事など必要な出費はたくさんあります。

大学も一部の有名大学を除きそんなに余裕があるわけではありません。

 

ただその一方で値上げが本当に質の強化につながるかというと疑問です。

むしろ学費を安くした方が優秀な学生が集まるだけでなくその優秀な学生が自校の大学院に進学し優秀な研究者になっている可能性もあります。

実際、医学部受験マニュアルの医学部学費ランキングを参照すると学費が安い大学には順天堂大学や慶応大学といった研究面でも優れた実績がある大学が入っています。

一方で学費の高さでワーストワンは東京女子医科大学です。

なんと4600万円もしますが慶応大学は2200万円です。

実に二倍以上ですけど東京女子医科大学と言えばガバナンスが大混乱で現場もとんでもないことになっています。

いくら値上げしても大学関係者が私利私欲でお金を浪費できるようなガバナンスでは大学の質の強化には貢献しません。

私立でも国立でも色々とガバナンスに問題がありますが値上げの前にまずガバナンス強化が必須なのです。

 

東洋経済記事「安すぎる大学の学費により日本社会が失ったもの」といった記事もあり海外の大学は学費が高く日本も教育の質を強化するため学費を値上げすべきだと言っています。

たしかにハーバード大学は国際的にも最上位の評価を受ける大学で学費も世界最高水準です。

しかし今の日本の大学が値上げしても果たして質の強化につながるのか?

米国の大学は自国民だけでなく世界中から優秀な人材及び親が大金持ちの子弟を集めていますがそのコネクションで現在の世界的な地位を維持している面もあります。

値上げしたら東大に優秀な留学生が来るかどうかは不明ですしそもそも日本自体が落ち目なので私立高御三家からは東大でなく海外の大学を目指す学生もいるほどです。

魅力がないのに値上げしたって受け入れられるわけがないのです。

 

まあそれでも東大については国内最高峰ということで値上げしても入りたい学生は少なくないでしょう。

昔だったらノーベル賞受賞者を多数輩出した京大が東大の対抗馬になったんでしょうが今はどうなんでしょうね。

学費が安いなら東大より京大に行く、東大京大以外の旧帝大間でもコスパを追求するならやはり学費の安さが大事になってきますし良心的な学費の大学が選ばれるかもしれませんね。

それを察しているから大学関係者は今のところ様子見をしているのでしょう。

まあ首都圏の国立大学や東大京大以外の旧帝大と競合する三田は学費値上げを主張していますが。

 

大学自身にとっても学費の値上げは諸刃の剣です。

ハーバードだって高額な学費だけで大学に必要な予算を賄っているわけではありません。

学費の高さだけに着目していますが投資や寄付金で巨額の資金を調達している点が説明されていないのはフェアではないですね日沖さん。

フォーブス記事「ハーバードが1300億円で1位、寄付額が多い米大学ランキング」もありますけど東大はこれまでの入金総額41億円に留まっています。

東大といえば10年間で10億円以上の報酬を受け取った住友化学の十倉会長の出身校ですけど功成り名を遂げた人から寄付金を集めるべきではないか?

そもそも学費は薬と同じく薬効に基づいて支払うのが妥当ではないか?

教育の効果は人それぞれですがまったく稼げない人もいれば青天井でぼろ儲けする人もいます。

応能負担で学費を負担して貰うべきですけど同時に応益負担の考え方からしてもより大きな効用を得た人がより多く負担すべきではないかと思うのです。

 

投資の面でもハーバード大学は巨額の利益を出していますが日本の大学は立ち遅れています。

プロが資金運用しているだけでなく特許の類も上手くビジネスにつなげていますが産学の連携が上手くいっていない日本の課題でもあります。

そして相乗効果で企業との連携が大学の研究力の高さに貢献していることも考えるとやはり質の向上のため優先的に取り組むべきなのは学費値上げではありません。

 

自助共助公助の順番からすればまず大学は自助努力を徹底すべき、学費値上げより出世した卒業生たちからの寄付金受け入れや資金運用の効率化と産学連携を強化すべきと考えます。