1601ページ目 日本私立大学連盟による国立大学の授業料に関する提言について

日経記事「国立大学授業料、自由化を 教育国債、2兆円規模で」は確認しました。

教育国債発行は検討する価値があります。

しかし国立大学の学費値上げは断固反対です。

但し上方向の学費設定の自由化でなく下方向の学費設定の自由化、学費値下げは実施しても問題ありません。

 

私大連は国立大の学費が私大より安く国立大学生は優遇されており不公平だと主張していますが国立大の入試は共通テストと大学個別の2次試験があり6教科8科目が原則である一方、私大入試は極端な所だと1科目や2科目だけ済みます。

だいたい英語と国語、英語と数学、英語と小論文のパターンが多いですが中には得意科目1科目だけでOKというところもありました。

「1科目で受験できる大学」で検索すると色々出てきます。

青学とか英語だけでOKの学科もありましたけど英語しかできない人とか大丈夫ですかね?

文学をやるんだったら歴史の素養だとか英語以前に国語の素養もしっかり身に着けておかないと伸び悩むと思うんですがね。

授業料が安いからこそ毎年多くの学生が文系も理系の科目を学び理系も文系の科目を学んで総合力が必要な国立大学を志望しています。

授業料が私大と同等になればコスパ最優先で入試に不要な科目を捨てる学生が増え数学の素養が無くエビデンスに基づく意思決定ができない為政者や経営者や管理職、歴史の素養がなく諸外国のエリートと渡り合えぬ為政者や経営者や管理職が増えるリスクがあります。

社内政治で出世するのにそういうのはそんなに必要でなかったとしても問題は出世した後です。

宦官とかコミュ力だったら名だたる将軍や大臣より上だったとしても所詮はコミュ力だけの人だったので国ごと傾きます。

会社だって同じことなのです。

奨学金を充実させ低所得層を救済すべきとの意見も高所得層であっても住宅ローンや親の介護費用で子供の学費に手が回らない世帯もあるのです。

 

ん?なんで市ヶ谷体育大学卒の私が国立大擁護をするかって?

いえね、昔予備校時代に一ノ瀬君(仮名)という同じ中学出身の同級生がいましてね。

彼は私と同じく数少ない世界史選択組でしたけど数学も理科もきっちりできる人でした。

総合力で彼の方が私より成績はよかったですし私が得意な世界史の成績だって一度も彼を上回ることはできなかったですね。

もちろん英語もできる人です。

しかも彼は高校時代にはバスケ部のレギュラーでもありました。

んで彼は結局静岡大に進学しましたが合格祝賀会での一言が今でも心に残ってます。

「俺もマーチ行きたかったな」と。

実際彼だったら余裕だったでしょうね。

けど親同士がPTAで一緒に働く機会があった縁で母から一ノ瀬君ちは家を買ったという話を聞いた覚えがあります。

当時の住宅ローンとかかなりキツイ状況でしたし不況でボーナスどころか賃上げも期待できない状況でしたし一ノ瀬君から上述の一言を聞いて察しがつきました。

同じ中学でも私も彼に話しかけないし彼も私に話しかけず予備校では特に会話とかはなかったので、いやだからこそ合格祝賀会において予備校時代にほとんど唯一といっていいほどの言葉を交わした機会での一言が余計に心に残ってしまったわけです。

こっちも毎日最終バスの時間まで予備校の自習室で勉強しているのにちっとも一ノ瀬君に成績で追いつけず彼とは会話する気になれなかったのですがもしかしたら一ノ瀬君もマーチ含む東京の私大が本命の私に思うところがあったんじゃないかと思ったわけです。

まあ公認会計士試験だったら当時は早慶や明中法といった私大が強かったので(もちろん東大とか一橋とか横浜国立とかも強かったですけど私の成績では難関過ぎて一浪でも届かないレベルでした)当時から公認会計士を目指していた私は必然的にマーチ含む東京にある経済系が強い私大狙いになったのですがね。

家を買うとかクルマを買うとか子供の意向より親の意向が通ってしまう買い物で子供の立場としてはいかんともしがたいんですけど(というか児童手当が親に支払われても住宅ローンの支払いに充当する人も少なくないでしょうね。なお実家は家の購入を諦めました)今の世の中だって家計の事情で親から国公立しか行っちゃダメと言われている受験生が大勢いるのではないか。

そして国公立すら値上げされてしまったら進学自体が困難になってしまうのではないか。

まあ国家レベルで後々困ることになるからという理由が一番ではあるのですが個人的な話もあるにはあるのです。

 

国立大が学費を値上げしても児童手当で賄えるとの主張もありますがカネがかかるのは大学学費だけでないのです。

住宅ローンとか自動車ローンとかありますし子供部屋を確保したり家族で乗れるミニバンとか買う人もいるわけです。

住宅や自動車の購入資金は親が支払いますが学費は子供本人が支払うケースも多いので

児童手当をアテにした学費の値上げは大変迷惑です。

住宅や自動車の購入に限らず塾や習い事等の教育産業も児童手当をアテにして値上げしたら子育て世帯にいくら児童手当を配っても追い付かないです。

もちろん少子化支援金が重くなるのも断固反対です。

どいつもこいつも児童手当を搾り取ろうとしてますけど学費値上げのための少子化支援金ではありません。

 

さらに生活保護と同様に生活保護を本来受給できるのに申請手続を通すスキルがなく生活保護を受給できない弱者も多数いますが本当の弱者ほど情弱で奨学金を受け取れないリスクもあります。

国民の権利である生存権すらまともに保護されない糞みたいな日本ですし奨学金で本当の弱者がどれだけ保護されるか、いや保護を受けられないから弱者なんですけど救済を受けるための条件がきつすぎるんですよ。

その条件を満たすことが出来る人だって相対的には強者になってしまうわけでね。

それに奨学金の申請で年収とか家族構成とか審査のため色々個人情報を渡さなければならないですがカネのために個人情報を渡さざるを得ないケースが増えるのもどうなんでしょうね。

奨学金の申請者が増えれば増えるほど扱う個人情報が増えますけどそういうのが流出した場合の事故だって心配です。

高い授業料を一律に支払わせて個人情報を元に審査して奨学金なり授業料免除なりをするとか最初から面倒なことをするなと。

授業料自体は所得にかかわらず一律に安くして格差問題については累進課税や税や社会保険料で調整すれば余計な個人情報のやりとりだって不要ですし本当の弱者も等しく救済されます。

国立大の学生の親が金持ちである傾向はありますが(日経記事「教育機会均等化の視点重要」)格差については収入の段階で税や社会保険料により是正すべきであり中低所得層まで巻き添えを食う国立大授業料の値上げは不適切です。

 

日経記事「国立大学、経営の自由化を進めよ」でも授業料収入が期待できるからオックスフォード大学は一千億円規模の起債ができたと主張してますがオックスブリッジやアイビーリーグは世界共通語である英語の国にあり世界中の金持ちの子弟が集まる大学で学費を上げても優秀な人材の獲得に困らないからです。

日本語の授業が中心の日本の大学が同じことをしたら失敗します。

実際、東京女子医科大学のように学費を値上げした大学もあって6年間で4600万円という私大医学部でワースト2位の水準です。

しかし最近の東京女子医科大が優れた研究成果を出したとの話は聞きません。

それどころかガバナンスが大混乱しています(朝日新聞記事「前理事長の側近側に1億円超 東京女子医大の工事「コンサル料」名目」ヤフーニュース、FNN記事「東京女子医大の岩本絹子理事長解任…同窓会組織の不透明な資金の流れで警視庁の捜査受け「一強体制」指摘される 解任動議は理事長以外全員賛成」ヤフーニュース)。

ガバナンスがいい加減な私大に大金を与えて大丈夫か?

ちなみに学費ワースト1位は川崎医科大医学部、ワースト3位は金沢医科大学医学部ですけど突出した研究実績があるとか卒業生が他の医学部卒業生と比較してものすごく優秀といった話も特に聞いていません。

というかノーベル賞受賞者とかことごとく国立大なんですが。

埼玉大とか徳島大とか山梨大からはノーベル賞受賞者が出てますけど私大は…まあ唯一東京理科大大学院がかすっただけですかね(ただし大村さんは学部は山梨大学ですが)。

国際的に注目される論文とか日本は中韓にもイランにも負ける状態ですけど(ニッポンドットコム記事「注目論文数で日本は世界13位に後退:総数では5位―科学技術指標2023」)2000年以降凋落してますね。

ノーベル賞受賞者は学費が高騰する前の時代の人が多いですし(といっても受賞の順番待ちもあるので受賞時は高齢であることもしばしばですが)デフレ経済でも値下げされず据え置きされ続け相対的に値上げされているとも言える国立大学の学費を考えると実際のところ学費負担が増えるほど研究成果を出しにくくなってるんじゃないか?

学費が安い時代だって注目される論文をたくさん出してましたし学費値上げしたって論文の質は上がらないんじゃないか?

そもそも国立大は入試科目の他にも私大とは寄付金の受け入れに制限がある、創業家の理事長が長期間経営を独占していない等の異なる点があり私大が国立大の学費を安いから競争環境が不公正だと主張するのはお門違いです。

私大より財政支援が必要でガバナンスもリスクが少ない点で国立大には相応の交付金を与える、かつ与えても差し支えないと言えます。

 

国立私立を問わず理工系は施設や実験器具等で大金が必要ですが私大の反対によりガバナンス改革が中途半端な内容になったのも考慮すると私大優遇は問題です。

国立大は定年でどれだけ影響力がある人であっても退官していきますが私大は近大の世耕君みたいな創業家一族が理事長職に居座るケースが多々ありこの点も私大は国立大より信用できない面があります。

そんなに自由化がしたいなら私大の定員規制を見直してはどうか。

私大だって定員を増やせないから値上げするのです。

近年では受験生から人気のある有力大学が都心に回帰し首都圏近郊のキャンパスが閉鎖縮小する事例が相次いでますが(東洋とか青学とか。多摩にキャンパスがある中央や法政も都心回帰を狙って都心のキャンパスを拡張してますけど多摩から経済学部とか移転したら多摩の空き地はどうするんでしょうね)理工系や情報系学部を郊外のキャンパスで拡充する、新設するのは受験生のニーズに合致するのではないか。

何だかんだでブランド力がありキャンパスは都心じゃなくても就活では都心のキャンパスにある学部と一括りで学歴フィルターを突破できます。

この点だけでも23区外のキャンパスにある学部を目指す価値はあると思いますがね。

もちろん地方の私大は反対するでしょうが受験生が集まらない私大が淘汰されるのもやむを得まい。

それが経営の自由化です。

新自由主義で派遣規制を緩和してろくでもないことになりましたが自由化自由化って裏金清和会を連想します。

けどまあ中部大学のような地方の私大が自由化しろということでしたらまず私大業界から自由化したらいいんじゃないですか?

ていうか中部大学さんの実績はあまり聞かないのですが。

さすがに名古屋大学と比較する気はないですけど近隣の三重大学岐阜大学より優れていることを示す実績はありますか?酒井教授。

地方の国立大学の財政を見て競争より安定的な環境に安住したいんじゃないかといった感想を持っているそうですけどそれなら中部大学さんの研究実績だとか就職実績、OBの活躍実績がいかに地方の国立大学より優れているかについて説明していただきましょうか。

自分たち利益になるところだけ自由化して一人勝ちしようったってそうはいきませんからね。

そこまで自由化しろというんだったらまず私大こそ淘汰される覚悟をしていただきましょうか。

 

なお学費の安い公立大は中低所得層のニーズが高く経営が悪化していない地方の私大が公立化するのは反対しません。

学生の約8割が私大生とのことですがそれってつまり国公立大が少ないことの裏返しでです。

ニーズがある国公立大学は新設や定員増が抑制されたから結果的に私大の学生が増えたんです。

政府は基本的に国立大学は新設しない方針ですし公立大学は増えましたけど新設される私大の数に比べたらたいしたことありません。

人気があるにもかかわらず国公立は狭き門なわけでこれはむしろ私大が恵まれている競争環境です。

私大が優遇されているからこそ学生の8割が私大生になってしまったのであり国立大が競争上優遇されているとの主張は完全に的外れです。

おいこら清玄のドラ息子!

お前、そんな筋の通らん主張をして早大総長として恥ずかしくないのか!

親の教育が悪かったとしか思えんのだがお前は学部1年生からやり直せ!

 

国立大は簡単に増やせないとしても公立大学を増やし人気のない私大を減らすことこそ国民のニーズに合致する政策です。

地域に若者をとどめたい、招き入れたいんだったら安い学費の公立大で県内外の若者を集めた上で優良な就職先まで地元で確保し堅実な人生設計プランを用意することですね。

若者は進学や就職が移動のきっかけになることが多いですが地方創生にとっては地元の国公立を活かしていかに若者を呼び込むかが最初の課題、その上で地元の大学を出た若者が地域に留まってくれる職を確保することが次の課題となります。

自治体の財政次第ではありますけど優秀な人材を集めたいんだったら相応の経済的メリットが必要です。

 

放送大学の機能を拡充し地方の学生が学びやすい環境を整えるのも重要です。

ネットがある現代では通信教育だって問題ありません。

まあコロナ禍で対面の重要性が確認されたといった話もありますけどスクーリングや図書館の利用、ゼミの参加等は地方の私大と提携すればよいでしょう。

地元の定員割れの私大は通信制大学のサポートもやったらいいんじゃないですかね。

放送大学含む他の通信制大学と地元地方私大で一般教養の授業などは共通化するのも一案です。

基礎レベルの講義とか動画見てテストを受けるだけだったら別に対面じゃなくてもいいし一番優秀な講師の講義で十分、というかむしろそっちの方が効果あるんじゃないか?

まあレポートとか記述式問題の採点とか質問とかには採点講師だとかアシスタントが必要ですけどそれも地元の私大が用意しつつ自前の講義を減らして規模を縮小しつつ通信制大学のサポートに回ったらいいんじゃないですかね。

 

自由化を進めるべきは国立大でなく私大です。

大学全体が厳格な定員規制に守られているから本来人気がない私大が生き延び私学助成金が競争力のある部類の私大に分配されず日本全体の競争力が低下するのです。

とはいえ日本が教育における公的支出が世界と比較して少ないのも事実です。

この点は教育国債で大学教育を充実させるのも一案です。

日銀が引き受けを減らす分の国債をどう消化するかが課題となっていますが地域内で優良な貸出先がない地銀は積み上がる巨額の預金をどう運用するかが課題になっています。

地方経済は芳しくないから地元での貸し出しは増やせない一方で高齢者を中心に預金志向の人は多いです。

かといって金融商品を勧めようにも高齢者に対する金融商品の販売は色々と規制がありますし仕組債の問題もあったので高齢者向けの金融商品の販売規制を緩和するのもやめるべきです。

高齢者の預金を一体どう活用したものか。

土地勘のない県外の企業に貸し出して貸し倒れにあったり外国債券に手を出して損をしたりするケースも後を絶たないですがだったら日本国に融資を行う、日本国の国債を買ったらいいと思います。

まあ現状でも金利水準は低く米国が利下げしたとしてもまだ日米の金利差は大きい状況にあります。

現状で国内勢は国債の引き受けを様子見している段階ですが利回り次第で国債消化については可能でしょう。

もっと金利が上がるのを虎視眈々と狙っているわけで地銀が国債を消化するポテンシャルはあります。

今までマイナス金利で預金はむしろお断りという状況でしたが預金集めを頑張れば200兆円よりもっと引き受けはできるはず。

償還はどうするか?

そこはリスクを取りたくないから預金のまま資産を積み上げる高齢の富裕層の死亡時に相続税として回収すれば問題ないでしょう。

少子高齢化社会とは言いますが団塊の世代だってもう後期高齢者です。

相続税が発生するケースもけっこう多くなると思いますがそこで預金が税として納められます。

なお死んだ本人が預金じゃなくて個人向け国債保有している場合も想定されますが相続税でも国債は物納できることになっています。

教育投資は重要です。

カネがかかるとは言いますが官民ファンドみたいな残念な投資案件に投資するより教育の公的支出に回して優秀な人材を輩出できればよいのです。

稲盛さんは鹿児島大学出身ですけど京セラの時価総額が2兆4千億円ぐらいありました。

KDDI時価総額は10兆円ぐらいですね。

今後50年間にわたって毎年2500億円ぐらい国立大学の運営費交付金を増やしても稲盛さんと同じぐらいインパクトがある人材を1人でも輩出できれば帳尻が合います。

もちろん稲盛さんほどのインパクトはなくても地道に成果を上げる人だっているわけですし何だかんだで教育投資はかなり割のいい投資だと思うのですがね。

国家財政においても賢い支出と賢いファイナンスが重要だと思います。