1657ページ目 流通大手の解体

セブンアンドアイはイトーヨーカドーを年内にも売却する方針を固めました(日経記事「ヨーカ堂売却 年内にも」)。

元々イトーヨーカドーは分離上場させる予定でしたがカナダのアリマンタシォンから買収提案を受けたことで経営環境が変わりました。

赤字が続くイトーヨーカドー保有したままでは株価が上がりません。

赤字事業を手放すことでグループ全体の価値を高め買収防衛を図る狙いがあるのでしょう。

現状で5兆7千億円の時価総額ですが5兆円で買収提案を受けています。

セブンアンドアイは買収提案された金額が低すぎると言って一蹴しましたが赤字のイトーヨーカドーをどうにかしない限り評価は低いままです。

配当利回りだって現時点でも2%を割っており成長もしないのであれば5兆円程度で十分だと評価されても仕方がない面があります。

今までは創業家で大株主の伊藤家への配慮もあってリストラは遅々として進んでいませんでしたが外圧でずいぶんと変わるものですね。

いざ買収提案を受けたらあっさり売却を決めるとは。

買収成立で結果を出せなかった経営陣は一掃されることもよくある話ですがさすがにクビになりそうだと判断したら即座に動くあたり日本的というか何と言うか。

保身ばかり熱心で無能な経営陣の尻に火が付いた構図ですけど買収防衛策があるから経営者はリスクも取らずただ安穏と現状維持だけしていればいいという環境になり日本企業全体が低迷したんじゃないかと思えてきます。

西武そごうをリストラするのにずいぶんと時間がかかりましたけどモノ言う投資家だとか海外の同業大手の圧力があるのとないのとではこうも結果が変わってくるとは全く現金なものです。

 

それにしても赤字のイトーヨーカドーはいくらで上場するんでしょうね。

セブンアンドアイは2000年代にスーパー、コンビニ、デパートの総合流通大手を目指していましたが無理だということがこれではっきりしました。

客層も違うし扱う商品も違うんですから当然と言えば当然です。

一番ベストだったのは持ち株会社セブンイレブンイトーヨーカドーをぶら下げるんじゃなくてセブンイレブンはスピンアウトで独立させることだったということになります。

2000年代あたりはまだイトーヨーカドーにも力があったし創業者の伊藤氏も健在でしたのでセブンイレブンを実質的に創業した鈴木氏といえどもイトーヨーカドーを切り離すことはできなかったし鈴木氏からして総合流通大手を志向してましたからセブンイレブンが独立するのは難しかったんですがね。

ただ20年前だったらもっといい値段で再編できたんじゃないかと思いますし後に鈴木氏は伊藤家と対立してセブンアンドアイから去ることになりましたがセブンイレブンごと鈴木氏もグループ外に出しておけばよかったかもという気もします。

さて切り離した後はどうするのか。

セブンイレブンは海外進出を本格化させましたし金のなる木の国内事業が伸び悩んでも米国を中心に成長はしていくでしょう。

一方のイトーヨーカドー個人消費が低迷している、特に顧客層が中間層メインなので格差拡大による中間層の没落は強い逆風になります。

中間層が今後も減少するんだったら低所得層向けの商品を充実させる、あるいは高所得層向けの商品を充実させるといった方向になりますがどっちも競争は厳しいですね。

もうすでに10年前の時点で中間層が下層階級に転落していて低価格スーパー市場が延びており従来の中間層向け市場は縮小していたわけですが(食のトレンド記事「【スーパーマーケットのマーケティング事始 第2回】 日本の中流層の劣化とスーパーマーケットの対応」)イトーヨーカドーは対応が遅かった面も否めません。

ビジネスモデルを今さら変えようとしても既に高級スーパーもディスカウントストアも先行者がいてイトーヨーカドーが勝てるかどうかは不明ですが中間層向けのビジネスモデルを継続するのも中間層が減少し続け市場が縮小している状態では店舗網の縮小が必要になってきます。

立地はいいのでイトーヨーカドーは撤退させて跡地にディスカウントストアが入ったら消費者にとってはありがたいんですが。

イトーヨーカドーが地域の中核的な商業施設になっている街もありますがリストラで店舗を廃止するんだったら後始末もちゃんとしていってほしいと思いますね。

20年間の経営の停滞のツケを払う時が来たセブンアンドアイですが今後の経営はどういう計画でやっていくんでしょうね。