1610ページ目 アリマンタシォン?何だそりゃ?

コンビニ最大手のセブンアンドアイが買収提案を受けました。

買収提案を行ったのはアリマンタシォンというカナダのコンビニ大手です(時事通信記事「セブン&アイに買収提案 カナダ大手から、特別委で検討」ヤフーニュース)。

 

いやアリマンタシォンなんて聞いたことなかったですね。

しかし記事を読むとカナダや米国、欧州を中心にコンビニを展開する世界のコンビニ大手で時価総額はセブンアンドアイよりも上です。

アリマンタシォンの時価総額は約800億カナダドル(約8兆5000億円)である一方でセブンアンドアイの時価総額は約5兆6000億円であり約3兆円の差があります。

去年のコンビニ世界ランキング(Reinforz Insight記事「2023年最新版:世界のコンビニエンスストア運営会社ランキング時価総額TOP37」)を見るとセブンアンドアイが3位でアリマンタシォンが2位となっています。

なお1位はメキシコのFomento Economico Mexicano SAB de CVで時価総額はざっと10兆円です。

2位のアリマンタシォンは3位のセブンアンドアイを買収することで世界1位のコンビニチェーンを目指す戦略ですね。

しかし日本だとセブン、ローソン、ファミマの3強が圧倒的ですけど世界ではセブンがやっと3位とはね。

ファミリーマート伊藤忠TOB上場廃止になってますがローソンは14位でベストテンにすら入ってません。

アリマンタシォンは1980年に創業したカナダが本拠のコンビニチェーンでクシュタールブランドのコンビニを展開しМ&Aで企業規模を拡大しています。

ガソリンスタンドも併設し世界で約14500店舗を運営していますが半分は米国です。

ヨーロッパでも2700店舗ほど展開していますがセブンアンドアイを買収することでアジア事業を強化しつつ米国でもよりシェアを高め1位のFomento Economico Mexicano SAB de CVを追撃する方針ですか。

というかアリマンタシォンはサークルkを買収してますがそういえば日本にもサークルkサンクスがありましたね。

ファミリーマートの傘下入りしましたけど元々サークルkは米国のコンビニで日本のスーパー大手だったユニーグループが日本でサークルkの名称でフランチャイズをやってましたっけ。

アリマンタシォンはサークルkを通じて日本とご縁があったわけですけどまさかサークルkの逆襲が始まるとは思いもしませんでした。

まあセブンアンドアイをアリマンタシォンが買収したとしても知名度から考えてセブンイレブンサークルkに転換することはないとは思いますがね。

 

それにしても時価総額5兆円を超える巨大企業が買収提案されるなんて思いもしませんでしたよ。

しかし円安ドル高ですと日本企業そのものが割安評価されることになりますからね。

1ドル150円で5兆6千億円の時価総額だったら米ドル換算で373億ドルに過ぎません。

いや買収提案があったので8月19日のセブンアンドアイの株価は前日比400円高ストップ高で2161円、前日比22.71%上昇しており買収提案前の時価総額は4兆5600億円、米ドル換算でざっと304億ドルです。

一方でコロナ禍前の2019年2月の時価総額は4兆3千億円で1ドル110円ぐらいでした。

米ドル換算で390億ドルですね。

…駄目だこりゃ。

セブンアンドアイはこの5年間で足踏みっていうか昨日の時点だとドルベースで時価総額を100億ドル近く減らしてます。

5年前と比較してドルベースだと4分の3程度の時価総額でしかありません。

なるほどこれではアリマンタシォンもセブンアンドアイは自分の役員報酬しか興味がない無能な経営者が愚かな経営を行っているので我々はもっとうまくやれると考えるのも無理もない話です。

買収提案が成立するか否か以前にセブンアンドアイの経営陣は社外役員も含めて全員クビが妥当です。

1億円超の役員報酬、井坂社長は3億4100万円、海外部門統括のジョセフ・マイケル・デピントさんは77億3200万円ですけど、ここまで結果を出せない経営者って存在価値あるんすかね。

株主利益は増やせてませんけど、かといってセブンイレブンイトーヨーカドーも商品自体はたいして安くないし顧客還元をやっているわけでもないんですよね。

そのくせ役員報酬だけはがっぽり受け取るのではあまりにもぼったくり過ぎます。

もうこいつらクビだクビ!

株主利益にも顧客利益にもならないぼったくり役員はセブンアンドアイから出てってくれ!

まあセブンアンドアイの経営自体もダメですけど為替相場の影響もある、日本市場は円安で地盤沈下していくにしてもセブンアンドアイが持っている米国の店舗網は割安で手に入れられると思ったのか。

日本市場にしても地盤沈下しているとはいえセブンアンドアイが最大手ですしドルベースで停滞した時価総額だったらいいお買い物と言えなくもありません。

これも円安の副作用ですね。

そもそもアベノミクスによる異次元の金融緩和は一時的なものになるはずだった、期間限定で大バーゲンセールを実施してその間に勢いをつけて本来の競争力を取り戻す、日本企業が自助努力で為替相場に関わらず世界で売れる商品なりサービスを提供する実力を取り戻すまでの時間稼ぎに過ぎなかったのです。

しかし2014年に消費税増税をやってしまったせいで景気が急速に悪化し異次元の金融緩和をやめるにやめられなくなってしまいました。

増税のせいでやめられなくなった金融緩和で大企業はぬるま湯に漬かり続け自助努力をしなくなり世界で競争力を失ってこの様です。

財界を甘やかすとろくなことにならないですね。

セブンアンドアイがこの買収提案を受け入れるかどうかは不明ですがイトーヨーカドーとかバッサリ切られそうですね。

伊藤忠サークルkサンクスを手に入れるためにユニーグループをスーパー事業を含めて買収するも要らないスーパー事業は後で放り出してますが同じことをするんじゃないかと。

実際、経営学のセオリー通りに経営改善を実施するなら負け犬の総合スーパーは撤退するのが合理的です。

まあセブンアンドアイがドルベースで時価総額を増やせなかったのもデパート、スーパー、コンビニ全部をやる総合流通大手を志向した経営戦略が最悪に不味かったし、その後始末に時間がかかり過ぎたのもあるのかなと思います。

そんなにウエイトが大きくないデパート事業のリストラですらストライキが起きるほど揉めましたし創業家との関係もある総合スーパー事業、イトーヨーカドーのリストラも相当な根回しが必要になってきます。

根回しで穏便にやるのは重要です。

急いては事を仕損じると言いますし抜本的な構造改革を強引に進めて失脚した政治家や経営者だっていくらでもいます。

とはいえ競合他社が構造改革で足踏みしている状況を黙ってみているはずがなく好機と見れば容赦なく攻め込んでくるのも容易に想像が付きます。

円安による割安効果と構造改革の遅れでドルベースの時価総額が低迷しているセブンアンドアイはどうするんでしょうね。

買収提案に応じるかどうかは不明ですけど応じなかった場合もイトーヨーカドーのリストラ圧力が強まる、より構造改革を要求する株主からの圧力が強まりそうですけど総合スーパー事業の切り離しも今後あり得るかもしれません。

 

さて総合スーパー大手といえばイオンもあります。

一応イオンもコンビニ事業はミニストップをやってますけど店舗数では上位3社の足元にも及びません。

セブンイレブンが約21100店、ローソンが約16300店、ファミリーマートが約13700店であるのに対しミニストップは約1800店に過ぎずコンビニ大手とは言えない規模です。

イオングループ資本力をもってすれば5位以下のコンビニチェーン店を買収し、かつ、大量出店で5000店ぐらいは確保できそうですけど1万店以上の規模にできないなら勝ち目は薄いです。

…が、それ以前に敢えてコンビニ事業を強化しなかったのではないか?

ダイエーイトーヨーカドー、ユニーや西友と同じ事になるのが目に見えているのでコンビニ子会社の成長に頼らず別のビジネスモデルで活路を見い出そうとしたのかもという気もします。

ローソンを持っていたダイエーファミリーマートを持っていた西友サークルkサンクスを持っていたユニーは全部総合スーパー大手で80年代は業績好調だった企業群です。

そしてスーパーの儲けをコンビニ事業に投入してコンビニ事業も大きく成長し親会社であるスーパーが90年代以降に斜陽化し業績不振に陥ってもコンビニ子会社の成長でグループ全体を支える構図もだいたい同じです。

しかしコンビニ子会社が総合スーパーを支え続けるのも難しくなった、資本のねじれで親会社子会社の時価総額が逆転したり親会社の総合スーパーの業績不振が酷過ぎて虎の子のコンビニ子会社を泣く泣く手放さざるを得なくなった点もほぼ共通です。

イトーヨーカドーがセブンアンドアイから切り離されるのであれば、コンビニ大手は総合スーパー大手から生まれるもコンビニ大手と総合スーパー大手を同じグループで運営するのは無理、というのが日本における経験則として成立することになります。

セブンアンドアイはイトーヨーカドーの斜陽化がダイエー西友、ユニーよりは幾ばくかマシだったので2024年までこのままずるずるとセブンイレブン頼みの経営を続けてこられたのでしょうけどさすがにもう限界が来たんでしょうね。

駅前立地の良さもあってどうにか総合スーパーとしてイトーヨーカドーは平成末期まで運営してこれたけど総合スーパーというビジネスモデルが平成後期で消費期限切れになりイトーヨーカドーが古いビジネスモデルでいくら自助努力を重ねたところで無理な戦い、過去の遺産を食いつぶすだけの消耗戦に陥り令和ではもう支えきれなくなったといったところでしょうか。

総合スーパーの企業グループがコンビニ事業を強化しても資本のねじれでコンビニ子会社が強くなりすぎたりしますしコンビニ事業にはシナジーが薄い総合スーパーそのものの業績を改善させる効果はないです。

結果として企業グループごと解体される方向に進んでしまうのがダイエー西友、ユニー、そしてセブンアンドアイの4社で共通ということであれば総合スーパーがコンビニ事業に本腰を入れるのは危ないと言わざるを得ないですね。

イオンはドラッグストア子会社だとか専門店と自社の食品スーパーの組み合わせで集客を目指しつつ決済用の金融事業を強化して儲ける方向でスーパー事業を維持していますがイトーヨーカドーも自前の洋服販売から撤退し洋服売り場をアパレル大手のアダストリアに任せることになりました(WWD記事「業界騒然!ヨーカ堂の衣料品平場を継承するアダストリアファウンドグッド」の実像に迫る【小島健輔リポート】」)。

総合スーパーの看板は下ろしてスーパー事業は食品中心にして洋服や雑貨等は専門店に任せつつ優良立地の不動産を活用し総合スーパーっぽい専門店の集合体を運営していく方向で生き残りを図っていくんですかね。

まあ実際にどうするのかはまだ不明ですがセブンイレブンイトーヨーカドーも幅広く社会に浸透しているブランドですので今後どうするのかは気になるところですね。