1491ページ目 国立大の学費を値上げしろだと?

また三田の偉い人が寝言を言っています。

慶応の伊藤塾長は国公立大の学費を年間100万円値上げしろと言い出しました(FNN記事「【波紋】“国立大の学費を年間100万円値上げ”提案した慶應大学・伊藤公平塾長「学費を払える方には負担をお願いするシステム」」ヤフーニュース)。

大学教育の質を上げるため、国公立と私学の格差をなくすため、との趣旨とのことです。

 

冗談じゃありません。

まず質の強化ですが学費値上げで大学が使えるお金が増えれば設備だとか研究費だとか教職員の給与を増やせるので質の強化につながるように思えます。

しかし大学の質は決して大学側だけの問題ではありません。

基礎学力と学ぶ意欲がある学生が入ってこないと結局大学側の施策についていけない可能性もあるのです。

さすがに一部の私立のFラン大学のように大学生にもなって英語のbe動詞や分数から復習しないと授業にならないとかどうにもなりません。

基礎学力と学ぶ意欲のある学生を確保するには一般入試にしても推薦入試にしても競争倍率を確保しないと厳しいのですが学費が安いから旧帝大以外の国公立も受験生が集まっているのです。

運営が厳しくなった私学が公立大学に転換したら受験生が大勢集まって偏差値が急上昇した事例もありました。

もともとのポテンシャルの高い学生が集まればそれだけ大学側もより高度な教育内容を提供できる、大学の質も上がるでしょう。

 

国公立と私学の格差についても値上げすべきとの理由に挙げていますが国公立の学費を100万円も値上げしてほぼ私学と同等の学費にしようものなら地方の国公立に進学する学生は相当減るでしょうね。

逆に私学は相対的に学費の割高感が薄れて大学全入時代でも受験生を確保しやすくなります。

そういえば私学最難関の慶応の医学部は慶応ブランドだからというだけでなく相対的に他の医科大学より学費が安めだから人気という面もあるのです。

私大医学部は学費が上がるほど偏差値が低くなる傾向があって学費を値下げしたら偏差値が急上昇する事例もあります(AERA記事「医学部の学費安いほど偏差値高い「反比例」の法則 ランキングで検証」)。

三田の偉い人が国公立は学費値上げしろというのは私学への受験生誘導があまりにも露骨すぎて話になりませんね。

そりゃ三田のように裕福な学生ばかり集まっている勝ち組大学は全く痛くもかゆくもない、それどころか早慶と東大京大以外の旧帝大の両方に受かったが学費が安いので旧帝大に進学する学生を奪えますからね。

私学も続々と値上げして国公立だって平成初期に比べたらだいぶ上がって学生だって厳しい、奨学金地獄で大変なことになってますけど学費の安さで優秀な学生の救いになっている国公立の学費まで値上げしたら余計に奨学金返済で苦労する人が増える、借金を抱えて社会に出るとなるとまず借金返済を先にして婚活や子育ては後回しということにもなりかねません。

むしろ教育費はなるべく安くしないと後進が育たないのですが年間100万円、4年間で400万円も値上げなんてどう考えたって無理です無理。

 

まあ東大京旧帝大や国公立医学部など国公立の難関大学関学部に入るには基本的に相当教育費で課金しないといけませんので三田も東大も親の年収は相当高かったりします。

大学の学費だけ無償化したって一般入試を突破できる学力だとか推薦入試を突破できる体験作りだとかはとにかくカネがかかるのです。

子供を難関国公立大に進学させることができるほど裕福な家庭だったら負担能力があるので特に三田と競合する旧帝大の学費は値上げしろと言いたくなる気持ちもわからなくはありません。

ただそれをやってしまうと中間層の子弟だけど難関国公立大に進学する層が非常に苦しくなります。

なのでそこは学費については安くする、かつ、大学の質の強化に必要なお金は大企業だとか富裕層にお願いするのがよいでしょう。

財界には法人税で、高所得層の親に対する所得税社会保険料で応能負担、垂直的公平を重視した課税で調整することです。

大学は無償化して学費を値上げすれば学生と大学は救われますが財源を消費税など逆進性が凶悪な負担に求めるのはかえって少子化が進み大学自身の首を絞めることになるのでやめたほうがいい、学費を払える方に値上げをお願いするということなら直接的な学費値上げでなくともよいのです。

徴収した税金は大学教育の質の拡充なり中低所得層の家庭出身の学生に対する支援に充てるのが妥当です。

私学と国公立の格差に関しても私学は私学で先にやるべきことがあります。

少子化なのに昭和より増加してしまった私立大学の統廃合が必須です。

全国各地の大学に私学助成金をバラまいていますが本来なら余っている大学にまで私学助成金を分配するより需要に見合った私学の数に絞った方が1校あたりの私学助成金は増え大学教育の質の強化ができる、国公立との格差も縮まるはずです。

国公立大の値上げで格差を拡大させるのは断固反対、私学は我田引水の国公立大値上げ要請より先に多すぎる私学の統廃合を進めるべきだと考えます。