1396ページ目 キヤノンと日本製鉄の言い分

キヤノンの御手洗社長と日本製鉄の三村名誉会長の話が日経記事昭和99年ニッポン反転に掲載されていますが思うところがあったので備忘録を残しておこうかと思います。

 

まず御手洗社長の言い分ですが道州制を導入するにあたって徴税権を道州に与え行政も同州ごとに任せ国は外交などを担当するのがよい、財源は消費税にして10年間は法人税を徴収すべきでないとのことです。

…冗談じゃありません。

人口が減少し続ける県に関しては単独でやっていくのは難しいかもしれません。

すでに一票の格差問題で県境をまたいだ選挙区の統合も起きていますが過疎化が進行すれば一つの県では一人も国会議員を出せなくなる県も出てくるかもしれませんしそれ以前にインフラの維持も難しくなる、労働力も確保できないといった感じで県庁所在地以外は生活も維持できなくなる自治体が続出する可能性もないとは言い切れないのです。

より大きな構成単位で再編成せざるを得ないケースも出てくるかとは思いますが問題は消費税増税法人税減税です。

その話は別の場所でも何度も言いましたが消費税を上げれば上げるほど不景気になって逆進性の凶悪な負担でジニ係数は過去最悪の水準になりました。

法人税減税の穴埋めをする形で消費税増税が行われ企業の現金はアベノミクス前にせいぜい200兆円未満だったのが現在では350兆円にまで膨れ上がっています。

しかも借金でなく内部留保です。

賃上げや投資を行うからという理由で法人税減税をしたのに経済界は約束を破りました。

にもかかわらず消費税を上げて法人税を下げたら余計に問題が悪化するので当然に却下です。

大学に関しても道州制にして統廃合を進め1校あたりの予算規模を大きくすれば大学のレベルもupすると言っています。

まあ現実問題として大学が少子高齢化の割に多過ぎるのは事実で既に全入時代となっています。

ただ国立大学が少なくなってしまうと学費の高い私立大学に行かざるを得なくなるわけで学費の安い大学が減るのは困りますかね。

むしろ国立大学より私立大学の再編の方がより重要です。

それにレベルの高い大学を作るも何も経済界はどういう協力をするんですかね。

博士号取得者の進路が残念なことになっており大学院離れが進行していますがせっかく博士号を取得できるような優れた研究をやっても大学の研究者のポストはないし企業も年齢などで難癖をつけて雇わないんですから食っていけません。

出口が悲惨なことになっているのではとても大学の強化どころではないですが予算配分云々の話よりまず経済界は博士号取得者らの採用増に応じるのが先ですね。

国民生活に望ましいことは国を豊かにすることでありその基礎は成長力だと言っていますが国の構造を根本から変える蛮勇を振るうべきだというのならまず経済界自身が自社の構造を根本から変えましょうよ。

自動車やカメラのような20世紀の稼ぎ頭で経済的な豊かさを維持できるはずもないですからね。

巨額の法人税減税で現金が350兆円もあるんですし賃上げも投資もできないはずがありません。

21世紀の稼ぎ頭を創出してまず経済界がブレークスルーを実現する必要がありますが企業はまだ変身してないじゃないですか。

とりあえずキヤノンに関してはずっと御手洗社長の独裁政権のままですしこれでは企業体質も変わんないでしょうね。

そこは御手洗社長の引退から始めたらいいと思いますよ。

 

んで三村名誉会長の言い分ですね。

失われた30年はまず一般家庭、そして経済界と政府が共同謀議の結果である。

家計は節約に走り企業は設備投資をせず現金を積み上げ政府は社会保障少子化対策の財源問題を先送りしたがこれらはデフレのせいである。

労働者は賃上げがなくても生活できるが企業はコストが上がっても値上げできない。

価格の決定権は消費者が強いので企業は対応できなかった。

下請けいじめをする企業も増えてデフレスパイラルが加速したがもう下請けいじめはやめるべきだ。

輸入コストも増大したが一般家庭は値上げを認めろ。デフレはお前たちの甘えだ。

人口減少が深刻だが経済的な少子化対策だけでなく一般国民が意識を変えて子育て世帯に心遣いをすべきだ。的な話ですかね。

…ずいぶんな責任転嫁ですね。

一般家庭は共同謀議になんて加わってないですよ。

現実問題として可処分所得がバブル期より減少しましたし消費を増やしたくても増やせなかったんですよ。

でも企業は消費税増税を財源にした法人税減税がありましたよね。

本来それを賃上げや設備投資に回すことを求められたのに約束を反故にしました。

消費税増税社会保険料値上げもありましたし痛みの分配を先送りしたといった話も大嘘です。

財源が厳しいと言いつつ法人税減税をやっているあたりがそもそも問題なのです。

デフレスパイラルにも起点があってそれは消費税増税や企業のリストラです。

90年代にそれをやったせいですっかり一般家庭で節約ムードが定着してしまいました。

節約しないと生きられないんですから当然です。

企業は値上げできないとか言ってますがそもそも革新的な製品を開発できなかったのが問題です。

日本からはアップルもMicrosoftもグーグルも生まれませんでしたが産業の構造転換にも失敗してますね。

下請けの話とかもしてますがそういえば日本製鉄はトヨタに鉄を売ってましたね。

力関係からすればトヨタの方が上で日本製鉄が下請けですがそのあたりはグリーン製鐵とかで出遅れたのも日本製鉄の不味いところだったんじゃないかと思いますよ。

なかなか素材産業で付加価値を高めて値上げするのは大変ですけどグリーン鋼材は規模で高炉大手最小の神戸製鋼所がいの一番に実現しています。

日本製鉄は規模ばかり大きくなりましたが今まで何やってたんですか?

研究開発とかちゃんとやりましたか?

神戸製鋼所の方が早くて日本製鉄が遅いというのは怠惰としか言いようがないですね。

甘えているのは付加価値の向上を怠った日本製鉄です。

とはいえ下請け叩きがあまりにも酷過ぎるのもまた事実です。

赤字の中小零細企業にとってはそもそも利益が出てないんですから法人税減税の恩恵もないんですけどそこは法人税減税の恩恵をたっぷり受けて現金を積み上げた大企業の責任ですね。

痛みの分配で言えば痛みを家計や中小零細企業に押し付けた日本製鉄やキヤノンなどの大企業こそもっと痛みを引き受ける必要があるのですが少子化対策社会保障が大事だというならその溜め込んでいる現金を我々一般国民に返せとしか言いようがないですね。

別の場所でこれも書きましたがお小遣いが減れば心遣いをする余裕だって減るんです。

ベビーカーの子供連れに文句を言うなという話ですが毎日毎日いっぱいいっぱいで殺気立っている人たちにそれを言ったところで届かないでしょうね。

どうすれば意識を変えられるか?金持ち喧嘩せずなんて言いますがそういうことならカネをため込んでいる経済界が一般家庭にカネが行きわたるよう賃上げと下請けへの報酬増額を行う必要があります。

もちろん法人税増税を受け入れて消費税や社会保険料など逆進性が凶悪な負担を引き下げ可処分所得をバブル期の水準に戻すのも大事です。

デフレの責任を一般家庭に押し付けるのは論外、というか一般家計の貯蓄残高を押し上げているのは御手洗君とか三村君みたいな1億円以上も役員報酬をぼったくる富裕層たちなんですけどね。

ジニ係数も過去最悪水準なのに一般家計の貯蓄残高が積み上がるのはつまり富裕層が富を独占しているからという話になります。

共同謀議の話は正確に言うなら経済界上層部と旧大蔵省及び旧厚生省労働省並びに純資産1億円以上の富裕層たちとなります。

少なくとも負け組一般国民のせいではありません。

共同謀議の話の先頭に家計を持ってくるあたり実際のところ経済界に責任はないと思っていそうですが冗談じゃありません。

責任転嫁をしないでまず経済界が責任を果たすことが最重要です。

賃金を上げろ、投資をしろ、下請けの報酬を上げろ、法人税増税に応じろ、本質的に付加価値の高い製品を開発しろ、失われた30年で役員報酬だけは上がりましたが賃上げ等を確実に実施し少なくともバブル期の水準並みに可処分所得が回復するまで役員報酬は下げろと強く言いたいです。

デフレの再生産から脱却するというのであれば法人税減税で優遇したにもかかわらず結果を出せないばかりか役員報酬だけ引き上げた経済界の偉い人たちの退陣こそ必要だと思います。

 

まあ備忘録は以上ですが別の場所で使うことがあれば加筆修正したいと思います。