1431ページ目 日経平均史上最高値更新

とうとう日経平均がバブル期の史上最高値を更新しました。

2024年2月22日の最高値は3万9098円68銭です。

以前の最高値はバブル期の1989年12月29日の3万8915円87銭ですので実に34年ぶりです。

岸田首相は日本経済が動き出していると言いっていますが(TBS記事「速報】岸田総理「心強く思う」 株価が34年ぶり史上最高値更新で」ヤフーニュース)失われた30年からようやく脱却できてよかったよかった、俺の手柄だ!俺も骨を折った甲斐があったというものだ!景気は良くなったので増税しても問題ないよねと思っていそうです。

 

まあこれまでがあまりにも異常過ぎました。

バブル期の高値は過大評価されすぎていた面があり失われた30年の1万円割れの日経平均は過小評価され過ぎていた面もあります。

とはいえ景気の実感を考えると本当に最高値更新で失われた30年は脱却できたのか?というとそれはそれでどうなのかという気もします。

 

上場企業全体の時価総額自体は既にバブル期より300兆円上回っているといった話もありますが(東洋経済記事「データで読む日経平均株価「バブル超え」の真実、1989年よりも企業利益は増えたが「源泉地」が激変」ヤフーニュース)1社あたりの時価総額はバブル期より3割低い水準とのことです。

さらに世界との相対比較で考えると世界経済は1989年より5倍、米国は4.5倍の成長を達成しています。

世界経済と同等の水準で成長しているなら本来5倍になっていないとおかしいのですけど現実には1社あたり3割減です。

しかも円安ですからドルベースだと余計に目減りします。

まあドルベースで見て割安だったので買いが入った面もあるのでしょうが実際の景気はどうなんでしょうね。

 

圧倒的大多数の人が実感している通り景気は非常に厳しいものがあります。

実質賃金下落は21カ月連続でマイナスです(ロイター記事「12月実質賃金21カ月連続マイナス、通年も2年連続減=毎月勤労統計」ヤフーニュース)。

物価上昇に賃上げが追い付かず家計は消費を減らしました(日経記事「消費支出、23年の月平均2.6%減 物価高で3年ぶり下落」)。

そして2024年の賃上げは前年よりショボくなりそうな気配があります(ゲンダイ記事「2024年「春闘」は不発に終わる…賃上げ率が前年を下回り、岸田政権の要請はほぼ実現不可能」ヤフーニュース)。

中小企業は特に厳しいです(東京新聞記事「賃上げ5%「中小企業にそれは無理でしょ」…全国団体トップが明かした、価格転嫁を阻む「長年の慣習」)。

いくら下請けいじめをするなといっても立場的に強大な大企業は徹底的に価格転嫁を拒みます。

実際、監査報酬に関しても不正が続発し会計監査の強化が必要、かつ、賃上げや研究投資にもカネが必要なのに価格転嫁ができていません(日経記事「膨らむ業務 減る報酬」)。

最新のノウハウの類は会計監査の本場である欧米にある本部に上納金を支払って入手せざるを得ないため円安が痛いです。

ENEOSは報酬を7%上げると言っていますがそれで足りるのか?

ここは役員が3年連続でセクハラ問題を起こしており(毎日新聞記事「ENEOSグループ会社会長、セクハラで解任 経営トップ3年連続不祥事」ヤフーニュース)エロオスなんていう呼び名までネット上から出てきましたが役員の倫理観を考慮するとより厳しく対応した方がいいんじゃないかと。

ガソリン補助金も受け取っていますが公金を受け取っているわけですし株主だけでなく一般国民に対する説明責任もきちんと果たさなくてはなりません。

財務報告や内部統制をきちんとしていることを証明し一般国民に役員以下ENEOS関係者が法令を遵守し公金も含めたお金を適切に管理していることを説明する必要があるのですが問題を起こして3年続けて役員がクビになる会社がどれだけ我が社は適正に経理を行っていると言ったところでどれだけ信用できるのやら。

三者が厳しくチェックして適正であるとのお墨付きがなければ信用できませんね。

 

ガソリン代も大変ですけど円安と法人税減税で儲かる企業の株価は高くなってしわ寄せは円安で仕入れコストが上がり、かつ、元々そんなに儲かってないので法人税減税の恩恵が少ない中小零細企業に押し付けられることになりますが中小企業勤務のサラリーマンは全サラリーマンの7割とも言われており大企業だけ恩恵を受ける状態ではバブル期並みの景気回復は難しいでしょうね。

実際1世帯当たり1か月間の消費支出は1993年の335,246円がピークで失われた30年は減少傾向が継続し2018年には287,315円となっています(総務省統計局「10大費目別1世帯当たり1か月間の消費支出の推移(平成元年~30年)」参照)。

いやいやもうデフレは脱却し消費だって増えているし総務省統計局の家計調査(二人以上の世帯)2023年(令和5年)12月分は329,518円もあってバブル期のピークの水準に近づいてるじゃないか!やはり景気は絶好調じゃないか!と思ったでしょ。

まあ円安で食料品含む幅広い品目で値上がりしてますからね。

節約できないので支出が増えざるを得ない構図です。

ただ物価水準等の影響を加味した実質ベースだと収入も支出も減少しています。

90年代は1ドル80円台でしたが今では1ドル150円です。

輸入製品は30年前と比べて実質的に2倍近い円を支払わないと同等品質あるいは数量分を購入できませんが海外はインフレで元々の値段も上がってます。

消費支出の質の面を見ても相当劣化した、デフレ経済で価格据え置きなら内容物を減らさざるを得ないわけでキットカットの重量がどんどん減っていくのも無理からぬ話です。

牛肉の消費量も減ってますが飼料代だって円安の影響があるわけでより安い鶏肉にシフトするでしょうね(日経記事「振るわぬ牛肉消費、豚・鶏との格差広がる 所得と相関も」)。

株価は膨張する一方で家計は収支ともに萎んでおりITはともかく食卓に関しては貧しくなっているのが実態です。

 

政治資金パーティーとかで企業関係者にパー券を買わせて事実上の企業献金にしているから大企業と大企業の偉い人ばかり優遇される構造の政治経済になっているからこんなことになるんじゃないかと思えてきます。

本来だったらインバウンドはあるものの全体としてみれば内需にダメージが大きい円安を継続するのであればその分、円安で儲ける大企業から法人税をより多く徴収して再分配を行う必要があるのですが円安誘導と法人税減税の両方をやっているのですから話になりません。

一人勝ちする大企業の株価だってそりゃ上がるでしょうね。

けど全ての上場企業が全部円安で儲かるわけでもないし上場企業を支える下請け企業だってもう支えきれなくなります。

この種の無理がある構造はどこかで破綻するのではないかと思えてきますが株価の上昇を継続させたいのであれば傷んだ家計部門や内需系企業のてこ入れが必要になってきます。

これまでの10年間では法人税減税と円安で大企業は350兆円の現金を貯め込むに至りましたが社会全体にとって最適なカネの使い道を考えなくてはなりませんね。