1508ページ目 トヨタは5兆円儲かっても実質賃金は2年連続減

これぞ正に格差社会です。

トヨタ自動車は昨日2024年3月期の決算を発表しました(日経記事「トヨタ営業益5兆円」)。

営業利益は5兆3529億円で日本企業としては過去最高かつ初めての5兆円の大台突破です。

なお売上高は前期比21パーセント増の45兆953億円、当期純利益は前期比200%増の4兆9449億円です。

その一方で実質賃金は2年連続の下落です。

厚労省は本日3月の毎月勤労統計調査を公表しました(実質賃金3月2.5%減)。

それによると3月の実質賃金は2.5%減で実質賃金は24カ月連続でマイナスとなっています。

これだけ実質賃金のマイナスが継続するのは過去前例がありません。

リーマンショック時ですら実質賃金の下落が継続したのは23カ月であり2年間丸々実質賃金が下落しているのは異例です。

 

やはり1ドル160円の円安と法人税減税、現金を貯め込む大企業の下請けいじめ及び円安と好業績に見合わぬ賃上げ水準が原因ではないかと思わざるを得ません。

もちろん円安以外の要因もある、欧米でも意外と高コストな電気自動車が敬遠されガソリンにも対応できるハイブリッド車が売れている面もありトヨタの世界販売台数は前年比5%増の1109万台となっています。

ただ日本からの輸出分だけでなく米国で生産しドル建てで受け取る売上の伸びも大きかったです。

コスト面でも下請けに支払う報酬を増やしたり賃上げを行ったものの本来であれば今まで報酬や賃金を抑制した分を多少緩めた程度に過ぎません。

1ドル100円の時と比べて下請けへの報酬や賃金は1.5倍以上になったのか?

そんな話は聞いていませんがその一方で海外から下請けが調達する原材料は容赦なく円安の影響を受け仕入れコストも相応の増加となります。

人件費に関しても円安では日本に訪れる外国人労働者は減少しますが人件費の上昇分を価格転嫁できる下請けはそう多くないようで中小企業の賃上げ率は大手よりも鈍いです。

人手不足なら無理をして働く、もしかするとサビ残で対応している下請けもあるかもしれません。

さらにトヨタは傘下の日野自動車ダイハツ豊田自動織機が不正を行っています(東洋経済記事「ブランドに傷「トヨタグループ不正続出」の深刻度」)。

グループ内の各社が品質偽装や検査データ改ざん等安心安全にかかわる悪質な不正を行った背景にはトヨタ自動車本体に対する忖度もありました。

開発スケジュールもタイトで不正を行わないとスケジュール通り進行しないとの焦りもあったようです。

納期も品質管理も絶対なのは当然としてもそれだけのクオリティを要求する、質の高いものづくりを行うには相応の報酬で人員を確保しなければなりません。

しかしトヨタグループ各社はコストカットが厳しく人員も効率化優先でぎりぎりの人数で回していたのではないか。

不正は今に始まったことでなくかなり前の1980年代から行われておりもはや品質偽装が企業文化だったのではないかと思えてきます。

そして2012年以降法人税は消費税増税と引き換えに大幅な減税となりました。

海外で販売する際に消費税の還付を受けられるトヨタ自動車本体と違って国内市場に留まるトヨタの下請け各社は仕入でかかってくる消費税増税がキツイです。

消費税増税分をトヨタに価格転嫁できるかというとそれも難しく「代わりはいくらでもいるんだよ、値上げの前に自助努力で無駄をなくして消費税増税分を吸収しろよ」と無茶なことを言われて取引を打ち切られたくない下請けは涙を呑んで自腹を切ったわけです。

本来コストをかけるべきところのコストを削って捻出した5兆円の利益というわけです。

 

冗談じゃありません。

トヨタ1社の話ではありますが日本経済におけるトヨタグループの存在感を考慮するとやはりこのグループが一人勝ちする構造が日本経済全体に負担をかけているのではないかと思えてきます。

リーマンショック時は一般国民も大変でしたが大企業も大変でした。

実質賃金23か月連続減もやむを得なかった面もあります。

しかし現在の企業業績は絶好調です。

にもかかわらず一般国民はリーマンショック以上に苦しい生活を余儀なくされている上に増税増税増税社会保険料の値上げラッシュです。

一般国民からすればリーマン級の不景気であり賃上げに加えて消費税減税もしてもらわないと割に合いません。

次から次へとひたすら負担ばかりが増える一方で賃金が増えないのであればやはり円安と法人税減税の儲けを社会に還元しない大企業に対する優遇措置を削って格差是正と中低所得層の生活支援の財源に回さざるを得ないでしょう。

リーマンショックの翌年に政権交代が起きました。

当時の麻生政権の動きが鈍く一般国民の生活がどん底に叩き落されたのが導火線の一本になりましたが果たして当時の記憶は自公の偉い人にどれだけ残っているのやら。

当時とは民主党(立憲)に対する信頼がない点が大きな違いですが政治が期待できないとなると米国やフランス、ブラジルのように暴徒化するデモも発生する可能性も否定できません。

リーマンショック時以上の生活苦に苦しむ中低所得層への支援と格差是正が急務と言えます。