1413ページ目 住友化学の大赤字

昨年11月に業績下方修正のお知らせを出した住友化学ですが2月に入って2度目の下方修正を出しました(日経記事「住友化学、赤字最大2450億円)。

前回の下方修正では950億円の赤字になると言っていましたがさらに2.5倍以上に赤字が拡大しました。

たった3か月で大赤字が余計に悪化していますがいったい何があったんでしょうね。

記事を読むとやはりというべきか医薬と石化、より具体的には子会社の住友ファーマとサウジアラビアのラービグが足を引っ張りまくっているようです。

既に医薬と石化事業の危うさに関しては1335ページ目で述べたので割愛しますが医薬については住友ファーマの売上収益が前期比40%減の3500億円でコア営業損益は1310億円の赤字です。

石化に関しての売上は7%減ですがコア営業損益は870億円の赤字で前期より赤字額は529億円増加の見込みです。

既にリストラ策で半導体材料だとか機能材料事業その他でコストカットを進める案を出しており追加のリストラ策として化学関連商社の稲畑産業株を売却し特別利益で230億円ほど捻出することになっています(日経記事「住友化学稲畑産業株の売却益最大230億円 単独決算で」)。

ただ肝心の医薬と石化をどうするか抜本的な構造改革案がなかったので一体どうするんだろうと思っていたのですが想像以上に不味い事になっているようですね。

医薬については新たな収益の柱となる新薬の開発が急務ですが難航しており岩田社長は「止血」をするということで販売や研究開発体制の見直しを行うと言っています。

ただそういうのはとっくにやっていたんじゃなかったのか?

研究開発体制の見直しで研究開発力が減少したら売れる新薬の開発が余計に難しくなります。

販売も薬価改定圧力を考えると売れる新薬の開発をしない限りジリ貧です。

石化についてもラービグをどうするかが最大の課題ですがサウジ側と話し合うとは言っているものの大赤字だから撤退するというのでは先方も納得はしないでしょうね。

しかも中国のバブル崩壊で石化製品の需要も減ってきた一方で中国企業の石化設備は過剰となっており需要と供給を考えるとロシアのウクライナ侵攻により相場が急騰したような局面でもない限り採算性の改善は難しそうです。

2024年のうちに撤退にメドをつけられるかどうかは不透明ですが撤退となると化石燃料の輸出で日本に外交圧力がかかるリスクもあるだけに一筋縄ではいかないでしょうね。

 

医薬にせよ石化にせよ追加投資できれば持ち直す可能性もあるにはあります。

新薬の開発成功率の低さはどうにもなりませんがそれでも巨額の投資を継続して新薬を開発できれば一気に収益は改善します。

もともと新薬の開発とはそういうものです。

それに何より命に関わることですしここで投資をケチるのもどうかと思いますね。

ラービグにしても追加投資でより付加価値の高い石化製品を生産できるようになれば採算性は向上するでしょう。

地理的にもインドやアフリカといった今後高成長が期待できる地域に輸出するのに便利な場所にありますし追加の設備投資ができれば息を吹き返す可能性もあります。

撤退するより追加投資と技術貢献でサウジに貸しを作ることで化石燃料の調達で恩恵もあればなお良しです。

 

さて投資余力は大丈夫か?

2023年度第三四半期の現金及び現金同等物の期末残高は約2700億円ですが前年同時期には約5000億円ありました。

ずいぶんと減ってますね。

2023年度第3四半期決算説明の資料を見ると業績改善策の進捗でキャッシュ創出 約5,000億円(24年度末まで)という目標について今のところ7割の確保にメドがたっているようです。

まあ減配もしてますし保有株も売ってますからね。

ただ問題はその後です。

投資を削ってますけど2024年度に5000億円作ったけどその後はジリ貧というのは困ります。

というかアベノミクス法人税も下げたし金利も下げたんですけど投資のための借金をしやすいようにという目的でした。

利上げ観測もありますが利上げしたとしても政府が想定するような2%の金利になるかどうかは不明、ゼロ金利政策はやめるけど能登地震や世界経済の不透明さも考慮して実際は2%未満の金利になるんじゃないかと思います。

その程度の水準だったらまだまだ低金利です。

痩せても枯れても天下の住友財閥御三家企業にして経団連会長輩出企業ですし借金はできるでしょう。

住友化学は大企業とはいっても日本製鉄やトヨタ自動車東芝ほどの格がある企業なのか?二度も財界総理を出せるほどの実力があるのか?と思わなくもないんですが財界総理輩出企業として相応の投資はしてもらいませんとね。

有利子負債比率の推移についても確認しましたが(IRバンク住友化学参照)最悪だったのが2013年3月期の202.2%で業績悪化の傾向が現れた2023年3月期は124.78%であり最悪期よりはずっとマシです。

自己資本比率はここ10年で20%台から30%台前半をうろうろする水準で化学大手の中では悪い部類ではありますがどうしても借金が嫌だったら増資したらいいですね。

大赤字だし減配だしキングボンビー十倉君も万博とかで一般国民から不興を買っているし条件はあんまりよくないとは思いますがやってできないこともないでしょう。

そもそも証券市場は増資による資金調達の場でもありますからね。

 

まあ投資家からは文句が出そうですが攻めの投資よりリストラで現金を作るのに熱心な会社であることの方がより問題です。

「ペトロラービグ・住友ファーマは最大の経営課題。抜本的構造改革を急ぐ」と言ってますがこの双子の問題児を具体的にどうするかの説明が不十分です。

そのタケノコ生活みたいな経営で5000億円を捻出して医薬やラービグにどの程度の資金を振り向けるのか?あるいは振り向けず撤退の方向で進めるのか?

このあたりを明確にしてもらう必要があります。

売れる事業も全部売って削れるコストも全部削って残るは大赤字の医薬とラービグだけという状態は目も当てられません。

 

それと役員報酬に関しても追加で削減する必要がある、というかこんなことになるんだったらクローバック条項で役員報酬返還制度を整備しておくべきでした。

さらに十倉君は経団連会長だとか万博協会会長だとか社外の役職については辞退して住友化学の立て直しの専念すべきですね。

まあいい加減な経営で長年にわたって構造改革を怠ったツケが医薬とラービグの大赤字であり社内にいたら迷惑だから経団連だとか万博の会長に祭り上げてしまおうという話があったかもと思わなくもありません。

キングボンビーをなすりつけるような感覚ですかね。

もちろん経団連だとか万博にキングボンビーをなすりつけられるのも一般国民からすればたまったものではありません。

というか万博の追加コストが当初の2倍に膨らんだのは見積りが甘かったからというのもありますが住友化学の大赤字がたった3か月で2.5倍に拡大したのと共通するところがあります。

昨年時点での見積りはちゃんとやったんですか?

かなりいい加減な経営をやっているようにしか見えないのですが。

魚は頭から腐ると言いますがまず大事なのは経営責任を明確化して経営トップを適切な人材に入れ替えることが先なのではないか?

経営者が残念な状態ではいくら現金をかき集めたところで溶けてなくなるのが目に見えています。

住友化学が復活するとしたら十倉君や岩田君及びその取り巻き以外の人材を経営トップに据えて会長社長以下経営陣を抜本的に入れ替えてからでないと難しいのではないかという気がします。

やっぱり役員報酬減額より十倉君と岩田君は住友化学の会長と社長を退任して経営責任を明確にするのがいいと思いますね。