1172ページ目 加藤製作所

プライム市場経過措置銘柄第12回目は加藤製作所です。

加藤製作所といえば創業126年の超名門で現代でもクレーンや油圧ショベルなど工事現場で幅広く使われる建機大手です。

それがまさかプライム上場維持が危うくなりGC注記まで発生していたとは思いもしなかったです。

PBRも6月2日時点で0.27倍に沈んでいます。

業績に関してもコロナ禍前は700億円を下回ることがなかった売上高が600億円を割り込み2020年2021年2022年と経常赤字、特に2022年は減損もあり100億円近い大赤字を出しています。

2021年11月11日付で2027年3月までの流通時価総額100億円回復を目標にした改善計画を出していますが移行基準日における流通株式時価総額自体は95億円弱で多少足りていない程度です。

最悪の状況を予期して5年を超える期間を設定したのでしょうか。GC注記がつきそうな経営状況がよほどショックだったのかもしれないです。

とはいえ2022年3月期があまりにも内容が悪すぎた面もあります。

2023年の最安値は690円ですが黒字化により一時は1300円台を回復し株価は倍になり流通株式時価総額100億円も流通株式比率が変わっていなければ回復していることになります。

2022年度を初年度とする中期経営計画では売上高600億円台をキープしつつコスト構造改革を行うとしていますが国内外の景気が大崩れしなければ低空飛行ながらもぎりぎり流通株式時価総額100億円台をクリアできそうな気もします。

とはいえ売上高の減少は懸念材料です。決算短信でも触れられていましたが中国で売上半減は痛い。手薄だった北米南米及び欧州を強化した分が帳消しです。

中国バブル崩壊懸念や地元メーカーの追い上げが厳しかったとのことですが来年以降に中国政府がどれだけ景気対策を行うかは不明、建機類の国産化を進める中国政府の国策も考えれば(ニュースイッチ記事「建機業界で進む脱・中国、住友建機も「油圧ショベル」依存度引き下げ急ぐ」)これまでのようにはいかないのでしょう。

過年度に低迷した要因としてコロナ禍でコストカットが追い付かない売り上げの減少、燃料や鋼材など原材料費値上げ、為替の変動、不安定な国際情勢、半導体不足等を上げていますがコロナ禍は制限緩和されたもののそれ以外の要素は引き続きリスク要因として継続しそうです。

プライム上場維持基準は達成できたとしてもPBR1倍割れの解消、一株純資産は6月2日時点で3899円ですが1000円台の株価を3倍以上にするのは相当難しい、過去10年で2014年12月に株価5000円を超えた時期もあったのですが2015年3月期の売上は800億円、経常利益86億円でそれに準じる業績の実現が要求されるでしょう。

中期経営計画からすればPBR1倍割れ解消に向けて動き出すのは2025年以降になりそうです。

スピード感に欠けるのではないかと思わなくもないのですが建機の製造販売という性質上、景気の変動の影響が大きく特に中国経済の影響は無視できず売り上げの劇的な改善はなかなか難しそうです。

ただコーポレートコミュニケーションに関しては改善の余地はあります。

あまり加藤製作所のニュースは出てこない、ネット上の口コミ情報サイト(enライトハウス)には工場が汚い、寮はあるが男性のみ、昭和の企業風土で女性の昇進が難しい、給料は安定しているが高いわけでもない、といった口コミ情報が上がっていますが事実なら改善し、そうでないならその証拠情報を出したほうがよい。でしょう。

就職希望者向けの情報とはいえ経営の基本になるのは人材であり残念な評価ばかりだと投資を見送る投資家も出てくるかもしれないです。

Youtubeの公式チャンネルも確認しましたが12年前から開設し直近まで投稿は続いています。

ただ残念なことに再生回数は伸びていないです。

更新するだけ立派だと思うのですがこれも外部の専門家からアドバイスを受けたほうがよいかもしれないです。

さて最大の問題は創業家社長の存在です。

youtubeで【加藤製作所】危機を乗り越えシェアトップへ。V字回復の裏側と次の成長ビジョン【社長名鑑】も確認しましたが2020年12月取材で投稿日は2021年2月18日となっています。

危機を乗り越えるも何もコロナ禍真っ只中の最中のインタビュー、かつ、100億円近い大赤字を出す2022年3月期直前に加藤社長はいったい何やってんだ?と思ってしまいました。

コロナ禍で赤字を出している最中にドヤ顔インタビューで調子に乗っている場合ではないです。

この時期にノーマスクで感染防止対策をしていないあたりどうなのかと思ったのですが2020年11月の第2四半期決算短信及び決算説明資料でコロナ禍が厳しい旨の話をしているのに翌月のインタビューでコロナ禍対応について語っていない点も全くよくわからないです。

2019年投稿の【インターネットTV局カウテレビジョン トップリーダー対談】創業120年の建設機械メーカー 「KATO」の挑戦、売上7割減の経営状態を打破した 目標設定術、100年企業の4代目に聴く 経営者のあるべき姿も見ましたが内容もネクタイ(取締役就任当時も似たようなネクタイをしているが勝負ネクタイでどうしても愛着があるのであれば無理に変えろとは言わないが)もインテリアも被っていて実は同じ動画を多少改変しただけなんじゃないかと思ってしまったのですがよく見るとスーツの襟と柄は違います。生成AIで合成したのかと思わなくもないですが一応別の動画なのでしょう。

なおこの種の話は他の場所でもやっていて玉川学園HP記事「企業経営の理解を深める。株式会社加藤製作所 社長による講演会を開催しました」でも似たような話を2014年に行っていますがインタビューの原型は既に10年ぐらい前からあって基本的に使いまわしの人なのでしょうか。

ただ業績が悪くなる時期、コロナ禍があった時期に2019年2020年と似たような内容のインタビューを2年連続でやっているあたり危機感が足りていない、ある程度のところで満足したら回想モードに入ってしまう経営者としか思えないです。

先代は継がなくていいと言っていたそうですがやはり世襲の甘さが出たのでしょう。

継ぐも継がないも何も加藤製作所はプライム上場企業で株主構成も加藤社長本人が2.91%の株式を保有し資産管理会社の持ち分は不明ですが株主総会創業家が全てを決定できるほどの持ち分を有しているわけでもないです。

にもかかわらず平然と社長業を家業と認識しているあたり会社を私物として考えているのではないかと思えてきます。

今後業績が回復し再び2015年3月期並みの業績を達成できてもまたこの社長は調子に乗って盛大にコケそうな気もしました。

というか中国工場は2006年操業だそうですが翌年にはサブプライムローン問題発生、その1年後はリーマンショックが起きるというかなりタイミングが悪い時期です。

機械製造メーカーなのにホテル事業に手を出して損失を出したのもタイミングが悪いです。

2008年に新商品を出しているが感無量から急転直下の業績悪化で何かよくないものを持っているのではないかと思わなくもないです。

その後はアベノミクスもあって2010年代は概ね堅調に推移していますが赤字を出して再び会社が危機に陥っている状況で回想モードに浸っている場合ではなかったですね。

バブル崩壊後の不況で売り上げ1000億円が300億円に激減したのに比べればまだマシとはいえ(これも3代目社長に甘さがあったのではないか)コロナ禍の2020年の時点で近い将来過去最高の売上高1080億円をまず超えたいと言っているあたり楽観的なのかこれからくるナイアガラを前にヤケクソになっていたのかは不明です。

2021年3月期は売上高600億円割れして経常赤字も20億円弱出たがいったいどこがいいところまで来ていたのやら。

2022年3月期の有価証券報告書のKAMにも中国子会社の貸倒引当金について記載があるのですが社長の中国事業への愛着で忖度があり管理が甘くなった面もあるのではないか。

本来なら2022年3月期の時点で経営悪化の責任をとり辞任論が出てきてもおかしくない話です。

まあ数値目標をきちんと立てることが大切なのは正しいです。

プライム上場維持基準はどうにか達成ということなら今度はPBR1倍割れの状態をどう解消するのかについてベースとなる業績について数値目標を立てて社会一般に説明してほしいものです。

流通株式時価総額100億円はすぐに達成できる目標(加藤製作所だったらすぐに達成できないと困るが)ですがPBR0.5倍、株価だったら2000円弱達成はかなり頑張らないと達成できない目標、PBR1倍、株価3899円はさらに努力しないと達成できない目標と言ったところでしょうか。

とりあえずプライム市場上場維持基準達成で士気は上がったかもしれないですが次の目標にはどう取り組むのか。

ずっとPBR1倍割れで株主に忍耐を強いるのもどうかと思います。

天上三日底百日で投資家も忍耐が大事ですがそろそろ結果を出して貰わねば困るものがあります。

人間が生きている以上は建物も当然必要、インフラ工事がある以上は建機類も100年経っても必要であり生成AIで淘汰される業種ではないとは思います。

大きな製品なので最悪の事故が起きるリスクがあるとの話は全くその通りであり自動運転機能を整備するにしても非常時に備えて人間の運転もできるようにしておく必要はあるでしょう。

ただ社長の姿勢がよくない、社長インタビューとか自慢話をするなとは言わないですが得意満面になってすぐに急転直下の危機が訪れるあたりは心配になってくる。

とりあえず黒字化はしたが勝って兜の緒を締めよで今度はPBR0.5倍割れ改善、株価2000円復帰を実現してほしい。そして社長は交代させたほうがよく次の社長は世襲でない人材、経営の加藤家色は薄めた方がよいのかなと思います。