1335ページ目 リスク管理に問題はなかったか?住友化学

住友化学の業績が絶不調です。

経団連会長輩出企業が当期は950億円の赤字になるそうですが住友化学の赤字というのは過去にそんなになかったように思うんですけどどれぐらい大変なことなんでしょうね。住友化学有価証券報告書が2001年3月期まで置いてあったので売上と当期純利益を確認し同時にヤフーファイナンスで各年度末の株価を1997年分まで確認してみました。
2016年に国際会計基準に移行しているのでかなり前の数字を比較するにあたって留意は必要ですが売上高に関しては90年代後半に1兆円前後だったのが2006年あたりから急拡大しリーマンショックで一時的に売上成長は止まるもその後は2兆円台になり2017年3月期を除き2021年3月期までほぼ2兆円の売上となっています。
2022年3月期に急激に売上高を増やしていますがこれは化学業界全体が石化製品の価格上昇と半導体関連で潤ったのが原因です。
売上高に関しては値上げの浸透もあってか2023年3月期には2兆8952億円の売上高を計上しています。
最終利益に関しても2022年3月期は上記に加えて医薬品子会社の契約一時金が寄与し1864億円の当期利益となり配当金も過去最高の一株24円に増配しているのですがそれが翌年に当期利益は20分の1以下になってしまいました。
当期利益に関しては市況の影響や医薬品事業のような波のある事業を行っていることもあってか平時においては当期利益1000億円を超える年もあれば2012年3月期のように100億円割れするような年度もあります。
ただ赤字に関しては滅多になく2013年3月期に繰延税金資産を取り崩した時とリーマンショックが直撃した2009年3月期ぐらいしかありませんでした。
しかし2023年11月1日付の2024年3月期通期業績予想の修正に関するお知らせで2024年3月期の親会社株主に帰属する当期利益は950億円のマイナスになるというではありませんか!
経団連会長輩出企業で住友御三家が何という体たらくでしょうか。
業績を確認できるだけ遡って26年分見渡してもこんな大赤字はなかったです。

 

株価に関しても波はあるのですが2023年11月17日終値で398.3円となっています。
ただここ10年の株価を見ても2018年に800円台に達したもののリーマンショック前の2006年のように900円台にはなっていないです。
アベノミクス後に量的緩和を行い円高も是正したのになぜ2006年の水準すら超えられないのでしょうか。
2006年3月末はだいたい1ドル116円程度だったのですが。
ドルベースで計算すると1株7.7ドルから1株2.6ドルでほぼ3分の1の価値に下落していることになります。どうしてこうなった?
2013年3月期の有価証券報告書には円高について触れられていましたが経済界の懸念を安倍元首相はきっちり解消して法人税減税までしてあげたのですが。
リーマンショック後に急落してその後はアベノミクスまで株価は300円台から400円近辺でうろうろしていた株価は結局元に戻ってしまいました。
アベノミクスでさんざん優遇したのに株価は元の木阿弥とは何とも残念です。
法人税減税なしでもアベノミクス前の方が株価は高かったですがアベノミクスの10年間で住友化学は一体何をしていたのでしょうか?
ていうか911同時多発テロがあったりITバブルが崩壊したあたりの2000年前後ですら株価は500円近辺で1997年3月末は483円でした。


売上高は増えましたが業績は不安定なまま、医薬もラツーダの次が続かない。
住友化学経営判断に関しては既に他の人も指摘しているけど(東洋経済記事「住友化学の最悪決算招いた経団連会長の経営判断 外部要因への耐性低く複数事業が同時に炎上」)2022年3月期に絶好調だった分の反動は予想しなかったの?
山高ければ谷深しの業界なのはよく知ってると思うけど対策できなかったの?
去年のラービグに関してはまさかのウクライナ侵攻による原油高が原因で業績が急改善したけど去年の時点で偶然に頼った業績改善が続かないことも日経記事「住友化学原油高で一息 誤算のサウジ2兆円石化事業」で指摘されています。
本来ならリストラが必要なほど累積損失が膨らんでいたわけですがウクライナ侵攻に伴う原油高が続いている内に抜本的な対応をすべきではなかったか。
自助努力によらない業績改善、しかも戦争による棚ぼた利益、言わば住友家の事業精神で戒める浮利なのですがそれを原資に増配している場合ではなかったと思うのですが。


株価を見ても石化製品市況の改善が一時的で住友化学の業績が浮利によるところが大きいのを投資家の多くが見抜いて浮利を追わない選択をした、増配があっても住友化学の株を買わないという意思決定をしたからロシアによるウクライナ侵攻後も株価は右肩下がりで2021年6月に600円あったのが現在の400円割れまで至ったんだろうね。
投資家の方が住友財閥の事業精神をよくわかっていたとは何とも皮肉な話だけどそれにしたって戦争で儲けて翌年はこの様とはね。仁徳の無いカネはどこかへ行ってしまう、悪銭身に付かずだけど、もうこんな会社に法人税減税をする価値はないんじゃないかと思います。
住友財閥のような戦争で儲けた人たちこそ防衛費を負担すべきですが防衛費の法人税増税延期も経済界を甘やかすだけで本人たちの為にならない、結局役員報酬だけ確保して賃上げはしないんじゃないかと。

実際、実質賃金も1年以上、下がりっぱなしです。


ラービグに関しては守りに入っているとのことですが撤退して市況変動リスクを低減したいのであれば2022年時点が絶好のタイミングだったとも言えます。
このまま世界情勢が不安定化して石化製品市況は当分安泰だろうと思ったので構造改革を先送りしたのでしょうか。
ずいぶんと甘い経営判断ですがイスラエルガザ地区侵攻もあり今後世界情勢もどうなるかわからず石化製品市況に関しても同様ではあります。
多くの人にとって不幸にもその時が来てしまった場合はどうするのか?そういえば東芝半導体事業が好調な時にリストラで半導体事業を切り離す話もありましたが現在になってキオクシアは半導体需要の減退で半導体価格が下落し再び業績が悪化しています。
ラービグも巨額の投資が必要な割に市況リスクが大きい半導体事業と似たようなリスクの臭いがするのですが(技術の陳腐化リスクは半導体の方が上だが)高値のうちに撤退するのも一つの方法ではあります。

撤退にあたってはサウジアラビアと話をつける必要があると思いますが次に石化品市況が改善した時に備えて地ならしはしておいたほうがいいかもしれないですね。


医薬もラツーダ以外にどれだけ種を蒔いたんだかわかんないですが候補を絞り過ぎたんじゃないか?
歴史はあるけど中堅規模しかない状態でどう勝負していくのか。
年々研究開発費も上昇してくるけどそれでも他社は果敢に投資を行っている中でカネがないから投資は絞りますという話になったら取り残されて追い付けなくなるのも目に見えています。

抗がん剤の開発中止とか痛かったけど新薬開発に関してはどうしたって失敗リスクが大きいのは性質上やむを得ないところでもあります。
しかし種を蒔かない事には育たない、芽生えすらないわけでリスクの高い医薬品開発事業をやるんだったら他の事業の不確実性を低減して医薬品事業が赤字になった時でも耐えられる経営体力をつけるしかないですね。


健康農薬産業も減損損失を出してるけど元々差別化が難しい上に供給過剰は分かっていたことで減損損失も厳しく見積もって2022年3月期の時点で早期計上できていれば2023年3月期の赤字を150億円弱減らせたのにね。これも確実を旨とする事業精神からすれば楽観的な見通しで事業の価値を実態より高く見積もり損失計上が遅れたのも問題と言えるね。
2013年3月期も繰延税金資産の取り崩しで510億円の赤字を出してるけど重要な時に損失の見積もりが甘い傾向でもあるんじゃないか?


リストラをやると言っているけど(日経ビジネス記事「住友化学、サウジ2兆円プラントの憂鬱 赤字転落で「危機的状況」」)不採算事業の縮小売却はともかくとして投資の厳選とか人材投資だとか研究開発投資だとか政府の方針に全く反するんだけどいいの?経団連会長がそんなことやっても。
2023年度上期決算および経営戦略説明会資料は確認しました。
エッセンシャルケミカルズ事業と医薬品事業の止血ができてないけど残念なことにこれらの事業は数年間の赤字覚悟でも投資を続けないと将来の収益に育たない問題児事業だね。
これら二つの問題児事業に手を付けない限りは他の約30件の事業を切ったとしても多寡が知れてるよ。
ラービグも医薬も利益を出すにはさらなる投資が必要だけど両方とも市況変動だとか開発失敗リスクで利益がすごく不安定、住友化学に両方でリスクを取れる体力はある?
どっちも利益云々以前に長年の思い入れのある事業だとは思う。ラービグは2005年に設立してるけどそこから売上規模1兆円程度でしかなかった住友化学が売上規模2兆円台の総合化学になった、前任者の米倉君の代からの社運を賭けたプロジェクトでもう20年近くにもなる。

ラービグを切ってまた売上高1兆円台の会社に戻ったら財界総理のポジションを出せるかどうかは不明だね。

医薬にしても大阪というか日本一の薬の街として知られる道修町で明治期に当時の有力な薬業者が大阪製薬として一つにまとまり100年以上にわたって大阪はもちろん日本や世界に医薬品の開発を通じて貢献してきました。

住友財閥自体江戸時代に薬種を取り扱っており医薬品については長い伝統があり住友財閥の源流の一つとも言えます。
しかし追加投資ができないんだったら競争力を維持できない、ポートフォリオ的には双子の問題児だけど2人同時に世話はできない、世話する覚悟がないのであればどっちか一方を養子に出すのもやむを得ないんじゃないかと思うんですよね。

ラービグは守りに入っているそうだけど追加投資してもっと高く売れる付加価値が高い製品の製造ができないんだったらラービグから手を引かざるを得ないんじゃないかな。問題児の事業を金の生る木の事業の運用でやったら落ちこぼれて負け犬事業になるにのは目に見えてるよ。
太らないと勝てない力士や筋肉をつけないと勝てないレスラーにカネがないので栄養費はケチりますけど技を磨いて何とかしてねと言っているようなものだけどある程度は技で補えても力士やレスラーとして身体をつくれなかったらどうしたって基礎体力レベルで歯が立たない相手には対応できない、一瞬だけ勝てたとしても相手も基礎体力を地道に鍛えた上で技も磨いたらもう勝負にならないと思いますね。

絶対的な戦力の差は戦術では補えないのも太平洋戦争で学習しなかったかな?
毒親の元では必要な教育を受けられないけどラービグも医薬もきちんと必要な投資を継続できれば大きく成長できるポテンシャルがあるのにもったいないね本当に。

構造改革というかきちんと世話をできる人にバトンを渡すのが住友化学にとっても事業にとっても社会全体にとっても利益になると思うよ。

 

リスクマネジメントに問題はないと言い張っているけどラービグとか住友化学ポートフォリオマネジメントを見る限り致命的な問題があるように思います。

本当に問題がないと住友化学は思ってるのでしょうか?住友化学の経営体力でどうにかできる水準以上のリスクを取り過ぎてるから損失が重なって赤字になってるのにね。
そりゃあ何でもかんでも経営学の理論通りいくわけじゃないけどさすがにこれは学部生レベルでも不味いと思う意思決定じゃないかな。いつから住友財閥は学部生以下の素人経営になり下がったのだ?


リスキリングは重要だけどまず学部生レベルの一般的な経営学の基本テキストを読み直してみるのもよい、むしろ経営者だったら学部生より過去の経験とか取引先とか他社の事例も知ってるんだしテキストの内容が腹落ちすると思いますね。
学部生レベルといっても決して内容が薄いということでなくむしろ多くの人に理解できて、かつ、多くの企業における様々な実例を通して実際に理論が正しいことが証明され入門レベルでも最初に学ぶべき重要な理論であるからこそ学部生が最初に学ぶ基本テキストとして採用されているわけでむしろ最先端で実際に正しいかどうか証明されていない内容の難解なテキストを読むより効果的かもしれないです。

残念な業績を見る限り住友化学において経営的に問題が生じているとしか思えないですがそれでもリスクマネジメントに問題がないと考えるのはさすがに不勉強が過ぎるんじゃないか、経営陣こそリスキリングが必要なんじゃないかと思えてきます。


住友化学の経営から残念な香りが漂ってきますが住友財閥の事業精神を馬鹿にしてる、本心から信じていないのは住友財閥の人たちかもしれませんね。

実際、住友財閥の事業精神を知ってか知らずか投資家の多くは2022年の時点で業績好調、かつ、増配もあったのに住友化学株の購入を見送っています。
ある意味で一般投資家の方が住友財閥の大番頭よりずっと住友財閥の事業精神を尊重しているとも言えますが戦争で儲けたカネでここ10年で最高額の役員報酬を受け取る所とか新居浜で肥料製造所として創業した頃の精神はどこに消えた?

令和における住友財閥の大番頭ときたらフウイヌム国のヤフーのような強欲な人たちだよなと思ったわけです。美味いか?戦争で儲けたカネで飲む酒は。円安に加えて原油高で燃料費とかも高騰して我が家も含む多くの人たちがとても困ったけどヤフーみたいに富を独占してやりたい放題とかもうどうしようもないですね。


長期的な意思決定の結果としてここ20年ない水準の赤字決算見通しになったわけでどう考えても前任者の経営判断が問題だったとしか言いようがないんですよね。
十倉会長の役員報酬も過去10年間遡って確認したけど2014年3月期から2023年3月期までの合計で12億1900万円貰ってるね。
代表取締役としてもっともやらなければならなかった構造改革を怠った10年の結果としてここ26年で最悪の大赤字になる見通しだけどこの人の10年間は本当に12億円の価値があったと言えるのかな?
2022年3月期は過去10年で最高額の1億4100万円だけど2023年3月期以降の業績の崩落ぶりだとか2022年3月期自体が戦争による棚ぼた利益という浮利が原資の業績な点を考慮するとどう考えても1億4100万円受け取ってはいけなかったね。

自助努力によらない、かつ、戦争という人類にとっての不幸が理由の浮利を貪る姿勢は心から軽蔑せざるを得ないですね。
どんなに出世してカネと名誉を独占したとしても他人の生き血をすするような生き方はさすがにないですね。
報酬の削減も賞与支給なしと基本報酬月額の10%分の自主返上5か月分とかずいぶんと他人に厳しく自分にお優しいことです。
人への投資で住友化学の役員に投資したいとは一切思わないのですが。
前任者のさらに前任者の責任も大きいけど前任者の代で是正できなかったのか?
さすがに10年以上も時間があったのに何もしなかった経営者を活用する方法というのは中々思いつかないです。
新居浜で肥料製造所を創業した頃の原点に立ち返って反省しろ!という感じでまとめようかと思っていましたがここまで住友化学の内容の悪さと万博など他の場所でも行った十倉会長の悪行の数々を見る限りヤフーみたいに反省もしないし学びもしないということであればさすがにこのまま権力を預けておくのもどうなのかと思います。
せめて経営責任を明確にして信賞必罰を徹底する、住友化学会長もですが万博協会だとか経団連会長も辞任して一切の公的な仕事から手を引くのが適切かと。
過去10年だけでも既に12億円も貰ったんだからもう十分だろ。
あまりにも仕事のクオリティが低すぎてさすがにリコール対象だと言わざるを得ないのですがもう本当に一般国民の足を引っ張らないでほしいものですね。