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プライムに残れそうにない企業5回目はコナカです。

ロードサイド型スーツ量販店は元々青山AOKIの二強が特に有名ですがそれに次ぐ規模としてコナカも有名、コナカと言えばあつくるしさわやかな松岡修造のCMを思い出す人も少なくないかもしれません。

スーツ量販店の競争はコロナ禍前からずっと熾烈だったのですがコロナ禍後はリモート勤務の普及でより一層大変な事になっています。

 

業績と株価を確認しましたが案の定コナカは非常に苦しくなっておりコロナ禍前からずっと赤字で既に2018年から5年間継続し売上高も700億円の大台を回復できていないです。

2023年2月21日時点の非流通株式も含む時価総額は約110億円ですが2022年12月12日付でコナカが発表した上場維持基準の適合に向けた計画に基づく進捗状況についての開示を見ると流通株式比率は49.7%なのでこの比率が変わらないなら株価は2倍を目標にしないと流通時価総額100億円はクリアできないです。

 

元々スーツ関係は入学や入社の関係もあり秋から春が繁忙期なのとコロナ禍からの回復もあり直近の2023年9月期第一四半期は黒字化しているのですが日経記事「コナカ、通期の最終損益予想を下方修正 4億7700万円の黒字から2億4800万円の赤字に」にある通り業績改善の進捗状況は厳しいです。

2022年9月期の振り返り並びに中期経営計画の進捗状況も確認しましたが既製品は守りの戦略で業績好調なオーダースーツのディファレンスを中心に一点突破を目指す戦略なのでしょうか。

過当競争のスーツ量販店より今後伸びそうなオーダースーツに注力するのは合理的ではあります。

しかしコナカの止血が3年以上経っても実現できない計画になっているのと子会社のサマンサタバサの取り扱いについて説明がないのは困ります。

 

今後10年はサプライチェーンの寸断に備えて在庫は多めに確保すべきとは言いましたがコナカの在庫回転日数を見るとほぼ1年かかっており新品のスーツといっても1年前のものではさすがに買う気がしないです。

別に古くても安いなら気にしないというならそれでもよい、スーツセレクトなどツープライス業態のスーツで十分ですがコナカの最上位モデルは11万円もします。この価格だったら百貨店でオンワードや三陽のブランドスーツを買える、オーダーのディファレンスを買った方がお買い得です。

スーツは素材やデザインも大事ですが何と言ってもサイズのフィット感が大事で標準体型だったら吊るしでも十分かっこいいのですが2cm3cmの誤差は普通であることも考えるとオーダーで仕立てる余裕があるならオーダーの方がよいでしょう。

というかスーツの流通量が減っても経済にはそこまで大きな影響もないのでコナカのスーツに関してはもっと在庫を減らしてもよいです。

 

百貨店のブランドスーツやオーダーメイドより品質面で今一、ツープライスより高いという中途半端な感じのコナカ業態は減らしてディファレンスやスーツセレクトを強化する戦略は妥当です。

百貨店そのものの凋落ぶり、郊外型スーツ量販店で有名なコナカが百貨店に入れるほど百貨店側も経営が厳しくなっている、入居した百貨店が今後存続できるかどうかは何とも不明ですが売れているなら出店しない理由はありません。

コナカの跡地に関しても有効活用しない手はない、というか遊休不動産では困るのでこれも妥当です。

 

ただ2026年9月期の段階でもコナカの営業損益の赤字を解消できない計画になっているのは何とかならないのでしょうか。

さすがに3年経っても主力事業の止血ができないのは厳しい、状況によってはコナカ事業で追加の減損が発生するリスクも否定できず投資はしばらく見合わせた方がよいと考える投資家も少なくないのではないでしょうか。

PBRの低さは経営者及び会計監査人VS投資家の事業価値に対する認識の違い、事業価値が経営者や公認会計士の見積もりより低いと投資家が認識し将来的な減損損失の計上を織り込んだ結果としてPBR1倍割れになるという面もあり得るのですが経営者及び会計監査人はこの点に関して説明をより充実させることが求められます。

 

競合他社の動向も気になるのですが青山も「すべての人に、オーダーメイドスーツを。」でオーダーメイドスーツ事業は強化しています。

規模の経済性で言えば紳士服スーツ販売量世界一といった話もある青山が有利です。

競合する青山が高品質な生地を大量仕入れで安く入手しその分買いやすい価格で販売できれば2026年9月期に想定する売上100億円弱・利益15億円強をディファレンスが確保できない可能性もありますがディファレンスで使う高品質な生地はコナカで1年間も滞留する在庫の分もセットで仕入れないと安くできないというなら単純にコナカの既製服をリストラして解決というわけにいかずコナカの赤字解消は難しいのでしょう。

 

C-station記事「ITによって「大量生産」の概念が変わっていく?│コナカ社長インタビュー」も確認しましたがコロナ禍前の段階からデジタル化を推進したのは評価できますがコロナ禍を経て今後はデジタル化が当たり前になっていくことを考えるとデジタル化で差別化は遠からずつかなくなることも想定されもう一つ何か新しい強みを見つけないと難しいかもしれません。

 

スーツ関係の事業は今後も厳しそうですが連結子会社のサマンサタバサの経営再建について親会社として一言も触れていないのはさすがにどうかと思います。

上述の記事の通りサマンサタバサの止血が済んでおらず減損も発生していますがサマンサタバサは2023年2月21日時点で時価総額65億円、売上高250億円の企業ですが7期連続の最終赤字となっており当期損益も20億円の赤字に下方修正しています。

金額的な重要性を考えるとこれをどうにかしない限りコナカ本体に対する投資家の不信感は払しょくされないでしょう。

 

2020年に連結子会社化していますがよりによってコロナ禍の最中に一体何をやっているのか?2019年の資本業務提携はコロナ禍直前で気の毒な面はあったのですが子会社化するからには相応のシナジー効果を発揮できないと困ります。

2019年9月18日付の株式会社コナカ及び株式会社サマンサタバサジャパンリミテッドによる資本業務提携に関する基本合意書締結のお知らせは確認しました。

 

サマンサタバサジャパンリミテッドは、コナカにはない女性の顧客層を有しており、また店舗戦略やバッグを中心とした「製造小売」システムなど、コナカグループにとってシナジー効果が期待できると判断しました」、「サマンサタバサジャパンリミテッドも消費者の低価格志向が続く小売業界の中にあって、効果的な店舗展開とプロモーション活動及び商品戦略などを展開してまいりましたが、更なる成長のためにコナカと同様に他社との連携も視野に事業領域の拡大を検討してまいりました」、「本資本業務提携により、相互の強みを生かし、互いの持つノウハウを共有することにより、お客様のニーズにきめ細やかに対応していくとともに、さらなる両社の企業価値向上を図ってまいります」とあります。

 

さてコナカはサマンサタバサの女性顧客にどうアプローチを行ったのか(サマンサタバサの販売サイトも見ましたがサマンサタバサのバッグに合う大人可愛いスーツは売れたのか)、サマンサタバサはコナカと提携して事業拡大はできたのか(若い女性だけでなくビジネスパーソン向け市場も開拓できたか、既に30代40代向けの姉妹ブランドを展開していますが就活前にサマンサタバサを愛用していた女性に社会人になった後もビジネスでもプライベートでも使ってもらえる、現在のヒルトン姉妹が身に着けても違和感がなくサマンサタバサを卒業した顧客に戻ってきてもらえるバッグは開発できたか?)、店舗の出退店ノウハウの共有で具体的にどんな成果が得られたのか、コナカ×サマンサタバサでブランド価値はどう上がったのか、サマンサタバサのブランド認知度が高いのは知っていますがその分業績が不振だとコナカにも悪影響が及ぶ点は考慮しなかったのか(以前伊藤製作所のサマンサ田端がパロディ商品として話題になったのですがサマンサ田端の存在を知ったのをきっかけにパロディの元になった10代20代女性に人気があるサマンサタバサを知った人たちもいてその中にはサマンサタバサがターゲットにしておらずコナカがターゲットにする中高年男性も少なからず含まれているのではないか)、製造や物流の効率化はどの程度成果が上がったのか、コナカとサマンサタバサは客層が違いますがコナカとの人材交流や接客ノウハウの伝授はサマンサタバサにどう役に立ったのか(上述のC-station記事には社長自ら接客することもあるとの話だがサマンサタバサで接客してみて何か改善できる点はあったか?その改善で店舗の生産性はどの程度向上したのか?ディファレンスのオーダーメイドスーツを買ってもらえそうな顧客の存在は確認できたか?)、資本業務提携から3年以上経ったが具体的なシナジー効果についてそろそろ説明してほしいものです。

 

減損損失を計上しているあたりシナジー効果はあまり発揮できていないのは察しが付きました。松岡修造とヒルトン姉妹(現在どうしているだろうか…)、どっちも大人のセレブ同士で意外とコラボ広告も悪くない組み合わせかもしれないですがそもそもコナカのスーツと大人可愛いサマンサタバサのバッグで互いの顧客層開拓にどうシナジー効果を発揮するのか想像するのはなかなか難しいものがあります。

 

その辺はマクマーン&テイト社のダーリン・スティーブンスとよく相談したらよい、というか冗談でも何でもなくコナカとサマンサタバサのイメージはファッション分野以外に特に共通する点は多くないですが認知度の高いサマンサタバサのブランド力を主にビジネス向けのコナカのスーツにどう活かすか、特にコナカが売りたがっているのはスーツセレクトの若者向けスーツよりディファレンスのオーダースーツでサマンサタバサを何か活かせる点はないか、サマンサタバサ決算資料に初めてのスーツ始まりのスーツでスーツセレクトとのコラボをやっているのは確認しましたがコナカの方でもスーツセレクトについてもっとコラボの話をアピールした方がよいかもしれません。

 

親会社と子会社で戦略がマッチングしていないですがブランド・広報戦略に関して資本業務提携に踏み切る前に広告代理店あたりとも相談したほうがよかったかもしれないですね。

大量生産の既製品スーツの需要が今後減少していく中で郊外型スーツ量販店という業態からのリデザイン、リブランディングは必要ですが今後もサマンサタバサのシナジー効果について説明できない、サマンサタバサの業績を改善できないなら資本業務提携は解消して貰わないとサマンサタバサのさらなる低迷を懸念しコナカから手を引く投資家も増加するかもしれません。

 

あと気になったのがコペルプラス事業です。業績に占める割合は低いですが少子化対策育児支援は国策となっています。今後10年間でどういった経営戦略でどの程度の成長を実現する計画になっているのか。まだ試行錯誤の段階なのでしょうが将来性が期待できる内容なら子育て関連銘柄の1社として認知され投資を検討する投資家も出てくるかもしれません。

とはいえ計画が出てこないところを見る限り本業の不振を補って余りあるほどの成長は今のところなさそうです。

 

コナカの既製品スーツもサマンサタバサのバッグも厳しい状況で2025年3月までにコナカが流通時価総額100億円を安定的に維持できる水準まで回復するのは難しいかもしれないです。

着飾れニッポンの動画CMも確認はしました。何だかんだでドレスアップは楽しく何を着るのも本人の自由とはいってもスーツだってフィット感が重要でありバブルの頃のようなワンサイズ大きな身の丈の合わない着こなし方は考え物、バブルの頃は個人だけでなく経済全体も企業もずいぶんと背伸びしていましたがあまりにも社会全体で身の丈に合わないスタイルを続けたのが後々の負担になったのではないかと思えてなりません。

「弱さをさらけ出せる人こそ本当に強い人なんだ!」と松岡氏はコナカHPで熱く語っていますが現状の業績と株価の不振及びプライム市場残留が厳しいという弱さを認める企業こそ本当に強い企業であると思います。

たとえプライム上場という権威の衣で着飾っても本質が伴わなければ生き残れない、馬子にも衣装では続かないでしょう。

上品な輝きの素敵なカフスを持っているのだから何もわざわざ大きなスーツで体格を大きく見せる必要はありません。

プライム市場に残れなかったとしても「これで終わりでなく、新しいコナカの始まり。」でスタンダード市場から再びプライム市場再上場に向けて勝ちに行ってほしいものです。