1074ページ目 ヴィアホールディングス

プライム市場に残れそうにない企業第8回目はヴィアホールディングスです。

ここは焼き鳥の扇屋やお好み焼きぼちぼち、なめらかプリンのパステル等複数の飲食店ブランドを運営する企業です。

かつて大盤振る舞いの株主優待を実施していて1000株保有していれば500円分の食事券が半期ごとに50枚、年間で50000円分の無料食事券を得られる個人投資家に人気の銘柄でしたが2017年5月12日付で内容を変更し1000円ごとの会計で500円分の割引券が使える仕様となるIRを出し株価は1100円台だった株価は翌日1000円割れし、その後1000円台を回復することなく崩落を続け2021年3月3日にさらに株主優待を縮小し2023年2月17日の時点で95円という逆テンバガー銘柄となっています。

元々株主優待で個人株主の人気を集めていた銘柄ですが飲食業界はコロナ前からレッドオーシャンの市場で重すぎる株主優待コストの負担に耐え切れなかったであろうことは想像に難くないです。

一株1000円で1000株なら100万円で5万円分の優待券、個人株主にとっては5%の利回りになるのですが会社側にキャッシュが5万円分入ってこない状況は痛いです。

一方で割引券でなく無料食事券で人気を集める飲食店系の株主優待は他にもたくさんあり投資家にとって「代わりはいくらでもいるんだよ」という状況なので割引券程度では多くの個人投資家から離反されるのも当然ではあります。

なお逆テンバガーで1000株を110万円で買った人は今も継続保有していたら100万円以上損している計算になります。

企業にとって負担の大きな株主優待で人気を集める銘柄に投資するのは株主優待の持続可能性を考えるとなかなかリスキーな投資と言えそうです。

さて2023年3月2日時点の非流通株式も含む時価総額は36億円、移行期準備である2021年6月30日時点における流通株式時価総額は47億円ですが約2年経ってよりいっそう状況が悪化しプライム市場残留のハードルは高くなっています。

改善計画書の業績目標に売上高はないですがコロナ禍収束で売上高がどれだけ戻るか不明、飲食業が再び息を吹き返しても賃上げしないと人手不足がどうにもならない状況ですが現在の経営体力で同業他社を上回る賃上げが出来るかどうかも不明です。

改善計画書では2023年3月期に当期純利益を2022年3月期から約5.5倍の5億円に引き上げる計画になっていますが2022年3月期の当期純利益が5億4300万円、2023年3月期第3四半期の四半期純損失は7億7200万円という状況です。

2022年3月期はコロナ営業時短助成金収入で何とか最終黒字を確保していますが状況が厳しいのは変わっておらずGC注記も付いています。

ログミーファイナンス記事「ヴィアHD、「脱・旧居酒屋」を掲げ新業態への転換を推進事業再生の第2フェーズ「短期での黒字化」を目指す」も確認しましたが方向性としては決して悪いものではないです。

ただあまりにも経済全体の環境がよくない、コロナ禍は終息しつつありますがスタグフレーションにおいて節約の対象に上がりやすい外食、特に飲酒という業種なのはどうにも厳しいです。

通期での業績予想も元々7.5億円の赤字だったが13億円の赤字予想に下方修正しており短気での黒字化及び改善計画書の業績目標を達成するのは相当困難ではないでしょうか。

株主優待が大盤振る舞いだった2017年から塩漬けのまま継続して6年になる個人投資家も少なくないと思うので上場廃止にはなってほしくない、スタンダード市場にも流通時価総額10億円以上の上場基準があって業績の低迷ぶりや右肩下がりの株価を見る限りそれすら抵触しかねない恐さがあります。

賃上げがない状況で消費税増税社会保険料の増加で現役世代の可処分所得が減少すれば外食産業、特に居酒屋系にも多大な影響が生じる可能性もないとは言い切れず政策次第でさらに苦境に陥るリスクも懸念しています。

とにかく生き残っていればいつか復活のチャンスは巡ってくるかもしれないですがまずヴィアホールディングスがやるべきことは東証プライム残留より上場廃止の回避と営業黒字化の達成及びGC注記の解除です。

「夢よりもはかなきものは夏の夜の暁かたの別れなりけり」、戦争で全て失うも暁印刷株式会社として再出発し90年代の不況を機に印刷業からの業態転換を見事に成し遂げ2016年には東証1部昇格を果たし長年の夢を叶えたところからの推移を見ると世の中の儚さと諸行無常を感じます。

逢瀬は絶頂を極めるほどに別れは残酷となる、東証プライムからの別れは辛いことだと思うのですが捲土重来を期すためにもいったんスタンダード市場で経営を立て直すのが妥当と言えます。