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プライム上場経過措置銘柄13回目はアーレスティです。

この会社は1938年創業のアルミダイカストメーカーで自動車や産業機械から家電や家電向けなど幅広い分野で使われる部品を製造販売しています。

技術力にも定評がありトヨタ、日産、ホンダといった日系三大自動車メーカーとも取引があります。

1961年に東証2部に上場し2014年に東証1部に昇格し現在に至っています。

プライム市場にも移行しましたがコロナ禍の影響で株価は低迷し2020年以降はつい最近まで一株500円を下回った状態が続いていたが業績の改善で6月9日の時点では600円台を回復しコロナ禍前までの株価水準に復帰しています。

アーレスティもぎりぎりプライム市場で上場を維持するのに必要な流通株式時価総額を移行基準日の時点で満たしていなかったですが(2021年6月30日時点で92億円)流通株式単位数192052単位のままであれば6月9日の株価水準だと流通株式時価総額は120億円を超えておりプライム市場の上場維持基準はクリアできていると思われます。

さすがにコロナ禍の3年間はあまりにも環境が酷過ぎでした。

ただ一株純資産は2180円あり6月9日時点のPBRは0.29倍という破格の安さで放置されています。

一方で業績に関しては2022年度で下期に盛り返し経常利益はどうにか黒字化したものの減損やリストラ損失もあって当期純損失を出しています。

なお2020年3月期から当期純損失の計上が継続し2023年3月期で4期連続です。

コロナ禍の2020年2021年2022年は売上高1400億円を維持できず2021年3月期に至っては売上高1000億円割れしていますが平常時には売上高1400億円前後を安定的にキープできており2023年3月期は売上高だけ見ればコロナ禍前の水準に復帰できたものの経常利益に波があるのはコロナ禍前からで最終損益の黒字化は当期以降となっています。

来期に最終損益で黒字化できればゴキブリ企業奇跡の復活となり見直されるかもしれないです。

ただここ10年の株価を見る限り低PBRの状態が継続しており経常利益が60億円を超えた2017年に10年間における最高値をつけていますがそれでも1390円(2017年1月4日)しかなく一株純資産2180円には遠く及ばないです。

売上高で毎期ほぼ横ばい、かつ、最終損益も波があり経常利益率も好調だった2017年でさえ5%を下回っている状態です。

2022年決算説明資料の10年ビジネスプランでは2030年の業績目標が記載されていますが売上高1800億円、営業利益108億円、営業利益率6%となっています。

成長は続けるとはいえ爆発的な成長が期待できない市場で脱炭素を平行して行い原材料や人件費、電力料金等々のコスト上昇を吸収しながら業績を上げるのも難しくコロナ禍前でさえ横ばいの業績がやっとだったこの会社にしたらこれが精いっぱいなのでしょう。

自動車向けダイカストの需要は2040年に2022年比で27%成長するとの予測が示されていますが13年でたった27%ではもっと高成長の市場で勝負する企業に投資したいと思う投資家も少なくないのではないか。

社名の由来も確認しましたがResearchのR、ServiceのS、TechnologyのTでアーレスティ、頭文字には新技術や新市場、新しい販売方法のRが来ておりもっと研究開発投資を積み増して100年に1度の自動車の変革期でスタンダードを取りに行く、自動車など既存顧客以外にも応用可能な分野を開拓して10年間ずっと達成できていない売上高1500億円の壁を突破してほしいものです。

EVシフトやビジネス領域拡大を行いつつ脱PBR1倍割れを目指して資本効率や配当増額及び自社株買いによる株主還元で補う方針は合理的であるのですが有望な新技術で新市場を開拓できるのであれば株主還元よりも成長投資を優先した方がPBR1倍割れ解消に近づくかもしれないです。

とはいえ見通しに甘さがある点はマイナスです。

2022年3月期に減損損失約42億円を計上していますが2023年3月期にも現存損失約23億円を計上しています。2期連続の減損ですが回収可能価額の測定が不十分だったのではないか、減損損失の見積もりが甘かったのではないかと思いました。

6月28日付の監査報告書のKAMにも減損損失についての記載がありますが半導体不足もある中での自動車の販売状況を見通すのは難易度が高いとはいえさすがに2期連続で2ケタ億円の減損損失を出すようでは会社及び会計監査人の見積もりに対して疑念を抱く投資家も出てくるのではないか。

2021年3月期に旭化成ルネサスが立て続けに火災を起こしており2022年3月期がどうなるかを予測するのは相当厳しいとは思うものの損失の見積もりに関してはもっと保守的に検討した方がよかったかもしれないです。

低PBRは株価が割安評価されている反面で会社が計上する資産が過大評価されている、事業の先行きに不安があり減損損失繰延税金資産の取り崩しが発生するリスクを懸念する投資家が少なくないことも理由として挙げられます。

2024年度の業績目標は売上高1500億円、経常利益16億円となっており過年度の業績水準だと2015年3月期あたりが近い、株価だったら1000円台に復帰できるかどうかといったところでしょうか。

株価1000円でもまだPBR1倍割れは解消できない、0.5倍割れという超割安水準ですが業種の性質上、急速な改善は期待できそうにない。

とはいえ最悪期は何とか脱しています。高橋社長は「期待を超える」といっていますがとにかく5期ぶりの最終損益黒字化を確実に実現してまずは投資家の期待に応えてほしいものです。