1343ページ目 外形標準課税と減資による課税逃れ

減資をして形式的に中小企業になり中小企業対象の優遇税制を受ける上場企業が問題になっています(日経記事「「1億円以下に減資」昨年度3割増 黒字企業目立つ、「税逃れ」目的も。」)。

コロナ禍やそれ以前からの業績不振があってHISやかっぱ寿司などが減資を行い中小企業になりましたが上場自体は続けていて社会的評価についても中小企業と同等水準になって融資を引き揚げられたといった話は聞きません。

黒字の企業まで節税で減資するのですから経営不振で税制優遇措置を受けるため減資を実施した企業も経営再建に成功したとしても元の資本金額に戻すかは不明です。

しかしどう考えたって社会通念上は上場企業が中小企業といった話は受け入れ難いです。

その辺の中小企業が証券取引所に上場できるわけないだろ…。

もちろん上場企業傘下の子会社についても同様で担税力があるのに過度の節税を行っているとの批判を免れず消費税や社会保険料値上げで生活が苦しい一般国民から理解を得られないでしょう。

そもそも失われた30年の可処分所得の減少と少子化進行は相関関係にあります。

中低所得層に対し水平的公平を優先した応益負担の課税強化が続き今も少子化対策財源で子供支援金制度を通して一般国民の財布からなけなしのカネが奪われようとしていますがその一方で大企業は形式的に中小企業になり税金は払わないというのは納得いきません。

そういうことなので格差是正と富の再配分のため垂直的公平と応能負担を考慮し外形標準課税を強化する点は賛成です。

減資をする上場企業のせいで元々の「中小企業」がとばっちりを受けるとの声も担税力があり社会的信用も大企業と同等なのに課税されていない点が同じで同様に理解は得られないですね。

「中小企業」が上場、特にプライム市場にいるのはどうかと思いますが資本剰余金も考慮した税負担は必要です。

非上場企業に関しても上場企業対象の制度変更で不利益ばかりとは限らず棚ぼた利益が発生することもあり不利益だけ文句を言い利益はスルーというのもどうなのか。

四半期開示見直しで粉飾が多発しているのに非上場企業の中間監査がレビューに格下げされる方向になりましたが棚ぼた利益はスルーで上場企業が関係する制度見直しで非上場企業の不利益だけ文句を言うのは不当です。

経営再建が難しくなるとの声もありますが本当に苦しいなら資本準備金取り崩しで累積損失を補填し資本金と資本剰余金合計1億円未満になるはず。

累積損失を一掃しないと利益配当は難しいですが毎年の利益だとか昔から持っている不動産や有価証券の売却益で補填できないほどの金額の累積損失だったらいつまでたっても配当を出せません。

そういう場合は資本準備金や資本金を取り崩して累積損失を解消しそれ以降に出した利益を配当可能にすることができるのですがそれをやるのは債権者保護の観点から一定の手続きが必要になります。

逆に言えば取り崩しに債権者保護手続きが必要な分、資本金や資本準備金の合計額は重要で信用力になる、特に上場企業のように証券市場において新株発行で資金調達できない非上場企業は減資をするハードルが高くなります。

減資するとなると信用力の低下リスクが生じますが減資しないと累積損失を解消できないような状況でないのならまだ余裕はあります。

中小企業に配慮しろとの声も取り崩しに債権者保護手続が必要な資本金と資本準備金合計1億円以上の企業は形式的に中小企業でも金融機関からの評価は高く社会的に大企業扱いになる点も考慮すべきです。

資本準備金も取り崩し資本金と資本剰余金合計額が1億円未満になり金融機関から優遇措置を受けられない企業だから金融機関に代わって国が税制で優遇措置をしている面もあるわけで国と金融機関の両方から優遇措置を受けるというのもいかがなものか。

いいとこどりは認められません。

 

外形標準課税の話に限ったことでなく中小企業に関しては色々と問題がありますがシャウプ勧告が出た当時も生産性より税負担軽減優先で組織形態を選択する者が多く経済活動が阻害される問題がありました。

現代でも生産性より税負担軽減優先、成長投資で売上や利益を増やぬばかりか経営者が経費で飲み食いしつつ敢えて赤字経営にする「中小企業」が後を絶たない点で類似点があります。

デフレ下では投資は遅らせるほど安く済みインフレ下のように市場成長率と同等以上の成長をしないと相対的に後退するわけでもなく生産性を犠牲に現金留保に走るのも当然ではあります。

シャウプ勧告は単一税率で改善を図りましたが現代でも中小企業の税制優遇措置が生産性向上に貢献せぬばかりか制度が複雑化し分かりにくい点も問題があります。

生産性向上より税負担軽減優先の中小企業を放置するのは国益にならず外形標準課税以外も中小企業の優遇税制は見直しの必要があると考えます。

 

 

シャウプ勧告は戦後すぐの話でだいたい80年前になります。

この時代には累進課税を強化して税制面でも垂直的公平を重視した制度設計が行われましたがその後プラザ合意後の80年代後半に水平的公平を重視するとの大義名分で消費税が始まり所得税法人税等は累進税率引き下げになりました。

だいたい40年ぐらい前ですね。

その後どうなったかというのは失われた30年を見れば一目瞭然で格差拡大な上にGDPも停滞し一部の勝ち組以外は生存困難なディストピアな日本になってしまいました。

制度の問題は山ほどあるのですが80年と40年…これって40年周期説80年周期説に当てはまるんじゃないかと思えてきます。

税制においても40年周期で根本思想が変化していますが格差拡大で一部に富が集中しカネが回らず経済成長しなくなり停滞でどうにもならなくなった今のタイミング、1945年、1985年ときて次の40年の節目である2025年あたりで根本的に税と社会保険料制度に見直しが必要になる、水平的公平から垂直的公平、応益負担から応能負担に変わらないと社会自体が維持できなくなるのではないかと。

まあ政府としてはそのつもりは全くない、政府税調の答申もざっと見ましたがジニ係数のデータがコロナ禍前の2017年あたりまでしかなく「一流」大学の「一流」の学者さんたちだったら調べればわかるはずなのに直近では過去最悪水準で0.4すれすれだったにもかかわらず格差は縮小傾向にあるなんて大本営発表をしている、ジニ係数上昇に見られるように格差が拡大し一部の富裕層だけ豊かになっていますがそれでも消費税のような逆進性の凶悪な負担はあるけど他の累進課税の税法で格差は対応していると言い張っている、低所得層も国民年金とか健康保険が税金投入されているので増税の利益を得ていると言ってますがマクロ経済スライドで年金は実質目減りするしジェネリック不足で先発薬を選択するのが難しい低所得層の健康が脅かされ生活保護も水際作戦や役所が勝手に支払いを渋ったりと生存権社会権すら維持するのが難しい劣悪な給付になっています。

政府税調の答申の大本営発表ぶりも見る限り偉い人たちも終戦直前の残念なA級戦犯たちと無能ぶりがよく似ていますがこういうところも滅亡フラグになっているのかなと思わなくもありません。

権丈君とかここにもいたけどこれがまた危ないよなと。

夫婦で色々な会議で暗躍しているようですが一般国民からなけなしのカネを奪い取るべく学問を私腹を肥やすためだけに悪用するのは感心できませんね。

委員の顔ぶれを見て20年以上前に大学生1回生だったころマクロ経済学の講義の担当だった人もいましたがずいぶんと偉そうになったものですね。

今は三田の教授ですか。

講義そのものはごく標準的で基本に忠実な内容でしたが直近のデータを意図的にスルーして自分たちが出したい結論に強引に持っていく手法は学問に携わる姿勢としていかがなものか?学部生レベルの卒論でもそんなもん却下です。

三田の理財でそのやり方が通るとかどうなってるんでしょうね。

政府税調の作文は論文になってませんね。

ああ作文だから論文じゃないわな、これは大本営発表そのものです。

政府がこの種の大本営発表をやり出すようになったらそろそろ本当に危ないです。

敗戦と似たような臭いがします。

何が起きてもいいように色々と備蓄をしておくのもいいかもしれないですね。

 

2023年11月30日追記

時事通信記事「「税逃れ」対策、賛否交錯 外形標準課税の見直し議論 与党税調」ヤフーニュースで業界団体からの陳情でもあったのか政治サイドから反発が上がっていますが主な反対論としては「中小やスタートアップ(新興企業)が課税対象になる可能性がある。容認できない」「新基準を持ち出す必要はない」といった意見がありました。

資本金と資本準備金合計で1億円以上という時点ですでに社会一般的には十分な大企業で融資においても優遇される件は上述した通りです。

地方の老舗の非上場企業によくありがちですが地元経済界の雄から外形標準課税導入をやめさせろと言われたら小選挙区で当選している国会議員は従わざるを得ないんでしょうね。

世襲上級国民同士の親からの代からつながりがあって親子共々選挙で応援してやった恩義を踏み倒すのかと言われたのかもしれません。

選挙だって少なくとも再来年には確実にあるわけですから反対と言いたくなるのも無理からぬところです。

しかしそういう地方の政財界の癒着のせいで地方においても格差が拡大するわけですけどインボイス制度で本当の意味での中小零細企業が負担を増やしている、一般国民は実質賃金下落1年半継続とマクロ経済スライドで年金実質減額なのに実質的な大企業は「中小企業」の皮を被って課税逃れするのは不公正です。

富の独占や地方カーストの維持は絶対に許さない。

本当の意味での中小零細企業支援や困窮した人の支援に充当するためにも外形標準課税で担税力がある地方経済の雄である地元の老舗大企業もきっちり税負担はしなければなりません。

スタートアップに関しては一定の配慮が必要なようにも思えますがずっと中小企業であるわけじゃありませんよね。

急成長を見込んで1億円以上の出資をするわけですから「中小企業」として税制優遇を受けられる期間が長いというのはつまり投資としては失敗なんじゃないか?

さっさと大企業になって上場して貰わないと資金の回収できないですよね。

まあ出資は受けたけど鳴かず飛ばずで倒産はしないけど成長もしないというパターンもありますがこういうユニコーンになれなかったスタートアップをいつまでもスタートアップとして優遇し続けるのもいかがなものか。

経済の新陳代謝を促すという観点からは急成長し早期に大企業になることが見込まれるスタートアップに関して中小企業優遇税制を適用するのは好ましくないですね。

スタートアップに中小企業対象の優遇税制を適用するならせいぜい3年、創薬ベンチャーなら10年といったところでしょうか。

それ以降に関しては淘汰を促す、別の有望なスタートアップを支援する財源にするため成長できなかったスタートアップ(成長できなかった時点でスタートアップではないのですが)には外形標準課税でこれまで優遇した分の資金を回収するのが妥当かと。

制度そのものが必要ないという意見に関しては資本金制度が形骸化している面もある、極端な話、資本金1円でもOKなわけですから資本金だけで大企業か否かの判定を行うのも時代に合致していませんので外形標準課税が必要になります。

格差是正と経済の新陳代謝を促すため外形標準課税は改めて必要だと考えます。