中国で日本の製品に対する不買運動が起きています。
東北地方の水産物のみならず日本全体の水産物、水産物に限らず食品類、食品類に限らず化粧品類、化粧品類に限らず電化製品の類もやり玉に挙がっているようです(共同通信記事「中国、日本製品の不買拡大 旅行キャンセル相次ぐ」ヤフーニュース)。
汚染水の海洋放出がもっともコスト的に安くつくので合理的といった意思決定の結果はかえって高くついた格好です。
中国側の反発と日本企業の有力な輸出先である中国市場の消費者の反応を無視した意思決定はやはり不味かったです。
そもそもなぜ日本産の食品類が売れるかって単に美味しいからというだけでなく汚染水を大量に排出する自国よりも日本産の方が安心安全だという認識があるからわざわざ日本産の食品類を購入したり日本に出かけたりしているわけです。
それが中国と同様に汚染水を排出したらどうなるか。
日本も中国と同じことをするんだったら日本産の食品をわざわざ買うメリットはないと中国市場の消費者も反応するでしょうね。
しかもトリチウム以外の放射性物質の説明も十分になされておらず(CGTN記事「トリチウム以外の物質も危険 放射能汚染水に64種類以上の放射性物質含む」ヤフーニュース)隠蔽と偽装の常習犯である東電が信用できないとあってはなおさらです。
中国にも政治的意図がある、国民のガス抜きやアジア内での影響力確保といった狙いもあるでしょうが食の安全に関してはナショナリズムだけの話では済みません。
食品類に限らず日本製品全般にわたる不買運動は尖閣諸島国有化の際にも発生しましたが今回の場合はそういう愛国主義者だけの話でなく食の安全に関心があるごく普通の中国国民、習近平のやり方は気に入らないけどSDGs目標14「海の豊かさを守ろう」には共感していて中国政府の意図に乗るのは癪だけど今回ばかりは中国政府を支持せざるを得ないといった意見を持つ中国国民も少なくないのではないかと思います。
日本だって2008年に中国からのメタミドホス入りの毒餃子問題(朝日新聞記事「中国製ギョーザで10人中毒症状 農薬検出 千葉・兵庫」)で中国産の食品全般で不買運動が発生しましたが15年経ってそれを覚えていて食の安全を重視しろと言うなら日本こそちゃんとやれといった話を持ち出してくる人もいるかもしれません。
買う買わないは結局のところ中国国民次第ですから日本政府がどんなに安全だと言い中国政府もそれを認めたとしても中国国民の信頼を回復させないことにはどうにもならないですね。
とはいえ全く無関係の製品類まで不買運動の対象になるのも非常に困ります。
トリチウム以外の放射性物質についても説明を行ったうえで風評被害対策やインバウンド需要の減少といったコストも改めて試算し海洋放出以外の方法、水蒸気放出だとかモルタル固化案なども再検討するのがよいかもしれません。