1187ページ目 東証プライム0.5割れ企業⑧武蔵野銀行

東証プライム0.5割れ企業第8回は仕組債で金融庁から業務改善命令が出た武蔵野銀行です。

仕組債の販売でやらかした武蔵野銀行ですがここもPBRは0.29という破格の安値に沈んでいます。一株7557円の純資産額ですが評価は3分の1にも届かないです。

武蔵野銀行というと初見で武蔵野市にある多摩地区の銀行といった印象を持つ人もいるかもしれないですが武蔵野市に店舗はなく埼玉県が地盤の第1地銀です。

なお東京の支店数は5店に過ぎず埼玉県内で守りを固める戦略がうかがえます。

2023年6月12日付の2022年度決算説明資料「埼⽟県の魅⼒と特徴」は確認しましたが人口732万人を有し交通の便が良い、県内総生産・商工業指標でも10位以内に入る、過去10年における企業本社の転入超過数2位(1位神奈川で3位は千葉だが神奈川とは大差なく千葉の2倍弱という水準である)、大宮再開発の進展、等、人口減少が進む日本でも恵まれた環境にあり他地域に進出するより埼玉を深耕した方が成果を上げられそうな気もします。

東和銀行栃木銀行といった北関東の地銀が南進政策をとるのも頷ける埼玉県のポテンシャルです。

過去10年の株価は武蔵野銀行も他の地銀同様同じパターンの値動きで2015年に5000円台の高値、2016年に3000円割れ、2018年4000円台回復、長期下落トレンドに入りコロナ禍で2000円割れ、コロナ禍制限緩和期待で2023年3月にかけて上昇するも再び下落し2000円近辺で推移しています。

過去10年の業績は経常収益が概ね700億円台で推移、経常利益も100億円台で推移しています。

2020年3月期が業績の底で売上高700億円割れ、経常利益100億円割れとなっていますが基本的に安定的な業績を維持しています。

2024年3月期の業績予想も経常利益151億円、当期純利益107億円で安定的というか横ばいです。

決算説明資料を見ると貸出は上手くいっているようで資金利益は400億円の大台に到達している一方投信販売の不調で役務収益は減少となっています。

有価証券関係も株式は堅調で230億円の評価益が出ている一方、その他の投信を中心に評価損が155億円出ており今のところは株式で相殺できているものの8000億円の残高があり世界各国の金融政策次第でトータルでも評価損になるリスクもあるかもしれないです。

ROEは4.3%で銀行業の中では優秀な部類ですが日本株全体で見れば半分以下の水準であり引き続き改善は必要です。

さて中期経営計画ですがここも基本的に他の地銀と似たような内容になっています。ただ気になったのはアライアンス戦略①の千葉・武蔵野アライアンスでこれが仕組債問題の原因だったのかと思いました。

処分勧告を受けたのは千葉銀行など3社ですが具体的には千葉銀行ちばぎん証券武蔵野銀行であり、ちばぎん証券千葉銀行の子会社なので実質的に千葉銀行武蔵野銀行、そして千葉銀行武蔵野銀行はアライアンスを結んでおりこのアライアンスで双方の役員レベルが情報や悪知恵を持ち寄って互いに共謀し問題のある仕組債販売を計画したとすれば大問題です。

ちばぎん証券との金融商品仲介業務における協働について」で武蔵野銀行ちばぎん証券に出資を検討しているとありましたが仕組債販売の絵を描いたのはちばぎん証券か?

悪いことを最初に考えたのは誰か知らないですが「お客さま⼀⼈ひとりの想いや夢に寄り添ったコンサルティングの実践」というのは仕組債でお客さまに極端なハイリスクを負わせることですか?

ROEの改善は当然必要、役務収益の収益向上も大事ですがコンプライアンスに違反してまでやれとは一言も言っていないです。

むしろ評判が下がって余計に儲からなくなるので本当にやめてほしいものです。

「悪い友と辻風には出逢うな」とは言いますが悪事を働くために提携したのであれば縁を切ったほうがよいでしょう。

証券取引等監視委員会による行政処分の勧告について」のニュースが2023年6月9日付で出ていますが勧告を受けた事実関係に「顧客属性を確認及び検討しないまま、顧客を仕組債購入へ誘引している状況」及び「内部管理態勢が不十分な状況」が挙げられています。

日付に関して上述の決算説明会資料が6月12日付で出されていますがこの処分勧告について決算説明会資料では一言も触れられていないです。

本来ならここで反省及び具体的にどう改善するのかを説明しなければならなかったのですが全くやっていないことを考えると反省はしていないし改善する気もないのが大変良く理解できました。

謝罪も説明も不祥事発生から遅れれば遅れるほど不味いことになりがちですが危機管理体制の鈍さも気になっています

2022年3月期のKAMも確認しましたがここもテンプレ通り貸倒引当金だけでしたが内部管理体制は本当にちゃんと見たのか?金融商品の販売を巡っては金融機関が問題のある勧誘を行って処分勧告が出る事例が相次いでいますが低金利下で利益を上げるには金融商品の販売手数料等金利収入以外の収入源を確保せざるを得ず金融商品の販売業務に関わる内部統制も重要です。

東洋経済記事「千葉銀行など3社の処分勧告で露見した「仕組み債」乱売の実態、武蔵野銀行は役員が積極仲介を指示していた」ヤフーニュースでは役員が支店長に積極仲介を指示していたとありますが会計監査は違法行為を見つけるのが目的でないとはいえ内部統制的に何かしらの欠陥は本当になかったのか?と思えてきます。

この役員が頭取の指示を受けて支店長に指示していたのかどうかは不明、業務監査部門が何らかの圧力を受けていたかも不明、内部通報を行った行員がいたかどうかやその通報及び通報を行った行員がどう扱われたかも不明ですが役員がノルマ達成のため勝手に動いていたとしたら頭取は役員以下社員を統制できていなかったことになります。

横ばいの業績を目に見える形で上向きにしないとPBR1倍割れ解消は困難、「MCP1/3」というよりPBR1/3で株価の低迷が定着することでしょう。

まず武蔵野銀行がやらなければならないのはコンプライアンスの徹底とお客様本位の業務運営の徹底かなと思います。