1183ページ目 東証プライムPBR0.5割れ企業⑥筑波銀行

東証プライムPBR0.5割れ企業第5回は筑波銀行です。

ここは北関東第2地銀の一角で茨城県つくば市に本部がありますが2023年6月2日時点のPBRは0.3という惨状で放置されています。
過去10年の株価は他の地銀同様2015年までは上昇し米国の利上げによる政策転換や中国バブル崩壊懸念等の不安要素もあって2016年に急落するも翌年からは回復傾向になったもののコロナ禍で急落した後、制限緩和で小回復するも利上げ懸念で再び下落トレンドとなっています。
過去10年の業績は2018年3月期までは400億円台の経常収益がありましたがその後は300億円台後半で定着、経常利益は2016年3月期の85億円が頂点でその後は20億円前後の年が4期、50億円前後の年3期という状態です。
上述の通り公的資金350億円が未返済かつ含み損ランキング3位268億円というリスクを抱えています。
なお昨年の監査報告書KAMに関しても確認しましたがここもテンプレ通りの内容で5000億円近く有価証券残高がある状態だったのでこれも説明はほしかったです。
東洋経済記事「最新決算で採点!地銀99行「脆弱度」ランキング」で筑波銀行は27位にランクインしていますが大丈夫でしょうか?
2024年3月期は経常利益39億円、当期純利益33億円を想定しているとのことですが世界の金利動向次第でどうなるかは不明で中期経営計画の「本資料には、将来の業績に関する記述が含まれております。こうした記述は将来の業績を保証するものではなく、リスクと不確実性を内包するものであります。将来の業績は、経営環境の変化等により異なる可能性があることにご留意下さい。」という文章が非常に重たいです。
この種のテンプレ文章を読み飛ばす人も少なくないですが改めてちゃんと読む必要があります。
決算説明資料も確認しましたが越境融資がどういう状況になっているのかわかりにくいです。
筑波銀行は千葉、東京、栃木に支店を有していますが他の地銀の傾向からすると東京の貸出金が膨らんでいるような気がしますが東京での情報収集力や支店の管理はどうなっているのか?
というか低PBR解消についての説明が全くないです。
第5次中期経営計画は確認しましたがROEを改善できたのは評価できます。
ただそれでも業界平均程度しかなくその業界平均自体が低すぎる状態なのでこれも引き続き改善が必須、というか昨年2022年6月に出した計画ですが2022年3月期は5年ぶりに経常利益が50億円を超えた年でここで慢心がでたから2023年3月期に一転大幅減益になった、第4次中期経営計画で花を持たせるために最終年度をピークになるようなやり方で経営を行ったのではないかと思わなくもありません。
成長戦略にサステナブルファイナンスを上げ累計920億円以上という目標を設定していますがグリーンウォッシュで水増しというのは困ります。金額的に無視できないので第三者の保証もほしいところです。
業務のデジタル化で人間を営業部門に回すとのことですが生成AIの取り扱いについてはどうするのか?

昨年の時点ではまさかここまで生成AIが実用レベルに達するとは思っていなかったという人も多いので生成AIについての言及がないのはやむを得ないですがセキュリティについて懸念を示す投資家や顧客等もいるのでそこは説明が必要です。
情報漏洩だけでなくイケイケ営業で近隣の千葉銀行武蔵野銀行のような仕組債の販売問題が起きたら困りますが業務監査はきちんとできているか?攻めだけでなく守りの人材も当然確保しなければなりません。
事業性評価に基づくミドルリスク先への融資拡大に関してはこれをやらないと筑波銀行の立場では貸出先を開拓できない、既にメガバンク常陽銀行が茨城にはあり優良顧客はこれらの銀行が持っていく上、貸出金の内訳についても大企業中堅企業合わせて1812億円で貸出金全体から見れば1割にも満たず(そして昨年より貸出金残高はわずかだが減っている)中小零細個人相手にリスクをとらないとやっていけないので当然強化する必要があります。
一方、ゼロゼロ融資で複数本の債務を抱えて資金繰りが厳しい取引先とか融資して大丈夫か?と思わなくもないです。
後漢書において敵に囲まれ絶体絶命の窮地に陥っていた漢の将軍班超が不入虎穴、不得虎子と語りリスクをとった先制攻撃で窮地を脱した話が記載されています。
このまま手をこまねいていてもジリ貧なのは火を見るよりも明らかですが多勢に無勢では返り討ちに遭うのもまた目に見えています。
他の銀行が見放すような顧客は相当難しいですが連携機関に日本公認会計士協会茨城県会が入っているあたり対応は可能なのでしょう。

シェアハウス問題発覚前のスルガ銀行のように貸出金利を高くして貸し倒れに備えなくても貸出先の経営をきちんとグリップできれば貸し倒れリスクは低減でき利息はスルガ銀行ほど高くなくてもミドルリスクミドルリターンの融資は実現可能と思われます。

茨城県にも東京と同等品質の業務を行うレベルの高い会計事務所は確かにあります。

とはいえ実際に筑波銀行の融資及び経営指導で経営再建に成功した顧客の事例についても再建前と再建後のビフォーアフターを説明しないとミドルリスクというよりハイリスクだと考える投資家も出てくるのではないか。
SBIとは金融商品の販売やデジタル化で連携するとのことですがお客さんに販売する金融商品よりむしろ公的資金の件や筑波銀行が買った有価証券関係の損失が気になっています。
というか少子化対策財源や防衛財源の確保が課題になっていますが震災から10年以上経過しておりさすがにそろそろ350億円の公的資金は返してほしいです。

他の銀行の分も全部合わせたら2022年3月時点で2340億円ですがこれらを全額回収して財源の足しにするのがよいでしょう。
第二地銀四行の提携の話も特になく筑波銀行としては合併で相当苦労した過去がありもう企業再編は懲り懲りだと思っていそうですが過去10年の高値でも500円に届いておらずPBR1倍割れ解消も遠い水準です。
いったいどうやって低PBRを解消するのか?中期経営計画にも決算説明にもPBRの目標値の説明はないです。
過去には一旦は2006年の時点で「ひたちの銀行」(行名は武蔵野銀行を意識したのか?)でまとまるはずだったのに破談しましたがリーマンショック後にどうにもならなくなって2010年にやっぱり合併しますということで筑波銀行が誕生しています。
人口減少時代で地方銀行が多過ぎて過当競争になっており自助努力だけでの生き残りが難しいのは筑波銀行自身がよくわかっているはず。
つながりというのなら筑波銀行がSBIや他の第二地銀とのつながりを太くする必要があると思うのですが単独でやっていくというのならまず公的資金350億円を完済した上で株価678円をいつ実現できるのかについての計画を説明してほしいです。