1468ページ目 小林製薬の株主総会と立ち入り検査

死者5人を出し(時事通信記事「サプリから青カビ由来成分 「紅麹」巡る死者5人―小林製薬、社長が謝罪」)国際的にも問題になっている小林製薬の紅麹サプリによる健康被害問題ですが小林製薬の対応にも大きな問題があり混乱に拍車をかけています。

 

紅麹サプリによる健康被害問題の最中、3月28日に製造元の小林製薬株主総会が開催され創業家の小林社長が再任されました。

当日もサプリによる健康被害問題に関連して質問が相次ぎましたが社長の涙の謝罪と拍手による再任という気持ち悪い浪花節的な展開も見られたそうです(FNN記事「小林製薬社長“涙の謝罪” 株主総会「拍手」も冷ややかな声も」)。

 

そして翌日、小林製薬健康被害問題で記者会見を開きましたが同日、厚労省も記者会見を開きました(時事通信記事「検出物質、厚労省が発表するとは…4時間半に及んだ小林製薬会見」)。

健康被害の原因物質について小林製薬は明言を避ける一方で厚労省は原因物質となったのはプベルル酸だと明言しており小林製薬の説明に隠ぺいの疑いが生じています。

さらに今日、厚労省は紅麹サプリを製造した大阪工場に立ち入り検査を行っています(ABCニュース記事「【速報】小林製薬の閉鎖された大阪工場に大阪市厚労省が立ち入り検査 紅麹を使ったサプリが原因とみられる健康被害が相次いでいる問題で 製造工程などを検査か」ヤフーニュース)。

 

短期間に多くの話がありますが腑に落ちないのは株主総会より後に記者会見や立ち入り検査があった点です。

本来株主総会は利害関係者に対して経営を報告する場でもあるのですが記者会見や立ち入り検査が株主総会より前に行われていたら対応を変えていた、小林社長ら役員の再任に反対票を投じた株主もいたかもしれません。

立ち入り検査に関しては厚労省の関係者と示し合わせたのかどうか不明です。

もし示し合わせがちゃんとできていたなら原因となった物質について小林製薬より先に厚労省が公表することもなかったでしょうね。

もちろん示し合わせなんてやめてほしいのですが。

しかし記者会見については小林製薬が開催時期を決めるものであり株主総会前に記者会見を開催しなかったのはやはり株主総会で追及されたくないという逃げの姿勢があったものと思われます。

 

というか今日になって立ち入り検査が行われていますが大阪工場は昨年末に閉鎖されています。

実は健康被害を昨年以前の段階で察していて大阪工場では閉鎖の際に証拠隠滅工作をやったのではないかといった可能性が脳裏をよぎりました。

まあ閉鎖の決定は2022年11月(小林製薬ニュースリリース「生産拠点閉鎖のお知らせ」)ですので実際のところはどうか不明ですがね。

ただ今年2月の株価急落と増配に関してはどうなのか。

インサイダー疑惑も生じていますが(集英社オンライン記事「〈紅麹、死者4人・入院患者93人〉「なぜ発覚から2か月も放置?」「公表遅れが被害拡大に?」小林製薬、2月に株価急下落の謎」ヤフーニュース)2月の時点で健康被害の情報はあったわけでこのタイミングでの株価急落はやはり不自然です。

増配に関しても本来なら被害者や取引先への補償や信用急落に伴う今後の業績悪化リスクに備えなければならず増配している場合ではありません。

読売新聞記事「小林社長「批判には言葉もない」「増配判断に今回の件は影響していない」…会見4時間超、一問一答」では今回の健康被害問題は増配に影響していないとしていますがむしろ健康被害問題の影響をきちんと考えなきゃダメだろ。

いや健康被害問題を考えたからこその増配だったのではないか。

小林家は今も小林製薬の大株主でもありますが来期以降の業績に影響が現れるかもしれない、役員報酬も減額になるどころか創業家社長であっても社会的な批判が大きくなれば辞任せざるを得ないかもしれないので受け取れるうちに受け取れるものは全部受け取るということで配当金を確保しておこうと2月時点で考えたのでしょうか。

会社は株主のものというのは全くその通りなのですが経営者の権限で露骨な会社の私物化を図るのはいかがなものか。

しかも小林製薬では配当金は取締役会決議で行うことになっていて2024年2月21日にも小林製薬ニュースリリース「剰余金の配当に関するお知らせ」で「なお、当社は会社法第459条第1項に基づき、取締役会の決議をもって剰余金の配当等を行う旨を定款に定めております。」という一文があります。

会社法上では剰余金の配当等を取締役会の決議にて配当することを定款で定めている、取締役の任期が1年、取締役会・監査役会会計法人の全てが設置済、最終事業年度における計算書類が適法決算であれば取締役会決議だけで配当ができますが小林製薬のような創業家社長が大株主でもある会社で配当金を取締役会決議だけでやってしまって大丈夫なのか不安になってきます。

 

さらに被害者や取引先への補償に関しても連絡がつかないといった話もありました(時事通信記事「紅麹回収、取引業者に不満の声 小林製薬に補償要求も」)。

本当に補償する気あるのか?

というか株主総会で「社長:(再発防止策への)多くの取り組みがあるので、まずは私が責任者として進める。原因を特定できていないので、何が責任なのか、お答えすることはできない。」(FNN記事「小林製薬社長が涙 新たに2人判明で死亡4人に 「憤慨してますよ」と株主 紅麹サプリ問題の小林製薬株主総会 社長・役員は続投へ」ヤフーニュース)と言ってますが翌日の厚労省の記者会見から原因を特定できていないという社長の答弁は虚偽の報告と言えます。

すぐばれるような嘘をつく習慣はいったいどこで習ったんでしょうか?

一連の対応を見る限り小林のボンボン社長では絶対無理としか言いようがありません。

責任を取るのではなく果たすために役員は辞任しない、続投するとか単に地位にしがみつきたいだけの保身の言い訳にしか聞こえないのですが。

実際立ち入り検査の件についても回答拒否の連発で(産経新聞記事「小林製薬「回答控える」繰り返す 4時間半の検査後 30人以上の報道陣も門扉閉ざされ」ヤフーニュース)説明責任を果たす姿勢はこれっぽっちも見えません。

被害者対応だとか再発防止、信頼回復には特に誠実性が要求される以上、小林社長を役員にしておくのは危険です。

小林製薬は被害者対応や再発防止策を進めるとともに役員の刷新準備を早急に進める必要があると考えます。

信頼回復はそれからです。