1357ページ目 応能負担に見せかけた応益負担にNO

また今日も日経の提灯記事です。

社説「資産勘案など社会保障負担の改革急げ」ですね。

 

主な内容は高齢世帯は平均で1600万円以上金融資産を持ってて3000万円以上の世帯は14%にもなる。

しかし医療介護の負担や保険料は所得基準で資産の保有状況は勘案されないので不公平なので応能負担に改めるべきだ。

資産の把握でマイナンバー紐づけをやれ、2028年度より前倒ししろ、2割負担とか相部屋料徴収は当然だ、3割負担を加速させて給付ももっと削れ、団塊の世代が2025年に全員後期高齢者になるから搾り取れ、といった話になります。

 

現役世代からすれば一見まともなことを言っているように感じられますがツッコミどころ満載です。

高齢世帯が金持ちな件については平均値だけでなく中央値も1677万円あります(総務省の家計調査報告(貯蓄の状況)2022年結果参照)。

5人に一人は貯蓄なしという状況(東洋経済記事60代「貯金ゼロ」世帯が増加!今見直すべきこと)ですが保険料負担を増やされるぐらいだったら溜め込んだ分を生前に使ってくれという話は当然です。

…が、それ以下が不味いです。

マイナンバーとか事故が相次いでいるのに来年秋から保険証廃止で大丈夫か?別人と取り違えて医療介護費や保険料の請求が来たといった懸念もあります。

応能負担にするためにという大義名分で拙速なマイナンバー保険証のゴリ押しをするのは問題です。

2割負担についてもすでに年金その他の収入で200万円以上まで基準が引き下げられていますが受診控えによる健康の悪化と医療費の増加も懸念されます(産経新聞記事「物価や光熱費高騰…経済的理由による「受診控え」懸念 先延ばしで症状悪化、治療費高額化も」)。

貯蓄が1000万円以上あっても物価高騰でマクロ経済スライドですから生活費の補填のための取り崩しも増えていくでしょうね。

物価高騰といえば建築費、リフォーム費用です。

団塊の世代が20代から40代で購入した家はだいたい築30年から50年ぐらいになりますか。

1981年以前の耐震基準で建てられた物件も多数あるかと思いますが取り壊さないなら大規模リフォームが必要になります。

建材コストも労務費も高騰しており最低1000万円以上はしますね。

年収中央値だとリフォーム費用を支払ったらそれだけで資産の3分の2以上を失います。

賃貸に引っ越すにしても高齢者は敬遠されるので持ち家から離れられる状況にありません。

マンション購入者も築年数次第ではありますが老朽化したマンションの建て替え要件が緩和されました。

3分の2の賛成で建て替えになりますがマンションを終の棲家にする予定だった人からすれば人生最終盤でのまさかの誤算です。

ここで建て替え費用を支払うにしても建設中の期間は別の場所に引っ越さないとなりませんが仮住まいと建て替え後のマンションに2回の引っ越しコストもあってこれも老後の資産を大きく減らす要因になります。

老人ホームに入る場合でも民間だったら一時金だけでも数百万円の出費になるし健康が悪化して介護施設に入居するにしても公的施設は特養とか入居待ちが発生している状況です。

高齢化が進んでいるんですから当然ですがその間には民間サービスを利用せざるを得ません。

そして公的施設にせよ民間施設にせよ介護職員が低年収で減っている状況ですから今後も利用料金は上がっていくでしょうね。

低収入の中で老後の資金がどれだけ持つかは何とも言えませんがそれを懸念して受診控えをしても健康を悪化させて老後の資金をかえって減らすことになりかねません。

今後のリフォーム費用も考慮したら純金融資産1億円以上の富裕層はともかく純金融資産3000万円以上のマス層の負担を増やすのは危ないです。

夫婦二人だったらアッパーマス層でも怪しくなってきます。

そもそもなぜ高齢世帯が貯蓄を用意するかって現役時より収入が激減し仮に現役時と同水準の収入があったとしても現役時のように健康でなくいつ働けなくなるか分からないからというのがあります。

住宅の購入時期からしても修繕または建て替え費用を用意しなければならないし介護施設入居費用など収入が減った時点で想定される高額な出費に備えた積立という性質もあり金融資産保有残高の多寡を論じるにあたってはそれら老後に必要な高額出費の類も考慮しなければなりません。

それを踏まえて考えると中央値や平均値の時点で2000万円を割っているというのはけっこう危ないものがあります。

本当の意味で応能負担にするのであれば年金プラスアルファで年収200万円とか300万円の層かつ純金融資産1億円未満の層の負担を増やすのでなく純金融資産1億円以上の富裕層以上の負担を増やすのが妥当です。

だいたい150万世帯ぐらいで純金融資産360兆円ぐらい保有している状況ですがこの層に毎年1%資産税を負担してもらうだけで毎年3.6兆円です。

純金融資産1億円以上の富裕層は人数が少ないからそれ以下の層も負担しろという話にしたって全体で1600兆円ぐらいある純金融資産のうち20%強を握っているのが富裕層以上の人たちです。

一方で純金融資産3000万円未満のマス層は約4200世帯ですがこの層の純金融資産合計額は678兆円です。

つまり純金融資産1億円以上の層150万世帯だけでマス層の純金融資産の半分以上を抱え込んでいるという極めて理不尽なまでに格差がある状況です。

最優先で負担増が必要なのは純金融資産1億円以上の150万世帯以外にあり得ません。

マス層に関しては特に負担軽減が必要になります。

たかだか1億円にも満たない貯蓄しか持っていない中間層に対する給付を応能負担の名のもとに削って余計に健康を悪化させるのでなく富裕層の負担を増やすことこそ本来の意味で応能負担です。

全国の5264.9万世帯(ITメディア記事日本の富裕層は148.5万世帯、増えている理由は?参照)の負担増加推進は大問題です。

富裕層以上からは奪いにくいのでそれ以下の層から奪いたいという意思が露骨ですけど今日の提灯記事を書かせたのは厚労省でしょうか。

増税したら出世する財務官僚と同様に保険料を上げたら出世といい天下りポストで退職金とか込みで1億円なんて楽勝になる人達が私腹を肥やすためにやってるんでしょうね。

マイナンバーカードのゴリ押しと応能負担を騙った中間層以下への搾取と相対的な富裕層への優遇なんて冗談じゃありません。

これら一連の改悪は断固反対です。

 

 

さて提灯記事な上に風見鶏の日経さん、別の記事でも富裕層に課税するのはやめろといった話を暗に言ってますね。

風見鶏「脆弱な中国」がいる未来で中国から知識人層だとか富裕層が脱出していて富裕層の純流出国ランキング1位が中国だといった話が紹介されています。

そりゃあ知識人とか経済人とか共産党というか習近平に逆らったら消されるか投獄されるかだしそうでなくたって常にネットも監視されるんだから冗談じゃありません。

個人の趣向もプライバシーも保てないばかりかビジネスでも機密保持ができないのではグローバル展開が難しくなります。

中国にいたらビジネスも研究もできないし人権も保護されないんだから脱出できるんだったら脱出しようと思っても不思議ではありません。

で、本題は記事の最後の方です。

富裕層の流出国ランキングで日本が10位というお話です。

富裕層を優遇しないと日本から富裕層が逃げ出すぞという話を暗に言っている、本当に応能負担にしたら貧乏人ばっかりの国になるぞと言いたいんでしょうね。

富裕層の中にも貴族と第三身分平民上位層、パトリキとノビレスがいる件についてはちゃんと説明してなかったですね。

そりゃ地方とかで家業を継いだ福岡の麻生財閥とか群馬の光山社とかの世襲上級国民と一般家庭からベンチャーを起こして上場し富裕層になった叩き上げを一緒にするのは乱暴だったわな。

まあ結論から言うと世襲上級国民以外にも政治の門戸を開いたら日本から逃げ出さなくなる、自分事として社会改革に取り組んでくれるかもしれないねと言う事です。

現代の中国とフランス革命直前のフランス、ローマ共和制中期、そして現代日本の共通点は世襲貴族が権力を独占していて成金でさえ勝てないという点です。

現代中国では習近平毛沢東がいた時代の共産党幹部の子弟から構成される太子党習近平含む)が幅を利かせていてそれ以外の一般国民の優秀な人材で構成される共青団は権力闘争に敗れて干されています。

共産党関係でなくともベンチャー企業経営者とか学者ジャーナリストの類も色々槍玉に上がって誰も習近平に逆らえない状態です。

フランス革命前のフランスも僧侶から構成される第一身分と貴族から構成される第二身分、富裕な商人から構成される第三身分とありましたが三部会の実際の議決では旧来の支配者でかつ領民から徴収するカネもあった貴族と僧侶が優勢でした。

平民層が圧倒的に多いのに上級国民の中でもさらに一握りの世襲上級国民が政治を独占する構図では富裕な第三身分はもちろん貧乏な平民もたまったものではありません。

結局別の会議を作って貴族と僧侶の影響力はその後凋落していきました。

ローマ共和制中期も古くからの貴族と商売等を通じて豊かになった平民との対立があり平民は権利が制限され執政官にはなれず政治的に制限された状態がありました。

これも身分闘争があったのですがそもそものきっかけは国防でした。ケルト人がイタリア半島に侵攻してきたものの戦争で領土を得ても貴族がほとんど独占してしまい平民の取り分が回ってきません。なので平民からすれば士気が低下し国防に協力しなくなるので旧来からの貴族が平民上位層に政治への道を開くという形でコンスル就任も可能にする法改正が行われました。リキニウスセクスティウス法ですね。

日本はというと失われた30年で政治とカネの問題、政治にカネがかかり過ぎるから汚職が増える、選挙区が小さくなれば選挙でかかるカネが減るだろうということで小選挙区制が導入されましたが結果は見ての通りで選挙運動にかかるカネは幾ばくか減ったものの世襲候補ばかりが当選するようになりました。現代の封建制です。

地盤看板鞄と言われるようにカネだけあったって当選はできないのです。

地縁とか支持団体の票、本人の実績や肩書などから得られる票、そして選挙運動で使うカネの総合力で決まりますがカネのウエイトが下がればその分他の要素のウエイトが増えるのです。

しかも小選挙区ですから地域回りで狭い地域で濃密な利害関係を親子二代三代それ以上にわたって築き上げた候補というか一族ほど有利になるわけでこれはもう個人の努力では覆せない不平等さがあります。

カネに関しては運と自助努力でどうにかできたとしても小選挙区の壁を越えられないのでは政治に参入することはたとえ起業で大成功し時価総額1兆円の資産を築き上げたとしても難しいんじゃないか、特に総理大臣が出馬するような小選挙区で勝利するのはまず無理じゃないかと思うのです。

ビジネスの世界では勝てたけどそこからカネをどう使うか、ルールを作る側に回れるかということも考えると仮に日本で豊かに暮らすことができる富裕層になれたとしても小選挙区の当選者を出すような地方豪族とか代々の世襲上級国民とは超えられない身分差が解消されません。

そういえばシンガポールに芸能人とか元政治家とかが日本から脱出していましたがまあそういう理由もあるのかもしれませんね。

カネの話、負担の話に関しては1億円以上の純金融資産を持っている勝ち組に応能負担でカネを払ってもらわないとどうにもなりません。

ただ名誉の類に関しては対価としてあってもよい、あとルール作りに関しても世襲上級国民だけに独占させるわけにはいきません。

現状の衆院小選挙区制のままだったら過疎地の保守的な上級国民ほど総理大臣になりやすくなり大多数の一般国民の利益にならない富の分配が行われかねない点で問題があります。

世襲政治で守りさえ固めていれば安泰の人たちにチャレンジしろといったってそれは性格的に無理な話です。

応能負担を導入するだけでなく政治においても小選挙区制は廃止にして別の制度を導入する、世襲で地盤がやたらと有利になるような制度はやめないと日本の衰退は不可避なんじゃないかと思います。

そうでなくたって過疎化は進んでいくわけで団塊の世代が死亡あるいは健康の悪化で投票に行けなくなったら地方の選挙区自体がもう維持困難になっていく未来も想定できます。

本当にカネがない人の立候補が難しいという話にしてもセキュリティ面など色々課題はあるものの(というかセキュリティ面で問題が生じているマイナンバーカードのゴリ押しはするのになぜネット選挙はやりたくないのか。既得権益層に不利になるからやりたくないという意思が露骨です)高齢化で投票所に足を運べない人が増えたり投票所として活用する地域の学校等が廃校になったりして移動可能な場所で投票所を確保するのもハードルが高くなってきますしネット選挙の活用も本格的に検討し選挙関連コストの低減も実施していかざるを得ないでしょうね。

まあ平民が上級国民に絶対になれないとまでは言いません。

幕末も足軽株が売買可能で富裕な商人や農民が足軽株を買ってそこで評価が高いと武士になれることもあったようです。

勝海舟は旗本家の生まれですが元々は平民の血筋で曾祖父の代に高利貸しで成功しステップアップで祖父が武士になり旗本に取り立てられています。

本人が一代限りの成功で世襲上級国民入りできなくても富を維持するなり世襲上級国民の一族と血縁関係ができれば世襲上級国民になれるかもしれません。

ただそれは本人がビジネスで成功するよりもっと大変、運の要素も絡んでくるし何より時間がかかりすぎて本人が政治、ルール作りで実力を発揮できる機会を確保するのは至難の業となります。

世襲組は若い頃から当選できて総理大臣も狙えますが仮にビジネスで成功して何とか選挙で当選できても本人が総理大臣になれるかというと当選回数の関係もあってなかなか難しく世襲で次の世代に託すようになってしまい世襲上級国民と化すのも大変迷惑な話です。

都合よく勝海舟が出てくるとは限らないのですよ。

幕末も平民出身者が活躍しましたが今の日本の混迷を見る限り幕末とか戦前の30年代40年代を彷彿とさせるものがありちょうど変革が必要になる時期ではないかと思うのです。80年周期もありますがこちらもそういう革命の時期に入る直前です。そんな状況なので世襲上級国民にこのまま政治を任せておくのも色々と不味いのかなとも思うのです。

単に富裕層の税金を下げれば富裕層が日本とか中国から出ていかなくなるかというとたぶんそんなことはない、カネのために出ていくような志の持ち主ではその国にいたとしても邪魔になるだけではないかと思いますが真に問題なのは志はあってカネはどうにか用意できたけど世襲上級国民の地盤の壁を破れず失意のうちに海外に移住する、ある意味亡命のような側面もありますが税金負担を減らすよりむしろ社会の為に実力を発揮できる環境こそ作るのが大事ではないかという気もするんですよね。

カネを手に入れたら今度は別のもの、名誉を求めだすのはよくある話ですが既存のポジションは世襲政治で独占だったら名誉欲の行き場だってありません。

何にせよ上級国民の中でも特に世襲組の面々、麻生財閥とか光山社の面々ですね。

失われた30年の実績でカネも名誉も全部独占を続けるのはいかがなものか。

税負担も当然増やさなければならないし名誉だとかルール作りの権力とかもそろそろ返して頂きたいのですよ。

日本を潰すか世襲上級国民が身を引くか、後世に日本の衰退を決定的にしたA級戦犯一族として名を残したくなければよくよく考えて進退を決めてほしいと思います。