1171ページ目 日本金属の続編

以前プライムに残れそうにない上場企業の1社でステンレス加工の日本金属を取り上げましたが5月25日付で「上場維持基準の適合に向けた計画に基づく進捗状況について」を出したので改めて内容を確認してみました。

なんとまだ諦めていません。

すでに岩崎通信機などプライム上場を断念した会社もありますが今後も継続して流通株式時価総額100億円を目指すと言い張っています。

2023年3月期の業績も合わせて確認しましたが半年前の業績予想から下方修正を出し株価も低迷で流通株式時価総額はプライム移行基準日時点の46億円から2023年3月末には38億円となりハードルがより高くなってしまいました。

2027年3月期までに流通株式時価総額100億円を達成する計画ですが猶予はあと4年であす。

流通株式比率を変えないなら株価を2.6倍強にしなければならない、一株2400円を目指さなければならないですが一株純資産は6月2日時点で3652.27円です。

資産価値だけ見ればものすごい割安ですが買収防衛策を撤廃すれば資産価値に注目した買いも幾ばくかは入る可能性もゼロではないかもしれません。

過去10年の株価推移を見ても同じく一株900円程度を推移していた2016年から1年後の2017年には瞬間的に一株3500円を超えており今後の4年間のどこかで瞬間最大風速を発揮して流通株式時価総額100億円は達成できるとでも考えたのでしょうか。

4年後の話なので結論を急ぐ必要がなくぎりぎりまで粘るつもりなのかもしれないです。

ただ一瞬だけ目標を達成できても後が続かないのは困ります。

円相場や原料相場が有利に動き顧客も単価アップに応じ、かつ、世界景気も好調に推移すれば経常利益30億円弱も無理とまでは言わないですが過去10年の実績を見る限り経常利益が20億円を超えていたのは2018年3月期と2019年3月期だけでした。

株価は業績の先行指標的な側面もあるのですが2016年3月期に9億円程度だった経常利益が2017年3月期は17億円弱に急拡大しているので実際に経常利益30億円弱を達成できなくても1年後2年後ぐらいに達成できる程度の目途が立てば1年程度で株価が急騰する可能性もゼロではないかもしれません。

しかしあくまでも流通株式時価総額100億円は最低限の基準です。

価格転嫁はある程度達成できたものの世界経済の景気減速で業績は横ばいになったとのことですが厳しい状況とはいえ流通株式時価総額100億円を達成できていない時点で今後もずっとプライム上場維持を継続していくのは持続可能性の観点から難しいのではないか。

流通株式時価総額100億円の達成が世界経済や各種相場次第で日本金属にとって最高の外部環境が実現しないと難しいという状況は不安定過ぎです。

株価2400円を超えたのは2017年8月から2018年5月までという有様でたった1年すら目標株価を維持できていないです。

3日天下とまでは言わないですが「象の歩む道には踏み込まず」の経営理念からすれば上場廃止のリスクを負ってまでプライム市場上場維持を目指すのはやめたほうがよさそうです。

不景気でも自助努力で上場維持基準を達成できるのでなければスタンダード市場移行が適切かと思います。

さてIRの強化も挙げ投資家や需要家の認知度を上げると言っていますが流通時価総額100億円割れでは機関投資家が買うのも難しく個人投資家へのIRも強化しなければならないのは間違いありません。

原料相場の変動を考えると半期及び通期だけでなく四半期開示も重要です。

決算説明資料の末尾に参考データとしてニッケル、フェロクロム、円ドル、ステンレスの相場情報が掲載されていますがこれらの値動きが業績にどう反映されるのか相場に詳しくない個人投資家には説明したほうがよいでしょう。

あと気になったのがyoutubeの日本金属公式チャンネルです。

6月6日時点で152人が登録し9本の動画がありましたが最も古いものが5年前、最も新しいものが3年前の投稿となっていてどの動画も再生回数1万回未満です。

誰が何のために公式動画を作ったのかは不明ですが更新がないのは関係者用に作った動画があったのでyoutubeにも投稿しただけだった、再生回数が伸び悩んだので諦めた、あるいはコロナ禍でそれどころでなかった、動画投稿に詳しい社員が転職または別部署に異動もしくは忙しくて手が回らなかった、手続きが多過ぎた、各部門の協力を得られなかった、上司からのダメ出しが多過ぎた等の理由でもあったのか?のかどうか不明ですがやる気を疑いました。

この種の動画はよほど斬新な内容でもない限りそう簡単に再生回数が伸びるわけでもないのですが公式チャンネルを開設するぐらいだったらきちんと更新しないとやる気がない、活動していない会社だと思われても仕方がないです。

9本といっても4本は英訳しただけの内容で実質5本、会社全体の紹介と板橋、岐阜、福島の各工場紹介だけしかなく芝の本社紹介はないです。

むしろ不動産価値が高い芝の本社がとても気になるのですが港区の本社と板橋区など各地の工場、管理部門と製造部門のカラーもかなり違ってくると思う、飲み会(令和ではもう無理に設けなくてもよいが)も港区と板橋区でだいぶ好みの店が違いそうな気もするのですが互いにコミュニケーションはきちんと取れているのか?

投資家や需要家だけでなく就活生もネットで検索して確認するかもしれないですが更新しない公式チャンネルを見てどう思われるか考えなかったのか?

たびたび板橋工場では事故が起きたが安全管理もコミュニケーション不全になっていて本社を無視して各工場が独断で動いていないか?

100%受注生産の典型的なBtoB企業で一対一のコミュニケーションならともかく不特定多数の一般個人相手のコミュニケーションは得意でないのかもしれないです。

ただ現状の時価総額では不特定多数の一般個人に株を買ってもらわざるを得ず不特定多数向けのコミュニケーションは強化する必要があります。

ステンレスの専門家だったら一般個人が驚愕するようなステンレス関係の面白いネタはたくさん持っていると思うのですがyoutubeに関してはyoutuber向けコンサルの監修を受けるなり無理なら無理で更新しない公式チャンネルは廃止する、その他のIRに関しても自社だけでどうにかしようとするのでなくIRの専門家を利用するのがよさそうです。

もっともそれでどれだけ認知度が上がるかどうかは不明、そして株価にどの程度反映されるかも不明ですが敢えてスタンダード市場で象の踏み込まぬ道を着実に歩んでいくのがよさそうな気がしてなりません。

1年後ぐらいに計画の進捗状況の説明があるかもしれませんがその時はまた見てみようかと思います。