1121ページ目 のれんの減損と定期償却

企業をМ&Aした時に買収額と買収先の純資産額との差額として発生するのれんですが日本で再び買収後ののれんの処理方法についてどうするか議論が起きています。

海外ではのれんを償却せず将来の収益力に問題が生じたときに減損損失として超過収益力として計上されているのれんを減らすことになっていますが日本の場合は減損損失に関してはほぼ同じですが毎期一定額を償却し最終的に0にする会計ルールになっています。

のれんは時間の経過とともに減少するという考え方に基づいた処理ですが一方で買収した後で償却費として費用処理しなければならず毎期の減益要因になるので企業からは不満の声が上がっており欧米と同じく償却不要の会計ルールにすべきといった意見も根強くあります。

М&Aで純資産額はたいしたことなくてもノウハウとか技術とか無形資産の部分の価値が高くそれを買収金額に反映させた場合はのれんの金額も高騰しがちです。

日本企業は毎期のれん償却費が発生しますからのれんが大きければ大きい程将来の減益要因になります。

М&Aで欧米の企業に競り負ける一つの理由になっている面もありМ&Aに熱心な企業にとってはのれんの償却は無くなった方がよいでしょうね。

ただ一方で買収後の経営が上手くいかず減損損失を計上する時に減損損失が巨額になるリスクがあるのは困ります。

М&Aの失敗事例としては東芝のウエスチングハウス買収や日本郵政のトール買収、第一三共のランバクシー買収等がありますが数千億円規模の損失が出ています。

買収後に上手くいかないことを考えると巨額ののれんは徐々に減らして将来の減損損失によるショックを減らしてほしいものです。

とはいえ買収を行う企業側としては絶対に失敗しないつもりで買収するわけですから買収後に上手くいかないリスクがあるからのれんは償却しろと言われたってなかなか納得しないでしょうね。

さらに言うならのれんの償却がない場合、イケイケの経営者が買収で高値づかみして後で苦しむことになりかねません。

のれん償却負担を嫌って高い金額を提示できないのが困るとは言うものののれん償却費すらどうにかできない程度の収益しか上げられないのでは高値づかみと言わざるを得ません。

М&Aで効果的効率的に事業拡大するのも一つの戦略ですが無理な買収をされるのも困ります。

あと欧米と日本で決定的に違うのは日本が失われた30年でGDPも賃金も増えず株価もバブル越え未達という点です。

物価水準が上がれば過去に計上したのれんも現在の物価水準で見れば減価していくことになりますが欧米はGDPや物価水準をこの30年で着実に成長させており会計上の償却処理はしていませんが物価水準上昇で純資産に占める相対的な割合は徐々に下がっていきます。

のれんの計上を嫌う理由の一つに換金可能性がない点も挙げられますが経済成長しない国の企業内に換金性がない無形資産が計上され続けるのもどうなのかとは思います。

国際化でルールを共通化するのも海外の投資家を呼び込むうえで大事ではあるのですがルールを変えて今までより儲かっているように見せかけるのでなくのれん償却費をなくして利益をかさ上げするよりも根本的な収益力の強化、М&Aをやるなら買収先の適正な評価と買収後の成長戦略できちんと成果を出すのを優先してほしいものです。