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プライム残留が厳しそうな企業4回目は河西工業です。

ここも日産系列の名門で主に自動車用の内装品の製造販売を行っている企業ですがどうしてこうなった?

2021年6月30日時点で流通株式時価総額は97.2億円でぎりぎり100億円を下回る状況だったのですが2023年2月17日時点の非流通株式も含む時価総額は約83億円です。

中期経営計画にも書いてありますがやはり日産一社に依存している点は大きく値上げも難しい状況では日産の経営が上向かない限り指標面でいくら割安評価されていると言っても投資をしづらい面があります。

ここでもまた工場再編・投資の最小化による資産効率の向上、本社固定費の大幅な削減、不採算事業の撲滅といった不振に陥った名門企業お決まりパターンの経営計画が出てきましたが別の場所でも述べた通り投資を絞り過ぎた結果として新たな収益の柱が育たたず危機を招いた面もあります。

当面は自動車分野に経営資源を集中するとあるのですが実際自動車分野には相当な経営資源を投下し続けないとあっという間に置いていかれる分野ではありますけど自社技術を活用した非自動車以外の投資も意欲がある若手がいれば積極的に任せてみるのも一つの方法です。

無駄の削減というと在庫削減も連想できますがこれも別のところでも述べた通り戦争などサプライチェーンが寸断されるリスクも考えると資産効率改善一辺倒でなくある程度は在庫を積み増し有事に備えながら利益を出せる体制づくりが必要になります。

子曰く、「過ぎたるは猶ほ及ばざるがごとし」ですがコストカットもダイエットもやり過ぎれば毒になります。

野生動物は厳しい冬を生き延びるため秋にたらふく食べて脂肪を蓄えますが体脂肪率を減らすデメリットは寒さを感じやすくなる、風邪を引きやすくなる、老化が早まる、骨密度低下で骨折しやすくなるといった点が挙げられ体脂肪率は男性だったらせいぜい15パーセント程度、女性だったらだいたい20%台前半ぐらいにとどめておくのがよいといった話もあります。

日産がくしゃみをしたら河西工業が風邪を引く、組織に余裕がなくなれば若手が逃げ出す、結果的に骨太の経営が難しくなる懸念もありコストカットもほどほどにしておくが持続可能な健康経営によさそうです。

体脂肪率10%割れの腹筋割れの体形でアスリート体質を目指すことで一時的には瞬発力が向上して利益も上がるでしょうがそれを10年20年継続できるかは微妙、激やせ体形より小太りの方が長生きできるといった話(プレジデント記事「長生きしたければ小太りが一番…リハビリ専門医が「老後の栄養不足はがんよりも恐ろしい」と訴えるワケ」)もあります。

そしてそこまでしてマッチョな経営を志向しても報われるとは限りません。河西工業の場合は未だ日産系列の自動車部品製造が主力ですが日産と一蓮托生のビジネスモデルを継続するなら日産が生き残れないと考える場合は河西工業も生き残れないので河西工業には投資しない、日産が生き残れると考える場合も日産本社を差し置いてわざわざ河西工業の株を購入するメリットが考えにくいです。

株主優待でもあれば内容によっては個人投資家の一部が購入するかもしれないが2020年3月期の時点で廃止されています。

経営環境の悪化と公平な利益還元のためとのことですが株主優待があったとしてもあまり効果もなかったのでしょう。

デジタル化を進めるのは当然ですが今後もビジネスモデルそのものを変革するつもりもないのであれば無理にプライム市場に残留する必要もないでしょう。

そもそも河西工業は1964年に東証2部に上場し2007年に東証1部に昇格していますが東証2部にいた期間が43年で東証1部にいた期間より長いです。より厳しくなった最低限の流通株式時価総額100億円すれすれの状態で日産がくしゃみをするたびにプライム残留か上場廃止かで一喜一憂するぐらいならスタンダード市場で地道に一喜一憂しなくて済む経営を行っていく方が投資家のみならず社員や取引先にとってもメリットがあるでしょう。

日産の業績次第で特に何もしなくても運がよければプライム市場に残留できる見込みがないこともないですが今後を考えるとスタンダード市場で息の長い活躍をしていくのがよいと思います。