1520ページ目 墜落事故と陰謀論

イラン政府はライシ大統領及びアブドラヒアン外務大臣の死去を正式発表しました(日経記事「イラン大統領死亡」)。

19日に大統領らを乗せたヘリがイラン北西部の山岳地帯で墜落し機体の残骸もイラン国営メディアの取材で確認されたとのことです。

イランといえばついこの間、イスラエルと報復合戦を行い非常に危うい状態でしたがまさか大統領が事故でお亡くなりになるとは…。

亡くなられた方々のご冥福をお祈りします。

 

さてイラン国内も中東情勢も不安定な状況ですので今後どうなるのか想像がつきませんね。

死亡理由は墜落事故なのですがさっそく米国やイスラエルの工作ではないかといった話が持ち上がっています。

イランから遠く離れた日本でもたとえばキュンコレ記事「本物の陰謀(1)イラン大統領墜落死の不可解と過去の航空機事故で亡くなった大統領一覧」とかですね。

たしかにイラン大統領は対米対イスラエル強硬派でCIAやモサド工作員が狙っていても不思議ではありません。

しかし本当に工作員による暗殺だった場合はそれが他国の工作員だったことが発覚した場合は収拾がつかなくなるリスクがあります。

ただでさえ不安定な状況なのに暗殺を強行して中東のパワーバランスが崩れ予測不能な事態になるのは米国やイスラエルにとっても好ましい事ではないでしょう。

それに事故が起きた当時は雨が降り濃霧も発生していました。

予定の都合もあって陸路でなくヘリでの移動を強行したのが不味かったのでしょうが山の天気は決して甘く見てはいけません。

場合によっては死ぬこともあります。

やはり工作でなく事故だったのでしょう。

 

とはいえ陰謀論にも気になる要素があったりします。

「どこかの国や勢力に都合の悪い大統領はなぜか航空機事故で死ぬ」ということで過去に飛行機の墜落でお亡くなりになった大統領一覧がまとめられています。

 

パラグアイ大統領(1940年)飛行機
フィリピン大統領(1957年)飛行機
ブラジル大統領(1958年)飛行機
イラク大統領(1966年)飛行機
ブラジル大統領(1967年)飛行機
ボリビア大統領(1969年)ヘリコプター
エクアドル大統領(1981年)飛行機
モザンビーク大統領(1986年)飛行機
パキスタン大統領(1988年)飛行機
ルワンダ大統領(1994年)飛行機
ブルンジ大統領(1994年)飛行機
北マケドニア大統領(2004年)飛行機
ポーランド大統領(2010年)飛行機
チリ元大統領(2024年)ヘリコプター
イラン大統領(2024年)ヘリコプター 

 

…といった感じですね。

まあこのリストを見るとたしかに米国に盾突く国々ばっかりです。

今回のイラン大統領がよりによってこのタイミングで墜落事故で死亡したのも米国の仕業かもしれないと思っても不思議ではありません。

大統領が搭乗するヘリだったら安全管理はしっかりやっているはずなので墜落はしないだろうといった話もありましたが他の民間ヘリに比べたら墜落確率は低いでしょうね。

 

しかし高名なギャンブラーであるセッツァー氏は言いました。

「落ちるときは落ちるもんだ」と。

どんなに安全対策をしてメンテナンスも怠っていなかったとしても飛行機やヘリの類は飛んでいる以上、落ちる確率はゼロではないのです。

ましてや濃霧の山岳地帯ですからね。

繰り返しますが山を甘く見てはいけません。

どんなに装備が万全であっても濃霧で視界が遮られた状態では対応できないことだってあるのです。

最新式の機体だったら濃霧で悪天候でも墜落しないなんて話は聞いたことがないですね。

それに本当の本当に要人の安全対策をしっかり行うのであれば大統領をヘリに乗せて濃霧発生中の山岳地帯を飛んではいけませんでした。

そういえば金正恩は飛行機より列車を使うことが多いようですがこれも飛行機が墜落する可能性も考慮したといった話もあります。

やはり今回の事故は安全管理を怠ったのが原因だったんじゃないかと思います。

 

偉い人に限った話ではないですけどリスクを軽視する原因の一つに正常性バイアスというのがあります。

例えば自分は大丈夫、自分だけは助かる、一回ぐらいだったら事故は起きないだろうといった意識のことですね。

正常性バイアスが強い人は自分の判断能力に自信があるというか過信しがちな人、自分の判断だけで物事を進め人の意見は聞かない人、ルールを無視して行動する人、自分の価値観を絶対視し他の価値観を軽視する人、いざ事故が起きた時になって大慌てする人が多いようです。

というかこれっていわゆる独裁者にありがちな性格なんじゃないか?

独裁者ほど自分の能力に自信を持ってますし独裁者ですから独断専行です。

国際ルールどころか国内でも平気で自分だけ法律を無視しますしイデオロギーとか宗教とかも入ってる独裁者は異なる価値観の人々を厳しく弾圧します。

有事の際に大慌てするかどうかに関してはちょっとわかりませんが複数要素が当てはまっているので独裁者ほど正常性バイアスは強い傾向があるんじゃないかという気もします。

 

山の天気の話もヘリは最新式でメンテナンスもしっかりしているし操縦者もベテランだから大丈夫、濃霧発生中にヘリを飛ばすのは危ないという意見をスケジュールの都合で聞き入れなかった、イランにも悪天候時におけるヘリの運行基準もあったのではないかと思いますが大統領は特別だということで運行ルールを無視した、信仰心がある人は神に守られているので事故で死ぬはずがない、といったやりとりだとか思考が背景にあったのではないか?

 

実際のところなんでわざわざ濃霧が発生している山岳地帯をヘリに大統領を乗せて通過しようとしたのか不明ですが濃霧発生中の山岳地帯は危ないですし人間死ぬときは死にます。

社会的地位や信仰心の有無にかかわらずです。

今回の事例は他国の政治家や経営者にとっても他人事ではありません。

正常性バイアスをしっかり認識して安全管理を怠らない、リスクをしっかり認識し間違っても濃霧の山岳地帯をヘリで通過するといった危険な行為はしないようにしてほしいものですね。