1338ページ目 大阪万博、過去の遺産取り崩し

2度の予算増額で当初の倍に膨れ上がった大阪万博ですが1970年の大阪万博の収益で設立された基金を取り崩して経済界が負担する増額分に充当する方向で調整されています(産経新聞記事「万博前売り券、企業が300万枚購入内諾 建設費は基金活用へ 関経連会長」ヤフーニュース)。

 

過去の大阪万博は収益が出てその収益で基金が設立されこれまで多くの事業への支援に充てられてきました。

財務省資料「独立行政法人日本万国博覧会記念機構ー 組織・業務の概要について -」によると基金の所在地は過去に万博を行った大阪府にあり出資額は国53%、大阪府47%となっています。

2007年には収益が1億5千万円ありました。

基金の目的は「人類の進歩と調和を主題として開催された日本万国博覧会の跡地を一体 として保有し、これを緑に包まれた文化公園として整備し、その適切な運営 を行うとともに、日本万国博覧会記念基金を設けてこれを管理する等の事業 を行うことにより、日本万国博覧会の成功を記念することを目的とする」で万博跡地を公園として整備し文化施設の運営も行う、万博とも親和性がある文化事業や国際事業に基金収益を原資に助成金を交付することになっています。

基金残高は190億円ぐらいで国債など安全資産で運用しているとのこと。

 

この基金は2014年に解散し関西・大阪二十一世紀協会が事業を継承しましたが引き続き万博基金が行ってきた支援も継続することになっています。

万博の成功を記念するような文化事業や国際事業に収益の一部で助成金を出すということなら2025年の大阪万博助成金を出す合理性はあります。

ただ元手も全部使い切っていいのか?それでも350億円の木造リングの半分強にしかならず運用収益はもう得られなくなります。

しかしもっとも理不尽なのは国と大阪府が出資した基金なのになぜ経済界の資金拠出分の補填に充てるのか?継承した基金のカネは本来なら国や大阪府の出資分に充てるのが筋です。

関西・大阪二十一世紀協会は大阪経済界が中心に設立した団体で現在も地元の有力企業出身者が中心になって運営していますが国や大阪府のカネだった万博基金のカネを経済界の出資分だと言い張るのはいかがなものか。

他人のカネを自分のカネと言い張って実質カネを出し惜しみするのはケチと言わざるを得ません。

こんな使い方をされるなら関西・大阪二十一世紀協会に万博基金を管理させたのは失敗だった、国や大阪府の予算として使った方が国や地方の財政にプラスだったと言えます。

元々国と大阪府のカネなのに基金の取り崩しで経済界の負担分に充当し経済界の負担を実質軽減するのは不公正な負担分配です。

警備費の増額分は国の負担になりましたがまず国や大阪府の負担を減らし経済界は基金の取り崩しでなく自助努力で不足分の金額を調達する、調達できないなら木造リング等を諦める等規模縮小で予算規模も縮小するのが妥当です。

 

物価上昇や税と社会保険料負担の増加で一般国民の生活は厳しい一方で大企業の業績は堅調で関西経済界も同様です。

特に大阪に関しては実際、近畿経済産業局のレポート「近畿経済の概要」を見ると1970年代以降50年にわたり近畿経済の全国シェアを低下させています。

域内実質総生産は約2割減で全国シェア15.9%、製造品出荷額等は27%減のシェア17%、さらに激しく落ち込んだのが資本金1億円以上の普通法人数と金融貸出残高でそれぞれ50年前は全国シェア2割強だったのが直近では1割強(12.7%と12.8%)にほぼ半減です。県民所得も全国平均より大阪は低く305万円ですが豊田財閥おひざ元の愛知が366万円で大阪の停滞ぶりが分かります。

大企業も金融も住友財閥が東京に移転したのも原因でそれでもまだ住友財閥が関西経済の盟主として振る舞うなら住友財閥でカネを出すのがよいです。

関西財界には自分がカルテルを持ちかけたのにいざとなったら我先に自主申告して課徴金を逃れ過去最高益になった関西電力もいますが(朝日新聞記事「関西電力の中間決算、22年ぶり最高益 原発再稼働と燃料価格下落で」)電気代も値下げしないなら万博の追加負担も拠出したらどうなのか。
関西の上場企業は好調な業績で関西経済に貢献していると言うなら大阪の府民所得も上がっていないとおかしいですが住友財閥関西電力等関西の大企業は本来の意味でケチだから万博の負担も賃上げも取引先への対価の支払いも値切りまくってこれぞ「大坂商人でっせ!」と言ってそうだが冗談じゃない。
地元の個人や中小企業が本来得るべき利益を奪ったら西日本の中心都市だってさすがに持たない、土に返るのも道理です。

万博を大義名分に一般国民が負担を押し付けられ大企業だけ儲けるやり方は問題です。

どうしても大阪万博を予定通りやるなら基金の取り崩しに頼らず経済界が真水の資金を拠出するのが適切と考えます。