1155ページ目 故人の生成AI

中国でバーチャル故人を作成して対話することが話題になっているようです(西日本新聞記事「喪失感埋まる?ただの"電子人形"? 中国で賛否「バーチャル故人」AIとCG駆使、ビデオ通話もOK」ヤフーニュース)。本人が生成AIにのめりこんだり詐欺などに悪用されるリスクを懸念する声もあって賛否は拮抗しているようです。

ただ中国特有の事情を考えるとこれが中国の体制に何かしらの影響を与える可能性もあるんじゃないかと思っています。

たとえば反権力の伝説的ジャーナリストとかもし独裁者に暗殺や投獄されてもジャーナリスト本人の作風を生成AIに読み込ませればいくらでも独裁者に都合の悪い記事が出てくる、しかも生身の人間でなく生成AIなので「代わりはいくらでもいるんだよ」という状況となりオリジナルをどうにかしても無駄ということになります。

たとえ劉暁波氏を獄死させたとしても本人の作風を読み込んだ生成AIが中国共産党による新たな人権弾圧について生前の劉暁波氏のように抗議し続けるかもしれません。

現時点でも外見や声の類似性は90%以上、思考の50%は再現できていることも考慮するとプログラムの改良や故人に関するデータの追加で80%超の再現を実現することも可能になるかもと思います。

権力者にとって都合が悪い話は忖度しない生成AIに言わせるのも一案ではあります。

そういえばニンジャスレイヤーのクローンヤクザ(CV玄田哲章氏だが一回録音すれば使いまわしできそうなのに一回一回大物声優が声を当てているあたり今この生成AIの話を予測していたのでは?と思わなくもない)は作中において伝説のヤクザとして知られるドゴジマゼイモンをクローンで大量作成したバイオ兵器の一種ですがやられ役とはいえ本来なら空手家や力士クラスでないと勝負にならないという設定もあります。

偽情報は困りますが独裁者にとって都合の悪い真実の情報が伝説級の反権力な文人墨客や革命家の作品類を基にした生成AIにより作成された告発文で大量に出回るならばそれはそれで社会的利益になるかもしれません。

そもそも為政者が都合の悪い事実をデマだと言い張って頑なに認めず圧政を続けるのもよくある話です。

中国共産党あたりは生成AIで偽情報が拡散するよりもむしろ不都合な客観的事実が出回るのを恐れているかもしれません。

芸術性を伴い読み手の心に火を灯すような内容なら強大な為政者や世界的大富豪と言えども独裁制民主制問わず一般大衆の圧倒的数の力に為すすべもなく引きずり降ろされる可能性もなくはないです。

中国政府も歴代の最高指導者の生成AIで対抗するかもしれないですがバーチャル劉さんVSリアル習近平あるいはバーチャル鄧小平の忖度しないガチンコ討論とか見てみたい気もします。

互いに生身の人間自身だったらまず実現しないカードですが対話相手が死者であろうと生者であろうと生成AIで絶対に交わることがない者同士との対話も幾ばくかは実現できるのではないでしょうか。

中国政府が故人の生成AIの利用に関してどう動くでしょうか?