最高裁で契約社員に対する退職金がないのは不合理な格差であると東京メトロ子会社が訴えられた件とアルバイト職員の賞与がないのは違法として大阪医科大が訴えられた件の判決がでました。
退職金不支給も賞与不支給も不合理な格差とは認められないとのことです。
待遇に関しては同一労働同一賃金が基本であり正社員と同様の仕事をしているにもかかわらず非正規雇用か否かで退職金や賞与が受け取れないというのは問題です。
しかし退職金不支給の判決では契約社員は基本的に配置転換がなく売店業務しか行わない一方で正社員は配置転換ありで売店業務以外のサポート業務もあるため同一労働とは言えず退職金不支給は不合理とは言えないというのが理由でした。
賞与不支給の判決は正規職員の業務難易度が高く人事異動もある一方でアルバイトの業務は簡単なので同一労働でなく賞与不支給は不合理とは言えないというのが理由となっています。
その仕事が正社員と同一かどうかをめぐっての争いになりますが会社からすれば人件費抑制のため正社員と同じ仕事ではない、非正規雇用者からすれば待遇改善のため正社員と同じ仕事であると話は平行線です。
業務の難易度に関しては何を基準にするのか何とも言い難いものがありますが両方の判決を見ると人事異動については一つの重要な要素です。
退職金なし賞与無しの非正規雇用者を別店舗などに人事異動させる場合は退職金や賞与の取り扱いについて会社側は何かしら考えた方がよさそうです。
また退職金や賞与の取り扱いについて不合理かどうかは個々のケースごとに判断すべきとしており今回の判決だけ見て非正規雇用者に退職金や賞与を支払わなくてよいと解釈するのは早計と言えます。
今回の判決は原告にとって厳しい判決になりましたが今後も同種の訴訟は出てくるかもしれません。
さらに裁判では勝ったとしても訴訟により企業イメージは悪化するリスクは生じます。
訴訟で使う労力も大きいですが今回の2件の訴訟に関しても最初から正社員と同じ額でなくてもいくらかは退職金や賞与を支払った方が企業イメージの問題や訴訟の労力の問題からすればトータルで見て企業利益につながった可能性も否定できません。
同様の取り扱いをしている企業も少なくないでしょうが待遇に関しては見直しを検討する時期ではないかと思います。