1134ページ目 労働者の日と賃上げとやりがい搾取

今日は5月1日労働者の日です。

ニュースの類も労働者の日にちなんだ記事が出てきますが自宅で購読している日経朝刊のコラムもそんな感じでした。

まあそれはよいのですが読んでいてちょっと疑問に思った点もあります。

本日の日経コラム春秋では新人女性社員に心構えを説く「ありがとう、という言葉をいっぱいもらえる。そんな会社にしたいんよ」という社長らしき人物の言葉が紹介されています。

一見すると特に不審なことを言っているわけではないのですが過去の労災問題でこの言葉から居酒屋ワタミのブラック労働を連想する人がいるかもしれません。

「地球上で一番たくさんの「ありがとう」を集める経営 -なぜワタミは「存在」対「効果」を追求していくのか」という2011年の著書もあるのですがその後過労自殺した女性社員もいます(産経新聞記事入社2カ月で過労自殺した「ワタミ」の26歳女性社員…手帳に「気持ちが沈む。早く動けない。誰か助けて」)。

同社も「地球上で一番たくさんの “ありがとう” を集めるグループになろう」との理念を掲げていますがコラム中の社長はワタミの受け売りでしょうか。

ビジネス書を読んで感動して変なスイッチが入ってしまうというパターンはありがちな話です。

その新人社員の女性は真剣に聞いているといった趣旨のことがコラムに書かれていましたが内心でこの会社はワタミブラック企業だと痛感しとりあえずヤバい年配男性社長のブラック企業的洗脳をやり過ごそうとしているのかもと思いました。

多くの中小企業は上がらぬ下請け報酬と円安による原料高で賃上げも難しくこの種のやりがい搾取に走らざるを得ないのかもしれません。

上場企業ですが薄利多売の居酒屋業態だったワタミと構造的に似ています。

一方で心理的安全性を考えれば年上かつ男性かつ社長相手に新人女性社員の立場で反論するのは難しいものがあります。

若年層離職率の高止まりはおっさん正社員上司のそういう古い価値観が嫌だからという面もあるかもしれないです。

内閣府の「特集 就労等に関する若者の意識」も確認しましたが初職をやめた理由の上位に仕事が自分に合わなかった、人間関係が良くなかった、労働条件が良くなかったが(労働時間と賃金の両方を含めた)ありワタミ的価値観の会社は全部辛そうな気がします。

今日のコラムを書いた人は大手紙で一面のコラムを執筆するあたり社内では名のある人物なのでしょう。

年配男性社長を好意的に見て酒の「肴」という文字を使うあたり執筆者はバブル期入社の男性記者なのかもと思いました。

もしそうなら長年染みついた昭和の価値観のアップデートは大変かもしれないですが労働者の日だからこそブラック労働根絶を日経の読者に多い上級管理職や経営者に向けて発信してほしかったかなという気もします。

感謝の心はそれはそれでよいのですが「ありがとう」で人間は食えません。

ブラック中小企業のやりがい搾取も社会的問題ですが上述の読者層がコラムの記事を読むのを踏まえて労働者保護と賃上げの重要性を説くのが重要かと思います。