パリ五輪が開幕しましたが今日もウクライナやガザ地区で戦争が続いています。
ゴラン高原ではイスラム系武装組織らしき勢力がロケット弾を発射し民間人が犠牲になりました(朝日新聞記事「ゴラン高原に攻撃、子どもら12人死亡 ヒズボラ関与否定、緊張激化」)。
イスラエルは犯人はヒズボラだと非難する一方でヒズボラはやっていないと否定しています。
いったいどっちが嘘をついているんでしょうね?
ただゴラン高原という地域は元々シリアの領土でしたが中東戦争でイスラエルが占領しています。
この地域は豊富な水資源の確保と周辺地域に睨みを利かせる上で重要な場所です(内閣府「ゴラン高原」)。
孫子の九地で言うところの争地、衢地ですね。
なおゴラン高原は現在も国際社会はイスラエルの主権を認めていません。
ネタニヤフさんはヒズボラに報復することを主張していますがそもそもイスラエルが勝手に占領している地域です。
民間人に対する攻撃は許される行為ではありません。
まずテロを行った集団を特定した上で国際社会がテロリストに制裁を科すのが筋であってイスラエルがどうこうする話ではないのです。
しかしイスラエルは四方八方敵だらけで大丈夫なんですかね。
シリア、レバノン、イエメン、イラン(一昨日の文章で抜けてました)、エジプトとの間で戦闘が発生していますけど半年で5カ国というのは多過ぎです。
ガザ地区に地上部隊を送ってしまったから北部が手薄になったと思われて武装勢力が動き出したんじゃないか?
ガザ地区を占領している場合じゃないと思うぞ?
戦略的にはゴラン高原の方がはるかに重要ですけどイスラエル的にはそれでいいのか?
いや国際社会としてはイスラエルはゴラン高原から引き揚げて貰わないと困るんですけどね。
イスラエルによるゴラン高原占領を放置しておくのは北方領土をロシアに武力で占領されている日本の立場としては見過ごせないんですよ。
ゴラン高原のイスラエル領有が認められてしまったら北方領土のロシア領有まで正当化されかねませんのでね。
イスラエルが南のガザと北のゴラン高原で戦争をやるというなら二正面作戦ということになりますけどかなり厳しいですよ二正面作戦は。
旧日本軍も中国本土で中国軍と、太平洋で米国軍と、インドで英国軍と戦い、旧ドイツ軍は東でソ連軍、西で英仏米軍と戦い、複数方面に戦力が分散し広がり過ぎた戦線を維持できず消耗戦に陥り結局完全に敗北しました。
どんなに精強な軍人だったとしても物資がない中での消耗戦に耐えきれるはずがないのです。
米国が援助しているから物資は問題ないって?
兵士の犠牲はどうにもならんぞ。
兵器を売るばかりか米国兵まで投入しようとしたら世界中のみならず米国中から反発の声が上がりかねません。
徴兵を拒否するユダヤ教超正統派の子弟まで徴兵してますけどそもそも徴兵制って士気の観点から考えるとかえって足手まといになるおそれがあります。
まあユダヤ教超正統派の男子は働かない人たちで他のイスラエル国民からすればお前らも兵役に行けという話になってくるんでしょうけど数だけ揃えたって戦力にはなりませんよ。
士気が高い志願兵をしっかり訓練して少数精鋭の軍人に装備を充実させる方が重要です。
というかイスラエルは経済力がある国ですけどけっこう物価が高い国ですし戦争のせいで労働力不足も深刻化しています(NRI記事「イスラエル経済の悪化は先行きの軍事行動にどう影響するか:ウクライナ侵攻後のロシア経済との類似点と相違点」)。
ユダヤ教超正統派以外の国民を徴兵するのも不味い、徴兵なんてやらずに民間の労働力不足に対応しないと不味い状況です。
イスラエル軍だってイスラエルの経済力を背景に装備を充実させたから中東一帯で優位に立てるわけで戦争で経済を犠牲にしたらその優位だって失うのです。
もうガザ侵攻から9カ月も経ってますけどいい加減に矛を収めないと重い代償を支払わなければならなくなるのはネタニヤフさんです。
こんなことを言うとユダヤ教右派は反ユダヤ主義だとか言ってきますけどそれは論点ずらしというものです。
別にユダヤ人が悪いなんて一言も言ってませんからね。
ただ戦争をするなと言っているのです。
もちろんハマスやその他のイスラム武装勢力によるテロも問題でこいつらも等しく裁かれなければなりません。
これは野蛮と文明の戦いです。
ネタニヤフさんと同じ事を言ってるって?
いいえ違います。
ネタニヤフさんはイスラエルを文明、ハマスを野蛮と言っていますが野蛮なのはジェノサイドを主導するネタニヤフさんたちユダヤ教右派と人質を未だ解放しないハマスの指導者です。
文明側は両者に停戦を呼び掛ける国際社会です。
対立軸が根本的に違うのです。
米国議会での演説ではどれだけイスラエルの民間人に被害があったか実例を上げていますけどそれはガザ地区の民間人だって同じです。
己の欲せざることをするなかれ、自国の民間人を攻撃されたくなかったら双方が互いの民間人を攻撃してはいけません。
何?ジェノサイドという言葉を軽々しく使うなだと?
別に軽々しく使ってはいない、むしろ国連が定義するジェノサイドの要件をきっちり検討した上でジェノサイドという極めて重い言葉を使っているのですが。
ここまで明らかにジェノサイドなのにまだガザ地区でのイスラエル軍の行為をジェノサイドと認めない、ジェノサイドかどうか慎重に判断すべきだと言ってジェノサイド認定から逃げる奴は中国の故事で言うところの「馬鹿」です。
強大な権力を握った宦官の趙高に忖度して鹿を馬だと認めた周囲の小者たちと同じです。
米国やイスラエルがジェノサイドじゃないと言うからこれはジェノサイドじゃないと言う奴は権力に忖度しているとしか言いようがないですね。
ネタニヤフさんに停戦を要求することは無礼なのか?トランプさん。
そもそも礼儀とか言ってるけどトランプさんが礼儀を語るって一体どういう風の吹き回しなのか?
まあ大衆受けのためにわざわざしょうもないパフォーマンスをやっていて誰もいないところでは意外と理知的だなんて話もどっかで見た覚えがあるんですけどそれはされおき
ゴラン高原の一件だってトランプ高原なんて地域まであるけど誰のせいでこんなことになったと思っているのか。
力による現状変更は一切認めないのが現代社会のルールだ。
これは一切曲げることは許されない。
まあ分断が進む世界で連帯が必要なのは実際その通りでガザ地区やイスラエルで犠牲になった民間人には心からの哀悼の意を表明する。
ただイスラエルを否定する勢力は全て反ユダヤ主義だと切り捨てるのは恐ろしく危険なことでこれを放置しておくと他の場所、特に日本が同じ理屈の主張を押し付けられることになりかねない点で非常に心配なんですよ。
ロシアがウクライナ侵攻を行う際には反ナチスを掲げていましたね。
何で第二次世界大戦から80年近く経ったのにそんなことを言うかって「反ナチス」を掲げれば批判されないという錦の御旗になってしまっているからですよ。
もちろんナチスの復活は認められませんが「反ナチス」を掲げてそのナチスが行った残虐行為を現代社会で行うのは明らかに不当です。
日本に何の関係があるかというと中国ロシア北朝鮮が反帝国主義を掲げて日本を「解放」するとか言って攻め込んでくるリスクがある点です。
もう大日本帝国なんて79年前に壊滅して今では平和主義の日本国です。
ナチスがとっくの昔に壊滅したのと同じことです。
未だに第二次世界大戦時の認識では困るのです。
いくら日本が否定しても天皇が責任をとっていない、日本の天皇を退位させろ、できないのなら日本は帝国主義の国で危険だから「解放」してあげようとか言い出しかねない連中が日本の隣国です。
自国を批判されたら何でもかんでも「反ユダヤ主義」だとか言い出すイスラエルの屁理屈をこのまま放置したら中露北に同じことを主張され日本にとっては後々の禍根になります。
そんなわけで日本と中東とは遠い距離があってイスラエルとはそんなに付き合いがあるわけでもないんですけどネタニヤフさんたちユダヤ教右派のやり方は無視できないのです。
とにかく力による現状変更は一切認めない。
今すぐ停戦しろ。
バッハさんもネタニヤフさんに停戦の申し入れをしてくれ。
戦争なんてお断りです。