1373ページ目 蜘蛛の糸と芥川龍之介のビジョン

蜘蛛の糸を読んでいてふと思うところがありました。

 

カンダタの強欲さでぷつりと蜘蛛の糸は切れてしまいましたけど蜘蛛の糸は本来なら強靭で鉄より強いんです。

スパイダーマンは暴走列車を止めたり異次元の怪物と戦ったりしていましたし一見細い蜘蛛の糸でもカンダタ一人だけでなく大勢の負け組を助けることだってできたはず。
ですがさすがに他人を蹴落としてまで自分だけ助かろうとするカンダタの強欲さが重すぎて蜘蛛の糸といえども強度の限界が来てしまったようです。


まあ下からよじ登ってくる他の亡者たちも本人たちが助かりたいというだけでなく他人を蹴落としてまで自分だけ助かろうとするカンダタの足を引っ張りたかったので蜘蛛の糸にぶら下がっていた可能性も考えられます。
カンダタ一人の強欲さだけでなくスパイトの重さもあって蜘蛛の糸は耐えられなくなったのかもしれませんね。


「大いなる力には、大いなる責任が伴う」のです。
本来カンダタがとるべきだった行動は他人を蹴落として自分だけ助かろうとするのでなく蜘蛛の糸という大いなる力をみんなのために使う、先に登る先駆者として下でもがく困窮者たちを引っ張り上げることでした。
足を引っ張ろうとしてくる者もカンダタがみんなを助ける意思を示すことができれば、みんなで地獄から抜け出すにあたって信頼に足るリーダーシップを発揮できればみんなもカンダタの足を引っ張るのをやめたかもしれません。
みんなが地獄を脱出したところで生前に蜘蛛を助けたことで地獄から抜け出すきっかけを作ったカンダタはみんなを助けた人として尊敬されたことでしょう。
足を引っ張ろうとした人も悔い改める、もし悔い改めなければその者が今度は聖人を貶める恩知らずな悪人として他の人から非難されることになります。
生前に犯した殺生の人数分よりはるかに多い人々を救済することでカンダタは生前のカルマの清算ができた可能性もあったのではないかと思うのです。

 

…という感想を蜘蛛の糸を読んで思ったのですが同時にふと思いました。

芥川龍之介は何か未来らしきものを感じていたのではないかなと。

蜘蛛の糸が鉄より強靭だとかスパイダーマンの話は芥川龍之介が存命中にはありませんでした。

カンダタだけでなく大勢の亡者がぶら下がっても耐えられる強度の蜘蛛の糸の発想が出てくる、スパイダーマンの糸みたいに怪物だとか暴走列車にも対応できるような強靭さを芥川龍之介蜘蛛の糸の描写から感じたのですが芥川龍之介は何か現在過去未来の集合無意識的な何かにアクセスしていて芥川龍之介死後に出てくるスパイバーの蜘蛛の糸だとかスパイダーマンのビジョンを感じ取ったのではないか?

そういえば芥川龍之介は薬でトリップしてましたがそこで夢現に視えてしまったのではないかと思わなくもありません。

自殺する際にぼんやりとした不安を上げていましたがこれも戦争で壊滅する未来を感じ取っていた可能性も脳裏をよぎりました。

鉄より強くて大勢の人を支える蜘蛛の糸なんて戦前の時点では荒唐無稽な話でしたけど令和の現在からするとたしかに難しいとは思いますけどもう少し蜘蛛の糸の束を重ねれば意外に何とかなるのではないかという気もします。

まあ実際のところどういう状態だったのかは知る術もないのですが他の作品にも何か未来のビジョンを集合無意識の海から感じ取った描写がどこかにあるかもしれないですね。