2382ページ目 ドイツの自動車補助金の除外と戦闘機の共同開発参加要求 メモ②

来日したメルツは日英伊の戦闘機共同開発にドイツも参加させろと言ってきました。そしてエアバスは参加するならエアバスにも開発に参加させろと言っています(共同通信記事「次期戦闘機「相応な分担」を要求 ドイツ参加なら、エアバス幹部」)。ドイツはフランスとの戦闘機開発に頓挫したから日英伊の戦闘機共同開発に参加したがっているみたいですが日本がドイツの参加を認めた場合のメリットとデメリットはどうなってますか?

 

結論から言うと、日本にとっては**「資金・市場・欧州政治面ではメリットがあるが、技術主導権と開発日程の面ではデメリットの方が大きい」**という評価になりそうです。

今回の話で重要なのは、ドイツが単なる購入国ではなく、エアバスが「相応な分担」を要求していることです。つまり「お金だけ出します」ではなく、「開発の中核に入れてほしい」という意味です。エアバス側は飛行制御や機体中央胴体などへの参加を示唆しています。

日本側のメリット
① 開発費負担の軽減

GCAPは数兆円規模の事業です。

ドイツが正式参加すれば、

開発費
試験費
生産設備投資
将来の改修費

を分担できます。

現在の日英伊3か国より財政負担は軽くなります。

特に近年のドイツは国防支出を大幅に増やしており、資金力は欧州最大級です。

これは純粋に大きなメリットです。

② 発注数量増加による単価低下

戦闘機は数が増えるほど安くなります。

仮に

日本 90~120機
英国 100機前後
イタリア 60~100機

だとしても大量生産とは言い難いですが、

これにドイツが加わればさらに数十機から100機以上の追加需要が見込めます。

その結果

生産単価低下
部品調達コスト低下
維持整備費低下

が期待できます。

③ 欧州市場への販売力強化

ドイツはEU最大の経済大国です。

ドイツが参加すると

オランダ
ベルギー
オーストリア
スイス
北欧諸国

などへの売り込みもしやすくなります。

輸出先が増えれば、

日本企業の利益増
改修予算増
長期サポート体制強化

につながります。

④ FCAS崩壊リスクへの保険

ドイツは現在フランス・スペインとFCAS計画を進めていますが、エアバスとダッソーの対立でたびたび停滞してきました。

もしFCASが完全に頓挫した場合、

ドイツをGCAP側に引き込めば

「欧州戦闘機開発をGCAPに一本化する」

可能性もあります。

長期的には巨大プロジェクトになるかもしれません。

日本側のデメリット

こちらの方が日本では深刻視されていると思われます。

① 作業分担の再交渉が必要

現在のGCAPは

日本
英国
イタリア

がほぼ均等な立場で進めています。

ドイツ参加となれば、

当然エアバスは

「資金を出すのだから仕事もよこせ」

と言います。

すると

三菱重工
BAEシステムズ
レオナルド

が既に持っている担当業務を削る必要があります。

つまり、

日本の取り分が減る可能性

があります。

② 技術移転の問題

エアバスが要求している分野は、

飛行制御
胴体中央部

といった最重要技術です。

日本から見ると、

GCAPは単なる装備調達ではなく

「戦闘機技術の継承」

が重要目的です。

そのため

「お金はありがたいが技術は渡したくない」

というジレンマがあります。

③ 開発スケジュール遅延

実はこれが最大の問題です。

GCAPは2035年配備が目標です。

ところがドイツが参加すると、

要求性能
運用構想
生産分担
開発管理

を全部見直す可能性があります。

例えばドイツが

「航続距離よりNATO任務重視」

と言い出したら、

日本向け設計との調整が必要になります。

結果として

1年、2年単位の遅延リスクが生まれます。

④ FCASと同じ内紛が持ち込まれる可能性

実はこれを懸念する防衛関係者は少なくありません。

FCASが停滞した大きな理由は

ダッソー
エアバス

の主導権争いでした。

つまり、

エアバス自身がFCASで揉めた当事者です。

日本から見ると、

FCASでうまくいかなかったからGCAPに来るのに、 GCAPでも同じことを始めるのでは?

という警戒心は当然あります。

⑤ 輸出管理が複雑化

参加国が増えるほど、

輸出許可を取る相手も増えます。

例えば将来

サウジアラビア
インド
オーストラリア

などへ輸出する時、

4か国全ての同意が必要になる可能性があります。

これはF-35計画でも問題になったテーマです。

日本政府が最も気にする点

おそらく日本政府が最も重視するのは、

「2035年に間に合うか」

です。

F-2後継機計画は既に時間的余裕が乏しく、

1~2年遅れるだけでも航空自衛隊の戦力計画に大きな影響が出ます。

そのため、

「ドイツが参加するなら歓迎」

ではなく、

「ドイツ参加で日程が遅れるなら拒否」

という判断になりやすいでしょう。

実際、今の議論を見ても英国は比較的前向きなのに対し、日本側には慎重論が強いと報じられています。

要するに日本にとっては、

資金面では参加歓迎
量産規模でも歓迎
技術主導権とスケジュールでは強い警戒

という構図です。

私見では、日本が受け入れるとしても「カナダ型の限定参加」や「将来顧客としての準参加」はあり得ても、エアバスが要求するような中核開発参加まで認めるハードルはかなり高いと思います。最大の理由は、FCASの例を見ても分かるように、今から第4国を入れると開発体制そのものを組み直す必要が生じるからです。

 

フランスとの共同開発が頓挫したからといって今更こっち来られてもなあ。

仮にドイツの参入を認めてしまったせいで2035年に開発が間に合わなかった場合、日本の戦力計画はどこが修正されますか?予算的にはいくら追加の出費が生じますか?

 

これは日本の防衛計画の中でもかなり重大な問題です。

GCAP(日英伊の次期戦闘機)は単にF-2の後継機ではなく、2040年代以降の航空自衛隊の主力戦力そのものなので、2035年前後の配備開始が遅れると自衛隊全体の戦力構造に連鎖的な影響が出ます。

ただし現時点では政府は「遅延した場合の公式な代替計画」を公表していませんので、以下は現在の戦力構成と過去の事例から見た現実的なシナリオになります。

一番可能性が高いのはF-2延命

まず航空自衛隊には約90機のF-2があります。

F-2は2000年から2011年頃まで配備されたので、

古い機体は2035年頃に35年使用
新しい機体でも25年超

になります。

本来はGCAPへの更新を前提にしていますが、GCAPが2~5年遅れた場合には、

機体構造補修
レーダー更新
電子戦装置更新

などを行い、

F-2を2040年前後まで延命する可能性が最も高いです。

米軍も

B-52
F-15
F/A-18

を大規模改修しているため、技術的には不可能ではありません。

F-35の追加購入

次に考えられるのが

F-35A F-35B

の追加調達です。

現在日本は

F-35A 105機
F-35B 42機

を導入予定です。

GCAPが遅れるなら

「緊急措置としてF-35をさらに数十機調達」

という案が出てきます。

しかしこれは問題があります。

F-35は優秀ですが、

航続距離
搭載量
将来の拡張性

ではGCAPが目指している第6世代機を代替できません。

あくまでつなぎです。

F-15JSIの運用期間延長

航空自衛隊は約70機のF-15Jを

JSI改修

しています。

GCAPが遅れれば、

本来なら2030年代後半に退役予定だった機体をさらに使い続ける可能性があります。

むしろ短期的にはこちらの方が現実的です。

お金はいくらかかるのか

ここが難しいところですが、おおまかな試算はできます。

ケース1

1〜2年遅延

この程度なら

F-2延命
F-15維持費増

が中心です。

追加負担は

数千億円規模

と考えられます。

日本の防衛予算からすれば吸収可能です。

ケース2

5年遅延

こちらはかなり深刻です。

仮にF-35を20~40機追加購入すると、

1機あたり関連費込みで200~300億円近い総事業費になる可能性があります。

すると

機体取得
予備部品
教育訓練
維持整備

を含め

数千億円から1兆円超

の追加負担が見えてきます。

ケース3

FCASのように大幅迷走

仮にドイツ参加で

要求仕様変更
役割再分配
設計見直し

が発生し、

2035→2040年代前半

レベルの遅延になると話は別です。

その場合、

F-2延命
F-35追加導入
F-15改修継続

を全部やる必要が出てきます。

すると累計で

1兆~2兆円規模の追加支出

になっても不思議ではありません。

日本が最も恐れているもの

実は日本が一番恐れているのは予算ではありません。

航空自衛隊は

F-4退役
F-15老朽化
F-2退役開始

が重なる2030年代後半に戦力の谷間ができます。

もしGCAPが大幅遅延すると、

お金を出せば何とかなる問題ではなく、

「中国空軍のJ-20や将来機に対抗する戦力構築の空白期間」

が生じます。

そのため日本防衛省の立場から見ると、

ドイツ参加で最も危険なのは開発費増加ではなく、

「2035年配備開始という現在のスケジュールが崩れること」

です。

極端に言えば、防衛省は数千億円の追加負担を受け入れてでもスケジュール維持を優先する可能性があります。

だからこそ、仮にメルツ政権が参加を求めても、日本側は「資金を持ってくること」より「スケジュールを遅らせないこと」をはるかに重視して判断すると思われます。特に航空自衛隊にとっては、開発費の一部節約よりも2035年頃に確実に機体が飛ぶことの方が戦略的価値が大きいからです。

 

開発に参加させろって言われたって数千億円程度の拠出じゃ話になりませんね。

それでドイツが共同開発に参加するならドイツはいくら開発資金を拠出しますか?エアバスも入ってくることでエアバスにはいくらの利益が見込まれますか?

 

現時点では、ドイツ政府もエアバスも**「いくら出すか」を公表していません**。共同通信の記事でも「多額の資金を投じることになる」と述べているだけで、金額は明らかになっていません。

そのため以下は公開されているGCAPの規模や欧州の防衛事業の慣行からの試算になります。

ドイツはいくら拠出する可能性があるか

GCAPの総開発費については各国政府が正式総額を示していませんが、一般に数百億ドル規模、日本円で数兆円規模の事業と見られています。

仮に開発費総額を

5兆円
7兆円
10兆円

クラスとすると、

後から参加するドイツが「主要パートナー」を要求する場合は、

10%参加なら5000億~1兆円
20%参加なら1兆~2兆円
25%参加なら1.25兆~2.5兆円

程度の負担が理論上は考えられます。

エアバスが「相応な分担」を求めている背景には、まさにこのレベルの出資を想定している可能性があります。単に100億円や200億円程度では、既存参加国が作業分担を見直す理由にならないからです。

エアバスにとってどのくらい利益になるか

ここがさらに重要です。

エアバスは開発費を出しても、その見返りとして

設計業務
試験業務
生産業務
保守業務
将来改修業務

を獲得します。

防衛産業にとって本当に利益が大きいのは開発費そのものではなく、

40~50年続く維持整備契約

です。

仮に機体生産の20%を獲得したら

例えばGCAPが最終的に

日本
英国
イタリア
ドイツ
その他輸出国

を合わせて500~700機規模になったとします。

仮に1機3億ドル(約450億円)規模の事業になると、

500機で

約22兆円

の機体市場になります。

その20%をエアバスが担当すれば、

約4兆~5兆円規模の売上です。

もちろん売上全部が利益ではありません。

航空宇宙産業の営業利益率を

5%
10%

程度とすると、

エアバスの利益は

2000億~5000億円規模

になる可能性があります。

さらに保守契約まで入れるともっと大きくなります。

なぜエアバスは必死なのか

実はエアバスにとってもっと深刻なのは、

FCAS問題です。

現在ドイツ・フランス・スペインが進めるFCASでは、

ダッソー(フランス)
エアバス(ドイツ・スペイン側)

の主導権争いが長年続きました。

もし将来的にFCASが失速し、

GCAPだけが成功した場合、

エアバスがGCAPに参加できなければ、

欧州第6世代戦闘機市場での地位を失う恐れがあります。

逆にGCAPへ参加できれば、

技術者雇用維持
戦闘機設計能力維持
将来改修事業への参画

が可能になります。これは単なる利益計算以上の戦略的価値があります。

日本から見ると

実は日本が警戒するのは、ドイツが出す資金の額そのものではありません。

仮にドイツが

1兆円以上持ってきます

と言っても、

エアバスが

飛行制御
中央胴体
ソフトウェア
システム統合

といった中核部分を要求すれば、

三菱重工や日本企業の担当分が減ります。

つまり日本側の感覚では

「1兆円もらえるメリット」

と

「技術主導権や日程が失われるデメリット」

を比較する話になります。

そのため交渉があるとしても、

日本が受け入れやすいのは

ドイツが資金を出す
ドイツ企業に一定の部品生産を与える
しかし機体設計の中核には入れない

という方式です。

逆にエアバスが要求しているような「開発中枢への参加」まで認める場合は、日本が得る資金メリットは大きくても、その代わりに開発スケジュールや技術取得目標への影響がかなり大きくなるでしょう。

 

1兆円規模のカネをドイツが負担しても開発遅延リスクに加えて技術主導権も取られるリスクがあるんじゃなあ…

技術主導権を取られた場合の日本側の損失はいくらぐらいするんですかね。

 

厳密に言うと、「技術主導権を取られたら日本がいくら損するか」を金額で正確に計算することは不可能です。

なぜなら、損失の大部分は開発費ではなく、

将来の改修権限
ソフトウェア更新権限
輸出時の発言権
次世代戦闘機開発能力
国内雇用

といった「無形資産」だからです。

ただし、防衛産業の視点で概算すると、かなり大きな数字になります。

ケース1 日本企業の取り分が減るだけ

例えば現在GCAPの航空機本体関係の仕事を

三菱重工
IHI
三菱電機

などが担当するとします。

仮にドイツ・エアバス参加で、

日本企業の受注割合が

33% ↓
25%

へ低下したと仮定します。

仮に将来

開発
生産
改修
維持整備

を含めた総事業規模が20~30兆円なら、

減少分は

1.6~2.5兆円程度

になります。

つまり企業収入だけ見ても数兆円単位です。

ケース2 ソフトウェア主導権喪失

こちらが本命です。

現代戦闘機は

機体
エンジン

よりも

OS
ミッションシステム
AI支援
電子戦ソフト

の価値が大きいです。

F-35を見れば分かります。

米国がソフトウェア主導権を握っているため、

利用国は自由に改修できません。

日本がGCAPで最も欲しいのは

「F-35のように米国依存しない能力」

です。

もしエアバスが中核ソフトウェアに参加すると、

日本単独での改修自由度が低下します。

これを金額換算するのは難しいですが、

40~50年の運用期間を考えると

数兆円規模の価値

があると見る専門家も珍しくありません。

ケース3 将来戦闘機開発能力喪失

日本政府がGCAPを進める最大理由の一つは

「戦闘機を設計できる技術者集団を維持すること」

です。

もし重要技術をエアバス側に持っていかれると、

2040年代後半や2050年代に

次の戦闘機を開発する際、

再び外国依存になります。

これは単なる事業損失ではありません。

国家安全保障上の損失です。

むしろ日本政府はお金で考えていない

実は防衛省や経済産業省の考え方は

企業会計とはかなり違います。

例えば

ドイツが1兆円出す
代わりに日本企業の受注が1兆円減る

なら、

帳簿上はプラスマイナスゼロです。

しかし日本政府は喜びません。

なぜなら、

「開発経験」

が失われるからです。

戦闘機産業では

技術経験そのものが資産です。

日本が受け入れるライン

逆に言うと、

日本がドイツ参加を認めるなら

開発資金1兆円以上
ドイツが大量購入
エアバスの担当は限定的
設計権限は日英伊維持

という条件になる可能性が高いでしょう。

もし

エアバスが飛行制御を担当
ソフトウェア統合を担当
機体設計にも参加

というレベルになると、

日本が失う経済価値は単なる受注減だけでも数兆円規模になり得ますし、技術蓄積や将来開発能力まで含めれば5兆円、10兆円といった金額換算すら可能な戦略的損失になります。

だから日本側にとっての論点は、

「ドイツが何兆円持ってくるか」

よりも、

「どの技術領域を渡すのか」「設計主導権を維持できるのか」

なのです。極端な話、防衛省にとっては1兆円の追加出資よりも、ソフトウェアやシステム統合の主導権を保持する方が価値が高い可能性があります。

 

というか他所との共同開発でもめた人達を入れて大丈夫?

まあフランスも独自路線にこだわる人達ですしまとめるのが難しかった面はありますがね。

独仏は戦闘機の共同開発を断念しましたけど(日経記事「独仏、次世代戦闘機の共同開発中止 「両首脳が困難と結論」」)なぜ失敗したのですか?そういえばフランスはユーロファイターの共同開発も抜けて独自開発してますけどユーロファイターの共同開発離脱と共通点もあるんですか?

 

はい、かなり共通点があります。

むしろ今回の独仏FCAS(Future Combat Air System)挫折は、1980年代のユーロファイター計画から続く**「フランスとドイツ(あるいはフランスと多国間共同開発)の構造的矛盾」が再び表面化したもの**と見ることもできます。

まず結論を書くと、

ユーロファイター離脱の最大原因

フランスが主導権を欲しがった
フランス海軍向け艦載機が必要だった
輸出について他国の許可を受けたくなかった

FCAS挫折の最大原因

フランスが主導権を欲しがった
ダッソーが設計主導権を譲らなかった
ドイツと産業分担で折り合わなかった

という構図です。

驚くほど似ています。

ユーロファイター離脱で何が起きたか

1980年代、

英国
ドイツ
イタリア
スペイン
フランス

は共通戦闘機計画を進めていました。

しかし途中でフランスが離脱し、

後の

ユーロファイター・タイフーン

と

ラファール

に分裂しました。

最大の争点は要求性能でした。

英国やドイツは

「ソ連機と戦う制空戦闘機」

を求めたのに対し、

フランスは

「空軍も海軍も使う万能機」

を求めました。

フランス海軍は空母で運用するため、

小型化
艦載機化

を重視しました。

他国は必要ありません。

この時点でかなり方向性が違いました。

本当の原因は主導権争い

性能論以上に大きかったのが産業政策です。

当時のフランス政府は

「フランス企業が主契約者になるべきだ」

と主張しました。

そしてダッソーも

「戦闘機設計はダッソーが主導する」

という立場でした。

しかし英国も

BAE(当時はブリティッシュ・エアロスペース)

を中心にしたい。

ドイツも

MBB(後のエアバス系)を中心にしたい。

当然まとまりませんでした。

結局、

主導権を取れないなら独自開発する

という判断でラファールになりました。

FCASで何が起きたのか

そして40年後、

ほぼ同じ話が起きました。

FCASでは

フランス側

ダッソー

ドイツ側

エアバス

が中心企業でした。

ところが戦闘機本体(NGF)の設計権限をめぐって対立しました。

ダッソーの主張は非常に明確でした。

失敗したら責任を取る会社は1社でなければならない

戦闘機設計経験があるのはダッソーだ

主契約者はダッソーであるべきだ

というものです。

確かにダッソーは

ミラージュ
ラファール

を単独開発した実績があります。

一方エアバスは

ドイツも金を出すのだから対等でなければならない

と主張しました。

ここで衝突しました。

フランスとドイツは戦略思想も違う

さらに根本的には、

戦闘機の使い方そのものが違います。

フランスは

核抑止国
空母保有国
独自軍事行動を重視

です。

戦闘機にも

「一国で戦争できる能力」

を求めます。

一方ドイツは

NATO中心
核抑止は米国依存
多国間運用重視

です。

つまり

フランス → 国家主権の象徴

ドイツ → NATOの一装備

という考え方です。

ここも対立しました。

なぜGCAPは今のところ動いているのか

実はGCAPはFCASより有利な点があります。

英国にはBAEがありますが、

BAEは伝統的に多国間共同開発経験が豊富です。

また日本も

F-2以降は大規模戦闘機開発の空白があり、

「主導権を独占したい」というより

「技術を確実に取得したい」

という立場です。

イタリアのレオナルドも比較的柔軟です。

つまり

ダッソー vs エアバス

のような

「どちらが王様になるか」

という争いが現状では小さい。

だから日本はドイツ参加に慎重

日本の防衛省が警戒しているのは、

単にドイツが増えるからではありません。

むしろ

FCASで揉めたエアバスが入ってきたら、GCAPでも同じ主導権争いが始まるのではないか

という点です。

日本から見れば、

FCAS失敗の原因は単なる予算不足ではなく、

「フランスとドイツの産業主導権争い」

でした。

そしてユーロファイター離脱も、

突き詰めれば

「フランスが主導権を譲らなかった」

という側面が強い。

そのため歴史的に見ると、

ユーロファイター離脱(1980年代) ↓ ラファール独自開発 ↓ FCASで再び独仏対立 ↓ GCAPへの接近

という流れになっており、今回のGCAP参加論は偶然ではなく、40年以上続いてきた欧州戦闘機産業の主導権争いの延長線上にあると考えることができます。

日本にとっての最大の懸念は、「ドイツがいくら出資するか」よりも、「FCASで起きたダッソー対エアバス型の対立をGCAPに持ち込まないか」という点でしょう。もしGCAPがFCASと同じように主契約者争いを始めれば、2035年配備目標そのものが危うくなる可能性があります。

 

まあユーロファイターは結局英国とイタリアとドイツで組んでどうにか共同開発したんですけどね。

ん?それもあってドイツを英国とイタリアは誘いたがってるのか?

 

その可能性はかなりあります。

ただし、「英国とイタリアがドイツを誘っている理由」は一つではなく、

ユーロファイターでの成功体験
欧州の防衛産業統合
開発費の分担
FCAS崩壊後の受け皿

が重なっていると考えるべきでしょう。

まずユーロファイター計画を見ると、

英国
ドイツ
イタリア
スペイン

は激しく対立しながらも最終的には開発に成功しました。

計画の遅延やコスト増加はありましたが、

約600機が生産された
多数の輸出実績を獲得した
欧州最大級の軍用機開発事業になった

という意味では成功例です。

英国やイタリアから見ると、

ドイツとは共同開発できない国ではない

という認識があります。

これは日本とかなり感覚が違います。

日本にとってドイツは戦闘機共同開発の経験がほぼありませんが、

英国やイタリアにとっては

「40年近く一緒に戦闘機を作ってきた相手」

です。

ですから、

「ドイツ参加=大混乱」

と必ずしも考えていません。

ただし面白いのは、

ユーロファイターで協力した相手はドイツよりもむしろエアバス系企業です。

現在のエアバス・ディフェンス・アンド・スペースには、

ドイツ企業
スペイン企業

の系譜が入っています。

英国BAEやイタリアのレオナルドとは数十年にわたる取引関係があります。

そのため産業界レベルでは、

BAE
レオナルド
エアバス

で新しい欧州戦闘機を作ることにそれほど違和感はありません。

さらに英国には政治的理由もあります。

英国はEU離脱(Brexit)後、

欧州大陸との防衛協力を重視しています。

もしドイツがGCAPへ参加すれば、

英国から見て

ドイツ
イタリア
日本
英国

という新しい安全保障ネットワークができます。

これは外交的にも価値があります。

英国政府には

欧州をFCAS陣営とGCAP陣営に分裂させるより、 できるだけ統合した方が良い

という発想もあります。

イタリアも似ています。

イタリアのレオナルドは、

ユーロファイターに加え、

航空・電子戦分野でエアバスと多数の協力実績があります。

そのため

「ドイツが来ると仕事を奪われる」

という日本的な感覚は比較的弱いです。

むしろ

「市場が広がる」

という発想になりやすい。

しかし日本の立場はかなり違います。

英国やイタリアから見ると、

ドイツ参加は

開発費が増える
販売先が増える
欧州の結束が強まる

というプラス面が目立ちます。

ところが日本は、

GCAPを単なる装備調達ではなく

「戦闘機開発能力維持プロジェクト」

として見ています。

そのため、

英国やイタリアが考える

「欧州企業同士の再統合」

は、

日本から見ると

「せっかく確保した三菱重工やIHIの仕事が減るかもしれない」

という話になります。

実際には、英国がドイツ参加に比較的前向きなのに対し、日本が慎重なのはこの違いが大きいと思われます。

英国は

「ユーロファイターでもドイツとやれた」

と考えやすい。

一方で日本は

「FCASが主導権争いで壊れたばかりなのに、その当事者を今からGCAPへ入れるのか」

と考えやすい。

つまり同じドイツ参加案でも、

英国はユーロファイターの成功体験を思い出しており、

日本はFCASの失敗事例を思い出している。

この視点の違いが、現在の日英の温度差のかなり大きな部分を説明していると思います。

 

2024年には英国の財政難で日英伊の戦闘機共同開発プロジェクトは頓挫しかけました。もしここで本当に頓挫していた場合、この時点ではまだ頓挫していなかった独仏の戦闘機共同開発プロジェクトに参加を検討してましたか?仮にそのプロジェクトに日本が参加を希望しても独仏は断ってましたか?

 

これは非常に興味深い仮説です。

結論から言うと、

2024年にGCAP(日英伊)が本当に崩壊していた場合、日本がFCAS(独仏西)への接近を検討した可能性は十分あるが、最終的に正式参加できた可能性は高くなかった

と考えられます。

その理由は、FCASが当時まだ存続していたとはいえ、すでに深刻な構造問題を抱えていたからです。

まず日本に選択肢はあったのか

仮にGCAPが2024年に破綻した場合、日本はF-2後継機計画を放棄できません。

選択肢は実質的に3つでした。

選択肢① 米国に戻る

最も現実的だったのはこれです。

例えば

F-35派生型
NGAD技術の一部利用
新しい日米共同開発

です。

実際、GCAPの前段階では

F-22派生案
F-35派生案
日米共同案

も検討されていました。

したがってGCAP崩壊ならまずワシントンに相談する可能性が高かったでしょう。

選択肢② FCASへ接近

その次に考えられるのがFCASです。

当時のFCAS参加国は

フランス
ドイツ
スペイン

でした。

日本としては

「GCAPがダメなら欧州側のもう一つの第6世代機計画と話をしてみよう」

という発想になるのは自然です。

したがって非公式な打診くらいは十分あり得ます。

選択肢③ 単独開発

これは技術的には可能でも予算面で非常に厳しい。

そのため優先順位は低かったでしょう。

FCAS側は歓迎したか

ここが難しい。

資金だけ見るなら歓迎したと思います。

日本は防衛予算規模が大きく、

航空機開発費を負担できる数少ない国だからです。

FCASはたびたび予算問題や作業分担問題を抱えていたため、

日本の参加によって資金面はかなり楽になります。

つまり

財務省的発想 → 歓迎

です。

しかしダッソーは歓迎しなかった可能性が高い

問題はフランスです。

ダッソーの立場を考えると、

FCASの重要部分は

フランス主導
ダッソー主導

で進めたい。

これは一貫しています。

実際、ドイツのエアバスに対してすら

戦闘機設計の主導権を譲らない

という姿勢でした。

そのダッソーが

さらに日本の三菱重工まで入れるかというと、

かなり疑問です。

「お金は歓迎、主導権は渡さない」

になった可能性

おそらくFCAS側の提案は

資金は出してください

しかし基本設計はダッソーが握ります

というものになった可能性が高いです。

ところが日本がGCAPに参加した理由の一つは、

まさに

「設計経験を獲得すること」

でした。

そのため、

日本政府は受け入れにくかったでしょう。

ユーロファイター離脱との共通点

ここで面白いことがあります。

1980年代

フランス ↓ ユーロファイターから離脱 ↓ ラファール開発

2020年代

ドイツ ↓ FCAS停滞 ↓ GCAP接近

という構図には対称性があります。

どちらも

「共同開発で主導権を取れない」

という問題が背景にあります。

仮に日本がFCASに参加していたら

むしろ将来的には

日本対ダッソー

の対立になった可能性があります。

GCAPでは

BAE
レオナルド
三菱重工

が比較的対等です。

しかしFCASでは

ダッソーの地位が特別です。

つまり日本が入ったとしても

日本はお金を出すけど設計はフランス主導

になった可能性が高い。

ドイツはどう考えたか

実はドイツは歓迎した可能性があります。

理由はエアバスとダッソーの対立です。

日本が入れば

ドイツ
スペイン
日本

という新たな勢力ができる。

その結果、

ダッソーの影響力を弱められるからです。

ドイツ産業界から見ると魅力的です。

総合すると

2024年時点でGCAPが本当に崩壊していた場合、

日本はまず米国との協力を模索
同時にFCASへの参加可能性も探る
ドイツやエアバスは比較的歓迎
しかしダッソーは主導権維持を要求
日本は技術取得を重視するため不満
交渉は難航

という展開になった可能性が高いでしょう。

私見ですが、2024年当時の状況なら、

FCASが日本を完全拒否した可能性よりも、「参加は認めるが中核技術へのアクセスは限定する」という形になり、日本側がそれでは参加する意味が薄いと判断した可能性の方が高い

と思います。

皮肉なことに、現在ドイツがGCAP参加を模索しているのと同じように、もしGCAPが崩壊していたなら今度は日本がFCASの門を叩き、ダッソーから「相応な分担なら認めるが主導権は渡さない」と言われていたかもしれません。これは今エアバスがGCAPに対して置かれている立場と少し似ています。

 

まあ実際には独仏の共同開発の方が頓挫しましたけどたぶん日本がカネだすし開発も分担させろって言っても今回と同じ理由で却下させるに決まってます。

やはり後から来て虫のいい話は通りませんからね。

ドイツは別のプランを考えた方がいいんじゃないですか?

ドイツはスウェーデンとの協力もプランにあるみたいです(産経新聞記事「日英伊の次期戦闘機開発計画 ドイツ、参加めぐり近く日本と協議 メルツ首相が表明」)。ドイツとスウェーデンの話し合いは進んでますか?そっちの方がまだ実現可能性が高いですか?

 

現時点で見ると、

「ドイツ・スウェーデン共同開発」の方がGCAP参加より実現しやすいとは必ずしも言えません。むしろどちらも不確実ですが、制度的にはGCAP参加の方が近道に見える状況です。

まず確認できるのは、FCAS(独仏西)が頓挫した後、ドイツは選択肢として

GCAP参加
ドイツ企業中心の独自計画
スウェーデンとの協力

を並行して検討していることです。読売新聞も「ドイツは独系企業連合による独自開発や、スウェーデンとの共同開発のほか、GCAP参加の可能性も排除していない」と報じています。

ただし、「ドイツとスウェーデンの共同開発交渉が大きく進展した」という情報は今のところ確認できません。

むしろ見えているのは、

スウェーデン自身がまだ進路を決めていない
GCAP参加も検討
独自開発も検討
FCAS系との連携も検討

という段階です。スウェーデンは2027年頃までに次世代戦闘機を独自開発するか、GCAPなどの国際共同開発に加わるか判断するとされています。

ドイツから見たスウェーデン案の利点

実は技術面だけ見ると相性は悪くありません。

ドイツが欲しいのは

長距離
大型機
制空戦闘機

です。

スウェーデンのSAABは

グリペンを開発した実績
ソフトウェア開発能力
電子戦技術
低コスト設計

を持っています。

またFCASで揉めたダッソーのような

「絶対に主導権を握る」

企業も存在しません。

そのため

エアバス+SAAB

の方が

エアバス+ダッソー

より政治的にまとまりやすい

という見方はできます。

しかし課題も大きい

ここが重要です。

仮に

ドイツ+スウェーデン

で新規計画を立ち上げても、

結局は

機体設計
エンジン
センサー
試験設備
開発資金

をすべて新たに整備しなければなりません。

GCAPはすでに

GIGO設立
Edgewing設立
機体設計開始
2035年就役目標

という段階まで進んでいます。

一方でドイツ・スウェーデン案はまだ構想段階です。

そのため時間的にはかなり不利です。

ドイツがGCAP参加を模索する理由

ドイツ空軍はユーロファイター後継機が必要です。

もし

独自開発
独瑞共同開発

を今から始めると、

2040年代以降になる恐れがあります。

しかしGCAPなら2035年就役計画に乗れる可能性があります。

つまりドイツ政府から見ると

スウェーデン案は産業主導権を確保しやすい

一方で

GCAP参加は時間を買える

という違いがあります。

実はスウェーデン自身もGCAP寄りに見える

さらに面白いのは、

スウェーデンが完全にドイツ側に寄っているわけではないことです。

スウェーデン国防相はGCAPへの参画にオープンな姿勢を示しており、2027年までに方向性を決める方針です。

つまり現状は

ドイツ → スウェーデンに関心
スウェーデン → GCAPにも関心

という状態です。

必ずしも

「ドイツとスウェーデンが組む」

で固まっているわけではありません。

私見ですが、実現可能性を今の段階で並べると、

ドイツが何らかの形でGCAPに接近する
スウェーデンがGCAPにオブザーバーまたは準参加
ドイツ・スウェーデン完全新規共同開発
ドイツ完全単独開発

の順ではないかと思います。

なぜなら、ドイツ・スウェーデン案は政治的には魅力的でも、FCAS破綻後の2026年から新しい第6世代戦闘機計画を一から立ち上げるには時間が厳しすぎるからです。一方GCAPはすでに組織も設計体制も動いているため、ドイツにとっては「主導権は減るが時間を買える」という非常に大きな利点があります。これがメルツ政権がGCAP参加に強い関心を示している最大の理由でしょう。

 

げ…そのスウェーデンも日英伊の共同開発に乗りたがってるのか…

フランスぐらいしか組めそうな相手がいなかったのに切ってしまったのかドイツは。

開発分担にこだわってドイツがGCAPも諦めた、かつ、スウェーデンも日英伊陣営に加わるとなると独仏だけ残りますけど独仏とも残った者同士でまた組みますか?どっちも独自路線でいきますか?キルスイッチがあるかどうかわからないけど米国に頭を下げるんですか?

 

このシナリオは実はかなり面白くて、欧州防衛産業の将来を左右する話です。

まず私の結論を先に言うと、

独仏が再びそのままFCASを復活させる可能性は低い
フランスは独自路線を選びやすい
ドイツは独自開発が困難なので必ず誰かと組みたがる
最終的には米国製への依存が今より強まる可能性が高い

と思います。

フランスは独自路線が可能

フランスは欧州で数少ない

核保有国
空母保有国
戦闘機を単独開発できる国

です。

過去にも

ミラージュIII
ミラージュ2000
ラファール

を作ってきました。

ダッソーは

「高価でも国家主権を優先する」

という発想が非常に強い企業です。

そのため極端な話、

FCASが完全崩壊してもラファール後継機を単独開発する

という選択は理論上可能です。

実際、ユーロファイター計画から離脱した時もそうしました。

ですからフランスは最後の最後まで独自路線を捨てないと思います。

ドイツの方が困る

実は苦しいのはドイツです。

冷戦期ならともかく現在のドイツには

ダッソー
BAE
サーブ

のような完成機メーカーがありません。

エアバスは優秀ですが、

近年の純粋な戦闘機を単独開発した実績はありません。

しかもドイツ軍は

議会承認
予算制約
多国間主義

があります。

だからフランスほど簡単に

よし単独開発だ

とはなりません。

独仏はまた組むのか

面白いのはここです。

もし

GCAP参加失敗
スウェーデンもGCAP参加

となった場合、

ドイツとフランスにはほとんど選択肢が残りません。

そのため政治家は

もう一回話し合え

と言う可能性があります。

ただし、

FCASが崩壊した原因が

主導権争い
産業分担争い

なら、

再結成しても同じ問題が再発する恐れがあります。

いわば

「離婚した夫婦が子供のために再婚する」

ようなもので、

必要性はあるが相性問題は解決していないのです。

一番現実的なドイツの選択

実はドイツ空軍だけを考えると、

次期戦闘機開発失敗後の最も現実的な選択肢は

F-35追加導入

です。

ドイツは既にF-35を導入しています。

そのため

整備体制
訓練体制
兵器統合

を拡大すれば済みます。

軍事的には極めて合理的です。

ただし政治的には屈辱

ドイツから見れば、

もし

FCAS失敗
GCAP参加失敗

となれば、

欧州最大の経済大国なのに

次世代戦闘機を作れない

ことになります。

これは産業政策として大打撃です。

だからドイツ政府としては

多少無理をしてでも

エアバス参加
欧州独自戦闘機

を維持したいでしょう。

「キルスイッチ問題」は実際どうか

ここは冷静に分けて考える必要があります。

一般に言われる

「米軍がボタン一つでF-35を停止できる」

という意味の公開された証拠はありません。

しかし、

欧州側が懸念しているのは別の問題です。

F-35は

ソフトウェア更新
部品供給
暗号システム
ミッションデータ

で米国への依存度が高いです。

つまり、

仮に米国と重大な政治対立が起きれば、

運用の自由度が制限される可能性を懸念しているわけです。

そのためフランスは昔から

アメリカ製に全面依存してはいけない

と主張しています。

だからフランスとドイツでは答えが違う

このシナリオになった場合、

フランスは

高くても独自開発する

を選びやすい。

一方ドイツは

現実的にはF-35を大量導入しつつ何らかの欧州計画を模索する

を選びやすい。

つまり、

フランスは「主権優先」、

ドイツは「実用優先」

です。

そのため仮にGCAPが日本・英国・イタリア・スウェーデン連合になり、FCASも消滅した場合、最終的には

フランス → ラファール後継の独自機
ドイツ → F-35中心+欧州共同開発模索

という方向へ分岐する可能性が最も高いと思います。

皮肉なことに、そうなると欧州全体では

GCAP系
フランス系
米国F-35系

の三極構造になり、ドイツが当初目指していた「欧州戦闘機産業の統合」はむしろ遠のくことになります。

 

まあドイツも大変ですね。

しかし日本の事情もありますのでね。

日本企業の開発分担部分のうちドイツに多少譲っても技術獲得や将来の収益計画に支障が出ない部分はどこですか?

 

この問題は、日本の立場から考えると「何を渡してもよいか」ではなく、

①将来の戦闘機開発能力に直結する部分 ②将来40~50年続く改修・アップグレード収益に直結する部分

は絶対に渡したくない、という整理になります。

逆に言うと、その外側の部分ならドイツに譲歩する余地があります。

絶対に譲りたくない部分

まず日本がGCAPで本当に欲しいのは機体そのものよりもシステム技術です。

ソフトウェア統合

これは最重要です。

具体的には

ミッションコンピューター
AI支援システム
センサー統合
電子戦管理
無人機連携

です。

F-35で米国が握っている部分とほぼ同じです。

ここを渡すと、

将来の改修時に

「エアバスの承認が必要」

となる可能性があります。

防衛省としては最も避けたい分野でしょう。

システムアーキテクチャ

戦闘機全体をどう接続するかの設計です。

ここを持っている会社が事実上の元請けになります。

例えば

レーダー変更
ミサイル追加
AI更新

が全部ここを経由します。

利益も大きいです。

第6世代機向けソフトウェア

将来収益も巨大です。

現代戦闘機では

機体製造利益より

ソフト更新利益の方が大きくなる傾向があります。

ここは三菱電機などに残したいはずです。

ステルス設計

機体形状 電波反射低減技術

です。

次世代機の核心技術なので譲歩は難しいでしょう。

条件付きで譲れる部分

ここが現実的な落としどころです。

機体構造の一部

例えば

胴体後部
翼の一部
補助構造

などです。

ユーロファイターでも国ごとに分担しています。

技術的価値はありますが、

主導権まで失うわけではありません。

着陸装置

ドイツ企業も得意です。

機体開発全体への影響は小さいです。

燃料系統

比較的分担しやすいです。

将来の改修主導権にも直結しません。

油圧システム

航空機では重要ですが、

GCAPの中核価値ではありません。

製造工程

これはむしろ渡しやすいです。

例えば

ドイツ国内最終組立
ドイツ向け機体生産

などです。

日本企業の核心技術は維持できます。

ドイツが本当に欲しい部分

問題はここです。

エアバスが欲しがっているのは、

実は上記の「譲ってもいい部分」ではありません。

エアバスから見ると

飛行制御
システム統合
機体中央部
アビオニクス

が欲しい。

なぜなら利益の源泉だからです。

例えば着陸装置担当では、

欧州第6世代戦闘機を作った企業

とはみなされません。

エアバスが欲しいのは

「中核メーカー」の地位です。

日本が受け入れやすい案

もし日本政府が妥協するとしたら、

おそらくこんな形です。

日本
システム統合
ソフトウェア
ステルス
電子戦
英国
機体設計統括
エンジン
イタリア
センサー
電子装備
ドイツ
機体構造
生産分担
整備支援
ドイツ向け最終組立

こういう形なら比較的受け入れやすいでしょう。

最大の障害

ただしエアバスがこれで満足するかは別問題です。

エアバスはユーロファイターやFCASで欧州戦闘機開発の中核企業を目指してきました。

もし

「お金は出してください。でも核心技術は渡しません」

と言われれば、

ドイツ政府やエアバスは

それでは単なる下請けではないか

と反発する可能性があります。

ですから現在の議論の本質は、

「日本企業の仕事をどれだけ譲るか」

ではなく、

「戦闘機の頭脳部分であるシステム統合とソフトウェアの支配権を誰が持つか」

にあります。

日本側から見れば、着陸装置や機体構造の一部を譲ることで数千億円規模の受注が減ることはあっても、致命傷にはなりません。しかしシステム統合やソフトウェア主導権を譲れば、将来数十年にわたる改修事業や次世代機開発能力そのものに影響するため、こちらは兆円単位の価値を持つと考えられています。つまり「譲ってもよい部分」と「譲ってはいけない部分」の差は非常に大きいのです。

 

まあ2兆円ぐらいカネは出してもらう、かつ、ドイツに一部だけ分担させるとしたらせいぜいドイツ国内最終組立とドイツ向け機体生産ぐらいですね。

ん?条件が厳しすぎるって?

仮に日本が独仏の共同開発に参加させろと言っても数兆円規模のカネを要求されるうえに同様に日本向けの製造工程ぐらいしか分担できず単なる下請けになってたんじゃないの?

 

かなり高い確率でそうなっていたと思います。

ただし、「単なる下請け」だったかというと少し微妙で、

「資金は大量に出すが、主導権は取れない準中核パートナー」

くらいの位置付けになった可能性が高いと思います。

なぜ今のドイツと同じ立場になった可能性が高いのか

現在GCAPに対してドイツが直面している問題は、

今さら入るなら何を担当するのか

です。

開発開始から数年経過すると、

基本設計
分担
サプライチェーン

が固まります。

後から来た国は

「資金は歓迎だが、中核部分は既に席が埋まっている」

という扱いになります。

もし2024年にGCAPが崩壊し、日本がFCASへ

参加させてください

と言っていたら、

ダッソーやエアバスからほぼ同じことを言われた可能性があります。

日本がカネだけは歓迎された可能性

これはかなり高いです。

当時の日本は

防衛予算大幅増額中
F-2後継機を絶対に必要としている
数百機規模ではないが有力顧客

でした。

ドイツやフランスにとって

日本が参加すれば

開発費が増える
生産数が増える
輸出市場が広がる

ので資金面では歓迎されたでしょう。

むしろ

数兆円規模の追加資金を出してくれる国

として魅力的だったと思います。

しかしダッソーは主導権を渡したか

これはかなり疑わしいです。

FCASでダッソーがドイツに対して主張し続けたのは、

要約すると

戦闘機は責任主体が一つでなければならない

その責任主体はダッソーだ

という考え方でした。

ドイツのエアバスに対してすら譲らなかったので、

後から来た日本に

機体全体設計
システム統合
ステルス設計

を大きく譲るとは考えにくいです。

日本企業が獲得できた分野

仮に参加できたとしても、

おそらく

日本向け最終組立
一部構造物生産
電子機器の一部
日本向け維持整備

あたりになった可能性があります。

つまり現在日本が

ドイツに対して

生産分担なら相談可能

と考えているのと似た構図です。

防衛省は何のためにGCAPを選んだのか

実はここが重要です。

日本はGCAPを選んだ理由として、

単に飛行機を買うだけではなく、

三菱重工
IHI
三菱電機

に

第6世代戦闘機の設計経験

を与えることを重視していました。

もしFCASで

お金は出してください

でも設計はダッソーです

という話なら、

日本政府からすると魅力が大きく減ります。

むしろ今のドイツと対称的

面白いのは、

仮に2024年に日本がFCASへ駆け込んでいた場合、

現在ドイツがGCAPで直面している問題とほぼ同じ立場になっていた可能性があります。

仮想FCASの日本    現在のGCAPのドイツ開発途中で参加希望    開発途中で参加希望
資金力は大きい    資金力は大きい
自国企業にも仕事が欲しい    エアバスにも仕事が欲しい
技術取得したい    技術取得したい
主契約者はダッソー    主契約者はBAE・三菱・レオナルド
主導権は取りにくい    主導権は取りにくい

つまり、

現在ドイツが

多額の資金を出すから中核に入れてほしい

と言っているように、

もしGCAPが崩壊して日本がFCASに参加しようとしていたら、

日本も多額の資金を出すから中核に入れてほしい

と言っていたかもしれません。

そしてダッソーは現在の日本と同様に、

資金はありがたいが主導権までは渡せない

と答えていた可能性がかなり高いと思います。

その意味では、日本がGCAPの創設メンバーになれたこと自体が、実は非常に大きな成果だったと言えます。後から既存プロジェクトに加わる国と、最初からルール作りに参加した国とでは、得られる技術や発言力が全く違うからです。

 

ところで日本は87式自走高射機関砲の開発でドイツのゲパルトを参考にしてますけどこの時はドイツから協力を得たんですか?ゲパルトはウクライナで大活躍中ですけど対ドローン用に改修するにあたって製造元のドイツ企業も関与し対ドローン対空戦車の開発・改修技術を獲得してますか?日本も対空戦車を対ドローン用に改修する計画があってすでにドイツやウクライナに話をしてますか?

 

ご質問を3つに分けて考えると整理しやすいです。

① 87式自走高射機関砲の開発でドイツは協力したのか?

結論からいうと、

ゲパルトから強い影響は受けたものの、共同開発や本格的な技術供与を受けたわけではありません。

87式は当初から西ドイツのゲパルトを参考に開発されたことは公表されています。

しかし87式を見ると、

車体は三菱重工
砲塔は日本製鋼所
射撃統制システムは三菱電機

という国産開発になっています。

さらに面白いのは、

ゲパルトのレーダー配置には特許があり、87式はその特許に抵触しないようレーダー配置を変更したとされています。

この点からも、

「ドイツ企業が積極的に技術移転して一緒に作った」

というより、

「参考にしたが、日本側が独自設計した」

という性格が強いです。

② ゲパルト改修でドイツ企業は経験を積んでいるのか?

これは明確にYESです。

ウクライナ戦争でゲパルトは想定外の再評価を受けました。

もともとは

攻撃機
ヘリ
巡航ミサイル

向けでしたが、

実際には

シャヘド型ドローン
偵察ドローン
巡航ミサイル

への迎撃で高い評価を得ています。

そのため製造元系統のKNDSは、

センサー近代化
レーダー改良
追尾システム改良

を含むゲパルト近代化案を提案しています。

さらに2025年には、

KNDS Deutschlandとウクライナ企業の共同事業として、

レーダーや追尾システムを改良したウクライナ版ゲパルト

の検討が公表されています。

つまり、

ドイツ企業は

ドローン迎撃データ
実戦データ
センサー改修技術

を確実に蓄積しています。

③ 日本はドイツやウクライナと話をしているのか?

ここは慎重に言う必要があります。

87式を対ドローン仕様に改修する公式計画は確認できません。

防衛省が公表しているのはむしろ別方向です。

日本はウクライナ戦争を分析した結果、

迎撃ドローン
カウンタードローン網
155mm対空砲構想

などを進めています。

つまり現状の日本は、

87式延命改修

よりも、

新しい対ドローンシステム

に重点を置いているように見えます。

ただし将来的には十分あり得る

私見ですが、

日本がドイツから学ぶ価値はかなりあります。

なぜなら87式とゲパルトは根本構造が非常によく似ているからです。

例えば、

ドイツが現在蓄積している

小型ドローン探知技術
AI追尾
改良レーダー
新型35mm弾薬
車載防空運用ノウハウ

は、

87式後継や将来の自走対空砲開発で参考になります。

むしろ日本にとって興味深いのは、ゲパルトそのものより、ドイツが現在開発している「Skyranger 30/35」系統です。

これはウクライナ戦争の経験を踏まえ、

ドローン
自爆無人機
巡航ミサイル

対策を重視した新世代の対空戦車で、欧州各国が導入を進めています。

もし今後日本とドイツの防衛協力が深まるなら、GCAPよりもむしろ

「対ドローン防空システム」や「車載防空システム」分野の方が、技術協力の現実性は高いかもしれません。 ドイツはウクライナで実戦データを大量に得ており、日本はそれを非常に欲しがる立場だからです。

 

まあ今のところは機関砲式の対空戦車を対ドローン戦に活用する気はないんですかね日本は。

日本はまだ安い機関砲を大量に撃って大量に飛んでくる安いドローンを打ち落とす方向にはいってないんですか?ドイツはウクライナでの知見を踏まえて安いドローンには安い機関砲で対抗する方針にしたんですか?

 

結論から言うと、

ドイツはかなり明確に「安価なドローンには安価な迎撃手段で対抗する」という方向へ舵を切っています。

一方で日本はまだ過渡期で、

「ミサイル中心の防空」から「ドローン対処を重視した多層防空」へ移行中という状況です。

ドイツが得た教訓

ウクライナ戦争で最も衝撃的だったのは、

数万円~数百万円のドローンに対して

IRIS-T
Patriot
NASAMS

のような高価なミサイルを撃つと、

迎撃コストが攻撃コストを大きく上回ってしまうことでした。

極端な例だと、

ドローン 100万円
迎撃ミサイル 数千万~数億円

ということもあります。

これは長期戦では持続できません。

そのため欧州各国は

ドローンには機関砲

巡航ミサイルには短距離ミサイル

弾道ミサイルには高性能防空ミサイル

という階層化を進めています。

その象徴が

Gepard
Skynex
Skyranger30
Skyranger35

です。

特に35mm機関砲と空中炸裂弾(AHEAD弾)は欧州で非常に評価されています。

なぜゲパルトが再評価されたのか

戦前の欧州では

自走高射機関砲は

「もう時代遅れ」

という見方が強かったのです。

しかしウクライナでは逆になりました。

理由は単純です。

ドローンに対して

35mm弾数十発

で済む場合があるからです。

ミサイルより圧倒的に安い。

さらに

24時間稼働できる
補給しやすい
電波妨害を受けても戦える

という利点もあります。

結果としてゲパルトは予想以上の戦果を上げました。

日本はどうか

日本もウクライナ戦争の分析はかなり真剣にやっています。

しかし現状では、

ドイツほど

「機関砲重視」

にはなっていません。

理由がいくつかあります。

理由1 中国の脅威が違う

ドイツが想定するのは

シャヘド
偵察ドローン
巡航ミサイル

です。

一方日本は

巡航ミサイル
極超音速兵器
弾道ミサイル
大型無人機

まで考えなければなりません。

そのためどうしても

PAC-3
SM-6
03式中距離地対空誘導弾能力向上型

などのミサイル体系も重視せざるを得ません。

理由2 87式が古い

87式の初配備は1987年です。

もう40年近く前の設計です。

車体も

74式戦車ベースです。

つまり今さら87式へ大規模投資するより、

新しいシステムを作った方がよいという考えがあります。

理由3 日本はレーザーにも期待

日本防衛省は

高出力レーザー
高出力マイクロ波

にも投資しています。

ドローン対処では

将来的に

機関砲 + レーザー

の組み合わせを狙っています。

もし今ドイツ式で考えるなら

実は日本に最も参考になるのはゲパルトそのものではありません。

最新の

Skyranger 30

です。

これは

レーダー
EOセンサー
30mm機関砲
ドローン迎撃ミサイル

を一体化しています。

ウクライナ戦争後の欧州では、

もはや

「対空戦車」

というより

「機動式対ドローンシステム」

として考えられています。

日本も将来はそちらへ向かう可能性が高い

私は今後10年を見ると、

日本も最終的にはドイツとかなり似た結論に到達すると思います。

なぜなら、

台湾有事などを考えると中国は大量の

小型ドローン
自爆ドローン
囮ドローン

を使う可能性が高いからです。

その全てに高価なミサイルを撃つのは不可能です。

したがって将来的には

PAC-3やSM-6で高価目標を迎撃し、安価なドローン群には機関砲・空中炸裂弾・レーザーで対処する

というドイツに近い多層防空体系になる可能性が高いでしょう。

ただし現時点では、日本はまだその移行途中であり、ドイツのように「ゲパルトの後継を大量整備する」という段階までは進んでいません。むしろ防衛省は、87式の延命よりも「次世代の対ドローン防空システムをどう構築するか」を研究している段階と見るのが実態に近いと思います。

 

この辺はドイツからもよく話を聞かないといけませんね。

「対ドローン防空システム」や「車載防空システム」分野以外にもドイツと協力できそうな分野はありますか?

 

あります。しかも実はGCAPよりも現実的な分野が少なくありません。

ドイツは戦闘機ではフランスや英国ほど強くありませんが、

陸上兵器
防空
潜水艦
センサー
電子戦
砲弾

などでは世界トップクラスの技術を持っています。

日本とドイツの相性が比較的良さそうな分野を挙げると次のようになります。

① 対ドローン・防空システム

これは現時点で最有力です。

ドイツはウクライナ戦争を通じて

Gepard
Skynex
Skyranger 30
Skyranger 35

を実戦経験付きで進化させています。

日本には

87式自走高射機関砲
11式短SAM
03式中SAM

などがありますが、

小型ドローン飽和攻撃への対応経験はドイツの方が豊富です。

共同開発候補としては

空中炸裂弾
AI目標識別
車載対ドローンシステム

などが考えられます。

② 潜水艦技術

意外ですがかなり有望です。

ドイツは

Type212
Type214
TypeCD

など非原子力潜水艦では世界有数です。

一方日本も

そうりゅう型
たいげい型

で非常に高い技術を持っています。

両国とも

原潜を持たない
通常動力潜水艦重視

という共通点があります。

ただし競合関係でもあるので共同開発は容易ではありません。

③ 水中ドローン

今後かなり有望です。

中国海軍対策を考えると

無人潜水艇
海底監視システム
機雷探知システム

の重要性が増しています。

ドイツもバルト海対策で同じ問題を抱えています。

日本が最も協力しやすい分野の一つでしょう。

④ 電子戦(EW)

非常に相性が良いです。

現代戦争では

GPS妨害
ドローン妨害
通信妨害

が重要です。

ドイツ企業は

Hensoldt
Rohde & Schwarz

など強力な電子戦企業を持っています。

日本では

三菱電機
NEC
東芝

が強い。

共同研究の余地は大きいです。

⑤ レーダー・センサー

これも有望です。

日本は

J/FPSシリーズ

など地上レーダーが得意です。

ドイツは

HensoldtのTRMLシリーズ

などがあります。

特に

ドローン探知
巡航ミサイル探知

分野で協力余地があります。

⑥ 砲弾・対空弾薬

案外有力です。

ウクライナ戦争で再評価されたのが

ドイツの35mm AHEAD弾

です。

これは弾の前方で多数の子弾を散布してドローンを破壊します。

日本はまだこの種の弾薬開発経験が少ないため、

技術的な学習価値は高いでしょう。

⑦ 戦車・装甲車

これも相性は悪くありません。

ドイツは

レオパルト2
プーマ歩兵戦闘車

を持っています。

日本は

10式戦車
16式機動戦闘車

です。

どちらも重量級より機動力やセンサーを重視する傾向があります。

ただし両国とも完成品輸出競争相手でもあります。

⑧ ミサイル防衛

将来性があります。

日本は

PAC-3
SM-3

など米国依存が大きいですが、

欧州では

IRIS-T SLM
IRIS-T SLX

が急速に評価を高めています。

ドイツは欧州独自の防空網構想(European Sky Shield Initiative)の中心国でもあります。

ミサイルそのものではなく、

指揮統制
防空ネットワーク

で協力余地がありそうです。

協力しにくい分野

逆に難しそうなのは、

戦闘機

今まさに揉めている分野です。

主力艦

日本もドイツも独自色が強く、 共同開発の必要性が小さいです。

航空エンジン

日本はIHI、 ドイツはMTUですが、

既にGCAPや欧州プロジェクトとの絡みが複雑です。

私見

今後10年で最も現実的なのは、

対ドローン防空
電子戦
レーダー
無人システム
水中ドローン

だと思います。

戦闘機のように「誰が主導権を握るか」で揉めやすい分野よりも、

中国やロシアから得られたウクライナ戦争の教訓を活用する分野の方が、日本とドイツの利害が一致しやすいからです。

特に対ドローン分野は、日本が不足している「実戦データ」をドイツが持っており、日本が強いセンサー・電子技術を組み合わせられるので、GCAPより協力しやすいテーマかもしれません。

 

しかし日本も米国以外の国との兵器類の共同開発で実績が多いってわけじゃないですからね。

特に戦闘機みたいな大型プロジェクトは。

日本はこれまでに米国以外の国との兵器共同開発をやって成功した経験はありますか?

 

ありますが、実は意外なことに、

「米国以外との大規模な完成兵器の共同開発で大成功した前例」はあまりありません。

そのためGCAPは日本にとってかなり挑戦的な計画です。

ただし、「成功例が全くない」わけでもありません。

① 英国との空対空ミサイル技術協力

最も成功に近いのが英国との協力です。

日本と英国は2014年に防衛装備移転三原則の下で初めて本格的な共同研究を開始し、

MBDA(英国・欧州)
三菱電機

などが参加して

JNAAM(Joint New Air-to-Air Missile)構想を進めました。

これは

日本のAAM-4Bのアクティブレーダー誘導技術
欧州ミーティアのラムジェット推進技術

を組み合わせるものです。

最終的に量産配備には至っていませんが、

技術協力としては比較的成功した部類です。

そしてこの成功体験が後のGCAPにつながっています。

② 日英の化学・生物防護研究

非常に地味ですが続いています。

CBRN防護
センサー
防護装備

などです。

こちらは共同研究として定着しています。

ただし「兵器共同開発」というより技術研究です。

③ 豪州との装備協力

日本は豪州とも協力しています。

例えば

無人システム
水中監視
センサー

などです。

ただし大規模な完成兵器共同開発にはまだ至っていません。

④ 成功しなかった例もある

実は過去にはうまくいかなかったケースの方が多いです。

豪州潜水艦計画

2010年代、

日本はそうりゅう型ベースで豪州次期潜水艦計画への参加を目指しました。

しかし最終的に豪州はフランス案を選択しました。

その後AUKUSで原潜へ移行しました。

日本の防衛産業にとっては苦い経験です。

欧州とのミサイル協力

構想レベルで終わった計画も少なくありません。

日本は長年、

武器輸出三原則により共同開発そのものの経験が不足していました。

なぜ日本は共同開発経験が少ないのか

最大の理由は戦後体制です。

1967年以降の武器輸出規制によって、

日本企業は長期間、

海外企業と自由に共同開発できなかった
第三国輸出もできなかった
国際共同プロジェクトに参加しにくかった

のです。

その結果、

英国のBAE、

ドイツのエアバス、

イタリアのレオナルドのような

「何十年も多国間共同開発を経験してきた企業」

とは文化がかなり違います。

逆にドイツはどうか

ここが面白いところです。

ドイツは

MRCA(後のトーネード)
ユーロファイター
A400M
NH90
タイガー攻撃ヘリ

など、

成功・失敗を含めて大量の共同開発経験があります。

だから英国やドイツから見ると

GCAPは

「また共同開発か」

ですが、

日本から見ると

「史上最大級の国際共同開発」

なのです。

だからGCAPの歴史的意味は大きい

実はGCAPの意義は、

次世代戦闘機そのものより、

日本が初めて

英国
イタリア

と対等な立場で

設計
システム統合
輸出
維持整備

まで含めた巨大プロジェクトを運営することにあります。

その意味では、

もしGCAPが成功すれば、

日本の防衛産業にとっては

F-2開発
イージス艦国産化

に匹敵する転換点になる可能性があります。

だからこそ日本はドイツ参加問題に慎重なのです。

ユーロファイターやA400Mを経験したドイツから見ると「後から参加する国」ですが、日本にとってGCAPは「初めて創設メンバーとしてルール作りに関与する国際共同開発」だからです。日本政府や三菱重工が守りたいのは単なる受注額ではなく、共同開発のノウハウそのものと言えるでしょう。

 

まあいきなり戦闘機の共同開発みたいな大型案件を持ってこられても日本としては困りますね。

まずは小さな案件から着実に実績を積み重ねてもらいませんとね。

対ドローンシステムなど小さな案件から着実に実績を積み重ねていれば多少は日本側の感触も違ってましたか?普段付き合いがない相手からいきなり大型案件の共同開発プロジェクトを持ってこられてもドイツ企業も長期の関係優先で日本と同じような反応をしますか?

 

はい、その見方はかなり現実に近いと思います。

実はこの問題は技術の話というより、「共同開発の信頼関係の蓄積」の話です。

日本側から見ると、ドイツは決して敵対的な国ではありませんし、技術力も高いです。しかし、

戦闘機共同開発の実績がない
防衛装備の共同研究実績が少ない
企業間の長期的な協力関係が薄い
防衛装備輸出や第三国輸出に関する考え方の擦り合わせも十分ではない

という状態で、いきなりGCAPのような数兆円規模・数十年規模のプロジェクトに参加したいと言われても、

本当に一緒にやれるのか?

という疑問が出るのは自然です。

これは日本特有の感覚ではありません。

仮に日独で先に小型案件をやっていたら

例えば2010年代から

対ドローンシステム
レーダー
電子戦装置
水中無人機
車載防空システム

などで共同研究を何件もやっていたらどうでしょう。

その場合、

三菱重工 ↓ エアバス

三菱電機 ↓ Hensoldt

NEC ↓ Rohde & Schwarz

のように技術者同士の人脈ができます。

するとGCAPの話になった際も、

あの会社なら知っている

一緒に仕事をしたことがある

契約文化も理解している

という状態になります。

そうなると日本側の警戒感はかなり下がっていたと思います。

英国との関係がまさにそう

実際GCAPが成立したのは偶然ではありません。

日本と英国はGCAP以前に、

JNAAM構想
ミーティア関連研究
防衛当局間協力
艦艇訪問
インド太平洋での共同訓練

を積み重ねています。

つまりGCAPは突然始まったわけではなく、

10年近い準備期間の上に乗っています。

だから日本も

英国ならやれるかもしれない

と判断できた面があります。

ドイツ企業も同じ反応をするか

これは「はい」です。

むしろドイツ企業の方がその傾向は強いかもしれません。

例えばエアバスやラインメタルが、

これまで全く付き合いのなかった国から

次世代戦闘機を一緒に作りましょう

と言われた場合、

まず考えるのは

技術力はあるのか
プロジェクト管理能力はあるのか
輸出規制はどうか
政権交代で方針が変わらないか

です。

いきなり核心技術を渡すことは通常ありません。

実はドイツ自身が経験している

面白いことに、

現在ドイツは日本が過去に経験した立場に近い部分があります。

FCASでは

エアバスが

ダッソーは技術を握りすぎだ

と不満を持っていました。

しかしダッソー側から見ると、

何十年も戦闘機を設計してきたのは我々だ

という理屈になります。

つまりダッソーも

「まず実績を見たい」

という発想だったわけです。

防衛産業は普通の製造業より保守的

さらに重要なのは、防衛産業では

「信用」

そのものが技術と同じくらい重要なことです。

例えば自動車なら、

新しいサプライヤーを採用しても比較的やり直しが利きます。

しかし戦闘機は

開発期間10~20年
運用期間40年
国家安全保障に直結

です。

一度組んだ相手と何十年も付き合うことになります。

だから企業も政府も非常に保守的になります。

もしドイツが賢く進めるなら

本来なら、

いきなりGCAP参加を求めるよりも

対ドローンシステム共同研究
電子戦装置共同研究
センサー共同開発
車載防空システム協力

を積み重ね、

その上で

次は大型案件もやりませんか

という流れの方が通りやすかった可能性があります。

これは日本でもドイツでも、おそらく同じです。

ですから現在のGCAP参加論に日本が慎重なのは、単に技術分担やお金の問題ではなく、

「今まで一緒に大きな防衛プロジェクトをやったことがない相手を、いきなり国家の航空戦力の中核を担う計画に入れて大丈夫か」

という極めて普通のリスク管理の発想でもあります。

逆に言えば、今後日独が対ドローン、防空、電子戦などの分野で数年間協力実績を積めば、将来別の大型共同開発案件が出てきたときの日本側の心理的ハードルはかなり下がると思います。英国との関係はまさにその過程を経てGCAPに至ったケースと言えるでしょう。

 

空対空ミサイル技術協力を行った実績がある英国もそういう信用の積み重ね重視の文化でだからこそ将来の大型案件も見据えて10年以上前から取引をしてたんですか?

 

かなりその面はあったと思います。

ただし少し修正すると、

英国が2010年代前半から「将来GCAPをやるために」日本と付き合い始めたわけではありません。

おそらく当時はまだGCAP構想そのものが存在しておらず、そこまで具体的な青写真はなかったでしょう。

しかし結果的には、

「小さな協力で信頼関係を作る → 技術協力を深める → 大型共同開発へ進む」

という理想的な流れになりました。

英国の防衛産業文化

実は英国のBAE SystemsやMBDAは、多国間共同開発のベテランです。

彼らからすると、

いきなり

戦闘機
原潜
大規模ミサイル計画

を始めるより、

まず

技術研究
実証試験
ミサイルの共同研究

から始める方が自然です。

これは英国企業が慎重だからというより、

共同開発の成功確率を上げるためです。

例えばJNAAM構想では、

日本は

AAM-4Bのシーカー技術

英国側は

Meteorのラムジェット技術

を持ち寄りました。

この段階で双方は

輸出管理
知的財産
機密管理
契約方式
開発文化

を学べます。

実はこれが非常に重要です。

GCAPでいきなり知るのは危険

もし日英がJNAAMをやっていなかったら、

GCAPが初対面の大型案件になっていました。

すると

日本式の意思決定
英国式のプロジェクト管理
情報共有のルール

を巨大プロジェクトの最中に学ぶことになります。

これはリスクが大きい。

ところが日英は既に協力経験があったので、

少なくとも

一緒に仕事をすること自体は可能

という確認ができていました。

英国側は日本を長期顧客として見ていた

もう一つ見逃せないのは、

英国は2010年代から

日本を単なる顧客ではなく、

将来の産業パートナー候補として見ていた可能性が高いことです。

なぜなら当時の英国は、

EU離脱前後も含めて

欧州以外の協力相手
インド太平洋のパートナー

を探していました。

そして日本には

三菱重工
IHI
三菱電機

という高度な製造基盤があります。

英国からすると、

共同開発相手としてかなり魅力的でした。

ドイツの場合との違い

ここで現在のドイツを比較すると面白いです。

ドイツ企業と日本企業の間には、

日英間であったような

JNAAM
長年のミサイル協力
継続的な共同研究

に相当するものがほぼありません。

つまりドイツは今、

英国が2013~2015年頃にやっていた段階を飛ばして、

いきなり

GCAPに入りたい

と言っているように見えるのです。

だから日本側の反応は

その前にまず一緒に何かやってみませんか

になりやすい。

ドイツ企業も同じ反応をする

そして面白いことに、

エアバスやラインメタルも立場が逆ならほぼ同じ反応をすると思います。

例えば日本が突然、

レオパルト3を一緒に作ろう

次世代対空システムを共同開発しよう

と言い、

過去の協力実績がほぼなかったら、

ドイツ側もまず

小規模案件から始めよう

と言う可能性が高いです。

防衛産業は数十年単位の付き合いになるため、

「技術力」だけではなく、

「この国は約束を守るか」「政権が変わっても方針は維持されるか」「輸出で揉めないか」

といった信用の積み重ねを非常に重視します。

ですから、日英の関係を振り返ると、

JNAAMや各種技術協力は単なる研究プロジェクトではなく、結果的にGCAPの予行演習の役割を果たしたと言えるでしょう。

もし日独がこの10年間で、

対ドローンシステム
電子戦
レーダー
車載防空システム

などをいくつも共同開発していたなら、日本のGCAP参加国としてのドイツを見る目は今よりかなり柔らかかった可能性があります。逆に英国が比較的受け入れられたのは、「英国だから」ではなく、「既に一緒に仕事をした実績があったから」という面が非常に大きいと思います。

 

まあどこも長期の信用と実績重視なのは当然、しかも国防関係ですからね。

いきなり大型案件に入れてって言われたってそれは無理な話です。

まずは実績を積み重ねてねと。

…が、それを百も承知だったのにそれでも無理な話を振ってきた、しかも昨日の話にあるとおりEU域内生産限定の自動車生産補助金までやってきました。

日本にとって損失と負担ばかりもたらす話しか持ってきてませんね。

日本は舐められてるのか?

いやそれだけじゃないですね。

メルツ焦ってるだろ。

日本もGDP世界第6位転落ですけどドイツだってそんなにいいわけじゃないですし右派も伸張してます(JBプレス記事「メルツ独首相が訪日、防衛産業協力の背後に窮地の経済…ノルドストリーム爆破裁判の行方次第でさらなる逆風も」)。

とにかく経済で成果を出さないといけなかったので日本をターゲットにしたってことですか?

 

その見方には一理ありますが、少し分けて考えた方が良いと思います。

私は「日本が舐められている」というより、

メルツ政権もドイツ産業界もかなり焦っている可能性は高い

と思います。

ただし、その焦りは「日本なら押せば譲歩するだろう」というより、

FCAS崩壊後に行き場を失ったドイツ防衛産業をどうするかという焦りです。

まず戦闘機の問題から見ると、

FCASが続いている間はドイツには将来像がありました。

ダッソー
エアバス
スペイン

で欧州第6世代戦闘機を開発する。

揉めていても最終的には完成させるつもりだったわけです。

しかし完全に頓挫すると、

エアバスは突然

2040年代以降の戦闘機事業がなくなる

という問題に直面します。

これは単なる利益の問題ではありません。

技術者流出
サプライチェーン消滅
設計能力の喪失

につながります。

だからエアバスがGCAP参加を強く求めるのはある意味当然です。

自動車も似た構図です。

ドイツ経済は

エネルギー価格上昇
中国市場の減速
EV競争激化

で厳しい状況にあります。

特に中国メーカーとの競争は深刻です。

そのためドイツやEUは

域内生産誘導
サプライチェーン回帰
産業補助金

を重視しています。

日本から見ると

EU市場で頑張ってきたのに突然ルール変更ではないか

となりますが、

ドイツ側から見ると

欧州自動車産業そのものが危機だ

という認識です。

ただし興味深いのは、

ドイツの提案が日本にとって魅力的かというと別問題なことです。

例えばGCAP参加。

日本側から見ると、

ドイツが持ってくるのは

資金
欧州市場
追加生産数

です。

一方で日本が失うかもしれないのは

分担
技術主導権
スケジュール

です。

だから日本では

ドイツのメリットは分かるが、日本のメリットはどこだ

という反応になりやすい。

これは舐められているというより、

単純に双方の立場が違うのです。

それに実はドイツ側も同じことを考える国です。

仮に立場が逆で、

日本企業が突然

ドイツの大型防衛プロジェクトに参加させてくれ

と言った場合、

エアバスやラインメタルはまず

これまで何を一緒にやった?

どんな実績がある?

どの技術を出してくれる?

と聞くでしょう。

これは日本企業も同じです。

防衛産業は特に長期的な信用を重視します。

ではなぜ今このタイミングなのか。

ここはメルツ政権の事情が大きいと思います。

2020年代半ばのドイツは

経済停滞
中国依存見直し
防衛産業強化
右派伸長

に直面しています。

その中でメルツ政権には

ドイツはまだ欧州最大の工業国だ

世界の大型案件に参加できる

という成果も必要です。

そして日本は

世界有数の技術国
防衛費増額中
GCAP創設メンバー

です。

つまりドイツから見て非常に重要な相手です。

ただ私は、

今回の件を

「ドイツが日本を軽視している」よりも「ドイツが想定以上に追い込まれている」

と見る方が近いと思います。

本当に余裕があるなら、

日独で10年かけて

対ドローン
電子戦
レーダー

を共同研究し、

その後に大型案件へ進むはずです。

ところがFCAS崩壊によってその時間がなくなった。

だから通常なら数年から10年以上かけて積み上げる信頼関係を飛ばして、

いきなりGCAP参加という話になっています。

日本側が慎重になるのも自然ですし、逆にドイツ側が急ぐのも自然です。

要するに現在の構図は、

「日本が弱いからドイツが無理を言っている」というより、「ドイツが時間的・産業的に追い込まれているので、本来なら段階的に進めるはずの交渉を一足飛びにやろうとしている」

と理解するのが一番実態に近いと思います。

 

いったんここまで