2381ページ目 ドイツの自動車補助金の除外と戦闘機の共同開発参加要求 メモ

ドイツとフランスは16日、欧州連合(EU)が域内製品を優遇する「産業加速法案」を巡り、自動車分野の優遇対象をEU加盟国と一部の欧州諸国に限定する方針で合意したと発表しました(時事通信記事「「欧州製」優遇、日本は除外 自動車分野で独仏合意―EU産業法案」)。公共調達や補助金などで欧州製品を優遇し、域内の生産や投資を促進することが狙いとのことですがもちろん日本は反発しています。欧州がこのような露骨な保護貿易を進めるに至った背景は何ですか?

 

背景には、単なる「日本車排除」というよりも、欧州がここ数年で直面している産業競争力低下への危機感があります。

今回の「産業加速法(Industrial Accelerator Act)」は、EUが製造業比率を引き上げ、戦略産業のサプライチェーンを域内に維持することを目的としています。法案は公共調達や補助金で「Made in EU」の優遇措置を導入し、自動車も対象分野に含まれています。

ただし、なぜ欧州がここまで踏み込んだのかを理解するには、いくつかの背景を分けて考える必要があります。

① 中国との競争激化への危機感

最も大きい要因は中国です。

特にEV分野では、中国メーカーは巨大な国内市場と政府支援を背景にコスト競争力を高めています。欧州では、

中国製EVの輸入増加
バッテリーの中国依存
太陽光パネル産業の崩壊

などを経験しました。

EUでは「このまま何もしなければ、自動車でも太陽光パネルと同じことが起きる」という危機感が強まっています。産業加速法も「EUの産業能力とサプライチェーンの強化」を目的として掲げています。

② 米国も保護主義に転じた

欧州だけが保護主義化したわけではありません。

2022年の米国のインフレ抑制法(IRA)は、

米国内生産
北米産部品
北米組立EV

を優遇しました。

欧州側からすると、

「米国は補助金で工場を誘致している」

「中国も国家支援をしている」

という状況です。

その結果、

自由貿易を守っているのはEUだけで、EU企業だけが損をしている

という議論が強まりました。

ドラギ元ECB総裁の競争力報告書でも、欧州産業の競争力低下に強い警鐘が鳴らされています。産業加速法もその流れの中にあります。

③ ロシア・ウクライナ戦争による「経済安全保障」重視

2022年以降、EUでは考え方が変わりました。

以前は

安ければ海外調達でよい

という発想でしたが、

ロシア産ガス依存の失敗を経験してから、

エネルギー
半導体
電池
自動車

などは域内能力を維持すべきだという考えが強まりました。

そのため産業政策と安全保障政策が一体化しています。法案も「産業レジリエンス(強靭性)」を強調しています。

④ フランスの長年の主張

実は今回の動きはかなりフランス色が強いです。

フランスは昔から、

戦略産業は保護すべき
公共調達では欧州製品を優先すべき

という立場でした。

今回、フランスのマクロン政権は自動車分野での「Made in Europe」規定を強く要求していました。独仏合意はフランスの要求が大きく反映されたものと見られています。

⑤ ドイツが以前ほど自由貿易を擁護しなくなった

昔ならドイツが反対した可能性があります。

ドイツは輸出立国なので、

自由貿易
開放市場

を重視してきました。

しかし近年は

中国市場の成長鈍化
エネルギー価格高騰
VWやBMWなどの苦戦
工場の海外移転

が問題となっています。

そのためドイツでも

欧州産業を守らなければならない

という声が強くなっています。

今回も独仏が妥協し、自動車分野での「Made in Europe」を認める方向で合意しました。

日本への影響

日本が反発しているのは当然です。

日本メーカーの多くは欧州に工場を持っていますが、

EU加盟国生産
一部欧州諸国生産

のみが優遇対象になれば、

日本本国からの輸出車は不利になります。

また日本政府から見れば、

WTOの内国民待遇や無差別原則に反する保護主義ではないか

という問題もあります。

もっともEU側は、

中国や米国が既に産業保護政策を進めている中で、欧州だけが無防備では産業基盤を失う

という論理で正当化しています。

つまり今回の政策は、「反日」というより、

中国との競争、米国のIRA、ロシア危機を受けて、EU自身が自由貿易重視から産業政策重視へ大きく転換した結果と見るのが実態に近いでしょう。むしろ日本は、この欧州の変化を「EUも米中型の産業保護政策へ近づきつつある」と受け止めた方が理解しやすいと思います。

 

EUでは日本車のシェアは11.9%です(ハンギョレ記事「中国車、欧州で日本車を初めて抜く…5年でシェア0.5%→12.7%」)。ほぼ同じくらいのシェアの中国はEUへの自動車輸出を抑制しEU域内で工場を建設し域内生産する予定です。補助金が欲しかったら日本車も中国車と同様にEUで生産しろってことですか?

 

結論から言うと、今回の独仏合意の発想はかなりの程度、

「補助金や公共調達の優遇を受けたいなら、EU域内で生産し、EUの雇用と投資に貢献してほしい」

というものです。

つまりEU側から見ると、

日本車だからダメ
中国車だからダメ

ではなく、

EUで作るなら歓迎
輸入だけして利益を持ち帰るなら優遇しない

という論理です。

ただし、日本メーカーと中国メーカーでは事情が少し違います。

日本メーカーは既にかなりEU現地生産している

実はトヨタ、日産、ホンダは昔から欧州に大規模工場を持っています。

例えば、

トヨタ(フランス、チェコ)
日産(英国)
ホンダ(過去は英国生産、現在は縮小)

などです。

さらに欧州向け販売車の多くは既に現地組立になっています。

したがってEUとしては、

トヨタがフランス工場で作った車なら歓迎

という立場になりやすい。

日本政府が懸念しているのは、

日本国内からEUへ輸出している車種が不利になる

という点です。

中国メーカーは逆にEU工場建設を急いでいる

中国メーカーにはもっと直接的な圧力になっています。

EUは既に中国製EVへの追加関税を導入しています。

そのためBYDやCheryなどは、

ハンガリー
スペイン
その他欧州諸国

への工場投資を進めています。

中国メーカーも理解していて、

欧州で売り続けたいなら欧州で作るしかない

と考えています。

米国でメキシコ経由生産を狙うのと同じ発想です。

EUの本音は「工場」よりも「付加価値」

さらに言うと、EUの本音は単なる組立工場誘致ではありません。

欧州が欲しいのは

バッテリー工場
モーター工場
ソフトウェア開発
研究開発拠点

です。

過去の経験として、

太陽光パネル産業では

技術開発は欧州
生産は中国

となり、最終的に欧州メーカーがほぼ消滅しました。

そのため自動車でも

最終組立だけ欧州にあっても不十分

という議論が強くなっています。

日本メーカーにとって厄介な点

日本メーカーが困るのは、

EUが今後

現地組立だけでは不十分
欧州製部品比率を要求
欧州製バッテリーを要求

という方向へ進む可能性です。

実際、この発想は米国のIRA(インフレ抑制法)に近い。

アメリカも

北米で製造しろ

北米産バッテリーを使え

と言っています。

EUも同じ方向に向かいつつあります。

なぜここまで強気なのか

最大の理由は、中国車が日本車を抜いたことそのものではなく、

EUが

「日本車を受け入れていたら、中国車も同じ理屈で大量に入ってくる」

と考えているためです。

昔は

ドイツ車
フランス車
日本車

の競争でした。

しかし現在は

中国の巨大補助金
中国のEV過剰生産能力

という新しい問題に直面しています。

EUは、

日本には申し訳ないが、中国対策のためにルールを作ると日本も巻き込まれる

という側面が強いのです。

だから今回の政策を一言で表すなら、

「欧州市場で売りたければ、欧州で作り、欧州に投資し、欧州の雇用を増やせ」という産業政策であり、中国メーカーだけでなく日本メーカーにもその要求が向けられている、と理解するのが最も実態に近いと思います。

 

 

日本から欧州に輸出している日本車は何台ですか?補助金対象外になる日本車は何台になりますか?

 

現時点では、「補助金対象外になる日本車は何台か」を正確に計算することはできません。 理由は、独仏合意は政策方針であって、最終的な適用条件(どこまでを「欧州製」とみなすか)がまだ固まっていないからです。

ただし、おおまかな規模感は推定できます。

まず、あなたが挙げた数字どおり、日本車ブランドのEU市場シェアは約11.9%と報じられています。

EUの新車販売台数は近年おおむね年1,000万台超です。そのため、日本ブランド車の販売台数は年間100万台前後の規模になります。

しかし、そのすべてが日本から輸出された車ではありません。

むしろトヨタを中心に、

フランス
チェコ
英国(EU離脱前からの生産拠点)
トルコ

などで欧州向け車両を大量に生産しています。

特にトヨタ欧州販売車の多くは既に欧州域内または周辺国生産です。

したがって、

日本ブランド車販売台数 ≠ 日本からの輸出台数

です。

むしろ問題になるのは、

日本国内工場で生産
完成車としてEUへ輸出

している車種です。

参考までに、EUが日本から輸入している品目の中で「輸送機器」は非常に大きな比率を占めています。EUの対日輸入統計でも輸送機器は主要輸入品目の一つです。

ただしEU統計だけでは、

日本ブランド車のうち何台が日本製か
何台が欧州現地生産か

までは分かりません。

実務的にはEUのメッセージはかなり明確です。

「日本メーカーを排除したい」のではなく、

「EU市場で売るならEUに工場・雇用・投資を持ってきてほしい」

という方向です。

実際、中国メーカーのBYDなどは追加関税への対応としてハンガリーなどでの現地生産を進めています。

EUから見れば、

中国車も現地生産へ誘導
日本車も現地生産へ誘導
欧州メーカーも域内投資拡大

という構図で、補助金や公共調達をその誘導手段として使っているわけです。

したがって影響を最も受けるのは、トヨタや日産そのものというより、

日本国内工場からEUへ輸出している高付加価値車種やEV車種 になる可能性が高いでしょう。

現時点では「日本からEUへ年間何台輸出され、そのうち何台が新制度で不利になるか」を示した公式試算は見当たりません。制度の最終条文が出ないと正確な数字は出せない、というのが正直なところです。

 

 

つい先日メルツが来日してEUとTPPの連携を深めようと言い出しました(日経記事「ドイツ首相、EUとTPPの連携意欲 投資・貿易対話「重要な一歩」」)。じゃあEUの自動車補助金の問題を何とかしろよという話は上がってませんか?

 

実際、メルツ首相は訪日時に「ルールに基づく貿易体制の擁護」やEUとCPTPP諸国の連携強化を訴えており、「開かれた市場へのアクセス拡大」を目指すとも述べています。

ところが同じ時期にEUでは、

中国EVへの追加関税
欧州製品優遇
産業加速法による域内調達要件強化

が進んでいるため、日本側から見るとかなり矛盾して見えます。

要するに、

「自由貿易を唱えるなら、なぜEUは自動車補助金で欧州製を優遇するのか」

という話です。

実際にはEU側はこの矛盾を矛盾だと思っていません。

EUの論理は、

WTOルールに基づく貿易は維持する。

しかし重要産業については欧州の生産能力も守る。

というものです。

つまりEUは近年、

完全自由貿易
完全保護主義

のどちらでもなく、

「オープンだが戦略的(Open but Strategic)」

という政策へ移行しています。

日本側からするとさらに複雑です。

というのも日本は既にEUとのEPA(経済連携協定)を結んでいます。

2019年発効の日EU・EPAは、

自動車関税撤廃
非関税障壁削減
調達市場開放

を柱としていました。

日本企業からすれば、

EPAで市場開放を約束したのに、今度は補助金や公共調達で欧州製優遇を導入するのか

という不満は当然出てきます。

もっとも、日本政府も今のところは正面衝突を避ける可能性が高いと思います。

理由は、日本もメルツ構想そのものには利益があるからです。

メルツが提唱しているEU-CPTPP連携の背景には、

中国の過剰生産
米国の関税政策
経済的威圧への対抗

があります。

これは日本もかなり共有している問題意識です。

だから日本としては、

EUとの戦略連携は進めたい
しかし自動車補助金の排他的な運用はやめてほしい

という二段構えになるでしょう。

面白いのは、ドイツとフランスでも温度差があることです。

フランスは昔から

欧州優先
戦略産業保護

を強く主張してきました。

一方でドイツは本来、

自由貿易
輸出主導

の国です。

そのためメルツがCPTPPとの連携を言いながら、EUでは欧州優遇策も認めるというのは、

ドイツ国内でも必ずしも完全に整合した政策ではなく、「対外的には自由貿易陣営を作りたいが、域内では産業保護もしたい」という現在の欧州のジレンマそのものと言えます。

日本の交渉担当者が今後最も気にするのは関税ではなく、

「欧州製」の定義をどうするのか

でしょう。

もし「EU域内生産のトヨタ車」は補助金対象になるなら問題は限定的です。

しかし将来、

EU製バッテリー比率
EU製部品比率
EU域内の付加価値比率

まで要求されるようになると、日本政府は「それは実質的な保護貿易だ」としてかなり強く是正を求める可能性があります。現時点では、むしろその線の方が日本企業にとっては警戒すべきポイントだと思います。

 

 

この補助金、WTOルールや2019年に締結した日本とEUの自由貿易協定でどの条項に違反する可能性があるんですかね。

 

法的には、まだ法案の最終条文が確定していないので断定はできません。しかし、日本政府や日本メーカーが問題視するとすれば、主戦場は主に WTO協定 と 日EU・EPA(経済連携協定) の2つです。

ただし興味深いのは、

「EUが必ず違反している」

という話ではなく、

「EUは違反にならないように制度設計しようとするだろうし、日本は実質的に差別だと主張するだろう」

というグレーゾーンの争いになりそうな点です。

WTOで最も問題になりそうな条項
① GATT第3条(内国民待遇)

最も有力です。

GATT第3条は簡単に言うと、

輸入品を国内製品より不利に扱ってはいけない

という原則です。

仮にEUが

EU製EVには補助金
日本から輸入したEVには補助金なし

という制度を作れば、

日本側は

実質的に輸入車差別でありGATT第3条違反だ

と主張する可能性があります。

実際、過去にも

カナダの再生可能エネルギー制度
インドの太陽光発電制度

などで、国内生産品優遇が問題になりました。

② WTO補助金協定(SCM協定)

こちらも重要です。

SCM協定では

国内産品の使用を条件とする補助金

を「禁止補助金」にしています。

例えば、

補助金を受けたければEU製部品を60%以上使え

という制度になれば、

日本は

これはローカルコンテンツ要求でありSCM協定違反

と主張できます。

実際、アメリカのIRAでも、

欧州諸国は当初まさにこの論点で強く反発しました。

③ 政府調達協定(GPA)

公共調達で欧州製優遇が行われる場合はこちらです。

EUも日本もWTO政府調達協定(GPA)の加盟国です。

例えば、

公用車
バス
公共機関の車両

の調達で

EU製限定

とした場合、

日本企業は

GPA違反ではないか

と問題提起できる可能性があります。

ただしGPAは適用除外が多いので、実際には個別制度の設計次第です。

日EU・EPAで問題になる部分
① 国民待遇(National Treatment)

EPAも基本思想は同じです。

要するに、

相手国企業を自国企業より不利に扱わない

という原則です。

日本側は

日本メーカーが同じ性能の車を販売しているのに、EU製だけ補助するのはEPAの精神に反する

と主張できるでしょう。

② 貿易・投資自由化の理念

日EU・EPAは単なる関税協定ではありません。

発効当時、

保護主義への対抗
自由貿易推進

が大きな政治目的でした。

そのため日本は、

関税をなくしておいて、今度は補助金で排除するのか

という政治的批判を行いやすい立場にあります。

ただしEU側にも強い反論がある

EUが恐らく言うのは、

日本企業もEUで生産すれば補助金対象になる

という理屈です。

ここが重要です。

例えば、

トヨタのフランス工場
トヨタのチェコ工場

で生産した車も対象になるなら、

EUは

国籍で差別しているのではない

生産地を基準にしているだけだ

と主張できます。

これは米国のIRAと同じ構造です。

日本にとって厄介な点

実は日本が本当に警戒するのは、

「完成車」よりも「部品比率」です。

もし将来、

EU製電池を50%以上使用
EU製部品を一定割合以上使用
EU域内付加価値が一定割合以上

という条件が入ると、

WTO上のローカルコンテンツ要求と見なされるリスクが一気に高まります。

その場合日本は、

単なる外交的抗議ではなく、

SCM協定違反

GATT第3条違反

を本格的に主張しやすくなります。

要するに、日本が法的に最も強く主張しやすいのは、

「EUで作れ」という条件そのものではなく、「EU製部品やEU域内付加価値を一定割合以上使え」というローカルコンテンツ要求です。

逆にEUが「国籍は問わない。EU域内で生産した車ならトヨタでもBYDでもフォルクスワーゲンでも対象だ」という制度設計に留めた場合、日本がWTO違反を立証するハードルはかなり高くなります。

 

 

メルツの話、中国の過剰生産、米国の関税政策、経済的威圧への対抗、に対応するんだったら米中以外での連携を強化する必要があります。TPPとEUの連携を強化するんだったらTPP未加盟の地域からの自動車輸出も優遇を検討する余地があるということですか?

 

理論的には「あり得る」です。しかし、現在の独仏合意の政治的流れを見る限り、可能性は高くありません。

ここはEUの中でも二つの戦略が衝突しています。

メルツが語る対外戦略

メルツがEUとCPTPPの連携強化を訴える理由はおっしゃる通りで、

中国の過剰生産能力
米国の保護主義・関税政策
経済的威圧への対抗
サプライチェーンの分散

です。

この論理を突き詰めれば、

「EUと価値観を共有するパートナー国との経済統合を進めるべきだ」

となります。

その場合、

日本
カナダ
オーストラリア
ニュージーランド
シンガポール

などCPTPP諸国に対し、現在より有利な扱いを与える余地は理論上あります。

実際、日本政府やカナダ政府が今後ロビー活動をするとすれば、

「中国製品と日本製品を同列に扱うのはおかしい」

「日本はEPA締結国であり安全保障上のパートナーだ」

「日欧で経済安全保障協力を進めるなら優遇対象に含めるべきだ」

という主張になるでしょう。

しかし独仏合意の狙いは別

一方で産業加速法の発想は、

「輸入先を中国から日本に切り替える」

ではありません。

むしろ

「生産そのものを欧州に戻す」

です。

ここが重要です。

例えばEUから見ると、

中国製EV
日本製EV
韓国製EV

はいずれも「域外生産」です。

そのため

日本は友好国だから補助金対象

とすると、

工場や雇用を欧州に呼び込みたいという産業政策の目的が弱まります。

特にフランスは昔から

Buy European

志向が強く、

Buy Japanese

に置き換えることにはあまり興味がありません。

日本側が狙うべき現実的な落としどころ

むしろ日本にとって現実的なのは、

「日本製も優遇しろ」ではなく、

「EUで生産している日本メーカーを欧州メーカーと同等に扱え」

という方向です。

例えば

トヨタのフランス工場
トヨタのチェコ工場
日産の欧州拠点

で生産された車について、

フォルクスワーゲンと同じ扱いにせよ

という主張です。

こちらの方が政治的にも法的にも通りやすい。

将来的には「友好国枠」が出る可能性はある

もっと興味深いのは米国IRAの修正版モデルです。

近年の欧米の経済安全保障政策では、

完全な自由貿易でも完全な保護主義でもなく、

trusted partners(信頼できるパートナー国)

という考え方が広がっています。

仮にEUが将来、

EU加盟国
EEA諸国(ノルウェー等)
スイス
EPA締結国
CPTPP加盟国

を特別扱いする枠組みを作れば、

日本やカナダ、オーストラリアにとって有利になります。

ただしこれは現在の独仏合意よりかなり先の話です。

ですから現状の政治力学をみると、

メルツの「EUとCPTPPの連携強化」は対中・対米戦略としては本気ですが、それが直ちに「日本から輸入した自動車もEU補助金の対象にしよう」という方向には結び付きにくいです。むしろEUの本音は「日本車でも中国車でもいいから、補助金が欲しければ欧州で作ってほしい」に近いと思われます。

ただ、日本政府は今後かなりの確率で「少なくともEPA締結国である日本を中国と同列に扱うな」という外交的働きかけを強めるでしょう。これは経済合理性だけでなく、日欧の経済安全保障協力との整合性の問題になるからです。

 

 

補助金出せばEUの自動車は復活できるんですか?そもそも欧州の自動車メーカーの電気自動車優遇もディーゼル優遇も過去に失敗して中国車にシェアを取られてませんでしたか?

 

結論から言うと、

「補助金だけで欧州自動車産業が復活する可能性は低いが、何もしないよりは延命効果や投資誘導効果はある」

というのが現実に近いと思います。

そしてご指摘の通り、

欧州は過去20年近く、自動車産業に有利な政策を何度も打ったが、必ずしも期待通りの結果になっていない

という批判はEU内部でも存在します。

ディーゼル優遇は結果的に失敗だった

まず2000年代から2010年代前半にかけての欧州です。

EUはCO2削減を重視した結果、

軽油税優遇
ディーゼル車優遇
メーカー向け規制

を組み合わせました。

その結果、

フランス
ドイツ
イタリア
スペイン

ではディーゼル車比率が50%を超えた国もありました。

当時は欧州メーカーの得意分野だったので、

VW
BMW
メルセデス
PSA(現ステランティス)
ルノー

に有利でした。

しかし、

NOx問題
ディーゼルゲート
都市部の大気汚染

によって政策は崩壊しました。

欧州は長年かけて築いたディーゼル優位を自ら捨てることになります。

結果的に巨額投資の一部は無駄になりました。

EV優遇でも完全には勝てなかった

次にEVです。

EUは

EV補助金
CO2規制
2035年エンジン車禁止方針

などで世界でも最もEVを優遇した地域の一つでした。

ところが、

EV販売が増えたにもかかわらず、

欧州メーカーが必ずしも勝者になったわけではありません。

なぜならEVの価値の中核が

バッテリー
ソフトウェア
半導体

に移ったからです。

欧州メーカーが得意だった

エンジン
トランスミッション
排ガス技術

の価値が相対的に低下しました。

その結果、

中国メーカーが急速に追い上げました。

中国車にシェアを奪われた原因

ここで重要なのは、

欧州が負けた理由は補助金不足ではないことです。

中国メーカーは

巨大市場
大量生産
電池産業
サプライチェーン統合

を持っています。

例えばBYDは、

電池
半導体
モーター
完成車

まで垂直統合しています。

欧州メーカーは部品サプライヤー依存が大きく、

EVになるとコスト競争で苦しくなりました。

つまり、

中国車が勝ったのは補助金だけではなく、生産システム全体で優位だった

という面があります。

だからEUは発想を変えた

EU当局もこの問題は理解しています。

そのため現在の産業加速法の発想は、

単なる販売補助金ではなく、

工場を作らせる
電池工場を誘致する
サプライチェーンを域内化する
雇用を作る

ことに重点があります。

要するに、

昔の

「欧州メーカーに売れ」

から

今の

「欧州で作れ」

へ発想が変わっています。

これは大きな違いです。

それでも成功は保証されない

もっとも、成功する保証はありません。

例えば欧州は太陽光パネルでも、

技術は持っていた
環境政策もあった
補助金も出した

にもかかわらず、

最終的には中国企業が市場を席巻しました。

現在の自動車でも同じ懸念があります。

仮に

BYD
吉利
長城汽車

がハンガリーやスペインに工場を建設した場合、

統計上は「欧州生産」です。

しかし利益や技術の中核は中国企業が握ることになります。

するとEUの目的である

欧州ブランド復活
欧州技術復活

とは別の結果になる可能性があります。

実はEU内部でも意見が割れている

あなたが指摘する疑問は、実はドイツでも出ています。

批判派は、

ディーゼル優遇で失敗した

EV優遇でも苦戦した

今度は欧州製優遇を始める

また政策の失敗を税金で埋め合わせているだけではないか

と主張しています。

一方で推進派は、

補助金だけでは勝てないのは事実だ

しかし何もしなければバッテリーも工場も中国へ行く

まず生産基盤を欧州に残さなければ勝負にすらならない

と反論しています。

したがって現在のEUの政策は、

「補助金で欧州メーカーを復活させる」というより、「少なくとも欧州から自動車産業が丸ごと流出することを防ぐ」ことが主目的になっていると考えた方が実態に近いでしょう。

そしてその意味では、EU当局者の頭の中では「フォルクスワーゲンがBYDに勝つ」よりも、「BYDでもトヨタでもいいから欧州に工場を作らせる」という発想の比重が以前よりかなり大きくなっていると思われます。

 

 

東京では外車割合が5台に1台です(外車バトン記事「東京は外車が多いって本当?都道府県別ランキングと東京で人気の輸入車を紹介」)。日本における外国車メーカーのシェアは何%ですか?基本的に全部輸入車ですか?

 

日本全体で見ると、外国車メーカーのシェアは東京ほど高くありません。

2025年の外国メーカー車(メルセデス・ベンツ、BMW、VW、アウディ、BYD、テスラなど)の新規登録台数は約24.3万台でした。

一方、日本の新車市場全体は年間約400万台規模なので、外国メーカー車のシェアは概ね5~6%程度です。

つまり、

日本全体:外国メーカー車シェア 約5~6%
東京23区や港区・世田谷区など富裕層地域:もっと高い
東京都全体:輸入車比率が全国平均を大きく上回る

という構図です。

そのため、

東京では5台に1台が外車

という印象と、

日本全体では外国メーカー車は5~6%程度

という数字は両立します。

外国車メーカーの車は基本的に全部輸入車なのか?

これはほぼ「はい」です。

例えば日本で売られている

メルセデス・ベンツ
BMW
アウディ
フォルクスワーゲン
ボルボ
テスラ
BYD
ヒョンデ

は基本的に輸入車です。

日本国内で大規模完成車工場を持つ外国メーカーは現在ほとんどありません。

むしろ増えているのは「海外製の日本車」

最近は逆にこちらが面白い現象です。

JAIA統計では輸入車の中に

スズキ
ホンダ
トヨタ

など日本メーカー車もかなり含まれています。

例えば

スズキ ジムニーノマド(インド生産)
トヨタの一部車種(欧州生産)
ホンダの一部車種(海外工場生産)

などです。

2025年の輸入車登録約35万台のうち、

外国メーカー車:約24万台
日本メーカーの逆輸入車:約11万台

でした。

EUとの比較

実はこれが先ほどのEUの話ともつながっています。

EUから見ると、

ドイツ車を日本へ輸出
日本車をEUへ輸出

はお互い様です。

しかしEUが今問題視しているのは国籍ではなく、

「どこで生産したか」

です。

そのためEUの発想を極端に言えば、

ドイツ企業の車でも中国工場製なら警戒
日本企業の車でもEU工場製なら歓迎

という方向に変わりつつあります。

だから今回の産業加速法は「反日自動車政策」というより、

輸入車より欧州生産車を優遇する政策

と理解した方が実態に近いですね。

 

 

そういえば大家んところもフォルクスワーゲンポロだったなあ。

EUが域内限定の自動車補助金を出すなら日本も対抗して同じ措置を取れますか?

 

できます。ただし、

「法的には可能だが、日本にとって得かというとかなり微妙」

です。

実はEUが今やろうとしていることと、日本が同じことをやることでは状況が全く違います。

法的には可能か

もしEUが

EU域内生産車にのみ補助金

を出すなら、日本も理論上は

日本国内生産車向けの補助金

を創設できます。

実際、

米国のIRA
中国のEV補助金
EUの産業政策

を見れば、大国は何らかの産業支援を行っています。

したがって

日本も国内投資促進のため補助金を出す

こと自体は不可能ではありません。

ただし、

日本メーカーの日本国内工場への設備投資補助

と

日本製以外は購入補助の対象外

では法的リスクが違います。

後者になるほどWTO問題が大きくなります。

しかし日本はEUほどメリットがない

EUがこうした政策をやる理由は、

中国EV流入
米国への工場移転
域内生産減少

への危機感です。

一方で日本市場は特殊です。

日本の新車市場は年間約400万台規模ですが、

外国メーカーのシェアは5~6%程度しかありません。

つまり、

EUみたいに

海外メーカーに市場を奪われている

状況ではありません。

例えば仮に、

日本製だけ補助金

としたところで、

失う外国車販売は市場の一部に過ぎません。

むしろ困るのは日本メーカー

面白いのはここです。

現在の日本メーカーは、

タイ
インド
インドネシア
北米
欧州

などに巨大生産拠点を持っています。

例えば、

ホンダ
トヨタ
スズキ

の車でも海外生産車が日本で販売されています。

もし日本版EU政策として

日本国内生産車のみ補助対象

にすると、

逆輸入される日本メーカー車まで対象外になる可能性があります。

つまり一番困るのは外車メーカーではなく、

トヨタやホンダ自身かもしれません。

現実的な対抗策

日本政府が取りうる現実的対応は、

報復的な補助金ではなく、

① EPA協議

まずEUとの協議です。

日本は

EPAの精神に反する

という政治的圧力をかけられます。

② WTO提訴

制度設計次第では

GATT3条
SCM協定

を根拠に争うことも理論上可能です。

もっとも現在WTO上級委員会が機能不全なので効果は限定的です。

③ 日本独自の投資支援

最も可能性が高いのはこれです。

例えば、

電池工場補助
半導体補助
水素投資支援

のような形です。

実際、日本政府は既にTSMCやRapidus向けに大規模支援を行っています。

日本が本気で報復するとどうなるか

仮に日本が

日本国内生産車だけ購入補助

を導入した場合、

最も打撃を受けるのは

メルセデス
BMW
VW
アウディ

です。

東京では外車比率が高いため一定の影響があります。

しかしEU側も

ならば欧州製優遇をさらに強化する

と応酬する可能性があります。

結果として、

EU、日本、米国、中国がそれぞれ

自国で作れ

と言い始める世界になります。

実はメルツなどがEU・CPTPP連携を唱えるのは、そうした経済ブロック化を防ぎたいという面もあります。

ですから、日本政府の立場として最も合理的なのは、

「日本も同じ保護主義で対抗する」

ではなく、

「EUと安全保障や経済安保で連携したいなら、日本企業やEPA締結国企業を中国企業と同列に扱うな」

と交渉することです。

実際には、日本が目指すのは「日本製輸入車の優遇」よりも、「EU域内で生産するトヨタや日産を欧州メーカーと同等に扱わせること」になる可能性が高いでしょう。

 

 

げ…返り血が多いなあ。

そりゃ日本も工場を海外移転させましたからね。

よしよしじゃあ地域を広げる、日本版EU政策としてTPP加盟国内生産車のみ補助対象になったらどうなりますか?

 

仮に日本が、

「TPP(CPTPP)加盟国内で生産された自動車のみ購入補助金の対象」

という制度を作ったら、かなり面白いことになります。

これは現在EUが考えている「欧州製優遇」とは少し性格が違います。

誰が得をするか

まず対象になりそうなのは、

日本
カナダ
オーストラリア
ニュージーランド
メキシコ
マレーシア
ベトナム
シンガポール
ブルネイ
チリ
ペルー
英国

などのCPTPP加盟国生産車です。

日本市場で実際に恩恵を受けるのは、

日本メーカー

当然ながら最大の受益者です。

例えば

国内生産トヨタ
国内生産日産
国内生産ホンダ

は対象です。

また、

タイ生産車
マレーシア生産車
メキシコ生産車

も加盟国生産なら対象にできる可能性があります。

英国車

意外な恩恵を受けるのが英国です。

例えば

MINI
ジャガー
ランドローバー
一部のニッサン英国工場生産車

などです。

もし英国生産を対象にすると、

EU車と英国車で扱いが分かれます。

誰が困るか
ドイツ車

最も打撃を受けるのは

BMW
メルセデス
アウディ
VW

です。

日本における輸入車市場の中心はドイツ車です。

ところがドイツはCPTPP加盟国ではありません。

そのため、

補助金対象外になる可能性があります。

フランス車
ルノー
プジョー
シトロエン

も同じです。

中国車
BYD
吉利
長城汽車

なども対象外です。

WTO上はどうか

実は法的には結構微妙です。

EUの「欧州製優遇」と同じ問題が発生します。

日本が

CPTPP加盟国生産車だけ補助

とした場合、

EUは

なぜドイツ車だけ排除されるのか

と批判するでしょう。

特にドイツメーカーは日本市場で大きなプレゼンスを持っています。

日本にとっての利点

興味深いのは、

EUの「欧州製優遇」より外交的に説明しやすいことです。

EU案は

欧州人のために欧州製

です。

しかし日本版は

中国依存を減らすために、自由貿易協定を結ぶ友好国のサプライチェーンを支援する

という理屈が可能です。

つまり、

「保護主義」

より

「友好国経済圏形成」

に近くなります。

しかし日本が本当にやる可能性は低い

最大の問題は、

日本市場では輸入車シェアが小さいことです。

EUは中国車流入への恐怖があります。

一方日本市場は依然として90%以上が日本メーカーです。

そのため、

補助金で外国車を締め出しても得られる効果が限定的です。

むしろ税金を使う以上、

政府としては

電池工場補助
半導体補助
水素関連投資

に回した方が効果が大きいでしょう。

ただ外交カードとして見ると面白く、

もしEUが

「欧州製しか優遇しない」

と言うなら、

日本は理屈の上では

「では日本もCPTPP経済圏生産車を優遇します」

と言い返す余地はあります。

特にドイツがEU・CPTPP連携を強く主張している状況では、

「連携強化を唱える一方で、自動車補助金は欧州限定なのか?」

という日本側の反論は、政治的にはかなり説得力を持つと思います。

 

 

まあEUも英国生産は補助金対象にしてますしタイとかTPP加盟国に近い国は優遇する余地はあるかな。

自動車関連産業に補助金ジャブジャブはやりたくないなあ。

彼らカネ持ってるんだし自前でやってもらいませんとね。

そもそもEUも日本も補助金で優遇する政策がどうかと思うんですよ。

ところで日本市場における超高級車のシェアは何%ですか?日本車だとセンチュリーぐらいですけど超高級車市場は欧州車のシェアが高いですか?

 

超高級車市場に限定すると、日本車より欧州車の存在感が圧倒的に大きいです。

ただし最初に注意点として、日本では「超高級車」の公式統計がありません。

そのため通常は、

1,000万円超の高級車
2,000万円超の超高級車
ロールス・ロイス、ベントレー、フェラーリ、ランボルギーニなどのエキゾチックカー

といった区分で考える必要があります。

日本市場全体から見ると超高級車は1%未満

日本の新車販売は年間400万台程度です。

一方で、

ロールス・ロイス
ベントレー
フェラーリ
ランボルギーニ
アストンマーティン
マクラーレン

などの年間販売台数は、多くても数百台から千数百台程度です。例えば2026年1~9月累計でロールス・ロイス354台、ベントレー326台、フェラーリ1,339台、ランボルギーニ827台と報じられています。

そのため、

「純粋な超高級車」

だけで見ると、日本の新車市場の0.1%にも満たない規模です。

超高級車市場では欧州車がほぼ支配的

このクラスになると、

欧州勢
ロールス・ロイス(英国)
ベントレー(英国)
フェラーリ(イタリア)
ランボルギーニ(イタリア)
アストンマーティン(英国)
マクラーレン(英国)
ポルシェ上位モデル(ドイツ)

が中心です。

日本勢

実質的に

トヨタ・センチュリー
レクサスLM
レクサスLXの上級仕様

くらいです。

センチュリーは日本国内では非常に高い評価がありますが、販売台数そのものは限定的です。

なぜ欧州車が強いのか

ここが面白いところです。

日本メーカーは技術的には作れます。

実際、

センチュリーSUV
センチュリーセダン

は品質面でロールス・ロイスに劣らないという評価もあります。

しかし超高級車市場は、

工業製品市場

ではなく

ブランド市場

です。

例えばロールス・ロイスを買う人は、

V12エンジン
内装

だけで買っているわけではありません。

むしろ

英国王室との歴史
100年以上のブランド
希少性

に価値を感じています。

日本の富裕層ですら欧州車を選ぶ

特に東京では、

港区
千代田区
渋谷区
世田谷区

などで、

ロールス・ロイス、 ベントレー、 フェラーリ

を見かける機会が多いです。

富裕層からすると、

センチュリーは

「品がある」

一方で、

ロールス・ロイスは

「世界的なステータスシンボル」

として認識されがちです。

仮に日本がEU車に報復したら

先ほどの話に戻ると、

もし日本が

CPTPP加盟国生産車のみ補助対象

などを導入した場合、

一般大衆車市場への影響は限定的ですが、

超高級車市場ではかなり効きます。

なぜなら、

ロールス・ロイス
ベントレー
フェラーリ
ランボルギーニ
ポルシェ

などはほぼ全て欧州生産だからです。

もっとも、超高級車の購入者は補助金の有無をあまり気にしないので、販売への実際の影響は中価格帯EVほど大きくないでしょう。

要するに、

日本全体の自動車市場では外国メーカーのシェアは5~6%程度ですが、2,000万円超クラスの超高級車市場に限れば、欧州メーカーが圧倒的多数を占め、日本メーカーはセンチュリーを除くと存在感がかなり小さいというのが実態です。

 

まあ富裕層にしたらどうってことないしセンチュリーが食らうダメージもたいしたことない、欧州車の方が問題になるかな?

防衛財源も確保が課題になってますけど担税力に応じた課税だとか格差解消のため富裕層や企業が社用車として使う超高級車の自動車取得税だとか自動車関連税を引き上げることは問題ないですか?

 

政策論としては十分議論の余地がありますが、実際に導入するとかなり難しい問題があります。

まず、自動車取得税は既に廃止されており、現在は環境性能割などの仕組みに置き換わっています。そのため仮に課税強化を行うなら、

高額車への取得時課税
自動車税の高額車加算
法人保有高級車への課税強化
社用車の損金算入ルール見直し

といった形になるでしょう。

課税強化を支持する論拠

支持派は主に次の点を挙げます。

① 担税力原則

2,000万円や3,000万円を超える車を購入できる層は一般に所得や資産が大きく、税負担能力も高いと考えられます。

例えば、

ロールス・ロイス
ベントレー
フェラーリ
ランボルギーニ

などは生活必需品ではなく典型的な奢侈品です。

そのため

高級腕時計や高級不動産と同様に高級車にも追加負担を求める

という考え方は理論的には成立します。

② 税収への影響が比較的小さい

超高級車市場は台数が少ないため、

一般国民への影響は限定的
反発が比較的小さい

という政治的メリットがあります。

③ 法人による節税対策への対応

よく問題になるのが、

会社名義の高級車
実質的にはオーナー個人利用

というケースです。

このため

法人保有超高級車の損金算入を厳格化すべきだ

という議論は以前からあります。

課税強化に反対する論拠

一方で課題もあります。

① 税収効果は意外と小さい

超高級車は目立ちますが市場規模は小さいです。

仮に数千万円の車への課税を増やしても、防衛費のような数兆円単位の財源としては限定的です。

防衛費は年間数兆円規模の増額が議論されるため、

超高級車課税だけで財源を賄う

ことはできません。

② 日本メーカーも巻き込まれる

高級外車だけを狙い撃ちするとWTOやEPA上の問題が出ます。

そのため制度化するなら、

センチュリー
レクサスLM
レクサスLX

など日本車も課税対象になります。

③ 逃避行動が起きる

富裕層は対応能力があります。

例えば、

法人リース化
海外購入
中古市場への移行

などです。

税率を上げても期待ほど税収が増えない可能性があります。

実際に諸外国はどうしているか

欧州でも、

高級車そのものへの課税

より、

CO2排出量
車両価格
重量
法人利用

を組み合わせて課税している国が多いです。

フランスのマルス税(環境ペナルティ税)は高額車や大型車に重い負担を課す仕組みとして有名です。

私見を述べるなら

防衛財源という観点では、

超高級車課税は

象徴的・政治的な意味はあるが、財源効果は限定的

です。

むしろ税収確保を本気で考えるなら、

所得税
消費税
相続税
法人税
社会保険料

のような大きな税目の方が桁違いに影響します。

ただし、

「富裕層や実質的に私的利用される法人所有の超高級車について、応分の負担を求める」

という議論自体は、担税力や公平性の観点から十分成り立つと思います。

興味深いのは、もしEUが「欧州製優遇」を進め、日本がそれに対抗する政策を検討するなら、単純な輸入車課税よりも、高額車全般への課税強化の方がWTOやEPAとの摩擦は小さいという点です。輸入車か国産車かではなく「価格」を基準にするからです。

 

 

ドイツやイタリアのメーカーの超高級車の利益率はどれくらいですか?日本市場における販売台数がそんなに多くなくても利益を出せるのは超高級車が好採算だからですか?

 

はい、その理解はかなり正しいです。

自動車業界ではしばしば

「大衆車で台数を稼ぎ、高級車で利益を稼ぐ」

と言われます。

特にドイツやイタリアの超高級車メーカーは、販売台数の割に驚くほど利益率が高いことで知られています。

ドイツ勢

フォルクスワーゲングループ傘下のポルシェは、自動車業界でも屈指の高収益企業です。近年は営業利益率が10%台後半から20%前後に達することもあり、量販メーカーの数倍の水準になることがあります。

比較すると、

トヨタ:営業利益率10%前後
フォルクスワーゲン本体:5~10%程度
ステランティス:一桁台後半~10%台前半
ポルシェ:10%台後半~20%前後

というイメージです。

メルセデス・ベンツも近年は「台数より利益」を掲げており、高級モデル比率を引き上げる戦略を取りました。

イタリア勢

さらに極端なのがフェラーリです。

フェラーリは自動車メーカーというより高級ブランド企業に近く、近年の営業利益率は20%を大きく超えることがあります。

高級ブランド企業と比較されることすらあります。

例えばフェラーリは、

生産台数を意図的に制限
希少性を維持
オプションでさらに利益獲得

という構造を持っています。

そのため1台売れた際の利益額は一般メーカーとは桁が違います。

なぜ日本市場で利益が出るのか

ここが重要です。

例えば日本で年間販売される車は約400万台ですが、

ロールス・ロイス
ベントレー
フェラーリ
ランボルギーニ

の販売台数は数百台~千台程度です。

一見すると、

「そんな台数でディーラー網や広告費を回収できるのか」

と思います。

しかし超高級車は1台当たりの利益が非常に大きい。

例えば、

500万円の大衆車で利益20万円
5,000万円の超高級車で利益500万円

という世界です。

もちろん実際の数字は車種ごとに異なりますが、利益構造はこういう方向です。

日本市場は「利益市場」

ドイツメーカーから見た日本は非常に魅力的です。

なぜなら、

富裕層人口が多い
治安が良い
ブランド志向が強い
メンテナンス需要もある

からです。

実際、日本は世界の中でも

メルセデス
BMW
ポルシェ
フェラーリ

にとって重要市場の一つです。

台数では中国や米国に負けますが、利益面では無視できません。

だからEUメーカーは日本市場を簡単には捨てられない

あなたのこれまでの質問ともつながります。

日本市場における輸入車シェアは5~6%程度ですが、その中には

メルセデスSクラス
BMW 7シリーズ
ポルシェ911
レンジローバー
フェラーリ
ランボルギーニ

など利益率の高い車種が数多く含まれます。

そのため、

「日本市場のシェアは小さいからEUメーカーにとって重要ではない」

というわけではありません。

むしろ超高級車分野では、

日本は利益率の高い重要顧客市場です。

面白いのは、もし仮に日本が将来「超高額車への課税強化」を導入した場合、販売台数にはそれほど影響しなくても、利益面ではドイツ車・イタリア車メーカーへの影響が意外に大きくなり得ることです。超高級車メーカーは台数よりも1台当たり利益で稼ぐビジネスだからです。

 

前述のTPP域内優遇と合わせた課税、英国はTPP加盟国なのでロールスロイスとかの英国車は優遇するとしてドイツ車イタリア車の超高級車に事実上の輸入税が課されることになったらドイツとイタリアのメーカーはどれだけ利益を失いますか?

 

結論から言うと、

ドイツ車・イタリア車メーカーにとっては不快な措置にはなりますが、会社全体の利益が吹き飛ぶほどの打撃にはなりません。

ただし、

日本市場が高収益市場であること
超高級車は利益率が極めて高いこと

を考えると、販売台数以上の影響は出ます。

まず市場規模が小さい

仮に日本で年間販売される

フェラーリ
ランボルギーニ
ポルシェ上級モデル
メルセデスAMG上級モデル
BMW M上位モデル

などを全部合わせても、日本全体の新車市場400万台のごく一部です。

そのため、

日本での販売が半減したからフェラーリが赤字になる

という話ではありません。

フェラーリの主力市場は

米国
欧州
中国
中東

です。

ドイツ勢も同様です。

しかし利益への影響は台数より大きい

仮に3000万円のフェラーリに対して、

「TPP域外超高級車特別税」
「高額輸入車課徴金」

などで価格が10%上昇するとします。

3000万円なら300万円です。

超富裕層は買うかもしれませんが、

中間的な富裕層は

購入延期
中古車への移行
英国車への乗換

を考える可能性があります。

すると販売台数が20%減少したとして、

フェラーリやポルシェにとってはかなりの利益減になります。

英国車は有利になる

あなたの仮定で面白いのはここです。

英国はCPTPP加盟国です。

すると、

ロールス・ロイス
ベントレー
アストンマーティン
マクラーレン
ランドローバー

は優遇対象です。

逆に、

メルセデス
BMW
アウディ
ポルシェ
フェラーリ
ランボルギーニ

は不利になります。

その結果、

例えば5000万円の車を買う富裕層の一部が

フェラーリではなくベントレー

ポルシェではなくアストンマーティン

へ移る可能性があります。

ドイツメーカーが最も困る

実は本当に影響を受けるのはフェラーリよりもドイツ勢かもしれません。

理由は、

日本はドイツ高級車にとって重要市場だからです。

例えば

メルセデスSクラス
メルセデスGクラス
BMW 7シリーズ
BMW X7
ポルシェ911
ポルシェカイエン

などは日本でもかなり売れています。

これらは台数が比較的多く利益率も高い。

そのため、

ドイツメーカーの日本事業利益は数十%減る可能性があります。

それでも本社利益への影響は限定的

しかし会社全体で見ると、

例えばメルセデス・ベンツやBMWの年間営業利益は数千億円から兆円単位です。

日本市場は重要ですが、

米国市場や中国市場ほど大きくありません。

したがって、

極端な話、

日本事業利益が半減

しても、

グループ全体利益への影響は数%程度に留まる可能性が高いです。

むしろ政治的ダメージが大きい

実は経済的損失以上に問題になるのは政治面です。

もし日本が

CPTPP加盟国優遇

CPTPP域外超高級車追加課税

を導入した場合、

EU側はほぼ確実に

日本はEUの自動車政策に報復した

と受け取ります。

特にドイツは

EUとCPTPPの連携強化
日本との経済安保協力

を掲げている最中ですから、

ベルリンやローマでは

「連携相手と言いながらドイツ車とイタリア車だけ狙い撃ちした」

という反発が強まるでしょう。

ですので経済的に見ると、

フェラーリやBMWが経営危機になるほどの打撃ではありませんが、日本市場は高利益市場なので利益は確実に削られます。特に台数の少ないロールス・ロイス級よりも、実は日本で厚い顧客層を持つメルセデス、BMW、ポルシェの方が金額ベースの損失は大きくなる可能性があります。

一方で、防衛財源という観点では、仮に超高級車への追加課税を導入しても市場規模そのものが小さいため、税収はせいぜい数百億円規模が上限で、数兆円単位の防衛費財源の主力にはなりにくいと思われます。むしろ外交カードや対EU交渉カードとしての意味合いの方が大きいでしょう。

 

「グループ全体利益への影響は数%程度に留まる可能性が高いです」ってそんなにシェアが高くない日本市場だけで数パーセントも利益を稼いでること自体がかなりすごいんですが。欧州の自動車メーカーにとって日本の超高級車市場は安定的に数パーセントの利益を稼げる市場なんですか?中国は市場規模が大きい反面で最近ではバブル崩壊で失速し消費が伸び悩んでます。中国市場の超高級車販売も見通し不明ですけど欧州の超高級車の中国における販売動向はどうなってますか?

 

BMWやメルセデスのグループ全体利益の数%を日本の超高級車だけで稼いでいるという意味ではありません。

むしろ、

日本市場全体(高級車・中大型SUV・法人車両を含む)
メルセデスやBMWの日本法人事業全体
アフターサービスや部品販売

を合算すると無視できない利益になる可能性がある、という意味です。

超高級車だけに限定すると話はかなり変わります。

日本の超高級車市場は「小さいが安定」

欧州メーカーから見る日本市場の特徴は、

中国のような爆発的成長市場ではなく、

富裕層需要が比較的安定している市場

であることです。

例えば

フェラーリ
ランボルギーニ
ポルシェ
ベントレー
ロールス・ロイス

の顧客は、

不動産価格や株価の変動を受けても比較的購買力を維持しやすい層です。

そのため日本は

大きく儲かる市場ではないが、急激に崩れにくい市場

として評価されています。

中国は逆に不透明になっている

こちらの方が現在の欧州メーカーにとって深刻です。

2010年代後半には、

中国は多くの欧州高級車メーカーにとって最大の利益源の一つでした。

特に

メルセデス・ベンツ
BMW
アウディ
ポルシェ

です。

しかし近年は状況が変わりました。

理由は複数あります。

① 不動産不況

恒大集団以降、

中国では不動産価格の停滞や下落が続いています。

中国の富裕層の資産は不動産への依存度が高いため、

資産効果が弱くなりました。

② 高級EVの台頭

これは欧州メーカーにとってさらに痛いです。

以前の中国富裕層は

ベンツSクラス
BMW7シリーズ
ポルシェ

をステータスシンボルとして購入していました。

しかし現在は

BYD仰望(Yangwang)
NIO ET9
Huawei系AITO
Xiaomi SU7 Ultra

などの中国ブランドが急速に高級市場へ参入しています。

欧州メーカーが独占していた高級車市場が侵食されているわけです。

③ ナショナルブランド志向

近年の中国では、

若い経営者や富裕層の一部に

中国ブランドを買うこと自体がステータス

という意識が生まれています。

2010年代だと

「成功したらベンツ」

でした。

2020年代後半になると、

「成功した中国起業家が中国製EVに乗る」

ことも珍しくなくなっています。

フェラーリやロールス・ロイスは別世界

ただし、

フェラーリやロールス・ロイスになると事情が少し違います。

この価格帯になると、

中国経済が減速
EV化
国産化

の影響は受けても、

完全には代替されません。

なぜなら顧客が買っているのは自動車ではなく、

ブランド価値だからです。

例えば、

フェラーリ
ロールス・ロイス

の顧客がすぐBYDへ流れるとは考えにくいです。

そのため超高級車ブランドは依然として高収益です。

実はドイツ勢の方が危機感が強い

面白いのは、

中国市場の先行きで最も苦しいのはフェラーリではなく、

むしろ

BMW
メルセデス
ポルシェ
アウディ

です。

彼らの主戦場は

「数千万の超富裕層向け」

ではなく、

「1000万円~3000万円前後の富裕層向け」

だからです。

この層は景気や不動産価格の影響を受けやすい。

さらに中国メーカーとの競争も激しい。

なぜ日本市場が相対的に重要になるのか

その結果、

欧州メーカーから見ると日本市場は

市場    規模    利益率    安定性中国    非常に大きい    高い    不透明化
米国    非常に大きい    高い    比較的安定
日本    小さい    高い    安定
中東    小さい    非常に高い    原油価格依存

という位置づけになります。

つまり日本は

中国ほど儲からないが、中国ほど急に崩れない

市場です。

欧州高級車メーカーにとって、日本市場だけで利益の数%を稼ぐというより、

中国市場が不透明になるほど、日本のような安定した高所得国市場の価値が相対的に高まる

という理解の方が実態に近いと思います。

ですから、仮に日本がTPP優遇や超高級輸入車課税を導入した場合、ドイツやイタリアのメーカーにとっては単なる販売台数の問題ではなく、

「中国も読めない、EUも成長鈍化、その中で日本という安定収益市場まで悪化する」

という点で予想以上に嫌がる可能性があります。

 

…いったんここまで。